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【石平のChina Watch】習近平政権「冷めた餃子」 暗い未来に同情
2012.11.22 11:02
今月15日に選出された中国共産党政治局常務委員の顔ぶれを見ていると、何だか習近平政権の暗い未来に同情したくなる思いである。7人の常務委員の大半は、大した実績も国民的人望もなく、未来へのビジョンも開拓の精神もいっさい持たない守旧型の党官僚ばかりだからだ。
昔、米メディアが日本の総理大臣のことを「冷めたピザ」と揶揄(やゆ)したことがあるが、それにならって、多少の失礼(?)は承知の上で中国の政治局常務委員の面々を「冷めた餃子(ぎょうざ)」と評したい。この最高指導部の布陣では、中国国民に「希望」を与えるようなことはまず無理であろう。
さらにたちの悪いことに7人の政治局常務委員の中の5人までは、江沢民(前国家主席)派か江沢民派に近い人間である。表向きは「習近平政権」となっているが、内実はむしろ、老害の江沢民一派が牛耳る「江沢民傀儡(かいらい)政権」であるといえよう。
これでは、がんじがらめとなっている習近平氏や李克強氏などの新世代指導者が思い切った仕事をできるはずもない。習近平政権はその誕生した時点から、すでに「死に体」の様相を呈しているのである。
江沢民一派が全力を挙げて権力闘争を勝ち抜き、新しい最高指導部の掌握に躍起になったのには、それなりの理由がある。
本欄で指摘してきた通りに今年の春頃から、共産党党内では胡錦濤国家主席が率いる共青団派の若手ホープの汪洋・広東省党書記が先頭に立ち「政治改革」を盛んに唱え、改革推進の機運が高まってきている。
汪氏たちの目指す政治改革は政治権力が市場経済に介入して作り上げた腐敗の利権構造にメスを入れ、それを打破することによって国民の政権に対する不満を解消することである。
だが、これまで二十数年間、全国で腐敗の利権構造を作り上げ、甘い汁を吸ってきたのはまさに江沢民一派とその関係者だから、彼らは汪氏たちがやろうとする政治改革を許せない。
その結果、今夏の段階で一度は固まった、改革派の汪氏と改革派に近い中央組織部長だった李源潮氏の政治局常務委員会入り人事が江氏ら長老たちによって潰され、「政治改革」への流れは見事に封じ込められたのである。
すべては江沢民一派の思惑通りの展開となっているが、残された大問題はむしろ、政治改革を断行することによって難局打開の突破口を作る機会を失った習政権がこれから、一体どうやって民衆の不満を解消して政権の維持を図っていくのか、である。
15日の党総書記就任の直後に行われた「就任演説」で習氏自身は、これといった政策ビジョンを示すことができなかったが、その代わりに、彼は頻繁に「民族」という言葉を持ち出して「民族の偉大なる復興」を熱心に唱えた。
つまり習氏は、「江沢民傀儡政権」のトップよろしく、10年前の江沢民時代の政治路線を継承し、ナショナリズムを高らかに掲げてそれを政権維持の柱にしようと考えているのだ。
今後、「冷めた餃子」の習政権の下で貧富の格差の拡大などの問題がよりいっそう深刻化し国内の混乱がさらに拡大してくると、対外的危機を作り出し国民の不満を外に向けさせるのが彼らに残された「最善」の選択肢となろう。
その時に、尖閣と日本は彼らにとっての格好の標的となりかねない。したがって日本としては、今後5年内における習政権の動きを注意深く観察しながら「その暴走」を大いに警戒すべきであろう。
◇
【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121122/chn12112211080000-n1.htm
焦点:中国の膨張で東南アジアに亀裂、交錯する歓迎と警戒
2012年 11月 22日 15:59
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[プノンペン/北京 21日 ロイター] カンボジアのプノンペンで今週開催された東アジア首脳会議では、野田佳彦首相やオバマ米大統領を含む各国首脳が現地入りしたが、会場入り口に横断幕が掲げられるほどの歓迎を受けたのはただ1人だった。そこには、「温家宝首相ようこそ」、「中華人民共和国万歳」と書かれていた。
各国首脳が去った後も横断幕は飾られたままだったが、それは、中国が実力行使や資金力を通じ、地域での影響力を強めていることを想起させる光景だった。中国はそうした影響力を使って味方を増やそうとする一方、領有権問題で対立する当事国や、武力拡大に懸念を抱く周辺国の神経を逆なでしている。
東アジア首脳会議に出席した外交官の1人は「いくつかの国はお金で簡単に踊らされる。現金を見せられると原理原則をたやすく捨ててしまう」と指摘。「中国は影響力を乱用しており、一部のアジア国家の忠誠心を金で買っている」と語った。
その最たる例はカンボジアだ。今回の会議で議長を務めたフン・セン首相は、中国の外交的勝利を演出するのを手伝った。中国は南シナ海の領有権問題では、解決に向けた協議を行き詰らせ、東南アジア諸国からの公式協議開始の申し出を拒み、オバマ大統領からの直接的な非難をかわした。評論家たちからは、今回の首脳会議の明らかな勝者は中国だとの声が聞かれる。フン・セン首相は、議長声明で南シナ海の問題については言及せず、領有権問題を争点化させないという中国の狙いを後押しした。
