http://www.asyura2.com/12/china3/msg/355.html
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引用する環球時報社説に書かれた戦略と世界観の率直な表明は、現在の中国支配層の考えを知る手掛かりになるので面白い。
実際に打ち出す政策はともかく、書かれている現状認識は、中国支配層の多数派が持っているものと考えて誤りはないだろう。
人によっては“被害妄想だよ”と思うような国際認識も書かれているが、それも、当たらずとも遠からずだから、必要な抑えである。
日本との関係でポイントは、「中国外交の民意に対する尊重は国家の民主化プロセスの要であり、これは民衆の世界観を世界構造の変化に追いつかせるうえで極めて重要」という部分と「どの国においても、民意と国益を精確に整合させることは困難だ。このため各国の外交はいずれもポピュリズム傾向があり、中国も今後似た感じになる」という部分で、外交の方向性と難しさを述べていることだ。
共産党独裁と言われている中国であっても、支配層が“国益”に叶うと判断した政策であっても、 “民意”に逆らうものであれば、その遂行は難しいということだろう。
“民意”自体が、過去及び現在の支配層による“情宣”によって形成されているのが、過去に時間をかけて醸成した“民意”が現在の政策を縛ることも大いにある。
さらに、「特に抱いてはならないのが、台頭を実現した後に昔の加害者に報復するという考え」ということまで書かれている。これは、ことさら日本を意識したものとは言えない。清の時代に始まる近代中国の“苦悩と恥辱”は、英国のアヘン戦争に端を発しており、加害者とは広く先進諸国をイメージしていると言えるだろう。
肝に銘じておかなければならないのは、わざわざ、「台頭を実現した後に昔の加害者に報復する」ような考えを持つべきではないと書いているということは、広くそのような考え(感情)が根っこにあるという現実だ。
社説が示す世界観の基本:
「 第1の共通認識:中国の抱える難題の多くは国内にあるが、中国の発展継続にとって鍵となる条件の多くは外の世界にある。中国の資源供給、経済のハイエンド循環は外部との関係に高度に依存」
※ 日本は、「経済のハイエンド循環は外部との関係に高度に依存」の対象になっている国家。
「 第2の共通認識:中国は経済規模で世界第2位だが、1人当たりの所得は低めという特殊な移行期」
※ 先日の党大会で示された20年時点で“所得倍増”という政策がキーである。様々な施策は、この目標の実現のためにあると言っても過言ではない。現在、1人当たり5千ドルのGDPが1万ドルまでアップすれば、先進国にほぼキャッチアップできたと見なせる。
単純な所得再分配政策ではなく、沿岸部の高所得が構造的に内陸部や農村地域に流れ込む構造をつくり出さなければ達成できないだろう。
「 第4の共通認識:現在世界の圧倒的多数の国が経済発展を第1の戦略目標としている。」
※ そう言えなくもないが、そうとも言い切れないところが、難しい世界理解と言える。欧米先進諸国及び日本は、口先はともかく、国民経済(国家)の経済発展が第一の戦略目標ではないのだ。国民経済を少々犠牲にしてでも、発展著しい中国や新興国での商売を通じてグローバル企業が成長を持続する
「第5の共通認識:中国の急速な発展に外部が焦りを抱くのは避けがたい。われわれは中国の台頭によるメリットを真摯に世界と分かち合わなければならない。自国が一人勝ちして、他国は全敗させるというような心理であっては決してならないし、ふと思い浮かべるのもだめだ。特に抱いてはならないのが、台頭を実現した後に昔の加害者に報復するという考えだ。」
※ 中国がこのところずっと持ち出しているウィンウィンの関係構築を再確認する表明である。経済論理からいっても、中国が独り勝ちをめざせば、20年時点で“所得倍増”を達成することはできない。意識(心理面)までの自戒を求めていることは好ましい。
最後に、タイトルに付加した刺激的パスポートについて:(少し下にNHKのニュース記事が投稿されているのと同じネタ)
24日朝NHKBS1で放送された香港ATVとシンガポールCNAのニュースによれば、中国政府が今年新たに発行したパスポートの査証ページの地柄(薄い色の模様)が、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどと係争になっている東沙・南沙・西沙諸島が中国領土であることを“誇示”するようなものになっているということで、関連諸国への入国時にトラブルになり、関係国もクレームを付けているという。
台湾についても、日月譚など有名なリゾート地が中国領のように見える柄になっていることから、馬総統が、「これまで築いてきた平穏な関係を壊すような話」と抗議している。
中国政府の領有権主張そのものを否定はしないが、「各国の外交はいずれもポピュリズム傾向があり、中国も今後似た感じになる」と舵とりの難しさを自覚しているのなら、関係諸国をことさら刺激するような政策を採るべきではない。
