http://www.asyura2.com/12/china3/msg/582.html
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これまでの歴史を顧みればわかるが、10年といったスパン内で、中国共産党が分裂することはないだろう。しかし、対立を経て指導部が更迭されることはあり得る。毛沢東やトウ小平のようなカリスマ的指導者はいないから、習国家主席・総書記も更迭の標的になり得る。
普通選挙という民主主義的手続きがないまま権力を掌握している中国共産党にとって、経済成長を通じた国民生活の改善が政権維持の担保である。
中国共産党幹部もそれを熟知しているから、経済成長がおかしくなる経済運営が行われれば誰も黙っていない。
将来、中国共産党が政権を維持できるかたちで普通選挙を導入するにしても、経済運営で高い実績を積み重ねていることが共産党勝利の絶対条件となる。
※ 参照投稿
「上半期の中国経済10大流行語 リコノミクスがランクイン:李首相絡みでは「李克強指数」も:不動産及び金融関連の言葉が主力」
http://www.asyura2.com/12/china3/msg/567.html
「李総理の新たな経済理念 上半期の経済成長率に反映:理念だけで具体的な高度化が見えない成長鈍化では李首相の前途は暗い」
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/316.html
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『ニューズウィーク日本版』2013年7月30日号
P.36・37
「中国経済減速で共産党が分裂?」
指導部:高成長を終えて構造転換が急がれるなか共産党内のエリート不満分子がさまざまな形で習政権を批判する例が目立ってきた
中国共産党は少なくとも建前上は「鉄の鯨束」を誇る組織。ただ経済成長の減速につれて、導部内から不協和音が聞こえてくるようになった。政治経済の多くの課題について意見の対立が生まれている兆候がいくつもある。
最近、最も目立ったのは、許容できる経済成長の下限値がどこかについて、中国指導部から矛盾するメッセージが発せられたことだ。
混乱のきっかけは今月中旬、ワシントンで開かれた米中戦略・経済対話に出席した楼継偉(ロウ・チーウェイ)財務相が報道陣に射し、中国経済は成長が7%か6.5%に減速しても大丈夫だと語ったこと。これは中国政府が3月に発表した7.5%の成長目標と大きく食い違う。
中国国営の新華社通信は当初、楼が言った6.5%という数字は省略しながらも、7%発言のほうは正確に伝えた。「中国の今年のGDP成長率は、7%の見通しだ。この目標が達成されることは疑いないが、7%目標を下限と考えるべきでもない」
だが翌日になると記事は訂正され、成長率7%の数字は削除されていた。そして「中国が成長率7.5%の目標を達成するのは間違いない」と書き直されていた。
言うまでもなく、こうした数字の食い違いは多くの臆測を呼び、投資家を混乱させた。彼らの関心は、中国政府がいったいどの時点で減速が行き過ぎたと判断し、景気刺激策で介入してくるのか、ということだ。
投資家の焦りも無理はない。中国の公式統計でもその減速ぶりはただごとではないからだ。先週初めの発表では、第2四半期のGDP伸び率は前年同期比で7.5%だった。
これは過去23年問で最低の成長率であり、第1四半期の成長率を0.2ポイント下回った。過去10四半期分の成長率を振り返っても、1四半期を除き前期を下回っている。
だが成長率の下限は、中国指導部で意見が謝れているものの1つにすぎない。たまたま目立つ形で表面化しただけだ。
中国政府内の「抵抗勢力」
香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは先週、李克強(リー・コーチアン)首相が推進する上海自由貿易試験区が政府内で強硬な抵抗に遭っていると報じている。
李は3月に上海を訪問した後、試験区を提唱。人民元の取引自由化や税制優遇措置などのインセンティプで、世界水準の投資・貿易環境をつくるのが狙い。資本取引や金融・サービス業で経済を活性化する実験場だ。
ある政府関係者はサウスチャイナ・モーニングポストに対し「上海自由貿易試験区は李の子供のようなものだ」と語る。別の政府問係者は、もしこの実験が失敗すれば、李のメンツは丸つぶれになると言う。
しかし「政府高官レベルの会合を直接見聞きする立場」にある3人の情報源によると、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)と中国証券監督管理委員会(証監会)は、李のいくつかの提案に公然と反対した。
例えば証監会は、外国の商品取引所が先物引き渡し倉庫を中国に造ることに反対した。銀監会は、試験区内の特定の銀行にオフショア取引の許可を与えることに反対した。規制当局としては、何であれ自分のコントロールが利かなくなるものには反対だ。
自らの提案に対する反論は、李を怒らせた。意見聴取の場で挙がいら立ちのあまりこぶしでテーブルをたたき、そんな反対意見は受け入れられないと言ったほどだという。
党出版物が習近平を批判
習近平(シー・チンピン)国家主席の「群衆運動」にも反発が強い。毛沢東が中国共産党党員に対し、定期的に大衆と交流するよう奨励したプロパガンダの再現だ。習はこの運動で腐敗を標的にし、共産党から「形式主義や官僚主義、享楽的で贅沢な暮らし」を一掃するつもりだ。 この方針は先月に公にされたばかりだが、既に批判の的になつている。特筆すべきは、共産党幹部を養成する中央党枚が発行する学習時報が先週、次のように指摘したことだ。「群衆運動は、民主主義の機能を実現する手段として効果的ではない」。さらに運動は時代遅れだともほのめかしたが、これは多くの中国人に共通する気持ちだ。
記事を書いたのは中央党校教授の李海青(リー・ハイチン)だ。しかしそれが共産党の刊行物に掲載されたのは、党上層部にこうした考えの支持者がいる証拠ではないかと一部の政治評論家は推測する。
中国専門の英文ニュースレター、シノシズムによれば、北京紙の新京報は、長期的に持続可能な唯一の政治体制として、民主主義を取り入れるよう進言している。記事の執筆者は長年にわたり民主主義を信奉してきた愈可平(ユイ・コービン)共産党中央編訳局副局長だ。習の群衆運動を直接批判したわけではないが、記事が出たタイミングが興味深い。
愈はこうも書いている。「民主主義が好きか嫌いかは問題ではない。民主主義への流れは止められない」
中国指導部内のこうした分裂は、もしかしたら些細なことかもしれないが、経済構造を転換させようとする彼らが直面する問題の難しさを象徴しているのは間違いない。
これまで輸出と投資に依存してきた経済構造を内需主導に転換させるのは理論上正しくても、そこには旧モデルからさんざん甘い汁を吸ってきた多くの権力者や組織がある。構造転換が行われれば、失うものが一番多いのも彼らだ。
もし景気減速が国内の暴動にでもつながれば、エリートの不満分子は親等部の責任をあげつらって改革をつぶしかねない。習と李を権力の座から引きずり降ろすこともできるだろう。
世界の歴史にいくらでも例があるように、政治エリート内の亀裂はほとんどの場合、政治的変革への序曲だ。そこに大規模なデモが加われば、しばしば革命的な変化につながる。
習と李にとっては、共産党内の支持派の結束と服従心を確かなものにすることが、当面の最優先課題になるだろう。
ザカリー・ケツク
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