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新成功者の家にある「三種の神器」とは
中国の新富裕層のお宅拝見リポート
2013年10月10日(木) 坂田 亮太郎
最近、中国の都市部で台頭してきた「新成功者」。その特徴は(1)親のコネではなく実力で豊かさを手に入れ、(2)世帯月収が1.5万元(約22.5万円)以上あり、(3)自らの価値観を基に消費にこだわり、(4)生活を楽しむことに貪欲である。そんなライフスタイルを謳歌する新しい富裕層は実際、どんな生活をしているのか。博報堂の研究員が新成功者の自宅に実際にお邪魔したお宅拝見リポートをお届けする。
(聞き手は上海支局、坂田亮太郎)
1回目の記事から読む
実際に新成功者の自宅にお邪魔したそうですが、どのような生活を送っているのですか。
松浦良高氏(以下・松浦):家庭訪問に先立ち、我々はデプス調査を行いました。これはご自宅にお伺いする前に1人当たり1時間以上お話を聞いて、我々の調査に合っている人かどうかをチェックします。職業や収入だけでなく、所有している商品や海外旅行の経験などについて詳しくお伺いしました。その中から、最終的には、1級都市の上海から2人、2級都市の南京(江蘇省)から2人、そして3級都市の無錫(江蘇省)からも2人、計6人について家庭訪問を行いました。ここからは実際に調査を行った柴田祥子(博報堂創意市場企画本部副総監)と一緒にご説明します。
柴田祥子(以下・柴田):よろしくお願いします。まず、調査対象とした新成功者のプロフィールからご説明します。世帯月収は上海で3万9167元(約62万6672円、1元=16円で計算)、南京で3万2200元(約51万5200万円)、無錫で1万9500元(約31万2000円)でした。
博報堂創意で市場企画本部副総監を務める柴田祥子氏
柴田:博報堂では、新成功者の世帯月収を1.5万元(24万円)以上と定義していますが、今回は新成功者の象徴となるような人の生活が見たかったので若干高めに設定しました。お仕事は外資系企業や私営企業に勤めている方が多く、無錫では国営企業で働いている人が3割いました。役職はマネージャーやディレクターの肩書きを持つ人がほとんどです。
学歴は全員が大学もしくは大学院を卒業した方々で、そのうちの2割が留学の経験もありました。公認会計士などビジネスに関する資格を持っている人も8割いたので、新成功者は向学心が高いことも分かりました。
消費行動についてお伺いしたところ、調査した全員が海外旅行の経験者でした。そのうち年1回以上旅行に行く人の割合は53%で、上海の対象者が100%だったのに少し驚かされました。
コツコツと着実に努力する新成功者
松浦:新成功者は経済的に余裕があるので、海外にも頻繁に旅行に行けるということですね。渡航したことがある国のリストを見ても本当にバラエティに富んでいます。
生涯で最も高い買い物となる自宅についても、新成功者は「自分で購入した」と答えた人が100%でした。お金持ちの2代目「富二代(フーアルダイ)」であれば、何の疑いもなくパパやママに買ってもらった家に住むでしょう。しかし、新成功者はローンを組んで自分で家を買うという決断をします。むしろ親には仕送りを送るという人さえいました。
柴田:次に実際にご自宅にお邪魔した方について、より詳しく見てみましょう。上海にお住まいの李さん(仮名)で、現在36歳です。
イケメンですね。
柴田:写真ではかなり格好良く見えますが、実際には上海では普通の、どこにでもいそうな男性でしたよ(笑)。李さんは貿易会社にお勤めで、シニアマネージャーという肩書きです。
李さんは大学を卒業した後に入った会社で、1年半南アフリカで勤務されていたそうです。その後、お母さんの具合が悪くなってしまったので、帰国するために現在の貿易会社に転職されました。通訳の資格を持つほど英語が達者で、新しい会社でもアジア向け部門を設立するなど活躍されています。
松浦:李さんは働くうえで「他人より少しうまくやる」ということを心掛けていると聞いて、とても印象に残りました。中国は学校でも会社でものすごく競争が激しいので、平均的な人が這い上がれることはまずありません。だからと言って突出した能力がある人は潰されかねない。だからこそあまり目立たず、それでも任された仕事を最後まで諦めずにキチンとやるというポリシーを持つようになったそうです。
コツコツと着実に努力をする李さんは2010年に、働きながらMBA(経営学修士)を取得されました。MBAを取ろうと思ったのは知識を身に付け、スキルアップをするためです。社内の昇進にも関係してくるようです。同時に、ビジネススクールでは人脈の重要性も学び、実際に新しい人脈も広げることができたそうです。今後は実際のビジネスでもMBAで培った人脈を生かしていきたいと考えているそうです。
クルマと腕時計は「こだわり消費」の象徴
李さんのご自宅はどうでしたか?
