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日当5000万円? 韓国で話題のトンでも判決経済人の巨額罰金刑、前代未聞のどたばた劇に[JBPress]
2014.03.31(月) 玉置 直司
脱税や横領で25億円の罰金刑が出ても、1カ月半ばかり簡単な仕事をすればチャラになる――。韓国でこんな判決が出て執行された。日当は何と5億ウォン(約5000万円、1円=10ウォン)。こんな常識外れの判決がどうして出たのか。50日間で完済するはずだったが、世論の批判が沸騰し、刑の執行が急遽停止になるどたばた劇になった。いったい、何が起きたのか。
2014年3月22日夕方、仁川国際空港に1人の男が降り立つと、すぐに韓国南西部の光州にある拘置所に移送された。
光州に本拠を置く大洲(テジュ)グループの創業オーナーである許宰皓(ホ・ジェホ)氏だ。
罰金払わず逃亡した挙げ句、拘置所送りになった財界人
許宰皓氏は脱税や横領で起訴され、執行猶予付きの有罪判決を受けたが、ニュージーランドに逃亡していたのだ。執行猶予付きの判決だったため、送られたのは刑務所ではない。拘置所に隣接する「労役場」というあまり聞きなれない施設だった。
罰金を「労役提供」で払うため、作業をするためにここに送られたのだ。
事の顛末はこうだ。
大洲グループは、建設業を主力とした光州地域を代表する企業グループだ。1997年のIMF危機の際に、暴落した優良不動産物件を格安で買い取り、不動産価格急騰後に光州だけでなく首都圏などでアパート建設に乗り出して大儲けした。余勢を駆ってレジャー、損害保険、造船事業などに次々と進出、さらに地域有力新聞社まで傘下に収めた。地方財閥に成り上がったのだ。
許宰皓会長(現在は会長を退任)は、光州を代表する経済人となった。しかし、造船・不動産不況で経営が急速に悪化した。この過程で脱税や横領などを起こし、2007年に起訴された。2010年1月に控訴審で懲役2年6カ月、執行猶予4年、罰金254億ウォンの判決が出た。
一見すると普通の経済犯罪だが、これで一件落着とはならなかった。
この判決には「罰金を支払わない場合は50日間の労役を課す」という内容も含まれていた。これは刑法で定めた「換刑留置」という制度に基づいたもので、財産がないなどの理由で罰金を払えないときは、「労役場」で働くことになる。
そもそもこの制度は、罰金を支払う能力がない庶民の犯罪を想定したものだった。だから労役の日当換算も大体「日当5万ウォン(5000円)」程度という判決が多かった。
ところが、許宰皓氏に課された罰金は254億ウォンと桁違いに大きい。50日間の労役で完済するということで、「日当5億ウォン」という計算になってしまう。日当は、ほかの判決の1万倍にも達するのだ。
判決が出たのは4年前。この時は、大きなニュースにならなかった。というのも、「日当5億ウォン」の労役というのは、あくまで計算上のこと。光州を代表する企業グループの総帥が、罰金を払わずに「労役提供」を選ぶと見る向きがなかったからだ。
ところが、違った。許宰皓氏は何と、控訴審判決が出た翌日にニュージーランドに逃げてしまった。事業の再起を目指したという説もあるが、真偽は不明だ。
まさかの「労役提供」、しかもその内容が袋貼り!?
