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(回答先: TPPの崩壊の原因は、中国主導のAIIB(アジア・インフラ銀行)の設立が3月から騒がれたからだ/副島隆彦 投稿者 仁王像 日時 2015 年 8 月 21 日 22:29:44)
「TPP交渉 大筋合意先送りの意味」
2015年08月04日
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/224415.html#more
ハワイ、マウイ島で開かれていたTPP環太平洋パートナーシップ協定の閣僚会合は、先週土曜日、大筋合意に至らず、閉幕しました。
参加12ヵ国は、会議終了後の記者会見で、今月末にも、改めて閣僚会議を開くとしましたが、そこで合意できるかどうかは不透明な状況です。今夜はTPP大筋合意見送りの背景と、今後の見通しについて見ていきます。
先月28日から始まった会議では、どの国の閣僚も今回を最後にしようと、精力的に交渉を重ねていました。ところが参加国の間で知的財産、中でもバイオ医薬品の開発データの保護期間。それに乳製品の二つの分野で、主張が対立。最後まで解消しませんでした。
まずバイオ医薬品です。
バイオ医薬品はバクテリアなど生物を使って生成される医薬品で、ワクチンなどに広く使われています。
膨大な開発費用がかかるため、大手の製薬会社を抱えるアメリカは、保護期間を12年と主張していました。
一方、マレーシアなどの新興国やオーストラリア、ニュージーランドなどは、これを5年以下にすることを要求。保護期間が長くなれば、ジェネリックの開発が遅れ、利用者負担が増すからです。中でも医療費を、全て国費で行うオーストラリアは、データ期間が長くなれば、それだけ財政が圧迫されるとして、強硬に反対してきました。
交渉ではルールの導入を一定期間、猶予する案も検討されましたが、結局、両者は譲りませんでした。
さらに、交渉を複雑にしたのは、乳製品の輸入拡大を求めるニュージーランドの存在でした。乳製品の競争力の強いニュージーランドは、アメリカや日本、カナダなどに、乳製品の輸入拡大を強く要求。
知的財産の分野での交渉を搦めて、乳製品の輸入拡大を、各国に迫りました。
日本などは一定の輸入枠を提案しましたが、ニュージーランドの要求はそれを遙かに上回る水準だったといいます。
甘利経済再生大臣が会議終了後の記者会見で「交渉の終盤になると、できるだけ、自分の要求をねじ込みたいという思惑が働く」というように、ニュージーランドは、最後まで強硬な姿勢を崩すことはありませんでした。
ニュージーランドが、乳製品で、いくつもの国と対立している状況では、会議全体を纏めるのは困難です。結局、交渉参加国は一旦会議を閉じて、冷却期間を設け、改めて今月中に閣僚会合を開くことで合意した模様です。
多国間交渉は良く、複雑な連立方程式を解くようなもので、交渉は最後が最も難しいと言われます。
経済規模も地理的条件も異なる12ヵ国が、21分野、31項目で駆け引きを行うわけですから、対立が激しくなるのは当然です。
ただ5年にわたる交渉の多くの部分で、合意が近かったことも事実で、早期妥結を目指してきた日米にとって、大きな誤算となりました。
その交渉の状況です。
31項目のうち今回、投資家保護のルールを定めた投資分野の他、他国に進出する金融機関に関する、金融サービス分野のルールなど5つでまとまり、交渉が終結したのは22となりました。
残り9つも知的財産など、一部を除いては決着は近いとされています。
また懸案となっていた日米間の農産物や自動車分野ですが、多くの分野で前進があったようです。
例えば牛肉・豚肉ですが、輸入が急増した場合に関税を引き上げることを条件に、日本が関税を10年から15年掛けて大幅に引き下げることで調整。
主食用のコメについては、7万から8万トン程度の輸入枠を日本が新たに設けることで決着できないか、交渉を進めています。
一方で、アメリカが日本の自動車部品に掛けている関税ですが、大半を協定発効後即時又は5年以内にゼロし、自動車本体については20年以上をかけてこれを撤廃する方向で交渉が進んでいます。
まだ交渉が終わったわけではないので輸入数量などは変わる可能性はありますが、日米での懸案事項はほぼ決着したようです。
甘利経済再生大臣は、会合後の記者会見で「課題は相当絞り込まれ、もう一度閣僚会議を開けば決着が出来ると思う」と述べ、安倍総理は今日、甘利大臣に対し、次の閣僚会議での大筋合意を目指し、各国との調整や協議に全力を尽くすよう指示しました。
しかし、そううまくいくかです。
今回、交渉12ヵ国の閣僚が集まったのは、アメリカで、大統領に強力な交渉権限を与える法案が成立し、アメリカが譲歩する余地が生まれたと、各国が期待したからです。
たしかに今回アメリカは各国を説得し、精力的に交渉を纏めようとはしました。
しかし最も対立が大きかったバイオ製薬のデータ保護期間では12年という自らの主張を譲ろうとはしませんでした。国内の有力産業である製薬業界への、強い配慮があったものと思われます。
またニュージーランドもいまのところ、各国への輸入拡大の要求を取り下げてはいません。
そもそもニュージーランドは、TPPの元になった経済連携のオリジナルメンバーで、例外無き関税撤廃を掲げ、高い水準の自由化の実現を目指してきました。
ところがいつの間にか後から加入したアメリカや日本が、交渉の主導権を握り、早期妥結を目指している。そうした展開に強い反発を抱いているのも確かです。
一時はニュージーランドを除外して交渉を纏めようという動きもあったようですが、他の国も同調すれば、TPPは空中分解しかねません。
このように次回、この二つの国が、譲歩する見込みがなければ、各国は閣僚会合に応じないでしょう。かなり難しい課題だと思います。
また例え、交渉が纏まっても、いくつものハードルがあります。
TPPが発効するためには、大筋合意後に各国で議会による批准など国内手続きをとる必要があります。
アメリカでは、大統領が条約に署名するためには、議会に90日前に通告。その後、批准案提出から議会審議まで30日をおく必要があります。
仮に8月末に大筋合意したとしても、署名は11月末、議会に諮るのは1月になる可能性があります。
アメリカでは2月以降、次期大統領の予備選に入り、政党間での協力が難しくなります。これ以上遅れれば、最悪、批准は次の大統領が動き出す2年後以降になるかもしれません。8月は大筋合意のぎりぎりのタイミングです。
言うまでも無く、TPPは日本にとって通商戦略の柱です。
二国間や多国間での、自由貿易圏作りが、世界で進む中、韓国や中国などに遅れをとった日本が、アジア太平洋地域での、新たな貿易ルール作りを目指して参加したのがTPPでした。
世界のGDPの40%を占めるTPPは今後、他の国からの参加も期待でき、そこでのルールはアジア全体の標準となる可能性があります。
そうなれば日本企業にとって大きなメリットとなります。
一方でアジア地域では、中国が経済的に大きな影響力を増しており、TPPとは別に中国主導の経済圏作りも着々と進んでいます。
もし大筋合意ができなければ、日本の通商政策は根本から、見直さざるを得なくなり、TPPを成長戦略の柱としてきた、安倍政権としても、大きな打撃となります。
日本としては、アメリカやニュージーランドに強く働きかけ、その譲歩を引き出して、閣僚会合に繋げる。こうしたことが必要です。残された時間が少なくなる中、この一ヶ月は日本経済にとっても、重要な期間となります。
(合瀬宏毅 解説委員)
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