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稀代の暴君・金正恩〔PHOTO〕gettyimages
北朝鮮コンフィデンシャル これは史上最悪の「兄弟ゲンカ」である 金正恩は、兄・正男も「処刑」する気だ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38082
2014年01月16日(木) 週刊現代 :現代ビジネス
昨年末にナンバー2の張成沢を処刑したと思いきや、金正恩の次なる標的は「中国に亡命中」の長男・金正男だという。もう止まらない隣のヤクザ国家のお家騒動。周辺諸国にとっては迷惑千万な話だ。
■労働新聞が予告した標的
「たとえ血を分けた兄弟でも、ためらうことなく懲罰の銃口を向けるであろう。そのようなことができる剛直な人物こそが、真の革命家と言えるのだ」
昨年12月14日、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は、「われわれには金正恩同志しかいない」というタイトルの記事で、このような物騒な記事を掲載した。
東京新聞編集委員の五味洋治氏は、このニュースにピンと来たという。五味氏は、金正恩第一書記の異母兄である金正男を計7時間、独占インタビューし、150通のメールを交換した。そしてその金正男との「交遊録」をまとめた著書『父・金正日と私/金正男独占告白』が、一昨年、ベストセラーになった。
「この記事は、中国で事実上の亡命生活を送っている金正男へ向けたメッセージですよ。すなわち先月、金正恩第一書記は、張成沢党行政部長を、残忍な方法で処刑しましたが、次は金ファミリーの中で張成沢に最も近かった金正男を狙うということです」
故・金正日総書記には、3人の息子がいる。元女優の故・成恵琳との間に'71年に生まれた長男・正男。元踊り子の故・高英姫との間に生まれた'81年生まれの次男・正哲と、'83年生まれの3男・正恩である。
五味氏が続ける。
「当初は正男が、金正日総書記の有力な後継候補でした。ところが'01年5月に、東京ディズニーランドへ行こうとして成田空港で捕まってしまう。敵国である日本に捕まったのですから、これは後継者としては致命的です。
実際、金正男は私に、『この一件で父上に激怒された』と述べていました。『私が後継から外れたのと、日本で捕まったこととは無関係だ』とも弁解していましたが、それは彼の負け惜しみだと思います」
翌'02年8月からは、北朝鮮国内で、高英姫夫人の偶像崇拝化が始まった。これは後継候補が正男から高夫人の息子へ移った証左と見られる。
そんな「金正恩後継」を世界に知らしめたのは、「金正日の料理人」こと藤本健二氏だった。藤本氏が述懐する。
「一家で食事する時は、金正日総書記の隣は必ず正恩で、正哲は下座に座らされていました。金総書記は『正恩はオレに似て肝っ玉が大きい』とも自慢していました。こうしたことから、正恩後継は、金正日総書記の心中では既定路線だったのです。私は計13年間、金正日総書記の側に仕えていましたが、金正男のことは、平壌で存在すら知りませんでした」
■兄は弟の能力に疑問符
こうして後継候補から外れた金正男が頼ったのが、中国と張成沢だった。
「金正男は、'95年から北京に移り住んで、精力的に父親の外貨獲得をサポートしていました。北京に2軒家があって、マカオにも別宅があり、最近は上海にも豪邸を買ったと聞いています。北京とマカオには別々の妻子がいました。
金正男は、中国で本当に贅沢な生活をしていました。『エルメスが一番気に入っている』などと言っていました。
先月の張成沢の死刑判決文には、『一年間に460万ユーロ(約6億5000万円)以上を秘密金庫から引き出して使った』とありますが、こうした『張成沢資金』が金正男に流れていた可能性は十分あります」(前出・五味氏)
中国の外交関係者によれば、中国は張成沢と金正男を、いわば一心同体と見ていたという。
「わが国は金正男に長期滞在ビザは保証したが、資金提供はしていない。すべては張成沢と(金正日総書記の妹)金敬姫の夫妻を通して資金提供がなされていたようだ。
実際、張成沢はよく訪中し、金正男と会っていた。'08年夏に金正日総書記が脳卒中で倒れた時には、金正男は張成沢の命を受けて、皇帝が飲むような高価な漢方薬を北京で調達して平壌へ運んでいた」
張成沢と金正男が意気投合していたのは、二人とも北朝鮮の経済改革の必要性を痛感していたからだという。
「張成沢は党行政部長で、首都・平壌のリフォームの責任者だった。妻の金敬姫は党軽工業部長で、生産増加の責任者だった。この夫妻は金正男を頼り、金正男は中国を頼った。