最近になって許宰皓氏は司法当局に、「帰国して労役提供する」という意向を伝え、3月22日に帰国し、すぐに「労役場」送りとなったのだ。
実際に、「労役提供」が始まると、韓国内で大騒ぎになった。何しろ、「日当5億ウォン」なのだ。韓国では、経済人に対する判決で「日当」を数千万ウォンと計算する判決が出ることはまれにあった。それでも、これはあくまでの形式上のことで、ほぼすべての経済人は罰金を支払っていた。経済人としてのメンツもあるし、ふつうは罰金額が多い場合、「労役期間」が2〜3年に及ぶためだ。
判決が出た時点では、まさか許宰皓氏が本当に「日当5億ウォン」で労役を提供するなど誰も思わなかった。「前代未聞」のことなのだ。
では実際に、どんな「労役」なのか。韓国メディアによると、「袋貼り」、つまり紙袋にのりをつける作業だという。
許宰皓氏は3月22日の午後6時過ぎに仁川国際空港に到着し、光州の「労役場」に入ったのは、午後11時半近くだった。わずか30分でこの日が終わるのだが、それでも「22日は労役を提供した」と見なされ、罰金額が5億ウォン減った。
「こんなことがあっていいのか!」
世論は沸き立った。それはそうだ。飲食店でのアルバイトの時給は6000〜7000ウォン。1日8時間働いても5万〜6万ウォンなのだ。大卒の初任給は手取りで月200万〜300万ウォン。汲々と生活している庶民の感情をまさに逆なでする内容だった。
贅沢三昧のニュージーランド「逃亡生活」で火に油
5億ウォンというのはどんな金額なのか。庶民やサラリーマンにとって、ソウルか近郊でマンションを購入することは一大事だが、その平均価格が5億ウォンなのだ。ちょこちょこと袋貼りをして1日で「ソウルのマンション1戸」というのは、庶民にとっては「許しがたい計算」だ。
労役による罰金支払いという制度の悪用だという声が怒りに変わってメディアで報じられた。
さらに世論を刺激したのは、許宰皓氏のニュージーランドでの生活ぶりが次々と報じられたためだ。
高級カジノに出入りし、ヨットを楽しんだ。豪華マンションを所有していた。建設会社に出資して事業を始めた・・・。何とも優雅な逃亡生活で、とても「罰金を支払えない」とは思えない内容だった。
それにしてもどうしてこんな判決が出たのか。
冒頭に述べたように、この「労役」は刑法上、「換刑留置」と呼ばれるもので、どのくらいの期間で、日当をいくらと計算するかは、判事に決定権がある。だから、「日当5億ウォン」という判決を出しても法的に問題はない。
とはいえ、あまりに常識外れだ。
判決までの経緯をたどっていくと不可解なことが判明した。
1審裁判で検察は当初、「懲役5年、罰金1016億ウォン」を求刑した。だがその後、「被告人は脱税した税金をすべて払い、判決によっては企業経営にも影響が大きい」などとして「罰金宣告の猶予」を要請した。検察がこうした要請をするのは「極めて異例」だという。
1審判決では「懲役3年、執行猶予5年、罰金508億ウォン」が宣告され、労役については「203日間」となった。「日当2億5000万ウォン」の計算だ。
さらに控訴審では、罰金は半額となり、「日当」は2倍に跳ね上がった。
求刑→1審→控訴審と、急速に刑が軽くなっていく。
減刑した控訴審の判事に疑惑の目
何が起こったのか。韓国メディアが焦点を当てたのは、控訴審の判決を出した判事だった。この判事は、許宰皓氏と同じ光州出身だ。それどころか、ソウル大法学部を卒業して判事に任用されて以来、30年近く、ほぼ一貫して光州で判事生活を送っているのだ。
韓国では一般的に、判事になったら、全国の裁判所を人事異動で回るのが普通だ。だが、本人の希望で、地元でずっと判事を務めることもある。こうした判事を「郷判」と呼ぶが、担当判事はまさにそうだった。
また、この判事の実兄も、もちろん光州出身でソウル大卒業後経済官僚を経て、現在は光州選出の有力国会議員でもある。
地元の有力企業オーナー、地元選出の国会議員、「郷判」による判決・・・。「トンでも判決」はきな臭さも感じさせるものなのだ。韓国メディアは、控訴審判決が出る前に、光州の経済界が「地元経済界に対する影響が憂慮される」などとのコメントを出し、「穏便な判決」を求めていたという。
許宰皓氏の「労役」が始まると、新聞やテレビは連日、「また、今日も5億ウォンが減額されました」などと厳しく批判しながら報じた。
世論の批判に応え、前例のない処分中断決定
世論の批判に応える形で大法院(最高裁判所に相当)は3月25日、労役制度の改善に着手する方針を明らかにした。
また、3月26日には、検察が「罰金徴収のために本人や家族などの資産隠匿を厳しく調査する」などとして、労役提供処分を中断することを決めた。
4年前に出た判決で執行されていた処分を停止するということで、これまた前例のない対応になった。
どの国にも法には抜け道はあるが、経済犯罪→逃亡→日当5億ウォンの労役提供で罰金完済、というのは、どう見ても「やり過ぎ」だったようだ。
許宰皓氏は、工事費滞納で業者から告発されているほか、資産隠匿や他の疑惑も浮上している。ニュージーランドでの優雅な逃亡生活から、「ほとぼりが冷めた」と見て4年ぶりに帰国。50日間、袋貼りをして罰金も返済しようと目論んだのだが、読みが甘かったようだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40312
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