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【第2回】 2012年11月22日
株価で中国経済の動向を掴む 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
今回は、中国株式市場に関するウエブサイトを開いて、中国語の予備知識なしにデータを入手することに挑戦しよう。
株価は経済の体温計
どの国でもそうであるが、株価は経済の動向を知るための最も基本的なデータの一つだ。しかも、さまざまな経済データの中で、通常、最も早く入手できる。株価を見るのは、医者が患者の状態を大ざっぱに掴むために、体温を測るようなものである。
物価指数や貿易統計は、政府作成統計の中では比較的早く入手できるものだが、それでも実際の変化が生じてからデータが得られるまでに、1ヵ月程度の遅れがある。GDP統計などの高度に加工されたデータだと、速報でも数ヵ月の遅れになる。それに対して、株価データは、数時間の遅れしかない。だから、経済の短期的変動を見るには、まず参照すべきデータだ。株価は、将来の予測も織り込んでいるから、将来の展開を市場がどう評価しているかを知ることもできる。
また、長期的な推移も見ることができる。1990年代以降の日本の株価は長期的な下落を辿っている。また、経済危機後、アメリカの株価は、経済危機以前の水準を取り戻したのに、日本の株価は経済危機前の半分程度だ。これを見ていると、日本経済に基本的な問題があることが分かる。後に述べるように、中国の株価も経済危機後あまり上昇していない。これをどう解釈するかは重要な問題だ。
また、平均株価だけでなく、個別企業の株価のデータも簡単に見ることができる。投資家としては、個別企業の株価が関心のあるデータだろう。私のように、投資には関心がないが経済動向の分析には関心がある者にとっても、個別企業の株価は重要なデータだ。
暫く前までは、株価データを入手するのは、それほど簡単ではなかった。しかし、いまでは、ウエブで簡単にしかも無料で大量のデータをすばやく入手することができる。新聞であれだけの紙面を株価情報の報道に使う必要がどこにあるのか、私はいつも疑問に思っている。
歪んでいる中国の株式市場
中国の統計は、先進国のそれに比べて大変貧弱だ。また、信頼性の面でも問題が多い。そうした状況の中で、貿易統計と株価データは信頼できるデータであり、かなり豊富なデータが手に入る。
ただし、それは、中国の株価データが中国経済の実力を正しく反映しているという意味ではない。政府が戦略産業と見なしている分野は、国有企業によって独占、またはほぼ独占されている。したがって、中国経済の基幹部門・戦略部門は、依然として国有企業によって支配されており、自由な市場経済とは言えない面もある。
また、為替管理もなされている。後で見るように、これを反映して、株式の保有に制限がなされており、株価も複数のものが併存している。これは、自由な株式市場ではありえないものだ。このように、中国の株価は歪んでいる。
ただし、公式発表や公式統計ほどの歪みはないはずである。例えば失業率の数字は、大幅に過小評価されている。また、GDPの数字も操作されている可能性が高い。経済危機の直後も、電力使用統計との乖離が問題とされたことがあった。
株価については、少なくとも、数字そのものが操作されていることはないだろう。その意味では、貿易統計と並んで、中国経済の動向を最も正確に把握できるデータと言えるわけだ。
中国にはつぎの三つの証券取引所がある。
(1)上海取引所:ここには、エネルギーと金融分野を中心に、大手国有企業が多数上場している。
(2)深圳市場:ここに上場している企業は、比較的小規模だが、成長率の高い企業だ。
(3)香港取引所:ここには、大手企業が上場する「メインボード」と、中小企業が上場する「GEMボード」がある。
以上を反映して、中国の株価指数にはいくつかのものがある。これについては、後述する。
Yahoo!ファイナンスのサイトは便利
中国の株式データが入手できるインターネットのサイトはいくつかあるが、Yahoo!ファイナンスのサイトが便利だと思う。
その理由は、世界中の主要国にサイトがあり、それぞれの言語で表示されているが、各国がほぼ共通のレイアウトで作られていることだ。だから、日本のサイトを利用している人なら、中国のサイトを開いても、どこに求めるデータがあるかについて、ある程度の見当をつけることができる。
平均株価の他に、個別企業の株価も分かる。どちらについても、時系列データが分かる。チャートにして見ることもできる。また、各企業についての財務情報などの主要データが得られる。さらに、当該企業のサイトを開けば、きわめて詳細なデータが得られる(個別企業のデータについては、後の回で述べる)。
したがって、言葉を読めなくとも、かなりの程度はデータが得られるわけだ。
「财经首页」が「中国のYahoo!ファイナンスのホームページ」である。上で述べたように、日本のサイトとほぼ同じ構成だ。
