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(回答先: 副島隆彦著『中国、アラブ、欧州が手を結び ユーラシアの時代が勃興する』の読後感/さる編集者 投稿者 仁王像 日時 2015 年 8 月 16 日 19:55:36)
”欧米への対抗軸を”プーチンの戦略 上海協力機構・BRICS
2015年07月11日
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/222772.html
ロシア中部の都市ウファでロシアと中国、中央アジア諸国による上海協力機構、そして中ロにインド、ブラジル、南アフリカという新興国を集めたBRICS。二つの首脳会議が同時に開かれました。ともに2000年代になって生まれた新たな国際機構で、G7など先進国による国際秩序に対して近年その存在感をとみに増しています。
きょうは世界の多極化を利用して欧米への対抗軸を築こうというプーチン大統領の思惑とユーラシアの地政学的変貌を考えてみます。
▼BRICSと上海協力機構、全く異なる枠組みの首脳会議をなぜプーチン大統領は同時に開催したのでしょうか。9日夜、BRICSと上海協力機構などの合同の首脳会議の映像です。
上海協力機構のオブザーバーであるイランなどの首脳を含めて合わせて17カ国の首脳が、プーチン大統領が議長を務める会議に参加しました。ウクライナ危機以後これほど多くの首脳がロシアに集まったことはありません。
BRICSの経済規模は全世界の20パーセントを超え、人口では世界の40%を上回ります。また上海協力機構の参加国はオブザーバーを含めればユーラシア大陸を覆います。
首脳会議に参加した国々で対ロシア制裁に踏み切っている国は一つもありません。
G8からは排除され、日本を含む欧米先進国からは経済制裁を受けるロシアだけに、「欧米の外では全く孤立していない」と誇示する必要があるのです。
▼プーチン大統領は上海協力機構とBRICSを使い、どのような戦略、世界観を描いているのでしょうか。「ユーラシア主義」という言葉で表せるでしょう。ヨーロッパとアジアにまたがるユーラシア国家としてのロシアの特色を強調する思想です。
「欧米ではない」世界の一部としてのロシアです。ロシアにとって上海協力機構がユーラシアであり、BRICSがG7に対峙する「欧米ではない枠組み」なのです。
この二つを、ロシアを通じて連結させることが孤立脱却に向けたプーチン大統領の戦略です。
プーチン大統領「我々は団結して国際的な安全保障や世界経済の成長、それに重要な課題の解決に貢献していく」
▼もともとプーチン大統領は、ヨーロッパの統合を指向する西欧主義者の顔とユーラシア国家としてのロシアの独自性を強調するユーラシア主義者の顔の両面を持っていました。
これはロシアの指導者が伝統的に持つ二面性といえますが、今、欧米との対立の結果として、ユーラシア主義者としての側面がますます強くなっています。
▼ 今回の首脳会議で決定した方向性は以下の二つです。
●BRICS開発銀行を創設するなどBRICSに実質的な機能を持たせることです。
●上海協力機構の内部での統合の強化と外部への拡大です。
インドとパキスタンの正式加盟に向けた手続きを進めることで合意しました。
▼まずBRICSはロシアにとってどのような意味を持つでしょうか。BRICSとは2001年、アメリカの投資会社ゴールドマン・サックスが、「BRICが世界の成長の中心となる」という分析を発表し、いわばアメリカが新たな投資先として認知したことで生まれました。
BRICの4カ国は新興国の代表として連携を強め、2009年から首脳会議を開催し、その後南アフリカも加わりBRICSとなりました。最初は単なる首脳同士の顔合わせでしたが、今回資本金1000億ドルでBRICS開発銀行を創設し、金融面でも実質的な機能を持つようになりました。
今回のサミットでも議題はG7とほぼ同じでテロや環境などグローバルな課題を話し合っています。G7のコピーを見ているような錯覚も覚えます。
もちろん今は、BRICSの力はG7に及ぶものではありません。自由と民主主義という共通のイデオロギーはありません。またBRICSの政治的な立場は様々で、たとえばインドは中国の海洋進出に対しては警戒感を隠しません。そうした弱点や違いにも関わらずBRICSがロシアにとって意味を持つのは、アメリカの意向に左右されない政治的な自立性です。
