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チベット族 焼身自殺100人超す  東京新聞
http://www.asyura2.com/12/china3/msg/457.html
投稿者 ダイナモ 日時 2013 年 2 月 28 日 13:42:30: mY9T/8MdR98ug
 

 中国のチベット族の僧侶や住民らの焼身自殺が続き、未遂を含めると百人を超えたとされる。命を懸けて訴えるのは「チベットの自由」「ダライ・ラマの帰還」などで、中国政府による対チベット政策に強く抗議する。中国当局は抑え込みに躍起になっており、青海省のチベット族居住区では、表面上の平穏とは裏腹に厳しい監視の目が光っていた。 (青海省黄南チベット族自治州同仁県で、佐藤大、写真も)

 標高二千五百メートルを超える同仁県郊外の村。住民は羊やウシ科の動物ヤクを放牧し、つましく暮らす。この村のチベット寺院で昨年十一月、当時二十一歳の女性が焼身自殺した。

 「娘がどうしてこんなことに…。私たちにも分からない」。壁に背をもたれ、点滴を受けながら父親(50)は途方に暮れていた。

 遺族によると女性は家業の羊飼いを手伝い優しい性格だった。信仰心が厚く、寺院にもよく通っていた。自殺の予兆や遺書はなく、父親はショックで体調を崩している。

 米政府系のラジオ自由アジア(RFA)によると、焼身自殺を図ったチベット族は二〇〇九年二月以降、四川省や青海省で相次ぎ、百七人(うち八十九人が死亡)を数えるという。大半は十代から二十代前半と若く、信仰の自由やチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ十四世の帰還を求めて命を投げ出した。

 〇八年三月のチベット騒乱後、集団抗議は徹底的に抑え込まれ、個人の抗議の意思表示のため、焼身自殺が始まったとされる。

 インドのダラムサラにあるチベット亡命政府は、焼身自殺の理由を「中国政府による政治弾圧や同化策、社会的差別、環境破壊への憤り」とする。

 一方、中国政府は「国外の国家分裂主義組織による扇動だ」と主張。ダライ・ラマを指導者と仰ぐチベット独立派の画策とみて、真っ向から対立する。

 自殺した女性の家族は、貧困世帯に支給される生活保護が自殺で打ち切られた。自宅は当局に監視され、知人の助けも得られず孤立している。

 四十代の僧侶は「自ら命を絶つ行為は教義に反する」と訴えながらも、「寺院の中でお経を読む時間さえ政府に管理される。だからこそ自由を求め、命を懸けて抗議する人々がいる」と嘆息した。

<チベット独立運動> 1951年に中国人民解放軍がチベット自治区ラサに進駐。激しい抵抗運動が起き、ダライ・ラマ14世は59年にインドに亡命した。中国当局は2008年に起きた大規模騒乱を武力弾圧。チベット側は「高度な自治」を求めるが、中国側は「事実上の独立」として拒否。14世特使と政府高官との交渉は、10年1月を最後に途絶えている。亡命チベット族は約13万人。


http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2013022802000114.html
 

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コメント
 
01. 2013年3月01日 01:01:59 : dsZqplIOQg
漢民族による、少数民族の侵略。少数民族地域へ入植し、婚姻を通しての
漢民族への純化が狙いなのであろう。チベットのみならず、ウイグル、内モンゴルも
同じように 漢民族に侵略されてきた。

漢民族の膨張主義を押さえ込むことが重要。
チベット本当の自治(独立)を支持する


02. 2013年3月01日 12:55:27 : 6fTb2pBNlc
そういうやり方はよろしくない。支那の思う壺だ。シナ人はチベット僧侶に早く死んでほしいと思っているのだ。徹底的にハンガーストライキのような情動に作用する方策に変えるべきだ。焼身自殺は何も変えない。仏教は自殺は地獄へ落ちると教えているはずだ。

03. ダイナモ 2013年3月01日 15:45:01 : mY9T/8MdR98ug : 5RwHBaG4ss
>>02

仏教では自殺を禁じてはいません。詳しくは以下のサイトをご覧下さい。

http://www.geocities.co.jp/Technopolis/3138/suicide_buddhism.html


04. 2013年3月03日 11:42:07 : iXz5A2JREA
虫日=東京新聞は,こういう記事を載せても媚中韓.

