http://www.asyura2.com/12/china3/msg/125.html
Tweet |
人相というのはここまで変わるのか。中国重慶市の党委書記を解任された薄熙来氏(62)の姿をみて、思わずうなってしまった。約18年前の1994年。快く取材に応じてくれた彼とは、まるで別人のような権力者の表情がそこにあったからだ。
裏返せば、それだけ中国の権力闘争はすさまじい、ということなのかも知れない。
その後、出世街道をばく進し、内陸の中枢都市である重慶市のトップに就任。共産党の政治局員にも選ばれた。今秋に開かれる5年に1度の党大会では、最高首脳部である党政治局常務委員への昇格もささやかれていた。
ところが、共産党は3月15日に突如、薄氏の解任を発表した。その容疑や居場所は秘密のままだが、汚職の疑いなどで取り調べを受けているとみられる。最近になって薄氏に近かった重慶市幹部らも解任されたり、消息が分からなくなったりしている。
■党大会控え、権力闘争激化
最高首脳が入れかわる党大会を約半年後に控えて、し烈な権力闘争が繰り広げられているのだろう。中国ではこの種の政争は珍しくはない。それでも気がかりなのは、権力中枢での対立が日本にも影を落としかねないからだ。
中国の権力中枢ではいま、2つの勢力がせめぎ合っている。高級幹部の子弟である太子党のグループと、共産主義青年団(共青団)の出身者を中心とする勢力だ。
このうち太子党グループの中心人物は、今秋に最高首脳に就く習近平国家副主席。共青団は胡錦濤国家主席である。そして、薄氏は太子党グループの有力者だった。今回の解任劇は「退任後も影響力を残すため、胡氏らが薄氏を追い落とし、太子党に揺さぶりをかけた」と見る向きもある。
こうした権力闘争のあおりで、中国の日本への対応がさらにきつくなる可能性がある。中国政府の内情に通じた日中関係筋は警告する。
「これから秋の党大会まで、太子党や共青団グループなど、中国内の諸勢力が激しいポスト争いを演じる。そのとき、ライバルの足を引っ張るため、『日本問題』が利用されかねない。日本にはかなりの注意が必要だ」
では、具体的にどんなケースが考えられるのか。同筋は解説する。
「たとえば、胡錦濤国家主席ら主流派に対抗する勢力がわざと日中対立を引き起こし、胡氏らに揺さぶりをかけるかもしれない。尖閣諸島や日中のガス田問題、そして歴史問題がその材料になる危険がある」
歴史問題を引きずる日本との関係は、中国の内政上もかなり敏感な課題だ。日中対立が火を噴けば、胡主席をはじめとする現指導部は責任を追及されてしまう。そこで、胡氏らを困らせるため、対抗勢力があえて強硬な対日政策に走りかねない、というわけだ。
■各省庁の権益争いも波乱の芽
指導部の権力闘争ばかりではない。肥大化した各省庁の権益争いも、対日外交の波乱の芽だ。
中国の安全保障政策に詳しい東大の松田康博教授は指摘する。
「胡国家主席や温家宝首相は対外強硬派とは一線を画し、どちらかといえば現実的な対外路線を心がけてきた。海洋権益保護を担当する中国海軍や国家海洋局などは、自らの組織的な利益のため、東シナ海や南シナ海で主権を振りかざしてあえて緊張をつくり出そうとしている可能性がある。日本はその対象になりがちだ」
こうした見方を裏づけるような傍証もある。
中国国家海洋局の巡視船が3月半ば、尖閣諸島沖の日本の領海に侵入した。その後、他の中国艦船も加わり、東シナ海の日中中間線の近くで海空合同演習を繰り広げた。同じころ、海洋局は尖閣諸島などでの巡回を「常態化」する方針も打ち出している。
これらの動きはどこまで権力闘争に連動しているのか。中国指導部内の攻防の行方は、日本にとってもひとごとではない。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。