07. 2013年11月12日 00:45:37
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中国で連続テロ事件が発生、 抜本的解決法は政治改革しかない 2013年11月12日(Tue) 柯 隆 中国は多民族国家である。漢民族と55の少数民族が共存する。ただし、人口比では漢民族が92%を占め、55の少数民族は合わせて8%程度である。 少数民族が最も多く生活しているのは雲南省や広西チワン族自治区を中心とする南西部である。特に規模が大きな少数民族はチベット族、モンゴル族、ウイグル族、朝鮮族、チワン族などである。最後の王朝を樹立した満州族は長い年月を経てほとんど漢民族に同化された。 中国では、少数民族の自治が憲法によって担保され、行政区域として少数民族自治区や少数民族自治州などが設けられている。しかし、中国の少数民族政策に批判的な海外の評論家は、中国政府が少数民族を弾圧していると指摘している。 実際の行政管理において、少数民族自治権が十分に尊重されていない状況があることは確かだ。しかし一方で、少数民族に対して政府が様々な優遇政策を実施していることも事実である。 具体的に言うと、大学受験の場合、例えば同じ北京大学でも、少数民族であれば漢民族よりも低い点数で入学できることになっている。そして、漢民族に対しては一人っ子政策が厳格に実施されているが、少数民族であれば2人まで出産が認められている。さらに、レストランなどの看板は漢字よりも少数民族の文字が優先的に表示される。中国の通貨人民元紙幣に主要少数民族の文字が必ず併記されている。 だが、こうした少数民族を優遇する政策は、少数民族の自治に取って代わるものではない。少数民族は憲法で担保されている自治権が十分に行使されているとは言えない。 文化の尊重に欠ける少数民族政策 北京の天安門広場は中国の象徴である。そこにウイグル族の人が運転する車が突っ込み炎上した。中国政府の発表によれば、これは事故ではなくテロ事件だという。この事件で車内の3人のほか、観光客2人が死亡し、40人も負傷した。いかなる原因であれ、罪のない観光客や一般市民を巻き添えにするテロ事件は許されるべきではない。 この事件の詳細について中国国内メディアはいっさい報道していない。中国外務省のスポークスマンは、テロ事件の容疑者を非難するとともに、新疆ウイグル自治区の平静を強調するのみである。これでは事件は収束しないだろう。 中国政府によれば、この事件の背景には、新疆ウイグル自治区の独立を目指す「東トルキスタン・イスラム運動」があるという。その証拠は示されていないが、東トルキスタン・イスラム運動がテロ発生の土壌となり得ることは確かだ。中国にとって最も避けなければならないのは、漢民族とウイグル族が対立することである。 政府が力尽くでウイグル族を抑え込むのは、逆効果にしかならない。強権を振りかざしても融和は生まない。生まれるのは恐怖心だけである。その恐怖心こそがテロの温床となる。 異なる民族が共生するためには、互いの文化を尊重することが欠かせない。いまの中国の少数民族政策にはその点が欠けている。 融和と対立を繰り返してきた中国とウイグル そもそもウイグルはいつから中国の統治下に入ったのだろうか。 古代歴代王朝にとってウイグルは西域であり、シルクロードの通り道である。ウイグルと王朝が良好な関係にあった時代は別として、歴代王朝は「胡人」と呼ばれる西域の騎馬民族の侵入を防ぐために、万里の長城を建設した。甘粛省嘉峪関を最西端とする万里の長城の建設は、歴代王朝とウイグルをはじめとする西域少数民族の関係を少なからず物語っていると言えよう。 現存する史料によれば、ウイグル地区が最初に中国の統治下に入ったのは漢の時代だったと言われている。 その後、独立を宣言したり、中国の統治下に入ったりすることが繰り返されていた。歴史的に見れば、中国が繁栄し国力が強い時期はウイグル地区がその統治下に入ることが多い。逆に、中国の国力が弱くなれば、ウイグル地区が独立を図る。すなわち、ときには融和し、ときには対立する歴史だった。 1949年に毛沢東が率いる中国共産党が中華人民共和国を建国した。その後、55年に新疆ウイグル族自治区が設置された。 中華人民共和国建国後、ウイグル族自治区で石油などの天然資源が採掘された。地理的な特性に加え、豊富な資源が埋蔵されていることからも重要性がいっそう増している。 一方、東部沿海部に比べ、ウイグル族自治区の経済発展が遅れているのは事実である。また、同じウイグル族自治区のなかでも貧富の差が拡大している。こうした所得格差の拡大によって低所得層の不満が募っている。今回の事件について海外メディアの一部の報道では、ウイグル族自治区における貧富の差の拡大が背景にあると指摘されている。 貧富の差の拡大はウイグル族自治区に限る話ではない。中国全土で貧富の差が急速に拡大しているのである。 中国共産党の執政能力の低さ 天安門の事件の1週間後に、山西省共産党委員会の前で連続爆発事件が発生し、9人の死傷者が出た。なぜこうした事件が多発するようになったのだろうか。 その背景には、共産党一党支配の政治がもたらした貧富の差の拡大に加えて、共産党幹部の腐敗への不満がある。 共産党の指導部は国民に「和諧社会」(調和の取れた社会)づくりや中国の夢の実現などを約束するが、共産党幹部の実際の行いは明らかにそれに反している。習近平国家主席は「憲法の生命力はその実施にあり」と指摘するが、様々な現場で憲法に違反する共産党幹部の言動が多発している。 端的に言ってしまえば、中国で起きている様々な事件の根本的な原因は、中国共産党の執政能力の低さにあると思われる。 中国人歴史学者、呉思氏は中国が直面する危機を5分類している。つまり、(1)全国規模な動乱、(2)省レベルの混乱、(3)市レベルのデモ・抗議活動、(4)県・郷・鎮レベルの騒乱、(5)村レベルの抗議活動である。 中国社会の現状を見ると、(4)と(5)の頻発に加え、最近(3)も散見されるようになった。このままでは、(3)(4)(5)の危機は(2)に発展する恐れがある。(1)の危機についてはまだその兆しが観察されていないと言われている。 こうした様々な危機を回避するためには、抜本的な政治改革が不可欠である。 しかし、現実的に考えれば、政治改革は現在の共産党幹部、すなわち、勝ち組の利権を剥奪することを意味する。共産党が自ら改革を断行するとは考えにくい。 温家宝前首相の言動はその典型である。在任中繰り返して政治改革の必要性と重要性を唱えたが、行動が伴わなかった。 同氏は政治改革の必要性と重要性を唱えることで市民の支持を博し、一方、改革を実行しないことで共産党幹部の支持を得た。ある意味、温家宝前首相は歴代首相のなかで最も人気の高い首相の1人だったと言えるのかもしれない。 では、どのような状況になれば、政治改革が進むのだろうか。 政治改革の最大の原動力は危機感であろう。深刻な危機に直面すれば、指導者は政治改革の実行を本気で考えるようになる。 現在の中国社会は危機から来る改革の圧力が日ましに強くなっている。これまでの10年間(胡錦濤政権の10年間)は政治改革が先送りされたが、これからの10年も政治改革を先送りすることはもはやできないだろう。
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