05. 2013年3月04日 03:33:03 : SNljMa86tM

独裁的な途上国では、反抗的な少数民族は浄化されるのがデフォルト


06. 2013年3月22日 11:24:34 : e9xeV93vFQ
2013年3月21日
[橘玲の世界投資見聞録]チベットの民族独立問題と経済的支配
 当事者でも専門家でもない私がチベット問題を軽々しく論じることはできない。そこでここでは、チベットの旅で感じたことを備忘録風に記しておきたい。
(1) 欧米人のチベットに対するロマン主義的な感情がもっともよく表われているのは、ブラッド・ピット主演の映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』だ。
 この作品は、アイガー北壁の初登頂に成功したオーストリアの登山家ハインリッヒ・ハラー(ナチス親衛隊員でもあった)の自伝をもとにしている(邦訳は『セブン・イヤーズ・イン・チベット―チベットの7年』〈角川ソフィア文庫〉)。
 ヒマラヤ遠征の途中で第二次世界大戦が勃発し、イギリス領インドで捕虜になったハラーは、親友のペーターとともに収容所を脱走し、険しい峠を越えてチベットに逃れる。賓客として宮殿に招かれた2人はそこで利発な少年と出会い、その人柄に魅了される。ハラーは少年に外国語と欧米の学問を教え、少年はハラーに精神世界の奥深さを伝える。ポタラ宮の主人であるこの少年こそがダライ・ラマだった……。
ポタラ宮からラサの街を眺める  (Photo:©Alt Invest Com)
 ハラーの数奇な体験が現在に至るまで多くの欧米人を魅了するのは、「近代社会から隔絶したどこか遠くに文明に毒されていない無垢で高貴なひとたちが暮らしている」という夢物語を現実のものにしたからだ。
チベットのひとたちは高原でヤクや羊を放牧して暮らしている  (Photo:©Alt Invest Com)
 科学が進歩し、生活がゆたかになり、なにもかもが便利になるにつれて“かつてあった純真なものが汚されていく”と感じるのは万国共通で、その幻影を自分たちとは異なる社会に投影して自己満足に耽ることを、パレスチナ生まれの文学者エドワード・サイードは「オリエンタリズム」と名づけて批判した。
アジアにおけるオリエンタリズムには武士道や浮世絵、切腹や芸者などがあるが、明治期の日本が近代化に成功するにつれてその魅力は色あせていく。
 それに対して、標高3000メートルを越える高地に壮麗な宮殿を建てて宗教生活を送っているチベットの民ほど、「オリエンタリズム」の夢の舞台として完璧なものはない。
観光客で賑わうポタラ宮 (Photo:©Alt Invest Com)
 こうしてチベットは、欧米の(主として)知識層にとって、“なにものにも替えがたい特別な場所”になった。この地に生きる聖なるひとびとが共産主義者の手によって権利を奪われているのなら、彼らの自治・独立を支援してともにたたかうのが自由主義者(リベラル)の義務なのだ。
 中国にはチベット以外にも少数民族の自治区はいくつもあるが、チベットがことさら注目され大きく報道されるのにはこうした背景がある。

