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北のバカげた日常 金正恩「かかし」にする「党の中の党」〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140213-00000006-sasahi-kr
AERA 2014年2月17日号より抜粋
北朝鮮メディアが称賛する稀代の指導者、金正恩(キムジョンウン)氏。しかし実像は、裏の権力機関に操られた「かかし」の指導者ではないのか。
北朝鮮ではニュースも小説も正恩氏賛美一色。北朝鮮メディアの政治宣伝手法を長年研究してきた大場和幸氏は指摘する。
「首領はいわば北朝鮮を体現する『国体』。存在自体が体制維持の象徴だ。いかに国民の頭に『3代目教祖様』の偉大さを刻み込むか。指導部がいま最も重視するのはそれだろう」
経験不足の正恩氏を直接補佐するのが、「党の中の党」と呼ばれる朝鮮労働党組織指導部だ。部長は正恩氏が兼務、その下に第1副部長が6人いて、正恩氏を支えつつ、互いに足の引っ張り合いをしながら牽制し合っているという。
組織指導部は人事から思想教育、監視統制に至るまで党全体に大きな影響力を持ち、下部組織が毛細血管のように国全体に張り巡らされている。何より、他の部署から正恩氏の手元に文書が届いたり、正恩氏の命令が該当部署に下達されるとき、必ず組織指導部の「検閲」を通るのだ(注・軍の問題は国防委員会を経て正恩氏に届く)。日本なら首相をそばで支える内閣官房のようなもの。「首領の名による党の指導」を徹底させるべく目を光らせる。
元労働党幹部の話。
「組織指導部は自分たちの都合のいいように文書をいじくることができる。経済数値の書き換えもする。正恩が口述指示した『お言葉』が下に降りるとき、『党の教義』に合うよう作り直すこともある」
「分厚い文書など正恩が最後まで読むと思うか? 読んでもせいぜい2〜3ページだ。それで署名してしまう。経験不足の指導者に組織指導部がいろいろ吹き込み、操るのも可能だ」
正恩氏は2012年4月、党や国家経済機関幹部らを前に、「国土管理事業」についての談話で、こう述べたと発表された。
「わずかな外貨を稼ごうと、国の貴重な地下資源をむやみに開発・輸出する動きがある。資源開発に無秩序を作り出さないようにすべきだ」
昨年暮れに張成澤(チャンソンテク)氏に死刑を言い渡した判決にある「国の資源を安値で売り払う売国行為を働いた」との記述とよく似ている。正恩氏の談話をチェックし、手を入れるのは組織指導部だ。
この時点で組織指導部は張氏と人事権などを巡り深刻に対立、張氏への警戒を強め始めていたのかもしれない。
正恩氏の警護は護衛司令部の管轄だが、最も近い距離で密着警護するのは「六所」という別の武装組織で、組織指導部の所属になっている。「もし正恩氏と組織指導部の間に抜きがたい対立が生まれたら、体制を揺るがす事件に発展する可能性がある」(元労働党幹部)
金王朝の腐食は進むばかりだ。金正日総書記の時代、正日氏が贈り物を山ほど抱え、工場の視察に来ると、機械は正常に動き、北のメディアは大宣伝した。だが稼働はその日だけで、翌日からまたストップ。そんなケースが少なくなかったという。指導者を喜ばせるため責任者がその日のために材料をかき集め、動かしたにすぎなかったからだ。
「そんなバカげたことが日常化していた。原料も部品も足りないからだ。でも指導者には怖くて言えない。それは正恩時代になっても変わらない」(在日ビジネスマン)
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