06. 2013年3月01日 10:53:48
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PM2.5汚染に続き中国を悩ます地下水汚染 井戸を掘って工場廃水を地下に注入する汚染企業 2013年3月1日(金) 北村 豊 中国では1月中旬から日本の国土面積の15倍に相当する143万平方キロメートルもの地域が深刻なスモッグに覆われ、大気汚染が国家の最重要課題として浮上した。それはスモッグを構成する大気中のPM2.5(直径が2.5μm<マイクロメートル>以下の超微粒子)の濃度が、中国気象局が2010年1月に定めた気象基準の1日平均規制値である1立方メートル当たり75μmを大幅に超過し、国民の健康が危機的な状況に陥ったことに起因する。 まさに泣き面に蜂 中国では2013年1月1日から全国74都市の大気汚染状況を毎日発表するようになったが、法定休暇となった春節期間(2月9〜15日)中のPM2.5の濃度は最大で1日平均426μmとなり気象基準の5.7倍を記録した。こうした大気汚染の憂慮すべき事態に、中国国民は経済至上主義の名の下になおざりにされてきた環境行政に対する憤りを募らせる中、春節期間中の2月12日に地下水の汚染疑惑が新たに提起されたのである。これは中国語で言うところの“雪上加霜(泣き面に蜂)”という状況だが、環境保全をなおざりにして、ひたすら経済至上主義の道を突き進んで来た中国は、今やその代償の支払いを余儀なくされているのである。 著名な社会活動家である“ケ飛”は中国の水汚染に真正面から取り組み、2009年には“中国癌症村(がんの村)調査”を実施し、深刻な地表水汚染を目の当たりにした。そこでネットのポータルサイト“新浪網(sina.com.cn)”の“微博(マイクロブログ)”に「中国水危機独立調査」を立ち上げ、全国に250万人いる彼の支持者との交流を通じて水質汚染に関する情報収集を行っている。そのケ飛が2月11日の夜、あるメル友から「郷里では多くの人がひそかに化学工業を営み、その汚水を注射と同様に地下へ注入し、地下水を汚染させていると聞いた」というメールを受領した。この情報に動かされたケ飛は従前の調査結果に基づいて、翌2月12日に彼のマイクロブログ上に次のような告発を書き込み、「地下水汚染調査」を呼び掛けたのであった。 山東省の“濰坊市(いほうし)”では、化学工業や製紙業の工場が人命にかかわる汚水を高圧ポンプで地下へ注入して、工場廃水の違法排出の取り締まりから逃れている。汚染物質の地下への排出は、既に多くの地方で長年にわたってこっそりと行われてきている。 ところで、違法な企業が未処理の汚水を地下へ直接排出することは今に始まったことではない。2010年5月には雑誌「半月談」<注1>が「地下への汚水排出:忍び寄る致命的な脅威」という記事を掲載していた。当該記事によれば、排水用の穴や井戸を掘ってひそかに汚水を排出している以外に、取り締まりを逃れるため、こともあろうに高圧ポンプを使って大量の汚水を地下へ直接注入している企業もあり、南方の一部企業に至っては汚水を鍾乳洞へ排出している事実が調査を通じて判明したとある。 <注1>中国共産党中央宣伝部が“新華社”に委託して毎月10日と25日に発行している雑誌。 さて、深刻な大気汚染により環境汚染に対してアレルギー状態になっていたネットユーザーたちはケ飛の告発に敏感に反応し、ネットの掲示板に次々と転載したから、地下水汚染の危険性は瞬く間に全国へ伝わり、大きな反響を巻き起こした。こうした状況を受けて、中国のメディアも一斉に記者を濰坊市へ送り込み、現地取材を敢行したのだった。 メディアの取材を妨害 ケ飛の告発によって突然脚光を浴びることになった濰坊市にとって、地下水汚染疑惑は正に青天の霹靂であった。急きょ濰坊市に入った記者たちが最初に向かった先は濰坊市の“環境保護局”(以下「環境局」)だったが、突然の事態に当の環境局は困惑と混乱の極みにあり、責任者不在を理由に記者たちは門前払いの扱いを受けた。