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2014年01月28日
(バンコク)−タイの抗議運動指導者は、バンコクほか全国各地での投票妨害行動を直ちに止めるべきだ。タイ政府当局は非暴力のデモを認めなくてはならず、治安部隊については人権侵害を行わず、どのグループによる暴力行為であっても、それを予防・停止するべく公平に介入することを保証すべきだ。あらゆる政治組織の指導者は、支持者による暴力のエスカレートを防ぐよう行動すべきである。
タイ総選挙は2014年2月2日に予定されている。タイ国選挙管理委員会の報告によれば、事前投票に登録していた全国約200万人のうち44万人が、1月26日に投票を行うことができなかった。人民民主改革委員会(PDRC)の反政府デモ隊による妨害が原因だ。PDRCなど反政府組織による妨害により、1月26日の期日前投票は、バンコク市の全50区のうち48区で中止された。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは「デモ隊は、汚職と戦い、改革を求めていると主張している。しかしそれは、実力行使や脅迫による投票妨害を正当化する理由にはならない」と指摘。「国民の投票を妨害する行為は、有権者の基本的権利と民主主義の原則への重大な侮辱である。」
PDRCの指導者ステープ・トゥアクスパン氏は1月24日、反政府デモ隊は、「選挙を妨害しないが、あらゆる人びとを説得して」投票を思いとどまらせると発表した。しかしデモ隊は1月26日、投票所を包囲し、入口をチェーンで封鎖した。投票に来た有権者を脅したり、暴力をふるったケースもあった。
バンコクのチャトチャック区にあるセント・ジョンズ・ポリテクニック・スクールでは、バリケードを突破して投票所に入ろうとした男性1人を、デモ隊が突き飛ばし、首を絞めた。バンボン区役所の外では、 自分の投票を妨害したデモ隊の写真を撮影しようとした女性1人が襲撃された。ワントーンラーン区役所でも、投票しようとしていた男性が、デモ隊に襲われている。
バンコクの他ではスラートターニー、ラノーン、トラン、パッタルン、チュムポーン、クラビー、パンガー、プーケット、ナコーンシータンマラート、サムットソンクラーム、サムットサーコーン、ペッチャブーンの各県で、反政府組織が投票妨害を行った。南タイでは、PDRCが28選挙区の立候補届を阻止し、当該地域での選挙を妨害した。
総選挙を頓挫させようとするPDRCのキャンペーンは、政治組織が暴力に訴えるという憂慮すべき傾向の一環ともいえる。PDRC内部の急進派、とくにタイ改革学生人民ネットワーク(NSPRT)は2013年12月26日に、警察との衝突事件を起こしている。選挙管理委員会の政党立候補者リスト登録を阻止しようと、バンコクのタイ・ジャパニーズ・スタジアムの入口を封鎖したときのことだ。デモ隊1人と警官1人が銃撃で死亡し、双方に90人以上の負傷者が出た。2014年1月17日と18日には、PDRC支持者がバンコクの教員評議会印刷所を包囲し、投票用紙の印刷中止を要求し、当該施設への電気と水の供給を遮断した。
反独裁民主戦線(UDD)、通称「赤シャツ隊」の政府支持者は、投票を妨害する行動に対抗し、バンコク市バーンナー区ではデモ隊の車列を銃や棍棒で襲撃した。デモ隊1人が射殺され、少なくとも11人が発砲と暴行で負傷した。
2013年11月以降、反政府デモ隊や野党民主党党員、抗議運動の現場、デモ隊の車列への襲撃事件は、30回以上発生している。2014年1月17日には、バンコクの繁華街を行進中のPDRCのデモ隊に手榴弾が投げつけられ、1人が死亡、39人が負傷した。その2日後には、バンコクの戦勝記念塔前での集会に手榴弾による攻撃があり、デモ隊とジャーナリスト1人を含む28人が負傷した。
前出のアダムス アジア局長は「反政府派と親政府派が襲撃と挑発に報復で応じており、タイは政治対立が暴力化しつつある」と指摘。「両陣営の指導者は、支持者を統制し、暴力禁止を命じるべきだ。そして事態が更に悪化するのを避けるため、民主主義の原則を尊重しつつ事態を政治的に解決するべく交渉する必要がある。」
タイ政府当局は、デモ隊に対する最近の暴力事件を徹底的に捜査し、犯人を訴追するべきだ。警察からはこれまでのところ、一連の事件の捜査状況について一切発表がない。タイ政府当局は、反政府デモの安全を保証する必要がある。
インラック・シナワトラ首相は1月24日、事態の悪化に対処すべくバンコク市と周辺地域に60日間の非常事態宣言を発令した。非常事態下では、5人以上の集会は禁止される。メディアは、国の安全および公序良俗を損なう可能性のあるニュースを発表・販売・または配布することを禁じられる。非常事態宣言を執行する政府当局には、特定の道路、交通機関、施設の利用を制限すると共に、人びとに指定された地域から退去するよう、あるいは立ち入りを禁止するよう命令する権限が与えられる。タイ政府が批准する市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)は、非常事態を宣言できる要件として、「国民の生存を脅かす公の緊急事態」の存在を挙げ、さらに「事態の緊急性が真に必要とする限度において、規約に基づく義務に違反する措置をとれる」と定めている。しかしタイ政府は、規約に定める人権保護の一時停止を正当化できる、信頼に足る理由を明らかにしていない。
治安維持のために政府がとる措置は法定されていなくてはならず、かつ、脅威の程度、あるいは達成されるべき正当な目標に見合う限りで正当化される。「法執行官による強制力及び武器の使用に関する国連基本原則」は、強制力の行使に訴える前に、可能な限り非暴力的手段を適用するよう定めている。タイ政府治安部隊の全隊員は、デモ規制ではこの規定を順守すべきだ。強制力と銃火器の合法的行使が不可避な場合でも、当局はその使用を抑制し、違反行為の重大性に見合った行動をとらなければならない。
アダムス アジア局長は「タイ政府当局には、非暴力デモを行う権利を守る義務がある。しかし他方で、法と秩序を維持する必要もある」と、述べた。「つまり、暴力を予防するために迅速に行動するとともに、暴力行為が発生してしまった場合には、暴力を止めるために公平に行動しなければならない。」
http://www.hrw.org/ja/news/2014/01/28
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