(2) 私がチベットを訪れたのはラサ市での騒乱から1年半たった2008年9月だが、北京オリンピックが無事に終わっても厳戒態勢は続いていた。
 ラサ旧市街の中心はジョカン(大昭寺)で、7世紀中期に創建された広壮な仏教寺院だ。このジョカンを取り囲むのがバルコル(八廓街)と呼ばれる商店街で、伝統的なチベット建築が並んでいる。バルコルから奥へと延びる路地がチベットのひとたちが集住するエリアで、騒乱が起きた現場でもあるから、中国政府から見れば最重点警戒区域だ。
ラサ旧市街のバルコル(八廓街)。騒乱はここで起きた  (Photo:©Alt Invest Com)
 厳重な警備といっても、チベットの主要産業は観光業で外国からの旅行者も多いから、軍による露骨な弾圧はできない。そこでこの一帯で、朝から深夜まで、人民武装警察隊員(日本でいう機動隊員)が3列縦隊になって行進する示威活動が大規模に行なわれることになった。文字どおり人海戦術でチベットの反乱を押さえ込もうというのだ。
 ラサの武装警察隊員は、中国各地の農村地帯から集められてきた若者たちだ。彼らのあいだでは、「(空気の薄い)チベットで3年勤務すると(心臓病などで)寿命が3年縮む」と信じられているという。
ラサ市街。「各民族が共同団結して発展繁栄しよう」の横断幕と警備にあたる武装警察隊 (Photo:©Alt Invest Com)