2月15日になってようやく態勢を整えた環境局は、濰坊市が管轄する県や鎮、さらには開発区に対して全面的な地下への汚水排出調査を行う旨を通告すると同時に5つの監督指導チームを組織して、ローラー作戦を展開して企業の汚水排出状況の調査を行った。環境局は2月17日までに715企業に対する調査を終えたとのことだが、結果は一向に発表されていない。 一方、濰坊市政府は地下へ汚水を排出している企業を通報した者には賞金10万元(約150万円)、環境局の調査に積極的に協力した者には奨励金1万元(約15万円)を贈るという懸賞を発表して、情報提供を呼びかけたが具体的な通報を受けることはなかった。これに対してネット上では様々な意見が飛び交ったが、ハンドルネーム「金融八卦男」はブログで、「今日、山東省の各地では経済活動の視察が行われ、主要な指導者が付き添っている。聞くところによれば、濰坊市の化学、アルコール、製紙などの工場では新たな汚水排出方法を考案し、汚水を地下へ注入して地下水をひどく汚染させているという。これらの工場は地元では最も優良な企業であり、既に株式の上場を準備していると言われている」と述べて、どんなに調査をしようとも違法企業の摘発などできるはずがないことを示唆した。地元で優良な企業であれば収める税金も大きく、市政府が本気で取り締まるわけがないというのである。 実際にメディアの記者たちは濰坊市で懸命の取材活動を展開したが、違法企業に関する具体的な確証は得られなかった。そればかりか、濰坊市政府は中央政府に本件に関する“封口令(口止め命令)”を要請した模様で、濰坊市では本件の調査していた40人以上の記者が行動を制限されたし、ネット上では関連する書き込みが次々と削除され、ネットユーザーによる書き込みと管理者側による削除が一進一退の戦いを展開した。そうした規制を受けながらも、一部の記者は取材を続けて多数の記事を発信したが、その中で最も核心に迫った全国紙「中国証券報」の2月23日付記事「山東省濰坊市で“打井灌汚(井戸を掘って汚水を注ぎ込む)”が地下産業チェーンを形成」の概要は以下の通りである。 【1】濰坊市の管轄下にある“寿光市(じゅこうし)”はかつて「野菜の里」と言われていたが、今では製紙、化学、プラスチックなどの重化学工業を主導する工業拠点になっている。その寿光市郊外にある“台頭鎮工業園(工業団地)”では多数の工場が操業しているが、昨年建設された汚水処理場は処理能力が小さい上に、工業廃水だけでなく生活廃水も処理するため、工業廃水の処理量はなおさら限定され、どこの工場も相当量の廃水が処理できない状況になっている。寿光市全体で排出される廃水量は1日当たり25万トン(2012年上期)だが、汚水処理能力は大きく下回っており、未処理廃水の排出を黙認せざるを得ない状況にある。 【2】廃水処理能力のみならず、廃水処理費も企業にとっては大きな問題となっている。2011年に一般企業で1立方メートル当たり1元(約15円)であった廃水処理費は、2012年には1.9元(約29円)に値上がりし、1日の廃水排出量が1000トン以上の企業は毎月の“排汚費(汚染排出料)”が6万元(約90万円)以上となる。この出費は中小企業にとっては小さなものではなく、廃水をひそかに処理できれば大きな利益につながる。 【3】そこで登場するのが井戸掘り業者である。記者は寿光市の市内各地で井戸掘り業者の公告を目にしていたので、ある業者に客を装って面談し、次の事項を確認した。すなわち、濰坊市で井戸掘りが盛んになったのは3年ほど前からで、現在では国内および海外の井戸掘り業者が30チーム以上進出している(一般に1チームは6〜7人で構成されている)。井戸掘り業者の名目上の業務は地元の村や鎮および工場の取水用井戸の掘削だが、工場側からすると、取水用井戸とは名目に過ぎず、実際の用途は含水層を打ち抜いて、その下の層に汚水を注入することが多い。一般の汚水排出用井戸の深さは50〜60メートルで、その汚水注入量は1日当たり20〜30トンだが、一部の井戸は深さ600メートルに及ぶものもあり、注水規模は数百トンにもなる。 