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東南アジア、車生産で格差
ベトナム、現代自の新工場白紙 タイ ホンダが小型車増産
貿易自由化が進む東南アジアで自動車産業の明暗が分かれつつある。タイやインドネシアはトヨタ自動車などの増産により過去5年で国内生産を倍増させた。ベトナムでは韓国・現代自動車がエンジン生産を撤回しフィリピンも輸入車に押される。2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体の発足でモノづくりの国境はなくなる。「1つのアジア」を目指して自動車生産の大再編が始まりそうだ。
ベトナム中部のチューライ経済特区内の20万平方メートルもの空き地に建屋の鉄骨がぽつんと残る。現代自と地場最大手のチュオンハイ自動車によるエンジンの工場になるはずだった。「契約を撤回したい」。現代自は1月、チュオンハイの資金難を理由に三くだり半を突き付けた。同国初のエンジン工場を建設するという政府肝煎りの事業は白紙となった。「我が国にとって重要な案件だった」とチュオンハイのボー・ニュー・ビン経営企画室長は悔しがる。
東南アジア主要5カ国の09年の生産台数は212万台。これが13年には倍の444万台に伸びた。内訳をみると優勝劣敗が鮮明になる。タイとインドネシアは同期間で生産規模を2倍にしたがベトナムとフィリピンは10万台程度のままだ。
ベトナムも高関税で自動車生産を呼び込もうとしているが時間切れが迫る。ASEAN経済共同体の発足で18年に現在50%の関税がゼロになる。生産効率の高い国から輸入した方がコスト競争力ではプラスとなる。
「我が国の自動車産業は18年にも崩壊の危機に直面する」。現地経済紙にはこんな見出しが躍る。メーカー各社はベトナムへの新規投資を控え輸入車を増やす方向だ。ホンダは「現地生産を絞り輸入車を増やす可能性は十分ある」(現地法人幹部)という。トヨタ・モーター・ベトナムの丸田善久社長は「現地生産の縮小・撤退が相次ぐ恐れがある」とみる。
すでに輸入車に市場を席巻されているのがフィリピンだ。ASEAN共同体の核となるASEAN自由貿易地域(AFTA)に先行して加わり、域内関税は10年に撤廃された。13年の新車販売は前年より15%増え、過去最高の約21万2千台で6割強を輸入車が占める。ここ15年間で輸入車は10倍になったが国産車は年5万〜8万台程度だ。
ホンダは12年に主力車「シビック」の現地組み立てを打ち切りタイからの輸入に切り替えた。米フォード・モーターも撤退を決定。三菱自動車が31日、同社の工場買収を発表し政府は胸をなで下ろした。日産自動車の志賀俊之副会長は「市場が年50万台なら自社生産も考えるが当面は輸入でいい」とつれない。こんなフィリピンの姿はベトナムにとって「明日は我が身」に映る。
自由貿易の恩恵を受けるのがタイとインドネシアだ。タイは01年以降「アジアのデトロイト」を掲げ域内関税を段階的に撤廃した。部品メーカー2千社を集積させ、自動車産業には日本の7割にあたる50万人強が働く。強固な産業基盤を強みに13年にタイで生産した245万台のうち5割弱を輸出した。ホンダは15年に新工場を稼働させ小型車を増産する。
この1年、空前の工場ラッシュに沸いたインドネシア。トヨタやホンダ、米ゼネラル・モーターズが新工場を稼働させた。タイ一極集中のリスクを減らしたい各社のニーズをインドネシアは取り込んできた。13年の同国の生産台数は120万台を超えた。
域内輸出も増えてきた。トヨタは13年12月、インドネシアで生産したセダンをシンガポールなどに輸出し始めた。2月からは小型車をフィリピンにも輸出している。
共同体発足をにらみ自動車業界では東南アジア全体で最適な生産を模索する動きが活発になる。自動車産業の巨大なうねりは東南アジアの産業界全般に広がりそうだ。
ハノイ=伊藤学、マニラ=佐竹実、シンガポール=吉田渉、東京=遠藤淳
[日経新聞4月1日朝刊P.9]
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