次のページ>> チベット経済は、漢族に支配されている
(3) ジョカンの正門前では敬虔なチベット仏教徒が五体倒地を行ない、そのまわりを欧米からの観光客がカメラを持って取り囲んでいる。
 ラサの北8キロほどのところにあるセラ寺はダライ・ラマも学んだゲルク派の大寺院で、赤い袈裟をまとった若い僧侶たちが中庭で、独特のジェスチャーを交えて問答修業をすることで有名だ。この寺にも大型観光バスが何台も乗りつけ、欧米の団体観光客が夢中でカメラのシャッターを押し、ビデオを撮っている。こうしたツアーを仕切っているのは、ほぼすべて漢族が経営する旅行業者だ。
セラ寺の中庭で問答修行をする若い僧侶たち   (Photo:©Alt Invest Com)
 ポタラ宮を中心としたラサの宮殿や寺院が世界遺産に登録されてから、チベットは中国人にとっても「いちどは行ってみたい観光地」になった。私が青蔵鉄道の寝台車でいっしょになったのは蘭州の電子部品工場の社員旅行で、身なりは質素だが、みんなキヤノンやニコンの一眼レフのデジタルカメラを持っていた。こうした国内団体客も、当然、漢族の旅行会社が一手に扱っている。
 ラサの旧市街からすこし離れた道路沿いには、団体客向けの大型ホテルが漢族の資本で次々と建設され、レストランや土産物店もジョカン周辺を除けばほとんど漢族が経営している。
 チベットの観光業が隆盛になるにつれて、四川省などから仕事を求めて大量の漢族が移住してきた。さらには2011年からチベット自治区に3300億元(約5兆円)の公共投資を行なう5カ年計画が始まり、水力や太陽光の発電所建設、道路や鉄道などのインフラ整備のほか、銅やリチウム、希少金属などの地下資源の開発も行なわれることになっている(日本経済新聞3月11日)。
 チベット自治区260万人の総人口のうち90%超はチベット人とされるが、その周辺を含めれば600万人のチベット人に対して漢族は800万人を超え、今後10年間でさらに100万人の漢族が流入するとの予測もある(日経新聞同上)。広義のチベットでは、すでにチベット人と漢族の人口比は逆転している。残念ながら訪れる機会がなかったが、ラサ郊外には漢族の集まる新都心が建設され、そこには若者向けのクラブまであるという。
 チベットの最大の観光資源は、古い建物や大自然ではなく、ダライ・ラマに帰依し仏教の教えを深く信じるひとびとだ。世俗を超越した彼らの姿を見るために多くの観光客が訪れ、それが巨大な観光ビジネスになって、漢族の資本家がホテルなどの不動産開発に乗り出す。
マニ車を回す信者。回転させた数だけ経を唱えるのと同じ功徳があるとされる  (Photo:©Alt Invest Com)
ジョカン(大昭寺)の正門前で五体倒地をするひとたち (Photo:©Alt Invest Com)
 私は、「漢族がチベット人を搾取している」と批判したいわけではない。だが事実として、チベットの経済は漢族によってほぼすべてが支配されている。
次のページ>> ダライ・ラマとパンチェン・ラマ
(4) ダライ・ラマに次ぐ高位のラマであるパンチェン・ラマをめぐる政治的混乱は、チベット問題の困難さを象徴している。
 ダライ・ラマとパンチェン・ラマはお互いの転生者を認定することになっている。
 1989年にパンチェン・ラマ10世が急死した後、ダライ・ラマと亡命政府は密かに転生者を探索し、ゲンドゥン・チューキ・ニマという6歳の少年をパンチェン・ラマの生まれ変わりとして認定した。しかし亡命政府を“反中国”と見なす共産党政府はこれを拒み、同じ6歳のギェンツェン・ノルブという少年をパンチェン・ラマ11世として擁立した。
 ダライ・ラマが認定したゲンドゥン少年はその後、両親とともに当局に連行され、現在に至るまで所在不明のままだ。こうした経緯があるため、亡命政府は(共産党政府の主張する)パンチェン・ラマ11世をパンチェン・ラマの転生者とは認めていない。
 古来、パンチェン・ラマはラサの西にあるシガツェを拠点としていた。
 ラサからニャンチェ川を越えてシガチェに至る途中に、古都ギャンチェがある。この街を歩くと、ラサとはずいぶん雰囲気がちがうことに気がつく。さびれた旧市街を抜けると、かつての日本の団地のような建物が現われる。これは共産党政府がチベット系の住民に無償で与えたアパートだ。
 ギャンチェのいちばんの見所は巨大な仏塔に描かれた仏眼で知られるバンコル・チョエデ(白居寺)だが、そこに向かう途中で100台以上もの白い軽トラックの車列とすれちがった。ガイドの説明では、この新車もチベット系のひとたちに寄贈されるのだという。
パンコル・キョエデ(白居寺)の仏塔に描かれた仏眼  (Photo:©Alt Invest Com)
 高齢のダライ・ラマが身体を捨て去れば、その魂が転生した先はパンチェン・ラマが認定することになる。そうなれば共産党政府はダライ・ラマとパンチェン・ラマという2人のラマを手に入れて、亡命政府の正統性を否定しチベット問題を“最終解決”できる。
 この計画を成功させるためには、できるだけ多くのチベット人をパンチェン・ラマ派に鞍替えさせなければならない。そのために、なりふり構わぬ大盤振る舞いをしているようだ。
次のページ>> 国からの補助金
(5) 共産党政府のチベット対策から恩恵を被っているのはパンチェン・ラマ派のひとたちだけではない。欧米メディアが注視するチベット統治は飴と鞭で行なうほかなく、きびしい弾圧と引き換えに補助金や公共事業、現物給付などさまざまな懐柔策がとられている。
 システム分析の専門家である川島博之氏によれば、中国にも日本の地方交付金にあたるものがあり、広東省、上海市、北京市などのゆたかな省や市から、貧しい地方に多額の金銭が支払われている(『データで読み解く中国経済』〈東洋経済新報社〉)。
 こうした所得移転の実態を調べると、もっとも多額の資金を受け取っているのは四川省だが、1人あたりではチベット人が最大の受益者で、年間平均収入の1万6539元に匹敵する1万5830元の援助を受けている。1世帯の人数を4人(少数民族には一人っ子政策は適用されない)、1元=15円とすれば、チベットの平均的な家計の1年間の総収入は約48万円で、そのうち24万円は国からの補助金ということになる。
 このようにチベットは、地域経済ばかりでなくひとびとの生活までも中国(漢族と共産党政府)の強い影響下に置かれている。もし仮にチベットのひとびとが悲願の民族独立を手に入れたとしたら、その瞬間に地域経済もひとびとの生活も崩壊してしまうだろう。

ギャンチェの街には「中国の特色ある社会主義を堅持しよう」の横断幕  (Photo:©Alt Invest Com)