【4】井戸の工期は深さにもよるが、工場内の含水層が多い地域を選定しさえすれば、1〜2日で完成する。井戸掘削費用は地質にもよるが、深さ1メートル当たりで、セメントパイプなら120〜150元(約1800〜2250円)、スチールパイプなら300元(約4500円)であるという。掘る井戸の深さを100メートル前後とすれば、工事費用は4000〜5000元(約6万〜7万5000円)と小額であるから、企業も費用の捻出は容易である。記者が接触した業者によれば、彼の井戸掘りチームは毎年100本近い井戸を掘削しているが、大きな工場では一度に何本もの汚水排出用井戸を掘削することが多く、毎年の井戸掘り収入は数十万元(数百万円)に上るという。 作物の生育が悪くなり、収穫量は年々減少 2月21日付の全国紙「中国青年報」は、同じ山東省で濰坊市から西に300キロメートル離れた“聊城市(りょうじょうし)”の地下水汚染の状況を報じた。同記事は次のように伝えている。 (1)同市の“荏平県(じんへいけん)”は、発展の遅れた県から“全国百強県(全国で経済力が強い県上位100位)”に過去十数年で躍進した。しかし、経済的躍進に伴って地下水の汚染は深刻さを増し、地元住民のがんや腎臓病の発症率が大幅に増大した。従って、濰坊市の地下水汚染問題を耳にしても、地元の住民は極めて冷静で、「そんな状況はここでは当たり前になっている。“県城(荏平県の行政機関の所在地)”周辺の地下水はとっくに汚染されているから今では誰も飲まない」と答えた。一方、この点を荏平県の環境保護部門に尋ねると、驚くことに「荏平県には地下水汚染の問題は存在しない」との回答が返ってきた。 (2)県城の西部にある“干韓村(かんかんむら)”では7〜8年前に水道を引き、現在では誰も井戸水を飲まない。洗濯や食器洗いには井戸水を使うが、農業にも井戸水は使えず、黄河の水を数十キロメートルも引き込んで灌漑に使っている。しかし、農業は地下水汚染の影響を受けて、作物の生育が悪くなり、収穫量は年々減少している。深さ十数メートルの井戸水をくみ上げると、水は黄色で、半日も置くと水面には薄い油膜が浮き、時には泡立っている。 (3)こうした地下水汚染の元凶は、荏平県の民間企業である“山東信発鋁電(アルミ発電)集団”であった。同集団は2004年に100億元(約1500億円)の投資額で、100万キロワットの電力、100万トンの酸化アルミニウム、100万トンのフライアッシュセメント(石炭灰を混ぜた高品質のセメント)の三大事業に着手し、今では数万人の職員を雇用し、総資産は1200億元(約1兆8000億円)以上に上っている。 (4)ボーキサイトから酸化アルミを抽出した後に発生する赤色の汚泥などの残渣(ざんさ)や廃水は工場から離れた場所に掘られた巨大な沈殿池に移される。この赤色の汚泥は強アルカリ性の汚染物質であり、沈殿池に浸透防止措置が取られていないために、汚染物質は地下に浸透して地下水を汚染し、井戸水のみならず地質にまで甚大な影響を及ぼしているのである。 地下水に頼る大多数の都市には致命的 上述した記事に共通するのは、経済至上主義を標榜する地方政府が企業所得税を納入する地元企業を擁護し、彼らによる違法行為、すなわち、汚染水の地下への浸透および注入を、見て見ぬふりをしている事実である。そのツケが地元民の生活と健康を害し、将来的には地下水にとどまらず、その周辺を含めた広範な地域を汚染地域と化して無人の荒野に変える可能性には思い至らない。目先の欲に釣られことを「鹿を追う者は山を見ず」<注2>と言うが、こうした欲に目がくらんだ官僚や企業経営者が中国の環境を深刻な汚染状況に陥らせ、刻一刻と修復不可能な状態に追い込んでいるのである。 <注2>このことわざの語源については、2012年6月15日付の本リポート「注目を集め始めた中国の土壌汚染問題」参照。当該記事と本記事を読み比べると環境汚染に共通する背景がよく理解できる。 ケ飛の告発は山東省濰坊市を1つの例として挙げたものであり、濰坊市と同様の地下への汚水注入は中国の各地でひそかに行われていることは疑いの余地がない。