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上海自由貿易区:次の深センか?
2013年10月18日(Fri) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年10月5日号)
新しい経済特区は広範な市場改革の起爆剤となる可能性がある。ただし、官僚が手綱を緩めれば、の話だが。
上海に自由貿易試験区、FBやツイッターも利用可能に
「中国(上海)自由貿易試験区」の文字に赤い幕をかける作業員ら〔AFPBB News〕
ビジネスマンたちは何週間も、上海自由貿易区(SFTZ)について猛烈に憶測を巡らしていた。この政策は、11月の共産党大会の後に示される予定の大がかりな改革政策に弾みをつけることを意図している。
その名前に反し、SFTZはむしろ中国の商都・上海の郊外の企業誘致地域のようなものだ。李克強首相が個人的に試験区設置を支持してきた。
9月29日、ついにSFTZが正式に開設された。指導者たちはこれを、30年以上前の深セン経済特区の創設と同じような重大な局面だと呼んだ。香港の近くに創設された深セン経済特区は、改革と驚異的な成長をもたらした。SFTZ開設の記者会見で、当局者たちは「イノベーション」という言葉を43回も使った。
威勢のいい言葉にもかかわらず、SFTZの開設は期待外れだった。政府高官はほとんど誰も姿を見せなかった。また、特区のスキームには、期待されていたいくつかの改革が含まれていない。検閲を通さないインターネットへのアクセス、法人税の引き下げ、外国のオークション会社に対する古美術品販売の認可などだ。
もっと悩ましいのは、詳細が全くと言っていいほど明らかにされていないことだ。北京にある欧州連合(EU)商工会議所の元会頭、ヨルグ・ヴトケ氏は「中身を見せろ!」と叫ぶ。同氏は特区に熱心だったが、今では当局者が臆病になったと心配している。
当局が外国人が特区内で投資できない分野の「ネガティブリスト(禁止項目一覧)」を発表した時にも、そうした懸念は和らぐどころではなかった。理論上は短いリスト――銃や違法薬物、ポルノを禁止する程度――が投資家に優しい策となる。ところが実際は、SFTZのネガティブリストには、1000以上の禁止区分が設けられている。
地元の政府関係者は、今後リストは削減されると主張しているが、ある外国人弁護士は中国の役人は単に「管理中毒だ」と不平をこぼしている。このような不確実性を考えると、鳴り物入りのSFTZが本当に次の深センとなり得るのかと問うて当然だろう。ところが、多くの専門家から聞かれる驚くべき答えは、用心深い「なり得る」だ。
辛抱せよ
「初期段階での警告に惑わされてはならない。我々は今も極めて野心的だ」。SFTZについて政府に助言を与えた上海財経大学の陳波氏はこう話す。陳氏は、国内外の要因が中国の経済モデルに変革を迫っていると考えている。
国内では、人件費の高騰と労働力の高齢化が中国を「中所得国の罠」に追い込もうとしている。国外では、競合国が環太平洋経済連携協定(TPP)など、各国経済をこじ開ける地域自由貿易協定になだれ込んでいる。「中国は競争力のゲームで腕を上げなければならないというプレッシャーを感じている」と、在上海米国商工会議所のケネス・ジャレット会頭は語る。
後れを取らないようにするためには中国は自由化しなければならないと、多くのアナリストが主張している。製造業は既に競争力があるため、これは非効率で甘やかされたサービス業――特に金融――の市場開放を意味している。ここでSFTZの出番となる。サービス業は2003年には上海の国内総生産(GDP)のちょうど50%を占めていたが、今年は62%まで上昇したのだ(香港ではサービス業が9割を占める)。
用心深いタイプは、厳重に外部から遮断されている特区内で、経験豊富な地元官僚に一層踏み込んだサービス業の改革の実験をさせることで、様々なリスク――例えば、人民元の兌換性から生じるリスクなど――を抑えられると期待している。