• [橘玲の世界投資見聞録] 中国・西寧で気づかされたチベット問題の根深さ[2013.03.07]
• 北京オリンピックを5カ月後に控えた2008年3月、チベット自治区のラサ市でチベット仏教の僧侶らによる大規模な暴動が発生した。事件の真相はいまだ闇のなかで、チベット亡命政府を支持する欧米の人権活動家らは「独立を求める平和的なデモを中国当局が弾圧し140名を超える死者が出た」と非難し、中国政府は「一部のチベット族が漢族や回族の商店で強奪を行ない、治安維持のため必要な措置を講じた」と応酬した。
 私がチベットを訪れたのは、オリンピックも終わり、騒乱の記憶も薄れた2009年9月のことだった。
 だがこれから書こうと思うのは、チベットへの旅の起点になる西寧での出来事だ。
チベット旅行のはずが…
 おそらく今も同じだと思うのだが、2009年当時はチベット騒乱を受けて外国人の入境が厳しく制限され、個人旅行は許可されず、あらかじめ旅程を決めてガイドが同行することがチベット旅行の条件となっていた。とはいえ、旅行代理店のなかには日本語のホームページを持つところも多く、日程とコースを伝えればあとはすべて手配してくれる。
 私が選んだのはチベット旅行の定番コースで、西寧から青蔵鉄道(海抜5000メートルの崑崙山脈を超えることから「天空列車」とも呼ばれる)でラサに入り、ポタラ宮やジョカン(大昭寺)などの世界遺産を見学した後、チベット仏教四大聖湖のひとつヤムドク湖を経て、パンチェン・ラマの居所のあったチベット第二の都市シガツェや、チベット最大の仏塔を持つバンコル・チョエデ(白居寺)などを回る5泊6日(車中1泊)のルートだった。
 トラブルは、最初に日に起きた。
 深センから西安経由で西寧空港に夕方に着き、そのまま西寧駅に向かって午後9時発の青蔵鉄道に乗車するというのが当初のスケジュールだった。ところが、空港に迎えに来た旅行会社のスタッフは、「あなたの切符はキャンセルされました」という。なんでも、私が乗るはずだった列車はラサに向かう人民解放軍に接収され、一般旅客は全員が予約取消になったのだという。「この国では誰も軍にはさからえませんから」といわれれば、「仕方ないですね」とこたえるほかはない。
 こうしてその夜は、まったく予定になかった西寧の街に泊まることになった。
 西寧は青海省の省都だが、外国人旅行者が訪れることはまれだ。古くはチベット族の土地だったが、いまでは人口のほとんどを漢族と回族が占めている。回族というのはイスラム系の少数民族ということになっているが、白い帽子やスカーフを除けば漢族とまったく区別がつかない。雲南省や新疆ウイグル自治区、青海省など交易を通じてイスラム文化の影響を受けた地域で、通婚などでイスラムに改宗した漢族が回族と呼ばれるようになったといわれている。新疆などでは欧米人と見紛う金髪碧眼の住民が中国語を話す姿を見かけるが、西寧の回族は「ムスリムの中国人」のことだ。
西寧駅 (Photo:©Alt Invest Com)
 旅行会社が手配してくれたのはムスリムが経営するホテルで、室内でも飲酒は禁止だった。街に出ても「清真(イスラム料理)」の看板を掲げたレストランばかりだが、なかを覗くとビールや白酒を飲んでいる中国人グループがいる。
 店の女の子に訊いてみると(といっても筆談だが)、店内には酒類は置いていないが、30メートルほど先に酒屋があるので、そこで酒類を買ってきて持ち込むのは自由だという。
 同じ清真レストランでも、ウイグルでは店内の一角が酒屋になっていた。上海では清真レストランのメニューにずらりと酒類が並んでいる。それに比べれば、西寧はまだ観光化されていないということのなのだろう。
レストランに置かれた古いストーブ兼湯沸かし器。なぜか三菱のマーク (Photo:©Alt Invest Com)
 ビールを飲みながら火鍋を食べ終わると、なにもやることがなくなってしまった。ラサ行きの列車は午後9時発なので、翌日も夜までなにもすることがない。それに気がついて、旅行会社に電話して、追加で費用を払って半日観光を手配してもらうことした。
