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中国・重慶市トップの座を追われた薄煕来氏と親交があったとされる英国人男性が不審死した事件で、この男性が複数の友人に対し、薄氏の妻との関係が悪化したために身の危険を感じると話していたことが分かった。事情に詳しい複数の消息筋が明らかにした。
昨年11月に重慶市で不審死したニール・ヘイウッド氏(41歳)は薄氏の取り巻きグループの一員だと話していた。薄氏は中国共産党の最高指導部である政治局常務委員会入りが取り沙汰されていたが、先月、重慶市の共産党委員会書記を解任され、中国政界には1989年の天安門事件以来最大ともいえる混乱が生じている。
消息筋によると、ヘイウッド氏は死亡するまでの数カ月、薄氏の妻である谷開来氏が取り巻きのうち誰かが薄一家を裏切ったと思い込むようになり、ヘイウッド氏と谷氏の関係が急激に悪化した、との懸念を口にしていたという。
ヘイウッド氏が消息筋の1人に語ったところによると、谷氏は薄一家の家族に関する事柄の多くを取り仕切っていたが、次第に常軌を逸した態度を取るようになり、ある時、ヘイウッド氏に対して、中国人の妻と離婚して薄一家に忠誠を誓うよう求めた。ヘイウッド氏がこれを拒否すると、谷氏は腹を立てたという。
谷氏は著名弁護士で、何の罪にも問われていない。英国政府関係者によると、地元当局はヘイウッド氏の死因はアルコールの過剰摂取と判断した。谷氏からのコメントは得られていない。
ヘイウッド氏が身の危険を感じていたとの証言は重大だ。これより以前にヘイウッド氏と薄一家の間に緊張関係があったことを指摘していたのは薄氏の下で重慶市の公安局長を務めていた王立軍氏だけだったからだ。王氏は2月初旬に突然、四川省成都市にある米国総領事館に保護を求めた。
複数の情報筋によると、王氏は上司だった薄氏に、ヘイウッド氏は毒殺されたとの見解を伝えたと話したという。このやりとりがきっかけとなり、王氏と薄氏の関係が悪化したとされる。
また、情報筋によると、王氏はさらに、ヘイウッド氏が薄氏の妻と仕事上のトラブルを抱えていたと話した。外交関係者やその他の情報筋によると、米総領事館に駆け込んだ王氏は米国への安全な渡航を交渉する材料として、薄氏に関する証拠書類を提示した。
情報筋などによると、王氏は中国の中央政府関係者のもとに出頭するように説得を受け、中央政府高官は2月7日に米国総領事館を出た王氏の身柄を拘束した。英国外務省の報道官は先月29日、王氏が2月初旬に重慶の英国総領事館にも面会を求めたが、面会の目的は明らかにせず、面会にも姿を見せなかったと述べた。この事実について、英国政府はこれまで明らかにしていなかった。外務省の報道官は30日、ヘイウッド氏が身の危険を感じていたことや薄一家と関係があったという証言にコメントしなかった。
中国では今秋、10年に一度の最高指導部の交代が予定されている。英国人の不審死はこの指導部交代に影響する可能性があるだけでなく、外交問題にも発展しつつある。中国が事件に対してどのように対応するかしだいで、中国に滞在する外国人ビジネスコミュニティーで安全に対する懸念が高まるおそれがあり、中英関係に影響が及ぶことも考えられる。
英国政府関係者によると、11月に重慶市のホテルの自室で死亡したヘイウッド氏について、地元当局は死因をアルコールの過剰摂取と断定、検視を行わずに遺体を火葬した。英国政府関係者は当時、この対応に何の疑いも感じなかったと述べていた。
しかし、英国政府は先月25日、中国政府に対し、ヘイウッド氏の死亡について調査するよう要請したと発表、事件は一転、政治スキャンダルとして注目を集めた。英国政府によると、中国側は「調査を進める」ことを約束したという。
英国外務省は29日、中国国内の英国人コミュニティーで高まっている懸念に基づき、「2月半ば」に中国に調査を要請したことを明らかにした。
事件については多くの疑問が残されている。ヘイウッド氏はまったく酒を飲まない、または酒に弱かったと友人の多くが証言しているのに、当局が検視もせずに急いで火葬したのはなぜか。英国政府の関係者が、検視が行われていないにも関わらず、アルコールの過剰摂取がヘイウッド氏の死因という説明を受けたとしているのか。一方で、英国にいるヘイウッド氏の家族はなぜ、同氏の死因を心臓発作だと話していたのか。英国政府は同氏の家族からの要請がないにもかかわらず、なぜ中国政府に調査を要請したのか。
一部の消息筋によると、2人の子どもと中国にとどまるヘイウッド氏の妻に対しては地元当局から圧力がかかっているという。
ヘイウッド氏が身の危険を感じていたという友人の話からは、同氏が外国人としては珍しい立場にあったことが分かる。ヘイウッド氏は中国共産党の政治局のメンバーの1人と近い関係にあり、薄一家の内情を知っていた、と友人は話している。ヘイウッド氏は薄氏への接触を手配できる立場にあった。
