http://www.asyura2.com/12/china3/msg/339.html
Tweet |
腐敗した中国共産党に衰退する王朝の兆し
2012年11月16日(Fri) Financial Times
(2012年11月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
北京の古代庭園「頤和園(いわえん)」の真ん中にある静かな湖には、すべて大理石で造られた遊覧船が浮かんでいる。この船は今なお、中国最後の王朝の腐敗と衰退を最も端的に表す象徴だ。
清王朝は267年間にわたって国を支配した後、1911年に共和主義革命によって倒された。海軍に割り当てられていた資金を大理石の船の代金支払いに流用した西太后の死から3年後のことだ。
清王朝の頃は大理石の遊覧船、今は豪邸とベントレー
新指導部を選出したばかりの中国共産党だが、緩やかに衰退していく王朝の典型的な兆候が見られる〔AFPBB News〕
中国共産党は11月15日、60年以上前にソ連から輸入したレーニン主義モデルによく似たままの組織体制の下で、今後10年間君臨する新指導部の顔ぶれを明らかにした。
今回の移行では、中国の多くの人はいや応なく王朝衰退の兆候を探し、実際にそれを見つけている。
大理石の船の現代版は、豪邸が集まる北京郊外の住宅街に見ることができる。壁で囲まれた住宅街では、人民解放軍の驚くほど裕福な将校たちとその家族がベントレーを駐車させ、自分たちの財産を数えている。
西側の外交官の中には、中国の軍事予算の40%程度が汚職によって流用されていると推定する向きもある。
人民解放軍の幹部たちの一団が今週、天安門広場にある人民大会堂の階段を上った時、その多くが恰幅のいい太鼓腹をしており、ある党員は本紙(英フィナンシャル・タイムズ)に対して、太りすぎの将校ほど構造的な弱さを如実に示すものはないと皮肉交じりに話していた。
ジョージ・ワシントン大学のデビッド・シャンボー教授は中国の政治制度に関する専門家で、国民のニーズを満たすために状況に適応する共産党の不思議な能力について盛んに書いてきた。しかし今、シャンボー教授は、共産党が因襲的な型にはまり、王朝衰退の典型的な兆候を示し始めていると主張している。
相対的に弱くなった指導者
これらの兆候には、誰も信じていない中身のない国家イデオロギー、縁故主義、政治に対する国民の無関心、完全には文民指導者の管理下にない独断的な軍部、汚職の横行、資本逃避、社会的悪習の高まり、体制最上部の派閥主義などがある。
「皇帝が自らの権威を確立できない時は必ず、中庭の側室たちが一段と激しく争い合う」。毛沢東やケ小平のような過去の指導者が掌握していた権力と比べ、近年の国家主席たちが相対的に弱いことに触れながら、シャンボー教授はこう話す。
党大会での「中国的特徴を持つ社会主義」に関する今週の演説を聞いた人なら誰でも、党のイデオロギーが、大部分の中国国民にとって何の意味もない論理の歪みに退化してしまったことに同意せざるを得ないだろう。
今年、西側のメディアで明らかになった一部の党指導者の莫大な富の実態は、共産党がいかに激しく腐敗したかを垣間見る機会を与えている。
エリート層が抱く不安と不信
恐らく最も多くを物語る事実は、上流階級の中国人が外国のパスポートや不動産、銀行口座の取得に見せる熱意や、自分たちに非常に大きな利益を与えてくれた体制から出ていくことに対して見せる意欲かもしれない。
次期国家主席の習近平氏が、同年輩の中国人の多くと同様、自分の娘を米国(ハーバード)に留学させているという事実は、体制に対するエリート層の不安と不信を示す象徴だ。
中国政治の専門家で『China’s New Rulers(邦題:中国権力者たちの身上調書)』の共著者であるコロンビア大学のアンドリュー・ネイサン教授は、共産党自体が、政治体制が弁護不能だと気付いているように見えると指摘する。
共産党は、トップダウンの権威主義という現実を認める代わりに、自らを「社会主義的民主主義」「人民の民主主義」、あるいは「中国的特徴を持つ民主主義」と呼びながら、党が民主的であるふりをしていると教授は言う。
