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経済改革をめぐり、中国の習近平国家主席(左)と李克強首相の間に大きな亀裂が生じている(ロイター)
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20131114/frn1311141810006-n1.htm
2013.11.14
中国で、習近平国家主席と李克強首相の対立が鮮明になってきた。中国共産党の第18期中央委員会第3回総会(3中総会)は、習・李体制の進路を確定する重要会議だったが、閉幕後に発表されたコミュニケには何の新味もなかったのだ。李氏は国有企業改革を進めようとしたが、習氏が厚い壁となって立ちはだかったようだ。腐敗対策などでも温度差は歴然。専門家は政権内クーデターの可能性も指摘する。
「今回の3中総会で分かったことは『改革はできない』ということだ」
外交評論家の石平氏は、中国の絶望的な現状をこう語った。
3中総会で最大の焦点となったのが「国有企業改革」だった。李氏は、国家主導型のいびつな経済から、民間主導の経済発展へと転換を目指す「リコノミクス」を推進している。石油や電力、銀行など既得権益を握る国有企業に切り込むことは至上命題だった。
ところが、12日の閉幕後に発表されたコミュニケでは、「改革」という言葉が45回も踊ったのとは裏腹に、肝心の中身は「公有制を主体とし、非公有制(民営)も重視する」などとあいまいな表現に終始し、国有企業の特権は温存された。
石平氏は「改革はかけ声倒れだった」といい、「一番の壁は、既得権をがっちり握る守旧派の江沢民(元国家主席)派だ」と喝破した。
習氏が権力基盤を置くのは、中国共産党元高級幹部の子弟で構成される「太子党」と、江沢民派。国有企業にメスを入れれば、既得権集団の反発を受けて習氏の足元がグラつきかねない。事実、習氏は「公有経済、特に国有経済発展の活力を増強することを通じて非公有経済の発展を導く」と発言している。国有企業改革を目指す李氏とは、明らかに方向性を異にする。
これとは逆に、習氏が熱心に推し進めるのが反腐敗闘争だ。
習氏は昨年11月に共産党総書記に就任以降、「腐敗を根絶しなければ国が滅ぶ」として党幹部らの汚職・腐敗の一掃を掲げ、見せしめ的に一部の腐敗官僚の摘発を続け、倹約令まで発令している。
中国事情に詳しい作家の宮崎正弘氏は「いまの反腐敗闘争は、結果的にリコノミクスに打撃を与える」と指摘する。
習氏主導の「倹約ムード」のあおりを受け、宴席などで好まれる「白酒(パイチュウ)」や、中秋節の伝統的な贈答品である「月餅」の売り上げは軒並みダウン。北京市商務委員会の統計によると、今年1〜5月の飲食業界の売上高は前年同期比5・6%も減少した。
経済政策を担当する李氏にとって、国内需要の冷え込みは致命傷になりかねない。腐敗の温床は、国有企業などの利権構造。ここに手をつけずに、表面的な倹約を打ち上げて景気に悪影響を与える習氏の政策は、李氏を中心とした共産主義青年団(共青団)出身グループにとって“ありがた迷惑”というわけだ。
前出の石平氏は、今後あり得る「きな臭いシナリオ」について、次のように分析する。
「李氏ら改革派が主導権奪還を図るチャンスは、江氏が死ぬ瞬間だ。そのときに、(共青団出身の)胡錦濤前国家主席が長老として影響力を確保する。それができなければ、残された道は革命しかない」
折しも中国では、収賄罪などに問われ、無期懲役が確定した薄煕来元重慶市党委書記の支持者らが今月6日、新たな政党「至憲党」を発足させた。
保守層(左派)や貧困層の間で、薄氏に対する根強い支持があり、厳罰で幕引きを図った習指導部への反発が背景にあるとされる。習氏はこうした不満をそらすためにも、毛沢東時代への原点回帰を唱えている。
宮崎氏は「体質的には至憲党は、共青団に近い。『至憲党には共産党独裁体制の終結を求めた憲章(08憲章)に関わった知識人も潜り込んでいる』との情報もある。今後、習氏と李氏のどちらが至憲党を自陣営に引き込むかという綱引きが起こる」と予測する。
中国共産党中枢での権力闘争の長期化も予想されるなか、安倍政権としては、腰をじっくり据えて対中戦略を練る必要がありそうだ。
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