柴田:李さんは奥様と一緒に浦東サイドの新興住宅エリアにお住まいです。共働きで世帯月収は4万元(約64万円)ですから、サラリーマン世帯としては上海でもかなり裕福な部類に入ります。今はお子さんがいませんが、そろそろ欲しいとおっしゃっていました。
部屋の中にはご夫婦で選んだ絵画が部屋に飾られていて、とても素敵でした。ブランド志向も強く、家電製品は日本かドイツの有名ブランドのものばかりでした。キッチンには奥さんの手作りお菓子用具や、クッキングタイマー、フードプロセッサー、パン焼き器、輸入品の調味料、ワインなど、生活の質の高めるために細かいところまでこだわりをお持ちであることが分かります。
奥様は海外ブランド品がお好きらしく、「グッチ」のサングラス、「モンブラン」のベルト、「バーバリー」のワイシャツ、「ルイ・ヴィトン」のバッグが家の中にありました。李さんご自身も「バーバリー」のファンでワイシャツやセーターなどを大切に使っていました。
また、家の中で唯一の偽物は「ルイ・ヴィトン」のカードケースでした。一般的に中国人は偽ブランド品を身に付けているケースが少なくありませんが、新成功者はバッグ、財布、時計など他人の眼に触れる商品については本物を使いたいというこだわりがあるようです。
松浦:私が注目したのは李さんが「Frederique Constant(フレデリック・コンスタント)」というかなり通好みの腕時計ブランドを愛用しているということです。「ロレックス」や「オメガ」のような世界的に有名なブランドではありませんが、知る人ぞ知るというスイスの高級腕時計ブランドです。他人の評価よりも自分のこだわりを大事にするというのが新成功者の消費特性ですが、まさに腕時計の選び方が象徴的だと思います。
クルマの選び方にも特別なこだわりを感じます。李さんはトヨタの「カムリ」を長く乗られています。李さんの家は夫婦共働きで、ボーナスなども含めると世帯年収は60万元(約960万円)を超えると予想されます。中国人は世帯年収と同程度のクルマを買うと言われていますので、李さんであればドイツの高級車を買うのも無理ではありません。
しかし、新成功者は自分が気に入ったブランドを長く愛用するという特徴があります。他人の目を気にすることがないので“背伸び”をした消費をする必要がないのです。だからこそ李さんはカムリを長い間、愛用されているのだと思います。
ちなみに、新成功者は所有している自動車は海外ブランドが87%でした。国産車では恥ずかしいという意識があるのだと思います。
「iPhone」は中国発売前に入手する
家電製品はどのような製品をお持ちでしたか?
