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『ニューズウィーク日本版』2014−4・22から台湾政治関係の記事を2本。
P.15
「台湾学生運動の敗者は…民進党
膠着状態だった台湾の学生運動は先週、与党の国民党側が譲歩案を示して事態が急転。学生は占拠していた立法院から退去した。学生の勝利に見えるが譲歩案の中身は玉虫色で、実は誰が勝者かはつきりしないひただ今回の騒ぎで存在感ゼロだった敗者がいる。野党の民進党だ。
今も独立を掲げる民進党にとって国民党の苦境は大チャンスのはずだが、学生からほとんど相手にされず、彼らの周りをうろうろするばかり。立法院周辺で開いた支援集会では党主席の蘇貞昌が突然、11月の地方選を意識したシュプレヒコールを上げ、学生のひんしゅくを買った。
「面目丸つぶれ」「無力」……。辛辣に批判され、先月末の大規模デモでも支持者を十分動員できなかった。「組織が弱り、指導層は老化している」と、台湾政治に詳しい社会学者の林宗弘は言う。若者に嫌われるのは、政権担当時の汚職が原因だ。
2年後には総統選が迫るなか、若者の支持がないのは国民党も同じ。学生運動のリーダーを総統と副総統に―ネットの書き込みが、台湾政治の閉塞状況を何より雄弁に物語っている。
長岡義博(本誌記者)」
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P.21
「それでも台湾学生運動は統一を阻止できない
国民党の譲歩を引き出し歓喜に沸いたが「ひまわり運動」の成果は限定的でしかない
陳定定(チエン・ティンティン、マカオ大学政治学部助教)
中国とのサービス貿易協定をめぐり、台北の立法院を占拠していた台湾の学生たちが先週、立法院長の譲歩発言を受けて議場から退去した。学生たちの「ひまわり学生運動」は一定の成果を挙げ、中台統一は選択肢から外れた……ように見える。
だがこうした見方は間違っている。むしろ今回の動きで統一のプロセスが進む公算が大きい。
なぜか。まずひまわり学生運動の3つの課題を見ておこう。
決定プロセスの透明性を欠く密室政治の改革、中台のサービス貿易協定の承認阻止、さらに台湾企業の中国進出に伴う産業の空洞化阻止―いずれの課題も達成できそうにない。
確かに、台湾の政治システムを検証する必要があるという学生たちの訴えを人々は支持し、中台関係の今後について議論を深める機運が生まれた。しかし成果はその程度だ。
密室政治の改革は困難だ。アメリカでさえ、政策の変更は内部関係者の協議で決まることが多い。台湾では与野党共に密室で交渉したがる。台湾の政治文化に深く根差したこの慣行を変えられるか……「ミッション・インポッシプル」だ。
さらに、この運動が本質的に問い掛けたのは独立か統一かだ。
貿易協定に反対している人たちの多くは、協定発効で中国が台湾に及ぼす政治的影響が強まることを警戒している。しかし、仮に学生たちの運動で発効を阻止できたとしても、中台統一に向けた動きまで阻止できるかといえば、まず無理だろう。
グローバル化は止まらず
台湾のジレンマは、中国に頼るしか長期的な経済発展の道がないことだ。独立派の陳水扁前総統時代に対中関係が冷え込んだため、台湾経済は多くの基幹産業が韓国に追い越された。たとえ台湾がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加できても、アメリカは台湾の輸出と投資を吸収できるほど大きな市場を提供できない。
中国と比べて経済規模があまりに小さく、軍事力はあまりに弱い−これが台湾の悲劇だ。
いずれ中国に吸収される運命だとまでは言わないが、何らかの形で中国と前向きの関係を築く必要があるのは明らかだ。
独立を叫び続けるのは現実的ではない。中国との今後の交渉で、できる限り大幅な自治権を確保する道を探るべきだろう。
ひまわり学生運動はグローバル化とそれを組み込んだ資本主義に反旗を掲げたが、この点でも敗北は目に見えている。中国の巨大な経済は台湾の実業家を磁石のように引き付ける。彼らにとっては利益が優先で、独立や台湾人のアイデンティティーは二の次だ。
ひまわり学生運動は台湾企業が相次いで拠点を本土に移すことを止められるか。これまたミッション・インポッシブルだ。
ただ公正を求めるこの運動は、将来的に台湾政治の第3極に成長する可能性があると、国内外の中国ウォッチャーから評価されている。だが、台湾の政治、社会、経済の構造的な欠陥ゆえに、上記の3つの課題はいずれも達成できそうにない。
ただし、今回の政治危機が1つだけ建設的な変化をもたらす可能性がある。統一に向けて、経済カードだけで押していくのはもう限界だと、中国が気づくことだ。台湾の人々の心を本当につかむには、政治的に信頼される必要がある。中台問に根深い不信がある今、これは困難な仕事だが、中国当局が避けて通れないステップだ。
中国指導部の一部はこのことに気付き、今後の政治交渉で柔軟な姿勢を見せるかもしれない。平和的統一が実現する可能性は大いにある―中国が正しい選
択をする限り。」
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