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不合理が増す米国の対中国戦略
2014年2月10日 田中 宇
http://www.tanakanews.com/140210china.htm
(前略)
過激策を弄する北朝鮮を持て余す中国は、北朝鮮に対する立場が韓国と似てきている。従来の朝鮮半島は、中国と北朝鮮の同盟体が、米国と韓国の同盟体と敵対する冷戦型の関係だったが、最近は、中国と韓国が協調して北朝鮮の過激策への対抗策を練る状況へと変質している。ここで問題になるのが米国の位置づけだ。最近、米国は韓国を誘い、在韓米軍と韓国軍が合同で、北朝鮮の政権を転覆することを想定した軍事演習を行った。米国が好むこの手の策は、北朝鮮をますます過激な方向に押しやる。米国が韓国を誘って北朝鮮を転覆しようとするほど、北朝鮮は国内的に「米韓の脅威に対抗しよう」と結束し、金正恩政権の延命力が強くなる。 (In South Korea, US Special Ops Train to Help Overthrow North Korean Regime)
昔のように、朝鮮半島における冷戦構造を永続化するつもりなら、敵である北の政権が延命するのが良いことになるが、昨今マスコミでさえ予測しているように米国の覇権がしだいに弱くなるのが今後の現実であるなら、むしろ朝鮮半島の敵対構造を弱めつつ、北が過激策を弄しないよう、中韓米露などの周辺諸国が協調して北を監督するのが良い。いまや米国の対北好戦策や、在韓米軍の存在そのものが、朝鮮半島の敵対構造を煽っている。これまで韓国にとって対米従属は、日本にとってと同様、便利な安全保障策だったが、今後しだいにそうでなくなる。米国は覇権が低下しても、好戦策・敵対策をやめそうもない。米国が好戦的なままだと、韓国はいずれ、米国に在韓米軍の撤退を求め、中国(やロシア)と組んで北朝鮮を抑止する策を強めざるを得なくなる。 (North Korea warns U.S., South Korea military drills could spark disaster)
米国は、中国包囲網を強化して恒久的な冷戦構造を復活したいのかもしれないが、だとしたら不合理な愚策だ。米国が中国敵視を強めているここ1−2年は、ちょうど中東政策の失敗などで、国際社会で米国に対する政治的信頼の低下かが激しくなった最中で、すでに見たように、中国包囲網に不可欠な台湾や韓国が中国と協調する姿勢を強めている。東南アジアでも、ベトナムが米国に使われて中国敵視の先兵にされるのをいやがり、フィリピンも右往左往している。 (中国包囲網のほころび) (中国の台頭を誘発する包囲網)
米国の中国包囲網が愚策である最大の要点は経済面だ。いまや世界経済の牽引役は、米国でなく、増大する中国(や他の新興諸国)の中産階級だ。米国の大企業の多くが、中国の消費力にあやかって儲けている。いまから中国との恒久的な冷戦構造を復活するのは、世界経済と米国企業にとって大損失となる。米国の財政も、中国による米国債の購入で支えられてきた。米経済の原動力だった金融システムは、連銀のQE縮小などで、不安定さを強めている。米国の金融は、あと1−2年延命するかもしれない半面、来月にも再崩壊するかもしれない。日本についても、世界的な投資家の多くが、日本株を売りに入っていると報じられている。 (Global investors drop Japanese stocks)
米英や日本では中産階級の縮小が起きているが、中国やインドなどでは、中産階級が増えている。ゴールドマンサックスの幹部がBRICSという言葉を作ったときに予測した「消費の多極化」が現実化している。中国では中産階級が増えているが、日本では減っている。日本で、正社員は中産階級であることが多いが、派遣社員は収入が少なく貧困層になることが多い。日本の終身雇用の終焉は、中産階級の没落につながる。中国は世界経済の牽引役になりつつあるが、日本の繁栄は終わりつつある。日本が中国に対抗してやるべきことは、小さな領土に拘泥したり、糞財界人の意のままに派遣制度を拡大したり、日銀の造幣力を浪費して株価を操作することでなく、国力の源泉である中産階級を保持拡大することだ。 (Which middle class, which squeeze?) (しだいに多極化する世界)
人類の繁栄にとって中国経済(内需)の発展が不可欠なときに、米国を支配するNYの資本家が中国包囲網を本気でやるはずがない。米国から威嚇されるほど、中国は太平洋の西半分を支配しようとする意志を強め、かつて米国が中国に持ちかけて断られた「米中G2」(米中による覇権の2元化)の状態へと自然に近づく。中国包囲網は、中国を強化するための茶番劇だろう。日本は、その茶番劇の一時的な道具として使い捨てにされていると感じられる。どこかの国に従属して生きていこうとする国は、従属対象の国からどんなひどい仕打ちを受けても文句を言えない。従属根性を持つ者たちの方に問題がある。 (中国を隠然と支援する米国)
(後略)
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