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使用部品の書類偽造で運転を停止した韓国南部の新古里原発2号機(AP)
韓国“底なし”原発不正、汚染水非難の裏で100人起訴
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20131026/frn1310261419002-n1.htm
2013.10.26 夕刊フジ
【海外事件簿】
東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題で激しい日本非難を繰り返していた韓国で、原発を運営する「韓国水力原子力」(韓水原)を中心に政官を巻き込んだ不正に対する捜査が進んでいた。韓国政府が今月公表した原発関連書類の偽造は2000件超。偽造や金品授受で韓水原の元社長や大物官僚ら100人が起訴された。不正発覚で複数の原発が稼働停止し、電力供給が逼迫(ひっぱく)。韓国では津波という天災ではなく、私利私欲にまみれた「原発マフィア」と呼ばれる業界の腐敗構造が原発の“安全神話”を押し流した。(桜井紀雄)
■「原発不正との戦争」…猛暑日にエアコン禁止令
これまでの韓国メディアの報道によると、韓国の原子力安全委員会のホームページに4月に寄せられた告発メールが発端だった。
「建設中の新古里(シンゴリ)原発3・4号機(蔚山市)の部品書類が偽造された」
安全委は調査を始め、3・4号機に加え、稼働中の新古里1・2号機(釜山市)や新月城(シンウォルソン)原発1・2号機(慶尚北道慶州市)の計6基で原発の制御ケーブルの性能成績証明書が偽造されていたことが明らかになった。
韓国政府は、新古里2号機や新月城1号機の運転停止を決めた。故障などで停止した原発もあり、韓国の原発23基中、10基が稼働停止するという異常事態となった。
鄭●(=火へんに共)原(チャン・ホンウォン)首相は「原発不正との戦争だ」として、他にも偽造がなかったか全原発の過去10年間の検査書類に対する調査とともに不正に関わった関係者の厳重処分を指示。韓国政府は、国民や企業に電力消費を制限するよう求め、猛暑となった8月の電力使用のピーク日には全国の役所でエアコン使用が禁じられた。
「原発業界の不正と政府の電力需給の見通しの甘さの尻拭いをなぜわれわれが…」と国民からは恨み節が上がった。
捜査のメスはその後、贈収賄容疑で、発電所建設大手の現代重工業の役員や、李明博(イ・ミョンバク)大統領時代に“キング次官”と呼ばれ、権勢を振るった元知識経済省次官の朴永俊(パク・ヨンジュン)被告=別の事件で収監中=ら李大統領周辺者にまで及んだ。
原発をめぐる一連の不正に対し、朴槿恵(パク・クネ)大統領は「国民の生命を担保に途方もない不正腐敗を犯した」と批判。「このような不正が今まで長らく明らかにならずにいたことがより衝撃だ」と怒りをあらわにした。
■原発運営とチェック側4者が結託 昨年うみをだしたはずが…
性能成績証明書の偽造が確認された制御ケーブルは、原発に事故が起きた際、原子炉を冷却させる信号を送るもので、原発にとって安全を維持する“命綱”と言えるものだ。この安全性を担保する書類が、製造会社に加え、試験会社と承認機関という厳しく安全性に目を光らせるはずの2機関の結託で改竄(かいざん)されていたのだ。
捜査当局の調べでは、制御ケーブルなど原発部品の納入前に製造会社と2機関の関係者7人が集う「7人会議」で納品の是非が決められていたという。この会議を取り仕切っていたのが納入側の韓水原の担当部長だったとされる。
制御ケーブルについては、試験会社が2008年1月、カナダの試験機関に性能テストを依頼し、一部しか合格判定が出なかったが、不合格部分の性能を示すグラフを書き換え、成績証明書を提出。承認機関がすぐに承認し、書類提出からわずか10日間で納品された。
証明書について担当者から「問題がある」との指摘があったが、韓水原の部長らは「そのまま承認しろ」と指示したともされる。
韓水原関係者は当初、「私たちも問題を告発した被害者の立場だ」と韓国メディアに述べていた。だが、収賄容疑で元社長まで逮捕されるに至り、実際は“主犯格”といえる立場にあったことが浮き彫りになった。
原発部品の書類改竄は、いまに始まったことではない。昨年にも納品会社から賄賂を受け取るなど不正に関与したとして、韓水原の役員ら20人超が摘発され、監査院の監査で、過去10年間に原発部品約1万4000個の性能証明書が偽造されていたことが判明した。
今回の書類偽造では検査や承認すべき機関がぐるになっていたため、内部告発があるまで容易に発覚しなかった。まさに“ミイラ取りがミイラになる”「原発マフィア」の腐敗構造の根深さを物語っている。
■コピー用紙の箱に2億ウォン 宅配で賄賂受け取りも
韓水原関係者の賄賂授受についても開いた口が塞がらない実態を韓国メディアが伝えている。
不正の中心人物と目される韓水原の部長は、現代重工業からカネを受け取る際、コーヒー店でA4用紙2500枚が入った箱を手渡された。中には、五万ウォン札2億ウォン(約1800万円)分が詰め込まれていたという。韓国電力公社の本社ロビーという公の場で堂々と受け取ることもあったとされる。
駅や駐車場で業者から金品を受け取る職員もいれば、宅配サービスを使った賄賂の授受も行われていたという。
韓水原は6月、上級幹部約200人全員が辞表を提出したが、受理された例は伝えられず、「パフォーマンスにすぎない」との批判を受けた。
9月には、古里原発1号機(釜山市)で7月、点検の際に非常用発電機を全て止めてしまい、予備電源がない状態が18時間も続いていたことが発覚。不正にまみれた幹部はおろか、現場まで「国民の命を預かっている」との安全性に対する意識の希薄さを露呈した。
■原発依存を撤回 来年も続く暑い夏に寒い冬
韓国国民に原発の安全性に対する不安が広がるなか、朴槿恵政権が編成した官民合同のワーキンググループは、電力供給に占める原子力発電の比率を2035年に22〜29%とする草案を政府に勧告した。現在の原発依存度は26・4%。李明博政権は30年に41%とする計画を示しており、右肩上がりで進められてきた原発政策の撤回を意味した。
一連の原発不正を受け、韓国政府は今月、建設中も含めた全原発の過去10年間の書類約24万件のうち、2287件で偽造が確認され、9月末までに韓国電力の副社長を含む計100人を起訴したと発表した。同時に、業者との癒着を断つため、韓水原など原発関連の公営企業の幹部に関連会社への天下りを禁止したり、内部告発者に最高10億ウォンの報奨金を出すなどの対策を示した。
ただ、新たに手抜き整備疑惑が浮上した別の原発についても23日、調査のために運転停止が決められるなど、原発をめぐる不正やずさん管理はイタチごっこの様相を呈している。
不正に伴う再検査や再整備でどんどん原発稼働が遅れる状況を受け、有力紙の中央日報は社説で「今のところ、来年も暑い夏、寒い冬を過ごさなければならない」と悲観。書類偽造で停止した原発2基分の電力をまかなうだけで年4兆ウォン(約3900億円)に上るとし、原発不正全体での「被害規模は天文学的に増える」とも指摘する。
その上で、「数億から数十億ウォンの利益に目がくらんで国家に莫大(ばくだい)な損失を負わせた企業」だけでなく、「ぐずぐずした対応で被害を増大させた政府も責任を免れることはできない」と記している。
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