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生ゴミ、屍肉、下水から食用油…中国の食を脅かす「闇リサイクル」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120408/chn12040818000003-n1.htm
2012.4.8 18:00 産経新聞
中国公安当局は3日、食肉処理場で廃棄された内臓などから抽出した油を食用に販売したとして1000人以上を拘束したと発表した。下水や生ゴミから取り出した「下水油」は中国全土に流通、健康への害も指摘され、社会問題化。中国メディアは今回のケースをその「新型だ」と伝えている。屎尿(しにょう)から採取した油まであるとされるが、「リサイクルだ」との主張も。中国4000年の食を揺るがす「下水油」はなぜここまではびこったのか。(桜井紀雄)
■腐った肉が食品原料に、売上高1億円超
「我慢できないほどの悪臭を出し続ける建物がある」
中国国営新華社や通信社の中国新聞社、各地方紙の電子版によると、今回の摘発は昨年10月、中国浙江省金華市の農村に住む農民からの通報がきっかけだった。
公安当局は、食肉処理場から安値で引き取った動物の肉や皮、内臓から油を抽出し流通させていた業者を突き止め、一斉摘発に踏み切った。
押収された「下水油」は3200トン余り。摘発した際、原料の肉や内臓は古くなり、腐臭を放っていたという。
製品としての「下水油」は、同省や安徽、江蘇両省のほか、上海、重慶両市の油脂業者を通じて食品加工会社に販売され、最終的には調味料など食品原料に使われていた。グループの売上高は昨年1〜11月だけで1000万元(約1億3000万円)を超えたという。
■屎尿だけから採取も、屋台や加工品で中国全土に
「下水油」は、中国で下水溝や排水溝にたまった油成分を含む浮遊物から抽出した油を販売する商売が生まれたことからこの名が付いた。
その後、飲食店から出た生ゴミから抽出する手口が広がったが、この場合もひっくるめて違法リサイクル油を中国語で「地溝(下水)油」と呼ぶ。
屎尿だめに浮く油を抽出するケースもあるとされ、中国新聞社によると、昨年4月には、重慶市で屎尿だめから下水油の原料を収集していた男が拘束された。
食肉処理場から原料を調達する今回のケースは、下水油の中でも「進化型」とみなされ、原料から販売まで組織化した手口に発見、摘発の難しさが指摘された。
中国の食品問題に詳しいジャーナリスト、周勍氏の著書によると、下水油の多くが朝食として広く愛されている中国式揚げパン「油条」(ヨウティアオ)などの屋台に流れているとされ、油条を口にしなくなった中国人までいるという。
その他は、食用油として今回摘発されたケースのように食品加工会社に回され、加工品としていつのまにか口にすることになる。
濁りや粘つき、酸っぱさ、苦みに正規の食用油との違いがあるとされるが、ほとんどが加工された後のため、判別が難しい。その結果、懸念されるのが健康被害だ。
周氏の著書や中国メディアによると、食べると消化管の粘膜などが破壊され、発癌(がん)性も指摘されている。
■「誰もが口に」 市場規模は200億円超…記者殺人まで?
中国新聞社などによると、下水油販売をめぐって昨年下半期で9万人以上が摘発され、下水油約6万トンが押収された。中国政府は事態を深刻に受け止めており、司法当局は今年2月、下水油に関わる犯罪に対し「最高刑は死刑も辞さない」との通知を出した。
一向に収まる気配のない下水油の蔓延(まんえん)。中国の専門家は、中国の食用油の年間消費量2250万トン(2009年)から国内生産と輸入量を差し引いた量が400万〜500万トンにのぼると試算。少なくとも200万〜300万トンの下水油が食用油として全国に流通し、15〜20億元(約200億〜260億円)の市場規模を持つとみられている。
「中国人なら誰しも口にしたことがある」との見方もあるほどで、深セン市では昨年11月、政府機関の食堂で使われていたことが発覚した。
「下水油」をめぐって笑えない現象まで起きた。
中国河南省洛陽市のテレビ局記者が殺害される事件が昨年9月起きた。この記者が事件直前、インターネットに「下水油」に関する投稿をしていたことから「下水油業者を取材していて報復された」との憶測がネットを通じて瞬く間に広がった。
結局、事件は強盗殺人だったと判明したが、中国の一般の人々から、そのほど下水油をめぐる闇のネットワークが底深いとみられているのだ。
■食のひずみが生んだ闇ルート 飲食店、売り手、買い手が「ウィンウィン」
当局が取り締まりに躍起になっているのになぜ、下水油の蔓延(まんえん)はとどまらないのか−。
最も流通している下水油が生ゴミから抽出したものであることから、原料供給源である飲食店側の問題が最大の原因に挙げられている。
周氏は大連市の過去の例に触れ、「多くのレストランでは、こうした油さらい(下水油)業者を歓迎している。彼らに引き取ってもらえば、ゴミ出しをしないですむし、下水道が詰まるトラブルもなくなるからだ」と記している。
泥の中からカネになるタネを見つけ出すことから周氏は「砂金掘り」とも表現している。
急速な経済発展に伴い、13億人の胃袋を満たす外食産業も急激に発達した。その陰で後回し、もしくはなおざりにされてきたのが生ゴミ処理だった。その隙間に目を付け、当局が問題を深刻に受け止める前に流通ルートまで構築していったのが「下水油」業者たちだった。
飲食店にとって生ゴミがカネになるメリットがある。下水油業者にとってはタダ同然で買い取った生ゴミを少し加工するだけで売り物になる。屋台や食品加工業者は正規品に比べ極端に安い値段で“食用油”を手に入れることができる。
倫理さえ無視すれば、3者にとって「ウィンウィンの関係」になる。バカをみるのは消費者だけという構図だ。
■「ゴミから宝」 バイオ企業認定業者まで…現代中国の縮図
廃棄物処理の未整備が下水油を生んだことを認識した行政当局によって、生ゴミ回収が無料化された地域も出始めた。しかし、飲食店側から「買い取る業者がいるのになんでタダで渡さなきゃいけないの」と反発され、うまく機能していないともいう。
「ゴミから宝を生み出す、これぞリサイクルだ」と豪語する識者までいる。
中国語で「向銭走」=カネに向かって邁進(まいしん)する=という現代中国の風潮の縮図が「下水油」問題に現れているといって過言ではない。
「コネがなければこんな仕事はできない」と背後に有力者がいることをほのめかす業者もいる。摘発された業者の中には、品質安全を保証する国家認証や、行政当局から「バイオ企業」の認定を受けていた会社まであった。
下水油が一掃され、食の安全を取り戻したときこそ、中国が本当に発展したといえるのではないだろうか。
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