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『週刊東洋経済』(2012/11/10号):「中国リスク ―領土、景気、反日、政争― 対立長期化に備えよ」(特集/徹底検証「中国リスク」)に掲載されている中国進出日系企業に関する記事である。
末尾に、関連記事として、日経新聞の「フォックスコンの工場でまた暴動 アップル製品受託」 を引用した。
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「週刊東洋経済」P.50
「中国で日系企業はどう報じられているか」
財新メディア リサーチャー 舛友雄大
なぜ日系企業は過小評価されるのか。中国メディアで働く日本人が解説。
9月に中国各地で発生した反日デモで、日系企業はどんな影響を受けたのか。中国の有力経済誌『第一財経週刊』は特集を組んで詳しく報道していた。同誌の記者に聞くと、実は反日デモの前から日系企業の中国での不振ぶりについて、取材を進めていたという。
なぜ、日系企業はこんなに弱くなったのか―。これこそが、中国の経済メディアが日系企業を報じるときに最も目立つ切り口である。中国の庶民が少しずつ所得を増やしつつあった1980年代、90年代には、パナソニックや日立製作所の家電製品は高嶺の花だった。それに比べ、現在の中国で日系企業の製品の存在感は大きく後退した。その理由を、日系企業のイノベーション能力やマーケティングカの劣化に求める傾向が、中国メディアに広く見られる。
もう一つのホットなテーマは、中国現地法人の体質への批判だ。中国では2010年に、日系企業の労働者によるストライキが多発した。中国メディアはしばしば、日系企業では労使問のコミュニケーション不足や罰金制度による締め付けが労働者の不満を高めていると指摘する。中国の学生の問では「欧米系に比べて日系企業の給料は低く、幹部に登用される機会も少ない」というイメージが根強い。
中国の経済規模が日本のそれを超えたことで、今日の中国社会では日本企業の実力が過小に評価されがちという面もあるかもしれない。しかし、日系企業の情報発信の弱さゆえという部分も否定できない。
欧米企業は報道を使い
中国政府に圧力
実際、欧米企業はあらゆる手を使って中国メディアを利用している。たとえばある経済誌には最近、スペインの原子力発電関連企業が共同で、「中国の原発市場への参入障壁などについて取材しないか」と打診してきたという。自国企業を優先する中国政府を、報道で牽制する狙いだろう。駐中国スペイン大使館もその後押しをした。
米国や欧州の企業では、それぞれの在中国商工会議所などを使った動きも盛んだ。彼らは頻繁にリポートをまとめて記者会見を行い、地元メディアに報道させることで中国政府に圧力をかけている。
歴史認識の問題を背負う日系企業には、情報発信の結果、誤解などからマイナスの影響が出ることへの警戒感が強い。欧米企業のように結束して何かを訴えるうえで、そのことは大きな障害になっている。
日系企業が、特に反日デモ後に慎重にならざるをえないのは理解できる。だが、中国の世論は多様化している。声高に批判されているときも、実は少なくない支持者がいるのだ。地元の記者と日頃から付き合っていれば、中国社会がどういった流れにあるのかはよくわかるはずだ。
日本企業が中国で「日本ブランド」を背に勝負できる時代はすでに終わった。むしろ対日感情の悪化で、「日系」には負のイメージすらつきつつある。中国で事業展開する日本企業にとっては、自らをグローバルブランドとして訴求し、認知されることが有力な選択肢かもしれない。
中国で好調な日系ブランドの一つが、若者から圧倒的な支持を得ているユニクロだ。ことさら「日本」をうたわずとも、低価格で高品質な商品とサービスのよさで人気を集めている。グローバルブランドを目指す同社の姿勢の中に、中国市場での生き残り策もあるように思える。
ますとも・たけひろ●1985年生まれ。20−0年カリフオルニア大学サンディエゴ校大学院で修士号取得、同年8月より北京で「財新」勤務。
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「週刊東洋経済」P.51
「日中の対立続けば労使関係に必ず影響」
賃金の高騰、頻発するストなどの労働紛争―。雇用問題が中国進出企業のリスクとなる場面が増えてきた。問題の背景は何か、中国労働法学の第一人者で、2010年のホンダ系部品メーカー「南海本田」のストでは労助者側の法律顧問を務めた中国人民大学の常凱教授に問いた。
―9月の反日デモでは日系企業に大きな被害が出た。日中の関係悪化が今後、従業員の行動に影響する可能性はあるか。
確実に影響する。そもそも日系企業は労使間の乱轢を生む要素をつねに抱えている。従業員の管理手法、給与水準、コミュニケーションのあり方などに改善すべき点が多い。給与を例に取ると、業績が良好であるにもかかわらず、従業員には最低時給を若干上回る程度の額しか支給していない企業が散見される。「違法ではない」という最低条件を満たしていても、労働に報いるという考えには乏しい。
日系企業は日本では良好な労使関係を築けている。にもかかわらず、中国では従業員を廉価な労働力としか見なさない「ダブルスタンダード」の状態だ。労働者の日系企業への不満が募る中、外交や政治の問題は爆発の引き金となる。
労組は労働者を制御できない
―日系企業以外でも、鴻海精密工業のような台湾企業や中国の地場企業で大規模なストライキが目立ってきた。
背景は日系企業とはまったく異なる。鴻海のような企業の問題は賃金などの待遇ではなく、従業員の自由と権利を厳しく制限している点だ。極めて巨大な工場で何万人にも上る労働者を管理するために、軍隊式とでもいうべき厳格な管理体制を敷いているのだ。私自身、鴻海の郭台銘董事長に管理体制を見直すよう提言したことがあるが、残念ながら改善はされなかった。
―労働者の考え方に変化はあるか。
数年前まで労働市場の中心だった「農民工」と呼ばれた労働者は、農村出身で教育水準が決して高くはなく、カネが稼げれば基本的には満足する集団だった。
だが現在は1980〜90年代生まれの教育を十分受けた若者が中心。インターネットなどを使って能動的に情報を収集し、自身の労働環境が公平かどうか判断する能力がある。権利意識も強く、不公平だと思うことがあれば声高に主張することをいとわない。
一方で中国の労働組合(工会)は会社側主導で結成された“御用組合”というのが実態。若く主張の強い労働者が御用組合との共闘姿勢を示すことは基本的にない。デモやストライキといった活動は自然発生したリーダーに率いられて運営されており、組合では制御できていない。
―労働争議は社会情勢も不安定にする。習近平政権はこの問題に対し何か方針を打ち出すか。
新政権が直面せざるをえない重要な課題であることは確かで、習近平自身が問題意識を強く持っている。安定した労使関係がなければ、持続的な経済成長はありえないからだ。
常凱中国人民大学教授
Chang Kai●1952年生まれ。労働法学博士。2008年施行の労働契約法では草案起草に参加した。
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フォックスコンの工場でまた暴動 アップル製品受託
【北京=多部田俊輔】世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)会社、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の中国子会社である富士康科技集団(フォックスコン)の広東省深セン市の工場で9日夜、従業員の暴動が起きた。富士康関係者が12日、明らかにした。米アップルの製品や部品を受託製造している主力製造拠点で、富士康は「生産には支障がない」としている。
香港メディアによると、賭博に対する警備員の取り締まりを巡って従業員、約5000人が暴動を起こした。施設を壊し、警官隊が出動した。鴻海は「約200人が集まっただけですぐに解決した」としている。同工場の従業員は20万〜30万人で2010年には10人以上が飛び降り自殺をした。アップルの生産拠点では四川、山西、河南省の工場でも暴動が起きた。
[日経新聞11月13日朝刊P.8]
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