もう1つの戦術は、体制が変化を必要としていることを認める一方で、共産党は混乱を避けるためにゆっくりとしたプロセスを通じて体制を改善していると主張することだ。そして多くの場合、共産党はこの2つの主張を同時に展開し、今の体制は既に中国にとって考えられる最善のものだが、共産党は「それ以上に完璧」な体制にすると主張するのだ。
By Jamil Anderlini in Beijing
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36557
胡錦濤時代の10年、急激な変化と逃したチャンス
2012年11月16日(Fri) Financial Times
(2012年11月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国共産党の第18回党大会で開幕演説を行う胡錦濤氏〔AFPBB News〕
胡錦濤氏が共産党総書記に就任してからの10年間で、中国経済の規模は世界第6位の1兆5000億ドルから、米国に次ぐ世界第2位の7兆3000億ドルに拡大した。
2002年以降、1人当たりの国民所得は1135ドルから5445ドルへと3倍以上に増え、中国はカーボベルデと同レベルの低所得国からモンテネグロに近い中所得国に変貌を遂げた。
当時は都市部に住む住民の割合が38%だったのに対し、現在は50%に上る。当時は中国に高速鉄道はなかった。今では(確かに世界一安全ではないが)世界最長の高速鉄道網がある。
胡氏が最高指導者の地位に就いた時、中国のインターネットユーザーは4500万人にすぎなかった。任期の終わりを迎えた今、6億人近い中国人がインターネットを利用している。
「失われた10年」とも言われる時期の著しい成長
時として失われた10年――あるいは、少なくとも機会を逃した10年――を指揮したと言われる国家主席にしては、胡氏の成績はそれほど悪いように思えない。
中国の成長のスピードはあまりに猛烈だったため、中国が実際どれほど前進したのか改めて思い起こしてみることには価値がある。胡氏が実権を握った時、中国は世界貿易機関(WTO)に加盟したばかりだった。
その後、輸出がケタ外れに伸びる時期が続き、経常収支の黒字は前代未聞の――かつ、まったく持続不能な――国内総生産(GDP)比10%に拡大した。幸い、今はその比率が4%程度にまで低下している。
人民元は、少なくとも部分的にはドルから解き放たれた。以来、元は30%以上上昇した。中国は投資の矛先を沿岸部の省から内陸部の省へ切り替え、農業税を廃止し(農民の暮らしを向上させ)、社会保障制度の基礎を構築した。さらにオリンピックを主催し、世界をあっと言わせる開会式でその力を見せつけた。
中国は宇宙に人を送り込んだ。史上最大の景気刺激策で世界金融危機を乗り切った。未完成のウクライナ製船体から造られたものとはいえ、中国初の空母も就役させた。
また、そもそも胡氏が権力を移譲するという事実についても考える価値があるだろう。権力移譲のプロセスは不透明かつ完全に非民主的で、そもそもやる価値があるのかという疑問さえ生じかねないほどだ。毛沢東は権力を手放すことなど考えたこともなかった。2002年になってようやく、江沢民の引退と胡氏の昇格で、中国は世代交代による権限移譲を制度化した。
経済改革では零点の評価
上記の変化はとてつもなく大きな功績だ。それでも胡氏は、成果と同じくらい失敗によって記憶される可能性がある。リベラル派の有力エコノミストの茅于軾氏は「富の創造という点では、過去10年は大成功だった」と言う。一方、経済改革という点では、胡氏に零点をつける。
この10年間で投資への依存度は一段と高まった〔AFPBB News〕
茅氏は、経済のリバランス(再調整)について語りながら、経済を一段と歪めてしまったとして胡氏を批判する。固定資本投資はGDP比50%という異常な水準まで上昇し、不動産価格は急騰した。「遅かれ早かれ、危機が起きるはずだ」と茅氏は言う。
胡氏が後継者に残す危険を積み上げたかどうかはともかく、批判的な向きは、同氏は単に前任者たちが解き放った「経済のドラゴン」に乗っただけだと指摘する。
過去10年間の成長の大半は、朱鎔基が1998〜2003年に首相として指揮した国営企業の改革と、破綻寸前だった銀行システムの改革に起因している。