アメリカの要求でロシアを排除したG7など先進国とは異なり、自立した国の集まりBRICSはロシアを支持している。G7に対峙する枠組みとしてのBRICSを強調したいのです。
▼ロシアにとってより実質的な意味を持つのは、上海協力機構です。
私はウクライナ危機以後、ロシアにとって上海協力機構の意味が大きく変化したとみています。上海協力機構は、もともとは国境を接する各国の信頼醸成を目的とした組織で、次第に常設の事務局を置くなど安全保障と経済両面での機能が強化されてきました。
ただ旧ソビエトを自らの影響圏としてユーラシア連合構想を唱えるロシアと中国から中央アジアを通る新たなシルクロードを築こうという中国の間では、中央アジアをめぐる隠れた対立がありました。上海協力機構はその中ロの利害の調整機関、あるいは利害の対立をオブラードに包んで隠す役割さえも持っていました。
たとえばもしも中国から中央アジアを通る貨物輸送網ができれば、ロシアの進めるシベリア鉄道の近代化は必要なくなるのではないか、懸念が常にロシアにはありました。
しかしウクライナ危機によってロシアは、中国の一帯一路とロシアのユーラシア経済連合構想を本格的に統合させる方向に向かうことを決め、利害を調整しつつその統合を具体的に進める場が上海協力機構となったのです。
ヤクーニン・ロシア鉄道総裁
「長く中国の友人と議論しました。習近平主席がプーチン大統領に述べたとおり、両構想は矛盾せず、お互いに補完するという結論になったのです」
▼今回の首脳会議で上海協力機構の枠内で貿易制度、金融システムの統合を進め、ユーラシアの経済統合に向けて一歩踏み出すことで合意しました。そしてそこにインド、パキスタン、さらに国連による経済制裁が解かれればイランまでも取り込み、ユーラシア全体に広がる統一経済圏にしようとしています。
インドが正式メンバーとなることでBRICSとのつながりを深め、新興国からユーラシアへの投資を強めたいとロシアは思っているでしょう。
▼欧米との対立軸を築きたいとのロシアの思惑通り進むのでしょうか。
ロシアには中国と抱きつくしか選択肢はないかもしれませんが、中国にはアメリカとの連携を強める、シルクロードを通じてヨーロッパと結ぶ、さまざまな選択肢を持っています。強い中国にロシアが取り込まれることになるかもしれません。
中国とのバランスを取るためにも上海協力機構に伝統的な友好国インド、そしてエネルギー大国として連携したいイランを取り込むことがロシアにとって重要です。しかし彼らにしても欧米とロシアの対立に巻き込まれるつもりはなく、世界が多極化しているだけに、それぞれがそれぞれの思惑で動き、二極対立の軸は築きにくくなっています。
▼今ユーラシアのパワーバランスは欧米から中ロへと大きく動いています。
その中で日本も存在感を示しにくくなっています。
1990年代、ヨーロッパと中央アジアの輸送ルート、TRACECA・コーカサス中央アジア回廊計画が、日本企業も参加したカスピ海から地中海への原油パイプラインなど主流でした。しかし2000年代に入ると、中国の経済成長とロシアの経済復興とともに欧米にかわって中ロが主役となりました。
中央アジアから中国に向かう新たなパイプライン網、そしてロシアから東に向かうパイプライン、中ロを中心にユーラシアのエネルギー輸送網が築かれつつあります。
上海協力機構にインドとイランが加盟すれば、ロシア、中央アジアからイランを通ってインドに向かうという輸送網も現実のものとなるでしょう。上海協力機構の強化とともに欧米の影響力は大きく低下しています。
そこにどのように関与するのか、日本にとってもユーラシアが「地球儀を俯瞰する外交」の正念場となりつつあります。安倍総理の中央アジア訪問が今年中にもあるでしょう。中ロを軸に経済統合を強めるユーラシアに対して、「門戸開放」、「機会均等」を求めつつ、地域の国々の自立を如何に支援していくのか、日本こそがより大きな役割を果たすべきでしょう。
(石川一洋 解説委員)
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