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ナンバー2処刑の裏には金正恩の裏資金〈AERA〉 
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投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 12 月 23 日 22:26:00: igsppGRN/E9PQ
 

ナンバー2処刑の裏には金正恩の裏資金〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131223-00000005-sasahi-kr
AERA 12月30日・1月6日合併特大号


ナンバー2処刑の裏には「金正恩の裏資金」発覚の犯人探しがあった──。

「暴力的、かつ誇大妄想的独裁者」正恩氏は、またも核とミサイルに走るか。(編集部 小北清人)

* * *

 処刑された張成澤(チャンソンテク)氏の手による「エンマ帳」が、どこかに隠されているとの噂がある。

 金正恩(キムジョンウン)第1書記(30)の叔父で正恩体制ナンバーツーと呼ばれていたのが一転、「体制転覆を計画した国家反逆者」と断罪、12月12日に処刑されたあの張氏のことである。

 ロイヤルファミリーの一員として約40年間、金正日(キムジョンイル)、金正恩父子の側近として権力中枢にいた張氏。その彼が、北朝鮮中枢のからむ様々な謎や事件の真相を個人的につづった備忘録が存在するというのだ。

 本当に実在するなら、正恩氏を筆頭に、彼を手にかけた面々にとっては何としても回収したい代物だろう。「知りすぎた男」張氏は外貨稼ぎ機関の責任者を長く務め、金正恩時代では正恩氏の「裏資金」を深く知る立場にいた。

 逮捕わずか4日後に処刑したのも「生かしておくと、王朝のカネの問題がいつ本人や部下の口から飛び出すかわからない」と恐れたためか──。

●第三経済委員会

 北にとって外貨は「体制維持の生命線」そのものだ。自国通貨の朝鮮ウォンは国外で通用せず紙くず同然。国内でさえ米ドルやユーロ、日本円、人民元がはるかに幅を利かせている。

「何をするにも外貨なしではやっていけないのが実情だ」(労働党の外貨調達部門元幹部)

 だからこそ中国やアジア、欧州などに貿易会社や北朝鮮レストランを出し、伐採工など労働者の派遣、麻薬密売にも手を染め外貨稼ぎに必死になる。

 とりわけ重要なのがロイヤルファミリーの裏資金だ。「統治資金」とも呼ばれる。彼らが楽しむ贅沢品や別荘の関連物資、軍幹部の歓心を買うため贈られるベンツなど高級外車の購入に主として使われてきた。2012年初めの金正恩体制本格スタート以来、遊園地など娯楽施設が正恩氏の肝いりで次々と平壌(ピョンヤン)に造られた。その建設にも裏資金の一部が使われたという。

 裏資金の原資は、金の国際市場への販売のほか、党、軍、政府の各機関から強制的に上納させるカネが中心とみられ、カネを海外株式市場や投資銀行で運用してもいるようだ。
 故・金正日総書記の息子たち、正男(ジョンナム)、正哲(ジョンチョル)、正恩の3人が子どものころ、いずれもスイスに留学した。当時彼らを世話したスイス駐在大使が「ロイヤルファミリーの金庫番」といわれた人物だったのも、顧客の秘密を漏らさないスイスの銀行に裏資金を預けていたためだ。

 金正日時代、この裏資金の調達・管理を任されていたのが「労働党38号室」という特別機関である。ところが金正恩氏の代になって間もない12年5月に38号室は解体、新たな機関に移管された。その新機関が「第三経済委員会」で、組織を実質的に取り仕切るのが労働党行政部だった。それにとどまらず、行政部は軍や党所有の他の鉱山や工場も勢力下に収め利権を急膨張させた。そのトップが行政部長の張成澤氏。11月末に銃殺された張氏の側近2人も行政部所属だ。

●統治資金の証拠を確保

 北朝鮮の核ミサイル開発に対する米国中心の経済制裁網の中、北の外貨は枯渇の危機にあるという。虎の子の裏資金も、かつて数百億円とも数千億円ともいわれたが、いまは減少の一途。だが世界各地に隠された裏資金の内実は厚いベールに覆われたままだ。

 その裏資金にまつわる「事件」が、こんどの張氏粛清と深い関係があるという。

 きっかけは13年2月に北朝鮮が国際社会の制止を無視して3度目の核実験を強行したことだった。

 ある中朝関係筋が明かす。

「あの核実験は中国共産党もメンツをかけて阻止しようとしたが、北は応じようとしなかった。そこで中国は『積極的な不満の表示』として、国内大手銀行の口座から北朝鮮関係を締め出す措置に出たが、もう一つ、水面下で脅しの手に出た。『金正恩氏の統治資金の証拠を確保した。内容を暴露してやる』というものだった」

 ちらつかせたのは、香港、マカオ、インドネシア、マレーシア、シンガポールなどに隠した裏資金の詳細だったという。

「場合によっては香港とマカオの裏資金は凍結、他の国に隠した裏資金の公開も辞さない、と脅しに出た」(同)

 驚愕した北朝鮮側は隠匿先がなぜ漏れたか内偵に入り、疑われたのが張氏と行政部の側近たち。張氏はかねて「中国式の改革開放に前向きな親中派」とみられていた。マレーシアとインドネシアの大使は張氏の親族が務めていた。

●自信過剰とムラ気

 この5月に正恩氏の名代として訪中したのが張氏でなく、現在「新ナンバーツー」とみられる崔竜海(チェリョンヘ)・軍総政治局長だったのも、「裏資金問題」が背景にあった可能性がある。

 張氏への反感はすでに軍や党で強まる一方だった。それに「裏資金の内情を漏らした疑い」まで加わり、「夫は金王朝を乗っ取るつもりでは」と猜疑心を強める「女帝」、妻の金慶喜(キムギョンヒ)氏に見限られたとなれば、張氏の運命は先が見えたも同然だった。

 北朝鮮は経済的に八方塞がりだ。張氏処刑後、北の当局は「経済を意図的に破綻寸前に追い込み、金正恩体制への国民の信頼を失墜させ、軍をも味方に引き入れて政変を起こそうとした」と張氏が自白したと弾劾したが、これは経済が崩壊寸前と自ら暗に認めたに等しい。

「米国は正恩氏のスイス留学時代の友人たちからも話を聞いた。当時から予測不能で暴力的、かつ誇大妄想的な人物だったと結論づけた」(米オバマ政権のキャンベル前国務次官補。CNNのインタビュー)

 いまや「世界指折りの暴虐な独裁者」と国際社会の評価が決定づけられた正恩氏。北朝鮮は11月、国内全域に13の経済特区を作る外資誘致策を明らかにしたが、食指を動かす外資はまずあるまい。

 どうにもならなくなった北の指導部が、またも強硬路線に踏み切るのも十分あり得る。

「14年1月下旬〜3月上旬に核実験やミサイル発射、もしくは韓国への軍事挑発を仕掛ける可能性がある」と韓国の国防長官が最近発言した。韓国の一部新聞は「北を脱出した張氏側近が韓国政府に渡した軍事情報に基づいた判断」と報じた。

 自信過剰でムラ気が強く、表向き阿諛追従の側近たちに囲まれた30歳の指導者は「アメリカも中国も、しょせん我が国の敵ではない」と本気で思っているかもしれないのだ。

 

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