ヘイウッド氏はまた、ハクルート・アンド・カンパニー(Hakluyt & Co)で非常勤として仕事をしていた。同社の広報担当者によると、同社の業務は戦略的なビジネス情報の収集で、英政府秘密情報機関である対外情報部(MI6)の元工作員が創立した。
北京市内に住んでいたヘイウッド氏が重慶市で何をしていたのかも明らかになっていない。複数の友人によると、ヘイウッド氏はハクルートなど数社向けに、デューディリジェンス(投資対象の適格性を把握するために行う調査)にかかわる仕事をしていたという。ヘイウッド氏はアストン・マーチンのスポーツ車を扱う北京のディーラーにアドバイスを行う仕事もしていた。
数人の友人は、ヘイウッド氏が大連市に住んでいた間に薄一家と関係を築き、一家の仲介者となったと話す。大連は薄氏が1993 年から2001年まで市長を務めたところだ。ヘイウッド氏は薄氏と外国政府関係者やビジネス関係者との会合を手配する役割を引き受けていたという。友人の中には、ヘイウッド氏が薄氏の妻を通じて薄氏とつながっていたと考えていた人もいたが、薄氏自身と連絡を取っていたと考える人もいた。
ヘイウッド氏と薄一家が特に親密に付き合いだしたのは、薄氏の息子の薄瓜瓜(Bo Guagua)氏が英国の名門校ハロー校への入学を世話してからだ。ハロー校は通常、子どもが生まれた時にすぐ入学を申し込む必要があるほど希望者が多い。ヘイウッド氏は2001年から2006年にかけて同校に通う瓜瓜氏の面倒を見た。
消息筋によると、ヘイウッド氏はハロー校の出身で、1988年に卒業したという。同校はコメントを控えた。
消息筋によると、マーガレット・サッチャー元英首相の外交アドバイザーを務めたチャールズ・パウウェル氏も瓜瓜氏の面倒を見る手助けをしていた。瓜瓜氏はその後、オックスフォード大学に進学し、現在は米ハーバード大学ケネディ行政大学院で学んでいる。
ヘイウッド氏は薄氏の妻である谷氏と特に親しい付き合いがあったと話していた。谷氏は薄氏と同じく、著名な革命家を父に持つ。谷氏は自身が設立した法律事務所が米国で民事訴訟を勝ち取り、中国有数の有名弁護士となった。谷氏がこの勝訴について書いた「Winning a Lawsuit in the U.S.(米国で訴訟に勝つ)」という本は好評だ。
事情に詳しい複数の人物によると、薄氏の出世に伴い、谷氏は弁護士の仕事を退き、子育てや一家の私的な問題の管理に専念した。
ヘイウッド氏の友人の1人が同氏から聞いた話では、薄氏が重慶市の共産党委員会書記に就任した2007年頃に谷氏が汚職事件に関する捜査を受けてから、谷氏はしだいに神経質になり、周りの人間を疑うようになったという。
この友人は、谷氏が数人の取り巻きに配偶者と離婚して薄一家に忠誠を誓うよう要求したとヘイウッド氏が話していたことを覚えているという。ヘイウッド氏がなぜ薄一家と関係を断ち、中国を出国しようとしなかったのかははっきりしない、とこの友人を含む複数の友人は話した。ヘイウッド氏がうまみのある薄氏との関係を修復したがっていたと話す友人もいる。
薄氏は重慶市トップとして、組織犯罪の取り締まりやインフラへの多額の投資、毛沢東の革命精神を復活させるキャンペーンなどの政策をとり、一部の共産党幹部や中国国内の学者から評価されていた。
一方で、薄氏を快く思わない党幹部もいた。薄氏が法を無視して組織犯罪の取り締まりを進めていると感じたり、毛沢東主義の復活は人為的な飢饉(ききん)と粛清で何千万人という死者が出た1950年代、60年代の苦しみを覆い隠すものと考える人たちだ。
薄氏の政治生命は実質的に尽きている。アナリストや外交筋、共産党幹部に近い情報筋によると、薄氏が今後、権力を持たない立場で政治局にとどまるのか、党の全ての役職から解かれるのか、それとも処分を受けるのかはまだはっきりしないという。
薄氏が現在、どこにいるのかは分からない。薄氏が最後に公の場に姿を見せたのは3月9日の記者会見だった。薄氏はこの席で、「何人かの人が重慶市と私、そして私の家族に泥を塗っている」と述べた。また妻の谷氏については、大連に住んでいた20年前に弁護士の仕事から退いており、薄氏の立場を利用して利益を得ているという批判はあたらないと述べた。
薄氏は「妻は基本的に家にいて、私のために家事をこなしている。妻が犠牲を払っていることに胸を打たれる」と述べた。
記者: Jeremy Page
http://jp.wsj.com/World/China/node_418346?mod=MostPopularBlock
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