なお、くっきりはっきり見えるレベルではなかったが、日本領の尖閣諸島は、査証ページの地柄に書かれていなかったと思う。
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今後10年、中国は広い心を持ってこそ大きな前途が開ける
今後5-10年間の中国にとって最も困難な課題は、国内の比重が明らかに大きい。だが大きな国際環境を切り捨てることはできない。国内外の問題の相互作用は確実に一層活発化する。中国は国境線で鉄壁の守りを固めているが、開放された大国にとって、国境は時に名前ばかりの存在でもある。外部勢力はすでに非常に入念な対中牽制を行っているうえ、中国を「引きずり下ろす」幻想と衝動を抱くこともしばしばだ。(環球時報社説)
中国外交の核心的意義は自らの発展の環境を守り、広げ、対外開放による利益が弊害を常に上回るようにすることだ。だが中国の持続的台頭に伴い、中国と多くの関係の性質はパワーバランスの変化による試練にさらされており、外の世界の対中姿勢が次第に複雑化することは避けがたい。
中国外交の民意に対する尊重は国家の民主化プロセスの要であり、これは民衆の世界観を世界構造の変化に追いつかせるうえで極めて重要だ。だがどの国においても、民意と国益を精確に整合させることは困難だ。このため各国の外交はいずれもポピュリズム傾向があり、中国も今後似た感じになるだろう。だが中国は将来の国際構造の変化における最大の推進力であるため、国際摩擦の集中する場所の1つになることが必至だ。中国社会の実事求是の姿勢と理性を世界の平均水準より高める必要がある。さもなくばわれわれは対外衝突の泥沼にはまり、国内の難題に対処するための精力を大幅に削がれるだろう。
中国社会は揺るぎない共通認識を持ち、必ずや次々と出現するであろう突発的危機による衝撃をそれらが受けないようにし、かつわれわれが肝心要の時に激しい感情の中から常に自らを引き戻し、酔っているのではなく冷静な頭で鍵となる政策を打ち出すための助けとなるようにする必要がある。
第1の共通認識:中国の抱える難題の多くは国内にあるが、中国の発展継続にとって鍵となる条件の多くは外の世界にある。中国の資源供給、経済のハイエンド循環は外部との関係に高度に依存しており、これがロシアのように「万事人に頼らず」は不可能であることを決定づけている。外部と全体的に良好な関係を保つことが中国の基本国策でなければならない。揺るぎない原則を持つとともに、実力を踏まえた弾力性と柔軟性を強化する必要がある。
第2の共通認識:中国は経済規模で世界第2位だが、1人当たりの所得は低めという特殊な移行期にある。われわれの自己認識も外部のわれわれに対する見方も揺れ動いて定まらない。自らの利益を守るためにどのように力を使うかについて、われわれは経験を欠いている。これは外部勢力との複雑かつ敏感な相互作用の過程であり、われわれは互恵とウィンウィンに努めるが、常に勝つことは不可能だ。
第3の共通認識:中国は近年外交摩擦が絶えない。だがこうしたトラブルはいずれも中国の台頭の継続を抑え込む実質的パワーにはなり得ない。中国は一見常に受動的に見えるが、実際には戦略的主導者なのだ。すなわち、係争に対処するためにどれだけの力を割くかは、かなりの程度においてわれわれ次第だ。中国の発展における全ての核心的要素は、こうした外交的衝撃の波及外にある。
第4の共通認識:現在世界の圧倒的多数の国が経済発展を第1の戦略目標としている。中国にはなおさらに、この長期的戦略を変える理由がない。米国は対テロ戦争を10年間行った。理由は十分にあり、鬱憤を晴らした。だが振り返ってみると損をした感じがして後悔が広がっている。中国は戦略面の主体性を拡大する最も肝要な時期にあり、一歩たりとも足を踏み外したり、脇道にそれては決してならない。
第5の共通認識:中国の急速な発展に外部が焦りを抱くのは避けがたい。われわれは中国の台頭によるメリットを真摯に世界と分かち合わなければならない。自国が一人勝ちして、他国は全敗させるというような心理であっては決してならないし、ふと思い浮かべるのもだめだ。特に抱いてはならないのが、台頭を実現した後に昔の加害者に報復するという考えだ。
中国は今後10年で世界最大の経済大国になるとの見方がすでに国際地政学で流行っている。これは確かに今後10年間の最大の戦略的変数であり、この過程をわれわれよりもしっかりと管理できるものはない。これが外部の心理に敵対性の爆発をもたらさないようにすることが、なおさらに重要だ。われわれの謙虚さ、智慧、意志の広さが極めて強く試されることになる。
中国という木が大きくなれば風当たりも強くなるのは当然だ。われわれは生い茂ると同時に、風の吹き抜ける隙間を確保して、大きくとも自分が吹き倒されないようにする必要がある。国家が最高の場所へ向けて台頭を続けるには、集団として哲学的に十分に成熟しなければならない。(編集NA)
「人民網日本語版」2012年11月23日
http://j.people.com.cn/94474/8032331.html
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