中国地質調査局の役人によれば、中国の都市の90%は地下水が汚染されており、そのうちの3分の2を占める都市の地下水は“厳重汚染(深刻な汚染)”の状態にあるという。これは水不足解消の手段を地下水に頼る大多数の都市にとっては致命的な数字であると言える。 環境の三大要素は、大気、水、土壌(土地)であるが、今の中国はその三大要素たる大気、水(地下水と地表水)、土壌のすべてが深刻な状況にある。この最悪の状況を改善するにはどうすればよいのか。中国政府はその答えが経済至上主義からの転換であることは十分認識しているはずである。しかし、経済成長の持続が中国共産党の政権維持の前提条件であるために、次の一歩を踏み出せないまま環境汚染という「どつぼ」にはまってしまったのだ。環境汚染に対する国民の不満はマグマとなって火山をいつでも爆発させるところまで沸騰している。中国は深刻な環境汚染にどう対応するのか。中国の環境汚染の影響を直接受ける隣国として、日本は中国の環境行政の動きを注視して行かねばならない。 北村 豊(きたむら ゆたか) 中国鑑測家。1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員 世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
花粉商戦、中国リスクも拍車 2013年3月1日(金) 山崎 良兵 、 中川 雅之 今年は花粉飛散が増えるとの予測を受け、対策商品の販売が上向いている。中国の大気汚染が日本に悪影響を及ぼす懸念も、商戦に拍車をかける。メガネや空気清浄機の性能向上や医療用薬品の大衆薬化も追い風になりそうだ。 販売好調な花粉対策メガネを手にするジェイアイエヌの田中仁社長(写真:陶山 勉) 「今年は花粉カットメガネが、昨年の5倍のペースで売れている」
「JINS」ブランドでメガネを販売するジェイアイエヌの田中仁社長は笑顔で語る。同社では昨年、視力に悪影響を与えるとされるパソコン画面の青色光をカットするPCメガネが大ヒット。1月中旬に、2013年8月期のメガネ全体の販売予測(視力矯正用を含む)を100万本引き上げて600万本にしたばかりだ。1月下旬に品ぞろえを一新した花粉カットメガネの売り上げも大幅に伸びており、“2匹目のドジョウ”を狙う。 性能とデザインを向上させたことが人気の理由だ。メガネの鼻を支えるパッドと耳にかける部分が調節でき、顔にぴったりフィットして、花粉の侵入を最大93%カットできる設計を新たに採用。従来のスキーのゴーグルに似たデザインから、一般的なメガネに近い形状に変えてファッション性も高めた。度なしタイプで3990円と価格が手頃な点も支持されているようだ。 今年新たに投入した子供用の花粉カットメガネの販売も好調。「花粉の時期になると目のかゆみに悩む小学生の娘のために購入した」。2月上旬に花粉カットメガネを買った東京都港区に住む38歳の主婦は話す。ビジョンメガネ(神戸市)なども同様の機能を持つ花粉防止メガネを発売しており、市場拡大は加速している。 「PM2.5」対策をうたう商品も 今年は花粉の飛散が昨年と比べて大幅に増えるとの予測が、商戦を盛り上げている。東京都によると今春のスギやヒノキの花粉の飛散は、昨春の5〜6倍に達する見通し。日本気象協会によると、北海道から東北、東海などを中心に、全国的にも昨年より花粉の飛散が多くなると予想される地域が目立っている。 今年の商戦では、別の要因も販売を押し上げているようだ。中国に深刻な大気汚染をもたらしている有害な微小粒子状物質「PM2.5」。ディーゼル車の排ガスや工場の煙などに含まれる直径2.5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の微小物質が日本各地に飛来している。国の環境基準を超過するケースが相次ぎ、環境省は高濃度の場合に外出を控えるなどの指針の策定に動いている。 PM2.5対策としても、花粉症関連の商品が注目を集めている。