柴田:家電製品も海外ブランド志向があるようです。洗濯機は「パナソニック」、テレビはドイツの「フィリップス」、そして冷蔵庫はドイツの「ボッシュ」の製品をお使いでした。トイレには、日系ブランドの温水洗浄便座が設置されていましたし、家の中に中国ローカルブランドはほとんどありませんでした。これらの商品はすべて、周りの友人からの口コミやネットで調べて、自分で判断して購入したとのことです。
李さんのご自宅の中で目立っていたのはデジタル製品が充実していることです。ゲームがお好きなのでテレビには複数の据え置き型のゲーム機が接続してありました。
もちろん米「アップル」の製品も、当然のように使っていました。お気に入りのノートパソコンは「MacBook Air」、スマートフォンは「iPhone3S」、そしてタブレット端末の「iPad2」もお持ちでした。iPhoneとiPadは米国で発売された直後に、米国にいる友人に頼んで買ってもらったそうです。中国では外国企業の新商品が先進国より遅れて発売されるケースが多いのですが、李さんは中国にないものを誰よりも早く手に入れることに価値を感じているようです。
松浦:インターネットが普及した今、世界中で情報格差はありません。だから中国の消費者も先進国の消費者と同様に、商品を買う前にネットでよく調べます。李さんの場合、自宅内で高速通信環境を構築するために、わざわざ日本から取り寄せた無線LAN機器をお使いでした。これもネットで調べて、より通信速度の早い性能の良い製品を選んだ結果です。
柴田:次にお目にかけるのは台所で撮った写真です。ここでも生活の品質をあげるためのこだわりを感じました。食品を保存する時に使うラップやキッチンペーパーは日本メーカーの商品が使われていました。これらは中国のローカルメーカーの安い商品も店頭で売られていますが、李さんのご家庭では多少高くても使い勝手の良い日本製品をお使いでした。
健康を維持するためにビタミン剤などのサプリメントを使われているほか、フィットネス機器もご自宅に用意されていました。
柴田:健康に関して言えば、ほとんどの新成功者の家で「燕の巣」が置いてあったのには驚きました。
中華料理の高級食材として知られる、あの燕の巣ですか?
柴田:そうなんです。今回紹介した李さんのご自宅にはありませんでしたが、他の家、特に妊婦さんや小さなお子さんがいる家にはほぼ例外なく燕の巣が冷蔵庫の中に保存されていました。
気になったので調べてみたのですが、中国ではお嫁さんが妊娠するとお姑さんがお祝いも兼ねて燕の巣を使った料理を食べさせる風習があるのだそうです。燕の巣にはシアル酸という成分が多く含まれており、これは赤ちゃんの免疫機能を高めたり、乳幼児の脳の発達に大きな役割を果たしていると言われています。
燕の巣は高級食材なので、このようなことができるのは裕福な家庭に限った話です。新成功者の家も金銭的に余裕があるので、妊婦さんに燕の巣を食べさせているのでしょう。
最後のご紹介するのは趣味に関する写真です。ご自宅には飛行機やクルマのプラモデルがたくさん置いてありました。李さんは休日などを利用して、よく模型を組み立てるそうです。
松浦:DIY(DO It Yourself)に価値を見出すのは、成熟した消費者の証拠と言って良いと思います。お仕着せの既製品ではなく、自らのセンスや価値観で生活をより豊かにしたいという新成功者の考え方が垣間見えます。
今回、南京市に住む新成功者の家にもお邪魔しましたが、その家は旦那さんが大のクルマ好きで、車両価格とほぼ同額の費用をかけて愛車を改造されていました。中国語で「生活を楽しむ」ことを「享受生活」と言うのですが、これは新成功者の価値観を最もよく表す言葉と考えています。
その攻略法を次回に話して頂きましょう。
(次回に続く)
このコラムについて
坂田亮太郎のチャイナ★スナップ
2009年に北京に赴任したばかりの中国“新米”記者が中国を駆けずり回り、見て、聞いて、感じたことをスナップ写真と共にコラムとして掲載していきます。1本の記事は「点」に過ぎないかもしれませんが、回数を重ねていくことで中国の今の「実像」を日本の読者に伝えられたら幸いです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20131008/254296/?ST=print
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