 こうして王さんがやってきた。
次のページ>> 王さんの日本的常識
日本的常識を持った王さん
 王さんは40代半ばの女性で、驚いたことにものすごく流暢な日本語を話した。西寧のような田舎に日本語ガイドがいるなどとは思ってもみなかったから、最初に挨拶されたときはほんとうにびっくりした。
 実は王さんが日本語がうまいのは当たり前で、2年ほど前まで夫と10歳になる長女と3人で愛知県で暮らしていたのだという。夫は日本企業の工場で働いていたのだが、世界金融危機後のリストラで家族3人で日本で生活するのが難しくなり、夫が単身赴任で日本に残り、王さんと娘は実家のある西寧に戻ったのだ。
 観光といっても西寧市内にはイスラム寺院や道教寺院、チベット文化の博物館くらいしか行くところがない。いちばんの見所は中国最大の塩水湖である青海湖だが、観光シーズンは湖岸一面を菜の花の黄色が敷き詰める5月や、10万羽以上の渡り鳥がやってくる初夏で、9月になれば訪れる観光客もほとんどおらずあたりは閑散としていた。おまけにその日は天気が悪く、冷たい風とともに時おり叩きつけるような雨が降ってきた。
青海湖の日月亭。風が冷たくて、地元のひとはこんな格好をしている (Photo:©Alt Invest Com)
 車で青海湖まで行き、そこにだだっ広い湖があることを確認すると、寒さに耐えかねて早々に退散することにした。
青海湖。湖の中央に見える古い建造物は「中国魚雷発射実験基地」 (Photo:©Alt Invest Com)
 帰りの車中で、王さんは堰を切ったように話しはじめた。王さんは旅行会社にガイドの登録をしていたものの、まさかこんなところに日本人観光客がやって来るとは思っていなかった。王さんにとってこの日は、ひさしぶりに日本語を話せる機会だったのだ。
 王さんは、中国がいかにヒドい社会なのかを滔々と話した(もちろん運転手は日本語をまったくわからない)。
 王さんによると、中国ではコネがすべてで、自分が共産党員か、親族に共産党員がいないかぎり、まともな仕事を見つけるのは不可能なのだという。そのうえ中国人は、自分とは関係(グワンシ)のない中国人にものすごく冷たい。
 日本では中国の反日運動が大きく報じられているが、実は中国人は日本人に対してものすごく親切だと王さんはいう(中国を旅行しているとき、私も何度も同じことを感じた)。中国人がほんとうに残酷になるのは、(自分の競争相手になって仕事を取り合う)同じ中国人に対してなのだ。
 次に王さんが不満を爆発させたのは、中国の行政の腐敗についてだった。中国の役人は、自分たちが主人で人民を下僕だと思っている。しかしそれ以上に王さんを怒らせるのは、中国のひとびとが「お役人さまはエラい」と思い込んで、ぺこぺこと頭を下げることだ。
「それで私、あんまり頭にきて、親戚や友だちを10人くらい日本に連れて行ったんですよ」
 王さんたちの日本旅行の目的は、温泉でも秋葉原でもなく、日本の役所を見学することだった。
「市役所の窓口で、私、いってやったんですよ。“ほら、日本では役人が住民にぺこぺこ頭を下げてるでしょ。これがほんとうの役人の姿なのよ”って。みんな口をぽかんと開けて驚いてましたけど」
 王さんにいわせれば、中国の役人がいばるのは、人民の民度が低いからだ。だからこそ、コネを求めて誰もが右往左往し、賄賂を払わなければなにひとつ進まず、いつまでたっても選挙すらできずに世界じゅうから馬鹿にされるのだ。
 日本で暮らしながら子どもを育てた王さんは、日本の常識(言論の自由や民主制)と中国の現実とのギャップに我慢ならない。西寧のような田舎に帰ってくると、なにもかもが絶望的なまでに遅れていて、だからといってその怒りを口にすることもできず、欲求不満がたまっていたときに、話し相手にちょうどいい日本人が現われたのだ。
 私にとってもこれは、中国人が中国社会についてどう思っているのか、その本音を知るまたとない機会だった。
