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立法院を占拠した学生の反対運動は、中国本土から台湾で就労する人が大勢やってきて職を奪ってしまう不安や台湾が政治的に北京政府に呑み込まれてしまう事態を忌避する意識から起きたものだから、反対運動を宥める助けや協定承認を急ぐ言い訳にはならないが、中国共産党は、台湾との「サービス貿易協定」において、台湾側に圧倒的に有利な条件を付与したようだ。
中国共産党は、これまでも、養殖エビの買い付けで台湾を優先するようにしたり、海外観光旅行も台湾に行くことを推奨したりしてきた。
経済的実利を最優先にするのではなく、政治的関係性を第一義に考えるところは、中華帝国の伝統を継承していると言えるだろう。
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『ニューズウィーク日本版』2014−4・15
P.21
出口が見えない学生運動と台湾の未来
中国との自由貿易を促進する「サービス貿易協定」をめぐり、国民党政権の強引な手法に反対する学生が台北の立法院を占拠してから約3週間。運動は膠着状態に陥り、出口は見えない。
台湾の香港化を恐れる学生と、あくまで協定の実現を目指す馬英九総統の主張は平行線をたどっている。だがこの協定と、協定が台湾経済にもたらす影響については誤解もある。
中国も台湾も自由貿易促進を目指すWTO(世界貿易機関)の加盟国だが、今回の協定で中国は開放する80項目すべてでWTO基準を上回る好条件を提示している。一方、台湾の別の開放項目のうちWTO基準を上回るのは19項目だけ。中国は台湾からの搾取を狙っていると言われるが、むしろ中国のほうが大盤振る舞いしている面もある。
もちろん、中国の最終的な狙いは経済をてこにした中台統一だ。既に1人当たりGDPが2万ドルを超えた台湾経済は、成長率2%台の成熟段階に入っている。ただ急成長が望めず、国内に閉塞感が漂うなか、巨大な中国市場を何とか利用したいと馬政権が考えるのも無理はない。
一方で、大陸への経済依存を強めれば台湾が苦境を脱出できるという単純な話でもない。台湾の対中輸出依存度は40%に達するが、ここ数年はほほ横ばい。中国の輸入に占める台湾のシェアも、韓国を上回っていた00年代前半と比べれば見劣りする。
「中国企業のキャッチアップが進んできたためだ」と、みずほ総合研究所中国室長の伊藤倍悟は指摘する。台湾復活のカギを握るのは国内企業の競争力だが、かつて世界を席巻した台湾のIT業界も、最近は半導体産業を除けば日立たなくなった。
新たな市場を開拓するには、台湾を封じ込めている中国とまず自由貿易協定(FTA)を結ぶ必要がある、というのが国民党政権の思惑だった。しかし協定承認を急いだことが裏目に出て事態は混乱した。低支持率に苦しむ馬が一発逆転を狙って実現を目指す習近平国家主席との中台首脳会談も、逆に遠のいた。
「中国からの経済的な引力が強まれば、警戒感から政治的に反発力が強まるのが今の台湾」と、伊藤は言う。袋小路を打破する強引なやり方が新たな袋小路を生む―。出口が見えないのは、立法院に立て籠もる学生たちだけではない。
長岡義博(本誌記者)」
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