胡氏は大胆さを欠いた。恐らく、河川工学の専門家が大胆なことはめったにないのだろう。石江涛氏はサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙への寄稿で、胡氏のことを「共産党体制の凡庸さ」を体現する「内気な政治局員」と呼んだ。
和諧社会も実現できず
「和諧社会(調和の取れた社会)の構築」に関する胡氏の発言はまことに結構だった。だが、胡氏の指揮下で社会は調和を失った。環境悪化、地方政府の腐敗、違法な土地収用に対する抗議は著しいレベルに達したため、今や国内の治安維持費が国防予算を上回っている。
インターネット上の世論は、多かれ少なかれ手に負えなくなった。チベットと新疆では、抗議行動と弾圧が起きている。
共産党の新総書記に選出された習近平氏〔AFPBB News〕
習近平氏の下でどれほどの変化を見込めるのか予想するのは難しい。前出の茅氏は、開放の進んだ時代に育った習氏に大きな期待を寄せている。多くの学識者は、社会的な緊張が沸き立つのを防ぐためには、民主主義に向けて大きな前進を遂げなければならないと主張している。
経済的には、変化は既に始まっている。最新の5カ年計画は、以前よりペースの鈍い7%成長について語っている。この計算に組み込まれているのは、投資から消費へのシフトだ。
これは長年繰り返されてきたスローガンだが、多くのエコノミストは今、人口動態の変化で輸出主導の経済モデルの適応を迫られることもあり、今度こそ消費へのシフトを実現しなければならないと考えている。労働人口に占める若者の比率が下がると、当然、賃金に振り向けられるGDPの割合が高まるはずだ。
習近平氏が直面する難題
妥当な仮定に基づくと、中国経済の規模は、習氏の在任期間中に2倍に拡大するだろう。そうなると、中国経済は購買力平価(PPP)ベースで米国経済より大きくなる。また、危機を回避すれば、経済の基盤がより持続可能なものになるはずだ。
マッキンゼーは、民間消費が2020年までにGDP比45%に上り、その頃に36%に低下している投資を抜いていると見ている。胡氏は経済規模を4倍以上に拡大し、一部から失敗の烙印を押されている。習氏は、経済を2倍に拡大して成功と判断されることを祈らねばならないのだ。
By David Pilling
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36559
政治局常務委員人事はコップの中のオセロゲーム?
習近平国家主席誕生〜中国株式会社の研究(189)
2012年11月16日(Fri) 宮家 邦彦
共産党中央政治局常務委員の7人が正式に決まった。多くが「江沢民派」と「太子党」で、純粋の「胡錦濤系」は李克強のみ。市場では守旧勢力の跋扈に失望の声も聞かれるが、「中国株式会社」にとって今回の人事は吉なのか、凶なのか。いつもながら筆者の勝手な独断と偏見をご披露しよう。(文中敬称略)
失望と落胆?
新しい政治局常務委員習近平新総書記(上)、(中段左から)李克強、張徳江、兪正声、(下段左から)劉雲山、王岐山(、張高麗〔AFPBB News〕
今回の人事は昔の自民党と同じ「コップの中の嵐」だ。確かに共産党内では10年に1度の大事件。だが、非共産党員たる12億強の一般中国人はこれを冷ややかに見ているはずだ。
最近経営が傾き始めたこの巨大な非上場企業、官僚化した経営陣にいまさら何ができるだろう。
そもそも彼らは本当に「江沢民派」、「上海閥」なのか。
天邪鬼の筆者は大いに疑問だ。齢86歳の老人が現在も現役で派閥を率いているとは思えない。仮にそうであっても、江沢民はいずれ消える。将来ある共産党若手なら、既にポスト江沢民の道を模索しているだろう。
既得権を継承して既存派閥の次期ボスを目指すか。それとも、新たな利権を発掘・獲得し新派閥を自ら立ち上げるか。手法は様々だろうが、もし、1人の人間だけに忠誠を誓い最後まで二股をかけない中国の政治家がいるとすれば、是非一度お目にかかりたいものだ。
筆者は、「江沢民派」、「太子党」、「胡錦濤派」の対立などという単純な説明を信じない。
要は、党内に「江沢民派」と呼ばれる既得権益を死守する別々の諸集団と、その既得権を一部でも制限しようとするグループがいるだけの話。彼らは所詮「同じ穴の狢」と見るべきだ。
胡錦濤は完全引退?