中国はここ数年、カンボジアへの投資や融資を加速しており、同国にとって最大の貿易相手国かつ2国間としては最大の債権国にもなった。カンボジアの対中債務残高は47億ドル(約3900億円)超に膨らみ、同国経済の約3分の1の規模となっている。
アナリストらは、こうした投融資の効果は今年になって実を結んだと指摘する。カンボジアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国としての力を使い、中国と関係各国の間で過熱する領有権問題をめぐる議論をコントロール。ASEANは親中国派と反中国派にはっきり色分けされる格好となった。
45年の歴史を持つASEANは全会一致を原則に成り立ってきたが、安全保障上の最大の脅威に直面し、その理念が揺らいでいる。今年7月のASEAN外相会合では、過去に前例がないほど議論が紛糾し、南シナ海の項目に盛り込む文言にで合意できなかったため、共同声明の発表が初めて見送られた。
今回行われた会合も、「南シナ海の領有権問題を国際化しないことで合意した」との声明草案を議長国カンボジアが用意したため、議論は決裂寸前までもつれた。親米国フィリピンがカンボジアに正式に抗議し、その文言は最終的な議長声明から削られた。
一方で中国は、「コンセンサスには至らなかった」というフィリピンの主張を笑いものにした。同国外務省の秦剛報道官は、10人中8人が国際化しないことで合意したというのはコンセンサスがあったということだと主張。「東アジア首脳会議の参加者は計算が得意に違いないと思う。2対8ではどちらが大きいだろうか」と皮肉った。
<海軍増強>
中国政府は、南シナ海でU字型の領海線を主張しているが、それはフィリピン、ベトナム、ブルネイ、マレーシアの沿岸ぎりぎりまで迫っている。この海域には、原油やガスなど莫大な天然資源が手つかずで眠っていると考えられており、中国とフィリピンやベトナムの艦艇の間では一触即発の状況が常態化しつつある。
向こう2年のASEAN議長国が小国ブルネイとミャンマーであることを考えると、中国と関係各国が抱える問題の外交的解決はあまり期待できそうにない。
メコン川流域に位置するカンボジア、ラオス、ミャンマーは、貿易や投資での結び付き強化を通じ、中国の経済圏に急速に取り込まれつつある。
温家宝首相が東アジア首脳会議で現地入りした当日には、カンボジア最大のセメント工場建設に中国が1億ドルを融資することが発表された。中国政府高官がカンボジアを訪問する際のこうした「お土産」は慣例的になっている。
中国は東南アジア各国との自由貿易協定の締結に向けて機敏な動きを見せており、ラオス、カンボジア、ミャンマーでのインフラ建設プロジェクトでも大きな役割を演じている。
東アジア首脳会議の終了後、温首相はタイを訪問。バンコクでインラック首相と会談し、タイからのコメ輸入拡大などで合意した。タイは米国の同盟国の1つだが、政府は農家の所得向上のためのコメ輸出拡大を進めており、今回の合意で中国との関係も大幅に強化されるのは間違いないだろう。
こうした外交努力が行き詰った場合、中国は東南アジア全体の軍事費をしのぐ予算を費やした軍事力を背景に、必要に応じて実力行使に訴える場面も増えてくるとみられる。
胡錦濤国家主席は先に行われた共産党第18回党大会での政治報告で、同国の海洋権益を断固として守ると言明。「われわれは、海洋資源の開発能力を高め、中国の海洋権益を断固として守り、中国を海洋国家としてつくり上げるべきだ」と強調した。
中国は南シナ海だけでなく、東シナ海では尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐって日本とも対立している。
中国には、成長を続ける経済を支える海洋天然資源開発を促進したいとの思惑があるが、同時に、外交政策を中東重視からアジア重視に切り替えた米国に「包囲」されるのを警戒もしている。
中国外務省のシンクタンク、中国国際問題研究所の阮宗沢副所長は「どんな説明を使おうと、米国が過去3年にわたって西太平洋に一層重点を置いているのが現実だ。それが中国にとっての懸案だ」と述べた。
中国海軍は今年9月、同国初の空母を海軍部隊に正式配備し、「海軍作戦能力が増強された」と強調。中国はまた、今年に入って2種類のステルス戦闘機の試験飛行も実施している。先月行われた試験で使われた機体は小型化によって機動性が高まっており、空母艦載機として開発中とみられている。
豪シドニーのローウィー国際政策研究所のアジア安全保障問題専門家、サム・ロゲビーン氏は「中国には海軍力で域内1位になるという野望があり、アジア太平洋での米国の優位性には深刻な脅威だ」と指摘。もし中国が空母2隻以上を配備し、高性能ステルス戦闘機を艦載すれば「アジアでは突出した海軍力になるだろう」と語っている。
(原文執筆:Stuart Grudgings and Terril Yue Jones、翻訳:宮井伸明、編集:梅川崇)
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