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2012.04.17 習近平とはだれか(リベラル21)/習近平はなぜ「共産中国最弱の帝王」とよばれるのか
http://www.asyura2.com/12/china3/msg/135.html
投稿者 gataro 日時 2012 年 4 月 18 日 13:32:23: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-1953.html

2012.04.17 習近平とはだれか
――八ヶ岳山麓から(28)――
阿部治平
(もと高校教師)


私は日本の中国に関する新聞記事や中国専門家の著作に、ちょっと違うと感じることがときどきある。自分が長年接してきた中国人の生活感覚とずれているのである。
たとえば「言論・出版の自由」を論じるとき、欧米・日本のメディアは中国共産党の言論抑圧によって中国人が苦しんでいるように描く。だが、民主と自由を切実に求めているのは言論界の一部である。インテリの多くはさわらぬ神にたたりなし、つまり知らんぷりしている。
庶民(「老百姓」)のかなりは、中国初のノーベル平和賞受賞者が投獄されている事実すら知らない。知らなくても暮らしていけるからである。政府機関や資本家やそのほかの権力者の行動によって、自分たちの生活がわるくなっても、たとえば水や空気の汚染で生命の危険がやってくることを知っても我慢する。
「老百姓」は贈収賄もあたりまえだと思っている。裁判すら「走後門(裏口へ行く)」で何とかなることもある。自分も必要なときには贈物をし、また多少ともコネや権力のあるものはそれなりの金品をもらい、適当に処理しているのである。
大都市の政治に関心のある人なら、中国の官界・経済界・軍のトップクラスが閨閥や損得勘定で密接に結びついていることがわかっている。胡錦濤総書記の長男胡海峰は大手パソコンメーカー精華同方のトップ、温家宝総理の長男温雲松は金融・不動産開発など多分野の事業家だと知っている。もっと事情通なら次期総書記とされる習近平のきょうだいは大金持などということも知っている。
人々は政財界最上層の特権と利益独占に不満を抱くことはあるが、仲間内の雑談で腹の虫をおさめる。腹を立てても腐敗を摘発したり、言論の自由とか司法の独立、環境汚染反対などといって運動などやる気はない。それで捕まったら生きて出られるかどうかもわからない。デモが許されるのは反日のときだけである。

こうした「老百姓」から最上層までの感覚をよく承知したうえで書かれた中国政界分析がある。
矢板明夫著『習近平――共産中国最弱の帝王』(文藝春秋)である。
「最弱の帝王」とは奇妙な副題だが、著者によれば習近平は派閥の妥協と均衡によって次の党大会で中国最高位の次期共産党総書記に選ばれる人である。中央の派閥のどこにも借りがある。したがって中国の国力が史上最高に達したところに生れる、歴代の指導者中もっとも求心力の弱い人という意味である。
毛沢東は革命を指導して皇帝の地位に這いあがった。ケ小平は危機に瀕した中国を市場経済の導入によって救ったと誰にでも認められる人物だ。江沢民と胡錦濤はカリスマケ小平に指名されてその地位に就いたから一応の正統性をもっていた。習近平はそうした権威がどこにもない最高指導者である。だから「最弱の帝王」である。

著者矢板明夫は「産経新聞」の記者である。
私は「産経新聞」を毎日読む。読むたび自分の頭の中を鏡で映して見る思いがする。安保堅持と反安保、憲法改悪と憲法擁護、対米従属と対米独立、天皇崇拝と非崇拝、反中国と非反中国など左右反対だからである。ある時期、「産経」の民主党政権批判が日本共産党の「赤旗新聞」によく似ていた。それに「産経」は江沢民死亡などというみっともない誤報をしでかす。編集局首脳が反中国で凝り固まっているからガセネタを見破れない。
ところが、北京上海発の記事はよくできている。これこそ「産経」が自慢できるところだ。
とりわけ矢板記者のルポはリアリズムにおいて優れている。本ブログ拙稿でも彼のルポを2度引用した。彼のルポは、現場での綿密な聞取りの跡がありありと見える。内モンゴル牧民の轢殺事件についてのルポでは、モンゴル人への一方的な同情ではなく、上層の漢人幹部と企業の関係、政府のモンゴル民族厚遇策、最下層の新移住漢人の不満がよく書き分けられていた。
『習近平――共産中国最弱の帝王』は、第1部習近平はなぜ選ばれたか、第2部謎に満ちた習近平の人間像、第3部習近平時代の中国はどうなるのか、となっている。
いかにも習近平中共次期総書記中心の目次だが中身は違う。習近平に焦点は合っているが、現代中国政界論である。過去の中国の指導者はほとんど俎上にのぼっている。
中共上層に三つの派閥があるのはよく知られている。革命指導者二世で構成される太子党、共産主義青年団出身者の共青団派、江沢民が親玉の上海閥である。
たとえば習近平も属する太子党をとりあげてみると、派閥の中心人物が特定できない、規約もない、数千人数万人の政官界・財界、さらには軍の既得権者で構成される人と人のネットワークである。
一党独裁のもと二世集団太子党は、市場経済の進展に伴って政治・経済に影響力を持つ、現制度の最大の受益共同体になった。だから保守派である。
矢板記者は、太子党のあるグループの学習会で講演し、メンバーから話を聞き、その観察を加えて太子党を分析する。太子党は固く団結しているわけではなく、内部に出世競争と対立があるが、その一方で共通の利益のためには共闘するのである。日本にも派閥があり、二世議員がいるが、二世だからといって政策や行動が同じわけではないのは見てのとおりである。
先ごろ薄煕来重慶市書記が失脚するという事件があった。薄煕来は同じ太子党の中で習近平のライバルだった。矢板記者は薄煕来事件以前に重慶を訪れ、それにもとづいて、本書において二人の統治方式と性格と関係を分析した。薄煕来は派手好みで大衆受けを狙い、習近平は平凡だがそつのない行政官である。
重慶の薄グループが一掃されたのち、就任したのは共青団系ではなく上海閥の面々である。矢板記者は、これを上海閥勝利とみるのはことの表面だけをみたもの、むしろ胡錦濤・共青団派の主導でこのような人事が行われたという。事件のその後の経過を見ると、この分析が正鵠を射ていることがわかる。