きわめて多数の項目が示されている。それらの中には、何の予備知識なしにもすぐに読めるものがあるし、ある程度は見当がつくものもある。そうかと思うと、まったく見当がつかない不思議な字もある。面白いのでさまざまな項目を開いていると、振り回されてしまう。「自分は何を知りたいのか」をはっきりと決め、そのデータを得ることに専念するのがよい。
以下では、まず、平均株価を見て、中国経済の全体的な動向を把握することを目的としよう。
ページの右側に平均株価の小さなチャートが示されている。そのうち、「上证指数」が上海市場の、「深证成指」が深圳市場の、それぞれ株価指数である。まず上海市場のデータを見よう。
上海市場のデータを見る
「上证指数」をクリックすると、上海平均株価の大きなチャートが現われる。チャートの左上に、つぎのような言葉が現われる。
・分时图(当日の株価の推移を示す。图は「図」の意)
・日K线 :日罫線(つまり、「K线」が「罫線」であるわけだ。これは日本語の「罫線」を音訳したものに違いない。笑ってしまうような中国式株式用語である)
・周K线 :週罫線
・月K线:月罫線
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このうち周K线か月K线のいずれかをクリックすると、チャートの下に年数を表示するスケールが現われる。このカーソルを引っ張ると、期間を調整することができる。
スケールをこのように調整できると、短期を見たり長期を見たりが自由自在にできるので、大変便利だ。これは、Yahoo!の日本のサイトにはない機能だ(アメリカのサイトにはある)。
例えば、2001年以降の株価の推移を見てみよう。07年頃まで急上昇したあと、08年に世界金融危機の影響で急激に下落していることが分かる。他の国の株価もこの時期には同じような動きを示したが、日本やアメリカと比べて、上昇・下落の程度が大きい。中国の成長に対する過大な期待から、株価にバブルが生じていたわけだ。
その後回復したが、09年で頭打ちになり、その後は緩やかに低下している。これは、日本の株価と似た動向である。そして、アメリカの株価が経済危機以前のピークを取り戻したのとは対照的だ。
数字のデータを見るには、図の左にある「实时行情」(「实」は「実」、时は「時」、「行情」は「相場」)の中の「历史价格」(「历史」は「歴史」、「价格」は「価格」)を見ればよい(このデータの構造は、日本版と同じ)。
深圳市場も上海と同様に見ることができる。
香港の株価は、アメリカのYahoo!ファイナンスのホームページから、HANG SENG INDEX(香港ハンセン指数)を開けば見られる。英語で表示されているので、特別の説明なしでも読めるだろう。
いくつかの基本用語を文末の図表2にまとめた。いくつかのものに音訳を示したが、正確な発音は、goo中日辞書などを参照して頂きたい。
複数ある中国の株価
実は、中国の株価はかなり複雑な構造になっている。1つの企業に対して複数の株価が存在するのである。
上海市場には、A株とB株がある。A株とは、中国本土投資家のみが取引できる人民元建ての株だ(ただし、外国の機関投資家も許可ベースで投資することができる)。B株とは、それ以外の投資家も取引可能な外貨建ての株だ。A株市場とB株市場は隔離されており、同一企業でも、A株がB株より2倍程度高い場合が多い。人民元に対する管理が残る限り、この状態は続く。
以上を反映して、上海市場にはA株指数とB株指数がある。その両方に連動するのが上海総合指数だ。Yahoo!ファイナンスで見たのは、上海総合指数だ。
深圳市場にも、A株、B株があり、それに応じて、A株指数、B株指数、総合指数などがある。Yahoo!ファイナンスで見た「深证成指」は、シンセン40指数だ。
香港市場には、「H株」と「レッドチップ」がある。前者は、中国本土にある中国企業が香港市場に上場した場合だ。後者は、中国企業が香港で現地法人を作って上場した場合だ。
H株は香港ドル建てで取引される。外国人投資家にとっては、レッドチップ株よりH株の方が情報開示などの規範度が高いので、魅力的だ。日本で「中国株」という場合、通常はH株を指す。
香港ハンセン株価指数は、香港証券取引所で売買される銘柄のうち、48銘柄(香港市場の時価総額の7割を占める)を時価総額加重平均で算出したもので、アジアにおける重要な株価指数の一つだ。
これらについての詳細は、ブルームバーグの「世界の株価指数」で当該指数をクリックすると現われる。
これらの指数は、新浪财经でも参照できる。ホームページを開くと、右側にいくつもの株価指数がある。ホームページの左上に香港市場に飛べるボタンがある。
中国版ウィキペディアで株式用語の解説を読む
中国版ウィキペディアの「维基百科」に、株式市場の説明がある。このサイトは、日本語のウィキペディアで「証券市場」を開き、そこから「他言語サイト」の欄を通じて辿り着くことができる(この手法で、中国語のさまざまのウィキペディアページを開くことができる)。
股市や股票のページを開くと、いくつかの言葉が出ている。クリックすると説明ページに飛ぶ。英語が表示されている場合が多いので、すぐ分かる。