家電ベンチャーのバルミューダでは、PM2.5に近いサイズの微粒子の除去能力をうたう空気清浄機「JetClean(ジェットクリーン)」の販売が急増。価格は4万6800円と平均的な空気清浄機より割高だが、「(PM2.5が話題になった)2月に入ってから半月で、1月の販売台数の2倍が売れた」(バルミューダ)。九州などの販売店では品薄も目立つ。 家電量販店大手のエディオンでも2月以降、空気清浄機の販売が急増。2月4〜10日の1週間は前年同期比で6割増だった。空気清浄機大手のダイキン工業では「1月の空気清浄機の販売は前年同月比1割増だったが、2月に入ってさらに伸びている」と話す。 マスクの販売も急伸する。大手の白元では、1月以降のマスクの販売が前年同期比で4割近く増加。「花粉症対策の一般的な商品に加えて、(中国の大気汚染の影響で)微粒子を遮断できる高性能なマスクの需要が高まっている」(白元)。「N95マスク」と呼ばれる直径3マイクロメートルの微粒子を95%以上捕集できる、本来は医療従事者向けの商品だ。PM2.5への効果は検証されていないが、インターネット通販などで人気が高まっている。 商戦のスタート時期が前倒し
今シーズンは花粉症の対策商品の販売が伸びると見て、投入時期を早める企業も多い。 その1つが、花粉がつきにくく、落ちやすい花粉対策コート。三陽商会は花粉が本格飛散する前の1月から、ダウン素材を使ったコートを発売。春先まで着用できるようライナーは取り外し可能で、「1月の販売は計画を5割上回った」(同社)。三陽商会は花粉対策コートを、紳士と婦人の14ブランドで展開する力の入れようだ。紳士服大手のAOKIホールディングスも1月から、付着した花粉の95%を脱落させる効果が見込まれるコートを販売する。 家電量販店大手、ヨドバシカメラの秋葉原の店舗(東京都千代田区)は、花粉飛散が増えることを見越して、例年よりも1週間ほど早い2月初旬に花粉対策コーナーを設置。空気清浄機のほか、布団に花粉がつくのを防ぐための布団乾燥機などをまとめて陳列する。売り場の販売員は「飛散量が少なかった昨年と比べて、(関連商品の売上高は)2倍程度を目指す」と意気込む。 花粉症の治療薬の販売も伸びそうだ。小林製薬は眼球洗浄剤「アイボンAL」や、鼻の奥の花粉を洗浄する「ハナノア」といった花粉関連商品の今年の売り上げを、昨年比3割増と見込む。「例年より早い1月初旬〜中旬にかけて売り場展開するドラッグストアが増えている」(同社)という。 医療用医薬品を一般大衆薬に転用する動きも今シーズンは目立つ。久光製薬は昨年11月、医療機関での花粉症治療に実績があるアレルギー用鼻炎薬を「アレグラFX」として一般薬局やドラッグストアで発売。2月には、グラクソ・スミスクラインも医療用を転用した鼻炎薬を大衆薬として投入した。 興和は医療用の抗アレルギー薬を転用した点眼薬を発売。花粉症に悩む人が増える中、医療機関で診察を受けずに、手軽に薬を手に入れたいというニーズを捉えようとする。 花粉商戦が盛り上がりを見せる中、ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングスやサンドラッグの株価も上昇。急激な円安で自動車関連に代表される輸出企業に買いが集まり、内需主導の小売業の株価は伸び悩むケースが目立つが、ドラッグ大手2社は年初から2月18日にかけて、それぞれ2割前後上昇。販売が堅調で業績が好調なことに加えて、花粉関連の販売が伸びるとの期待もあるようだ。
「花粉対策商品は利益率が高い。販売が伸びれば、ドラッグストア各社の業績押し上げ効果が期待できる」とSMBC日興証券の川原潤シニアアナリストは指摘する。 花粉の飛散が増える予測に、中国発の大気汚染の問題が加わった今年の花粉商戦。厳しい寒さが和らぎ、花粉の飛散が本格化する前から商戦は過熱している。 山崎 良兵(やまざき・りょうへい) 日経ビジネス記者。 中川 雅之(なかがわ・まさゆき)
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