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外国資本流入をベースとして20年近く続いた中国経済の高度成長が曲がり角に立っていることが事実だが、記事や一部経済学者が指摘するような“労働力不足”とか「ルイスの転換点」に到達というのは錯誤である。
中国の第一次産業人口は3億人で全人口の22%(日本の1965年レベル)を占めている。
農民一人当たりの農地0.6haで、狭いとされる日本の2.7haよりも格段に狭い。
中国は、良し悪しは別として、“近代化”をより進めようと考えたら、農業従事者の数を減少させ、農業における1人当たり付加価値額(生産額)を高めなければならない。そのような過程で発生する農村の余剰人口は、工業及び第3次産業を基盤とする都市が吸収するしかない。
中国の失業統計は、都市戸籍を持つものという限定的なもので、実数は不明だが、温首相が2、3年前に発した“失業者は2億人”という話も、保護された低生産性の国営企業で働いている“余剰人員”を考慮すればそれほど誤ってはいないと思われる。この“余剰人員”の受け皿拡大も、今後の重要テーマである。
中国経済の成長鈍化は、中国経済の成長段階や国際経済状況との関係で説明できることであり、“労働力不足”を持ち出して説明するのは誤りである。
「ルイスの転換点」も、中国政府が採っている“賃金引き上げ”政策(まっとうな政策)の結果として現象していることで、政策のタガを外したり、製造拠点を内陸部に置けば、“低賃金労働者”の確保はまだまだ可能である。
中国政府が、低賃金労働力を支えとした労働集約的産業から資本集約的な産業へのボトムアップを“賃金引き上げ”を通じて志向していることが、「ルイスの転換点」到達として見られる要因でもある。
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[エコノフォーカス] 中国 、根深い成長鈍化:日本の輸出先、米に首位交代か 若年層減り労働力不足
日本の最大の輸出先がほぼ4年ぶりに中国から米国に交代する可能性が出てきた。日中関係の悪化という足元の事情にとどまらず、中国の成長力の低下というより根深い要因を挙げる声が目立つ。輸出の勢いで浮かぶ「米中再逆転」の様相は日本の政策や企業の戦略を再考する機会になる。(高見浩輔、財満大介)
第一生命経済研究所が季節要因を除いて算出した輸出額によると、今年4〜6月期に中国向け(約2.9兆円)が米国向け(約3.0兆円)を14四半期(3年半)ぶりに下回った。中国への輸出は電子部品や鉄鋼が落ち込む半面、新型の天然ガス採掘に沸く米国向けは鉱山用機械が堅調。自動車用部品も伸びた。
2008年の米国発の金融危機(リーマン・ショック)を境に日本の輸出先の主役は交代した。四半期で危機前に4兆円を上回っていた米国向けが1兆円台に沈んだ半面、中国向けは3兆円前後で推移し、日本の外需を支えてきた。12年に入り両国向けの輸出額は2兆円台で急接近した。
中国経済の減速は鮮明だ。実質成長率は7〜9月期(7.4%)まで7四半期連続で低下。日中関係が冷え込んだ影響は尾を引きそうだ。「今年度は米国が4年ぶりに輸出先の首位になる可能性がある」と第一生命経済研の永浜利広主席エコノミストは予測する。
近年、経済学者の話題は中国が「ルイスの転換点」に達したかどうか。英国の学者アーサー・ルイスが示す考え方で、農村から都市への労働力の供給が底をつき、人手不足に陥る状態を指す。
統計は転換点を印象づける。中国の求人倍率は10年1〜3月期に1倍を超え、人手不足に転じた。成長率が政府目標(7.5%)を下回った今年7〜9月期でも1.05倍と高止まりした。工場労働者やトラック運転手の不足が目立ち、内陸部も倍率は1倍を超す。
さらに深刻なのは若年層の縮小だ。平均退職年齢が50代前半といわれる中国での採用は10〜30代が中心。みずほ総合研究所などによると、中国の人口は15〜39歳だけなら05年の5.6億人をピークに減り、30年に4.4億人まで細るとの予想もある。移民を受け入れ、若年層を補う米国では雇用の過剰感が根強い。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは中国が約2年前にルイスの転換点に達し、潜在成長率が6〜7%に下がったと分析。リーマン・ショック後の4兆元の財政出動が「問題の発覚と対策を遅らせた」と指摘する。
経済産業省は中国に偏らずに需要を取り込むため、米国を含めた環太平洋経済連携協定(TPP)や自由貿易協定(FTA)の拡大に取り組むよう訴える。自動車や工作機械のメーカーから「英語圏を見直し、輸出戦略を再調整する必要がある」との声も出始めた。
[日経新聞11月5日朝刊P.3]
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