中国を訪問した日本の鳩山元首相は、釣魚島と周辺の諸島（日本名＝尖閣諸島）が中国の領土だとする中国政府の主張に一定の理解を示す発言をした。これに日本の閣僚らは、「国賊という言葉がよぎった」などと過敏に反応した

▽日本メディアの関連報道を時系列で追うと興味深いことがわかる。第一報では、島の歴史的経緯について、「中国側から『日本が盗んだ』と思われても仕方がない」と述べた鳩山氏の発言が引用されていたが、菅官房長官が「国益を著しく損なう」と批判したあたりから過熱。前後の言葉が消えて「『尖閣盗んだ』発言」などと表現され、バッシングが始まった

▽独島と共通点がある。かつて日本の「明治政府」は、釣魚島が清国の領有下にあると認識。領有の意思を内外に示していなかった。しかし、日清戦争講和直前の1895年1月、島を沖縄に編入することを閣議決定した。戦後は沖縄と共に米軍の施政下に置かれ、1971年に日本に「返還」された。日本に奪われた領土が戦後、当事国不在のまま扱われたことが、問題をより混乱させている

▽日本にとっては「国益」を左右する問題なのかもしれない。しかし、自国の負の歴史を顧みず、政治家やメディアがあおるナショナリズムに流され、周辺国との関係を悪化させるなら、後世にまで悪影響を及ぼすほどの国益を失うだろう。バッシングの先に、軍国化、再軍備、領土拡張の野望が透けて見える。（天）

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