2012年秋から習近平時代になっても、習近平は指導力を発揮できるわけではない。中共最上層の中央委員会政治局、とりわけ常務委員会の予想できる構成からすれば、胡錦濤の発言が彼の本心ではなく首脳集団の意志であったように、習近平の政治意志も共青団系、江沢民派はもちろん太子党の意向にも制約される。これが中国の集団指導体制というものである。
習近平は、江沢民・胡錦濤同様、中国の特徴ある社会主義・社会主義的市場経済というケ小平の敷いた路線を歩む。そして次期体制では温家宝のような改革派はいなくなるのだから、積み残された政治体制改革や言論の自由化や民族問題の解決や日中関係の改善は、やや暗い見通しだと判断するしかない。

矢板記者は、中共は人民を恐れているという。ネット世論の動向に神経質な対応をするのなどを見ると、そうかもしれないが、それは象徴的意味である。
ひとたび、民主主義・法治・科学・改革を目指して人民が立ちあがろうとしても、中国には組織者と指導者がいないのだから、党が力で抑えることは簡単だ。解放軍は国家の軍ではなく中共の軍事部門である。その戦力と国内政治への発言力はいままでになく強くなっている。
ソ連の一党独裁体制の崩壊がゴルバチョフのペレストロイカから始まったように、中国でも政治体制の改革があるとすれば、上からの改革が最も可能性がある。数年後、習近平が自分の体制固めに成功しても、中国のゴルバチョフにはならないだろう。なぜなら、今までの行動と発言からは習近平に強い改革意志があるとは感じられないからである。

中国とは何かを分かるためには、高島俊男『中国の大盗賊―完全版』が飛びぬけていいといった人がいた。高島によれば、1949年の中国革命は中国の歴史の中でしばしば生まれた農民一揆の、成功した一例である。いわれてみれば毛沢東が皇帝であり、人民政府に人民が不在であったとしても不思議ではない。
ジャーナリストが書いた文化大革命の記録には柴田穂『毛沢東の悲劇』がある。ケ小平時代の分析には伊藤正『ケ小平秘録』、田畑光永『ケ小平の遺産』がある。いずれもすぐれた現代中国論である。

本書は、中国がケ小平路線に乗って30数年後の、今のいまをプレパラートのように切って我々に示している。その視野におさめた事項の分析は鮮明で、有効射程距離はかなり長い。
 

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コメント
 
01. 2012年4月19日 08:36:32 : YQX9xw9YPg
中国3千(4千でも5千でもよいが)年の歴史で、民主的であったことは一度も無いし、法治主義であったこともない。官僚の腐敗も歴史に限りなく先例がある。
現在の国家の概念で量ろうとすると量りきれない。というより中国とはそういう国なのである。
中国農民と国家の関係も、搾取する者とされる者との関係で各々が納得している。皇族同士や廷臣間の権力争いと、農民の暮らしとは関係が無いのである。
清朝崩壊後のゴタゴタをまとめたのは共産党と言う軍閥で、これが新しい帝国を開いた。
今後近代的な国家に生まれ変わることや、民主主義の敷衍などは期待できない。
帝国は一時的に強勢を誇っても、やがて内部から崩壊する。
決して一枚岩なんかでは無いことも、また歴史が教えている。

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