出張先で偶々読んだ11月14日付朝日新聞と日本経済新聞は関連記事の見出しが対照的だった。前者は1面トップで「胡総書記完全引退へ」「江氏の影響力も排除」、後者では3面で「習氏健康問題、火種残す」「胡氏、長期院政ねらう」と書いてある。
中国共産党の第18回党大会に出席した江沢民〔AFPBB News〕
朝日の読みは「胡錦濤は江沢民を道連れに完全引退し、習近平に恩を売って影響力を残す作戦」。
これに対し、日経は「胡錦濤が5年後の習近平病気交代をも念頭に長期院政を目指す」と見ている。さて、一体どちらが正しいのだろう。
今回の常務委員人事にはあまりサプライズがなかった。比較的早い段階で、既に当確の習近平・李克強に加え、江沢民に近いと言われる張徳江と劉雲山および実務派の王岐山が予想通り準当確となり、最後に、やはり江沢民に近いとされる愈正声と張高麗が選ばれたからだ。
女性の劉延東・国務委員、胡錦濤に近い李源潮・党中央組織部長と汪洋・広東省党委書記、第6世代の若手有望株は揃って落選した。胡錦濤が「江沢民を道連れに完全引退」したのであれば、胡錦濤系と言われる共産主義青年団出身者がもう少し選ばれてもよさそうだが。
筆者は日経の分析の方が共産党内権力の実態に近いと考える。朝日はナイーブにも「引退した党高官の政治介入を禁じる内部規定を定め、長年続いた『長老政治』に終止符を打とうとした」などと報じたが、そんな内部規定など一体誰が守るというのだろう。
そもそも、中国共産党の総書記は最高権力者だ。「失脚」することはあっても、「完全引退」など、やりたくても、させてもらえないだろう。毛沢東、ケ小平はもちろん、江沢民ですら、最後の一瞬まで、政治権力に固執し続けたことを忘れてはならない。
習近平の力量?
習近平・新総書記は筆者と同じ1953年生まれ。今回選ばれた7人の中では最も親近感を覚える政治家だ。文化大革命中の彼の苦労は並大抵ではない。党長老の「受け」も良いと言われるが、「慎重な改革派」として敵が少ないのも政治指導者として重要な素養だろう。
しかし、不安がないわけではない。
現在の中国には政治・経済・社会各方面で大胆な改革が必要だと思うが、習近平にそうした大胆なイニシャティブを取る覚悟はあるだろうか。仮にあったとしても、総書記就任直後の彼に強力な政治的指導力を求めるのは難しいと思う。
それでは、習近平は安全運転に徹するのかと言えば、そんな余裕もないはずだ。経済格差の縮小、不正腐敗の是正、政治改革の断行なしに共産党が生き延びることはもはやできない。中国共産党の改革にとって習近平政権は最後のチャンスとなるかもしれない。
コップの中のオセロゲーム?
完全引退する(?)胡錦濤前国家主席〔AFPBB News〕
今回の人事は江沢民系の人々の圧勝だった。だが、5年後には逆に胡錦濤系が圧勝するとの見立ても少なくない。
トップ2人以外の常務委員はいずれも年齢が60代中頃、2017年には定年を超え、引退せざるを得ないからだ。
今年は黒い駒が多いが、5年後は逆に白が多くなる。1回ごとに白と黒が入れ替わる中国共産党版「オセロゲーム」とも言えるだろう。
このコップの中のオセロゲーム、あれだけの大騒ぎにもかかわらず、あまり面白みはなかった。一体なぜだろう。
オセロの駒の色が白と黒しかなく、他の色彩が排除されているからだろうか。こんなモノクローム無声映画のようなゲームに興奮する観客がいるのだろうか。映像の中で人は動いているが、弁士の解説ばかりで、登場人物の肉声は一切聞こえない。
世の中はカラー、3D、CG映画が当たり前。こんな無声映画館に観客は来ず、劇場はいずれ潰れるだろう。当然ながら、中国共産党が将来そうならないという保証など何一つないのである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36562
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。