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焦点:1000億ドルの賭け、人件費上昇でも衰えない中国進出熱
2012年 11月 21日 13:34 JST 記事を印刷する | ブックマーク | 1ページに表示 [-] 文字サイズ [+]
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[北京 21日 ロイター] 元高や人件費の上昇など、海外企業の進出メリットが低下したと言われて久しい中国だが、今年の海外直接投資(FDI)は3年連続で1000億ドルを超える見通しだ。
同国へのFDIは月間ベースで減少を続けており、減少期間は2009年以降で最長となっている。
ただ、国連貿易開発会議(UNCTAD) の調べによると、2007年以降の対中FDIは総額6250億ドルに達する見通し。この間、輸出企業の利益率は元高の影響で25%低下している。
海外企業の進出先をめぐっては、中国から東南アジアへのシフトが進むとの見方が以前から出ているが、2007─11年のベトナム、バングラデシュ、インドネシア、タイへのFDIは、総額1416億ドルに過ぎない。
対中投資が衰えない背景には「低コスト生産」から「高付加価値生産」へ、「不安定な外需頼み」から「国内の新たな消費市場」への移行が着実に進んでいることがある。
<政府の戦略に合致>
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(香港)の中国担当チーフエコノミスト、ルイス・クイジズ氏はロイターに「これまでのところ、中国の競争力は脅やかされていない。影響を受けているのは、製造業の最下層企業だ」と指摘。「今の流れは、付加価値を高め、産業構造を強化するという政府の戦略にも合致している」と述べた。
政府は昨年12月に公表したFDIの指針で、先進製造業やサービス業(物流、研究開発、高等教育、職業訓練など)へのFDIを増やす目標を掲げている。
商務省・国際貿易経済合作研究院のシニアエコノミスト、李雨時氏は「政府は低価格志向の製造業へのFDIをもう奨励していない。推奨しているのは、グローバルに付加価値を高め、利益をあげられる企業への投資だけだ」と述べた。
<サプライチェーン、インフラが充実>
中国は、サプライチェーンやインフラが比較的整っており、海外企業の進出先として群を抜いている。
LGイノテック(山東省)のマネジメントディレクター、パク・ジョン・ホー氏は「すぐ近くに多数の部品工場があり、物流費を抑えられる」と指摘。「人件費だけを考えれば東南アジアに行く。ここにいるのは人件費のためではない」と語る。
政府統計によると、中国の最低賃金は現在、月870元(139ドル)─1500元。ベトナムは105万ドン(50ドル)だ。
1─10月の対中FDIは前年同期比3.45%減。2002─2011年は年平均9.2%増で、FDI総額は1兆2000億ドルに達していた。
シティグループ(香港)の中国担当エコノミスト、沈明高氏は「中国の製造業は設備過剰で、投資機会は限られている」と指摘。「中国経済が今後10年間、6─8%の成長を維持すると確信が持てれば、中国は魅力的な市場と言えるだろう。ただ、今後はサービス業や消費の拡大、産業の高度化といった構造変化が起きるはずだ」と述べた。
<サービス業が逆転>
構造変化はすでに起きている。
政府統計によると、1─10月のサービス業へのFDIは437億ドル、製造業へのFDIは404億ドルだ。サービス業へのFDIは、昨年初めて製造業を逆転した。
世界銀行の統計によると、中国の国内総生産(GDP)に占めるサービス業の比率は昨年時点で43.3%。先進国の60─70%を大きく下回るが、それでも製造業の46.6%と肩を並べる水準に成長している。
政府は、サービス業の比率を2015年までにGDPの47%に引き上げたい考えだ。
<内陸部へのFDIも増加>
一方で、海外企業は、人件費の安い内陸部への進出も進めている。
電子機器受託生産大手の鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)は、河南省、山西省などの内陸部に主力工場を移した。山西省だけで8万人近くを雇用している。
1─10月の対中FDIのうち、中部6省(河南、湖南、湖北、安徽、江西、山西)へのFDIは前年同期比19.4%増の78億ドル。全体の8.5%を占めた。
東部沿岸省(広東、江蘇、浙江、山東)へのFDIは6.1%減。ただ、投資額は768億ドルと、全体の84%を占めており、海外企業が依然として実績のある沿岸部を選好していることがわかる。
ソシエテ・ジェネラル(香港)の中国担当チーフエコノミスト、ヤオ・ウェイ氏は「2つの傾向が同時進行で進んでいる。企業はコストとメリットを天秤にかけているようだ」と指摘。「ただ、誰もが中国を潜在的な消費者市場として考えている。その意味では、まず中国内陸部に進出するのは理にかなっている」と述べた。
(Kevin Yao記者;翻訳 深滝壱哉;編集 宮崎亜巳)
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