この3人は、北朝鮮で一刻も早く中国式の改革開放政策を実施しないと、国が崩壊すると危惧していた。張成沢は直接的に金正恩政権を批判したことはないが、金正男は露骨に批判していた」(同・中国の外交関係者)
前出の五味氏も、金正男から、次のような金正恩批判を聞いたことがあるという。
「異母弟の正哲とは、海外で会って何度か話し込んだが、正恩とはこれまで会ったこともない。父上(故・金正日総書記)は厳しくても、愛情が深かった。祖父(故・金日成主席)に容貌だけが似ている弟の正恩が、どれだけ北朝鮮の人々を満足させられるか、私には疑問だ」
金ファミリーの中で金正恩批判を繰り出しているのは、金正男だけではない。'12年10月には、金正男の長男・金韓雪('13年秋にパリ政治学院に入学)が、フランス国営放送のインタビューに答えて、次のように言い放った。
「私は朝鮮半島の統一を夢見ている。いつか北朝鮮へ帰って、住民たちの状況を改善したい。
以前、北朝鮮へ帰った時は、母方の実家にいたので、金正恩第一書記には会ったこともない。国を独裁者が統治しているとは知らなかった」
少しでも気に食わなければ粛清してしまう現在の金正恩にすれば、張成沢の背後にいて、事あるごとに自分を批判してきた金正男は許しがたい存在だ。一方の金正男も、弟・正恩の凶暴な性格が分かっているだけに、身辺を非常に警戒している。
金正男は現在、中国に滞在中とされるが、昨年12月に張成沢が処刑されて以降、表舞台から姿を消してしまった。長男の金韓雪は、パリ警視庁がパリ政治学院の学生寮を厳重警備しているという。
■金正男の大逆転もある
思えば、金王朝の骨肉の争いは、いまに始まったことではない。
金正男の従兄弟(母親の姉の息子)にあたる李韓永は、かつて金正男とともに、モスクワやジュネーブに留学していたが、'82年に韓国に亡命。その後、'96年に金ファミリーの暴露本『平壌「十五号官邸」の抜け穴』を、韓国や日本で出版した。するとその翌年、北朝鮮がヒットマンを韓国へ送り込み、李を射殺してしまったのだ。
「韓国政府の調べでは、犯人は朝鮮労働党連絡部に所属する特殊工作員の夫婦でした。警察が二人を逮捕しましたが、妻はすぐに自殺しています。この時の犯行はもちろん、金正日総書記直々の命令によるものと考えられます」(ソウル在住ジャーナリスト・金哲氏)
金正男としては、いまでも従兄弟が犠牲になった時の記憶が生々しいに違いない。そこで中国にかくまってもらっているというわけだ。
前出の中国の外交関係者が証言する。
「金正男の居所は言えない。彼はわが国の公民ではないけれども、わが国は中国国内の治安を維持する義務がある。北朝鮮はわが国に平気でヒットマンを送り込んでくるような粗暴な国だ。数年前にわが国が厳重抗議したこともあった」
この中国の外交関係者によれば、北朝鮮がヒットマンを送り込んできたのは、'11年秋のことだったという。
「'11年6月に、張成沢からのたっての願いで、中朝国境近くの北朝鮮の島、黄金坪・威化島を、わが国の協力で経済特区に指定した。この時、張成沢と中国の陳徳銘商務相がガッチリ握手を交わし、盛大に経済特区の開所式を行った。
その際、中国人民解放軍の香港でのロジスティックを受け持っている新恒基グループの高敬徳会長に、この新たな北朝鮮の経済特区の行政長官に就任してもらった。だが北朝鮮は同年秋にわが国にヒットマンを送り、上海に滞在中の高会長を刺殺してしまった。その時は当時の胡錦濤主席が激怒し、人民解放軍の代表団が抗議のために訪朝したほどだった」
現在の独裁者は、先代の金正日総書記に輪をかけて獰猛な金正恩第一書記である。中国へヒットマンを差し向けることなど、何とも思わないだろう。金正男が中国政府の協力を得て、いまはただ身を隠している他ないのも理解できる。
加えて今回、張成沢が処刑されたことで、北朝鮮から金正男への送金ルートも途絶えてしまった。となれば、この兄弟ゲンカは正恩が勝利するのか。
「正直言ってわれわれは、金正恩政権が、あと1年もたないのではないかと見ている。内部でクーデターが勃発して、金正恩政権は崩壊するというシナリオだ。これはアメリカ政府の見方とも一致している」(前出・中国の外交関係者)
長年、北朝鮮取材に携わってきた平井久志・元共同通信ソウル支局長は、「正恩が死去する事態になれば、金ファミリーから『後継者』を選ぶ可能性がある」と指摘する。すなわち、金正男のチャンス到来だ。
ともあれ周辺諸国にとっては大迷惑の、まさに史上最悪の兄弟ゲンカである。
「週刊現代」2014年1月18日号より
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