 しかし話は、それだけでは終わらなかった。行政や政治への批判がひととおり終わると、王さんは私に訊いた。
「ところで、チベット問題についてはどう思ってますか?」
次のページ>> チベット問題と逆差別
王さんにとってのチベット問題とは?
 中国人が外国人に対して政治の話をすることはめったにない。とりわけチベット問題は中国における最大のタブーのひとつで、まさかそんなことを訊かれるとは思っていなかったから私は慌てた。「第2次世界大戦後は民族自決の原則が尊重されるようになったから、国際社会が中国の主張をそのまま認めるのは難しいのではないか」などと、当たり障りのないことをこたえた。
 王さんは、私の返事に不満そうだった。
 中国では、チベット問題はチベット亡命政府(ダライ・ラマ)と欧米の人権活動家の陰謀だとされている。“反中国”の活動家が過激なチベット仏教原理主義者をたきつけて暴動を起こし、欧米メディアに報道させているというのが「常識」で、王さんはどうやら、同じアジアの同胞として私にも欧米の陰謀を批判してほしかったらしい。
 その後、王さんの怒りは少数民族に対する優遇措置(アファーマティブ・アクション)に向かった。
 アファーマティブ・アクションは人種差別などで不利益を被っているマイノリティ(社会的弱者)に対する是正措置で、アメリカの黒人に対する大学の優先入学枠などがその典型だ。
 多民族社会でありながら漢族が圧倒的多数を占める中国でも、民族の融和を目的に、少数民族へのさまざまな優遇措置が講じられてきた。とりわけチベットでは、反中国のダライ・ラマ派を共産党政府の傀儡ともされるパンチェン・ラマ派に転向させるために、住宅や車などを含む多額の補助金が交付され、子弟が中国国内の有名大学を受験する際にも優先枠が設けられている。そんな話をひととおりした後で、「これって不公平でしょ。そう思いませんか」と王さんはいった。
チベットのシンボル、ポラタ宮 (Photo:©Alt Invest Com)
 文化大革命の時期に小学校で「科学的社会主義」を叩き込まれた王さんは、宗教はアヘンだと考えている(王さんの同世代はみんな宗教に否定的だという)。わずかな稼ぎをすべてお布施し、来世でのよりよい転生を願って五体倒置を繰り返すチベット仏教徒は王さんには理解不能で、そんな彼らが少数民族だというだけで自分たちより優遇されるのは許し難いのだ。
 王さんの話を聞いて、私は考え込んでしまった。
 王さんが中国人のなかでもっとも開明的な部類に属するのは間違いないが、そんな彼女ですら、自分たちは逆差別によって不当な扱いを受けていると思っている。中国の少数民族問題は、私たちが思っているよりずっとやっかいなのだ。
 その夜の列車は、到着が1時間以上遅れた。
 西寧駅のうす暗い待合室で王さんは、幼い娘と2人で中国で生きていくことの苦労をひとしきり語った。時計は夜の9時を回り、王さんはときどき携帯を取り出しては、「帰りが遅くなるから冷蔵庫のなかのものを暖めて食べていなさい」などと娘に伝えていた。「早く子どものところに帰ってあげてください」と頼んだのだが、旅行会社の規則で、私が無事に乗車したことを確認しなければならないのだという。
 王さんと娘の会話が理解できたのは、彼女たちが日本語を使っていたからだ。王さんの娘は日本の幼稚園で育ったから、中国語よりも日本語の方が自然なのだ。
 待合室のひとたちはみな疲れた顔をして、聞き慣れぬ言葉を話す私たちにはなんの関心もないようだった。
 電話を切ると、王さんはふうと、小さなため息をついた。
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作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。
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