http://www.asyura2.com/12/china3/msg/750.html
Tweet |
ダライ・ラマ チベットは中国に留まり高度な自治獲得すべき
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140112-00000011-pseven-cn
SAPIO 2014年2月号
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は2013年11月、京都で本誌の単独インタビューに応じた。新疆ウイグル自治区やチベット自治区における中国当局の弾圧を非難し、中国共産党による一党独裁体制は「富の分配」や「労働者階級による統治」を目指したマルクス主義からかけ離れており、民衆の支持を得ていないと語った。
インタビューの途中、「この問題は、きちんと説明しなければ伝わらない。私の言葉を適当につまんで報じてもらいたくない」と珍しく険しい表情で忠告するほど、話はデリケートな政治問題にまで及んだ。
* * *
我々チベット人が難民になって以来、自然に新疆ウイグル自治区から逃れたウイグル人難民とも交流し、1990年頃、インドのデリーで初めて両者の会議が開催された。その後、私は米国や欧州各国でウイグル人難民と会うようになり、ここ数年、中央チベット政府(チベット亡命政府)と亡命ウイグル人グループの代表は連絡を密にしている。
彼らのなかには暴力を肯定するグループと否定するグループがあり、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長は後者だ。私はこれまで彼女と数回会って話をした。彼女は、非暴力こそ最高の手段であること、中国からの分離独立ではなく自治を確立することに賛成し、我々の立場は完全に一致した。
ただし、私は新疆の状況は非常に厳しいと思っている。漢族(中国人)はイスラム教やイスラムの伝統、文化、考え方に偏見を持っており、ウイグル人を差別している。これは政治的、宗教的な問題で、自治区政府や民衆はウイグル人の立場を尊重しなければならないのに、現実は弾圧している。
そして、ウイグル人のグラスルーツ的(暴力的)行動は多くの問題を生んだ。これは中国人にとっても居心地の良い状態ではない。本来ならば、まず中国人がウイグル人に寛容な態度を示すべきだ。そこから互いに尊重しあう土壌が生まれる。チベット人も中国人を兄弟姉妹と思って尊敬しており、中国人を否定するような態度や行動をとらないように気をつけている。
私は非暴力的なアプローチが多くの中国人の共感と支持を得ていると感じている。特に中国の知識階層は全面的に我々と一体であると思う。
一方、新疆ウイグル自治区では数年来、多くの暴力的な事件が起き、状況はチベット自治区より悪化している。もし暴力が有効な手段ならば、新疆の状況は改善されているはずだが、そうなってはいない。新疆のウイグル人は極めて悲劇的な状況に直面している。私はウイグル人も暴力を用いるべきではないと考える。
これまで50年あまりの間で我々の中国への対応も変わってきた。1960年代までは現実的な行動をとってきた。チベット民族の基本的人権の尊重などを謳った1959年と1961年、1965年の「チベット問題に関する国連総会決議」がそれだ。
私はインドのネルー首相に、インド政府がチベット人のために国連総会決議を提出する支援をしてほしいと繰り返し頼んだ。彼はそれを拒むと同時に、私に「中国政府と話し合った方がよい」とアドバイスしてくれた。
1970年代初め、私は中国政府との対話を真剣に考え、1974年に我々の代表が中国側の指導者と接触した。その際、私自身、遅かれ早かれ中国政府の代表と交渉することになると思い、話し合う内容を考えた。「チベット独立」はあまりにも刺激的で非現実的であり、適当ではないと思った。中国政府と対等な立場で話し合うために、まず我々自身が議会で自由に発言するシステムを構築することにした。
その後、中国は経済的に急速に発展し、アメリカや日本にとっても重要なパートナーとなって非常に繁栄した。チベットは文化的にも精神的にも高度な文明を有しているが、物質的には貧しい。我々は、チベット人が物質的な満足を得るためには、中国に留まって自治を確立したほうが賢明だとの結論に至った。
もちろんチベット人には独立を熱望する者もいる。そのような人に私は「現実的になり、問題を全体で見なければならない。感情的には政治的な独立を勝ち取ることは重要だろうが、感情は時に現実を見えなくする」と説いた。
例えば、アフリカ大陸には独立していても貧しくて小さな国が多い。また欧州では、小さな国々がいくつかの例外を除いて欧州連合を形成し、独立のシンボルである自国通貨さえ捨てて「ユーロ」の下に統合された。欧州の大国であるドイツやフランス、イタリアも例外ではない。そこには域内全体の経済的利益は政治的な独立より重要だという価値判断がある。
欧州の歴史は戦争の繰り返しだった。最近会ったフランスの著名な学者は「1970年代でも多くのフランス人はドイツ人を敵だとみなしていた。ドイツ人もフランス人を敵だと思っていたと思う」と率直に語っていた。ところが、いまや状況は完全に変わった。
同じことがチベットと中国に当てはまるなら、我々は中国に留まったほうが良い。そのために非暴力を貫き、中道路線で、高度な自治を獲得すべきなのだ。独立しなくても、我々がチベット民族の旗幟を鮮明に掲げることは、かつて毛沢東主席が保障してくれた。現在の中国共産党指導部には、我々を中国とチベットの分離を図る分裂主義者だと言う者もいるが、全く見当外れの見方だ。
●取材・構成/相馬勝(ジャーナリスト)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。