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【石平のChina Watch】習近平政権による「戦闘的紅衛兵外交」の行方
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20140221/frn1402211131001-n1.htm
2014.02.21 夕刊フジ
前回の本欄で習近平政権の「強硬一辺倒」の国内政策を論じてみたが、実は外交の面においても習主席の進める政策は猪突(ちょとつ)猛進型の「強硬さ」を最大の特徴としている。その典型は「尖閣問題」をめぐっての対日姿勢である。日本政府が尖閣諸島の国有化に踏み切ったのは2012年9月のことであったが、この年11月の習政権発足以来、中国側の一方的な挑発がエスカレートしてきていることは周知の通りだ。
中国公船による日本の領海侵犯はほぼ日常化してしまい、有人・無人機の領空侵犯も幾度かあった。昨年1月には中国海軍が日本の海自艦船に対し、レーダー照射の実施という危険極まりのない挑発行為に及び、同年11月、中国政府は東シナ海上空の航空の自由を勝手に制限する防空識別圏の設定を発表した。
そしてこの年の年末に安倍晋三首相が靖国神社に参拝すると、中国は安倍首相のことを「安倍」と呼び捨てにして全面対決の姿勢を鮮明にした。この「戦い外交」の矛先は南シナ海周辺の東南アジア諸国にも向いている。特に今年に入ってから、中国が南シナ海の各国の漁業活動への恣意(しい)的な「規制」を一方的に発表したり、ベトナムの漁船を破壊したりして傍若無人さを増している。それに対し、フィリピンやベトナムなどの関係国が猛反発して中国との対立姿勢を強めているが、フィリピンのアキノ大統領に至っては、今の中国を第二次世界大戦前のヒトラーになぞらえて批判した。
こうした中で、米中関係も溝が深まる一方だ。昨年6月、習主席が訪米してオバマ大統領との長時間会談に臨んだとき、米中は歩み寄って「大国関係」の構築を模索した痕跡もあったが、この年の11月に中国が前述の防空識別圏の設定を発表すると、米国の習政権に対する不信感が一気に高まった。中国がさらに南シナ海上空への防空識別圏拡大をたくらもうとすると、米国の不信感はよりいっそう募ってきた。
しかし、習政権はそれでも挑発をやめようとはしない。昨年12月には中国海軍が米国海軍のイージス艦の航海を妨害するような際どい行動に出たかと思えば、今年1月、中国政府はまた、米ニューヨーク・タイムズの記者に対する事実上の国外追放に踏み切った。とにかく何でもかんでも米国とけんかしておこうという、昔の紅衛兵の振る舞いをほうふつさせるような乱暴にして無謀な外交姿勢である。
ここまでくると、さすがのオバマ政権も堪忍袋の緒が切れた。今月に入ってから、米国務省は中国の防空識別圏拡大に関し「緊張を高める挑発的で一方的な行為とみなす」と改めて警告した。ケリー国務長官も訪米した岸田文雄外相との会談において、中国の防空識別圏設定に対し「受け入れられない」との方針を確認した一方、「地域の平和と安定のために日米韓連携は重要だ」とも強調した。
「地域の平和と安定のための日米韓連携」とは、北朝鮮と中国の両方を意識した発言であることは明らかだ。どうやらオバマ政権はすでに、中国の存在を「地域の平和と安定」を脅かす要素だと認定しているようである。
かつて胡錦濤政権時代、中国はトウ小平遺訓の「韜光養晦(とうこうようかい)」戦略の下で「平和的台頭」を唱えて、柔軟かつ老獪(ろうかい)に実利中心の外交を進めていた。だが今の習近平政権になると、「平和的台頭」は過去の死語となってしまい、中国外交の持ち味の老獪さと柔軟さも影を潜めた。その代わりに、なりふり構わず、後先考えずの紅衛兵式強硬一辺倒の「戦闘外交」が目立つようになった。それは中国自身にとって幸か不幸かはさることながら、日本としては、このような外交路線の暴走に巻き込まれるようなことは勘弁してほしいものだ。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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