投資銀行RBSのルイ・カウジ氏は、こと中国のホットマネーの抑制にかけては、この実験は「特区と特区以外の中国の間に極めて厳重な境界線がある場合のみ」うまくいくと話す。この視点からすると、特区内でうまく機能した改革だけが、慎重に、時間をかけて中国各地で展開されることになる。
漏れを期待する向きは、それはナンセンスだと言い、SFTZの肝心な点は、10年も停滞してきた広範な自由化に拍車をかけることだと主張する。
投資銀行バークレイズの顔湄之氏は、もしSFTZ内での自由化が中国の他地域に影響を与えることが認められないとしたら、「SFTZは、ほとんど何も起きていない(香港に近い)前海特区のようになるだけだ」と述べている。そうした批判派は、改革がSFTZから他の経済地区、さらに中国全土に素早く広がるところを見たがっている。
しかし多くの観測筋は、SFTZに開花する時間を与える用意があるようだ。恐らくは、SFTZが不可逆的に全国的な経済自由化計画と関係していると考えているからだろう。結局のところ、SFTZとして広く知られてはいるものの、特区の法律上の名称は「中国(上海)自由貿易試験区」なのだ。
一部には、SFTZに対する李首相の支持を、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟を推し進めた前任者たちの取り組みになぞらえる向きもある。WTO加盟は、経済改革に対する政治的な支持に火をつけた近代化の象徴だ。
そして詳細が不足しているにもかかわらず、SFTZのガイドラインは、いくつかの重要セクターを自由化すると約束しており、当局は今後3年間で開放される6つの事業分野を公表している(表参照)。
方向性は正しい
35社前後の企業がSFTZへの進出を許可された。これは、自信を示す早期の証しとされている(ただし、規則が公表されていなかったことから、懐疑派はこれらの企業はどうやって申請したのかと疑問を投げかけている)。
進出したのは大半が中国企業だが、リストには米国の銀行大手シティバンクも含まれている。同社の中国代表のアンドリュー・アウ氏は、SFTZが銀行をどのように規制するのかという点について「情報が全くない」ことを受け入れつつ、「方向性として中国が向かうべき場所」であるという理由で進出を決めたと述べている。深センの改革も、特区開設当初は詳細の多くが不明だったと同氏は指摘する。
シティバンクは、貿易金融と現金管理のサービスを顧客に提供するため、特区に出張所を開設する計画だ(会社の電話が鳴り止まない状態だとアウ氏は言う)。しかしアウ氏は、人民元の兌換と金利自由化という約束された2大改革が実施される時に、さらに大きな機会が訪れると考えている。
中国を拠点としているビジネスアナリストのサイモン・ピアソン氏は、もう1つの機会は輸入手続きの簡略化と迅速化にあると見ている。現在は、貨物が税関を通過するまでに最大1カ月かかるため、小売業者は大量の「安全在庫」を抱えている。再輸出は高くつくことから、こうした在庫は眠ったままになる。
SFTZが煩雑な手続きを削減すれば、企業は在庫削減でお金を節約できるだけではなく、上海はアジアの小売市場における地域のフルフィルメントハブ(商品管理・ピッキング・配送などの拠点)として香港やシンガポールと競争できるようになるとピアソン氏は考えている。
規制の透明性と予測可能性
一方、ジャレット氏は、SFTZがもたらすかもしれない最大の進歩は「規制の予測可能性」だと主張する。中国では規制の実行が時間と地理によって異なり、それがかなりの不確実要素になっているという。他の観測筋と同様、ジャレット氏は、現在SFTZで創設されつつある運営委員会が様々な規制当局の行動を調整する助けになり、その結果、新しい試験区が透明かつ予測可能な形で運営されるようになることを期待している。
そうすることは、互いに言い争う官僚や規制当局者が管理中毒を絶つことを意味する。中国の発展の次の段階は、ここにかかっているのかもしれない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38961
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