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遅れてきた株高――韓国株2年ぶりの高値 中堅財閥破綻など暗いニュースでもマネー流入
2013年10月23日(Wed) 玉置 直司
2013年10月21日、韓国の総合株価指数(KOSPI)が2年ぶりの高値を更新している。原動力は、外国人投資家の旺盛な買いだ。東洋グループが事実上破綻するなど中堅財閥の経営不振が相次いで表面化しているうえ、サムスン電子を除く企業業績も絶好調とは程遠い。市場関係者の間では先行きを案じる声も強い。
10月21日、週明けの韓国の証券市場の主役も外国人機関投資家だった。この日も、優良株を中心に買いの勢いが強く、1930億ウォン(1円=11ウォン)を買い越した。
KOSPIは一時、2060ポイントを超えたが、その後、国内投資家の利益確定の売りが出て2050ポイントを挟んで一進一退の展開が続いた。
結局、終値は前週末比0.61ポイント高の2053.01。外国人機関投資家による韓国の上場株の買い越しは8月23日以来、37営業日連続で、この間の買い越し額は12兆ウォンを超えたと見られている。
KOSPIは10月18日に、2年2カ月ぶりに2050ポイントを突破した。2013年春以降、1800〜2000ポイントの間を上下してきたが、10月に入って一本調子で上昇し、市場関係者が春以降「当面の目標値」としてきた2050をあっさりと超えた。
日本や「VIIP」の陰にかすんでいた韓国株に見直し買い
世界のマネーの動きは本当に早い。2013年の前半まで外国人機関投資家の韓国株に対する判断は「売り」だった。すぐ近くのアジア地域により魅力的な市場があったからだ。日本もそうだし、それ以上に「VIIP」と呼ばれる投資先があった。
ベトナム、インドネシア、インド、そしてフィリピンだ。これら新興国は潜在的な成長株として注目を浴びて、海外からマネーが流入し続けた。
日本もそうだ。「アベノミクス」への期待から、株価は上昇を続けた。そんな中で、つい数年前まで「元気な経済」の象徴だった韓国の株価は不振が続いていた。
何よりも好材料に乏しかった。外需依存度が高い韓国の企業の業績は世界景気の影響に敏感だ。欧州景気の低迷、米国景気の鈍い回復、中国経済の変調など主要輸出先の景気が力強さを欠き、企業業績も伸び悩んでいた。
だから、量的緩和措置が続く中でも韓国の株価は出遅れ気味だった。
ところが、夏前頃から状況が変わってきた。米国の量的緩和政策が早期に終わるとの観測が出て、新興国からマネーが引き揚げだし、まずこの受け皿として「相対的な安定度」から韓国に流れ込み始める。
夏以降は、今度は量的緩和が当面続くと見る向きが強まり投資マネーの流入が続いた。さらに、米国をはじめ世界景気に回復の兆しが出てきたとの見方が広がると、「潜在的な受益企業」が多いと見られて韓国株への注目度がさらに高まった。
どのみち余剰マネーは行き先を探しているのだ。多少の問題はあっても「相対的」に条件がよければ一気に殺到する。
外国人投資家のマネーが韓国に一気に流入
韓国取引所によると、8月初めから10月半ばまでの1カ月あまりの間に、韓国の証券市場には外国人機関投資家のマネーが112億ドル流入した。この間の国・地域別の純流入額は台湾38億ドル、インド16億ドルで、韓国への流入額が圧倒的に大きかった。
年初からの上昇率を見ると、KOSPIはトップの日本はもちろん、欧州や米国、南アフリカ、台湾、インド、インドネシアなどよりもずっと低い。ところが、「遅れてきた上昇」のため、8月以降はむしろかなり高い上昇率となっているのだ。
一時売り込まれたサムスン電子株も大きく切り返してきた〔AFPBB News〕
この間、韓国の全上場企業の時価総額の2割近くを1社で占めるサムスン電子の株価もぐんと上昇した。四半期の営業利益が10兆ウォンを超える圧倒的な好業績にもかかわらず、株価は低迷していた。
6月初めまで150万ウォン台だった株価は、その後外国系証券会社などが「スマートフォン事業の先行きに不安」などとしたリポートを出したことで下落を続け、8月8日には121万7000ウォンの安値をつけた。
外国人機関投資家の買い越しが始まった8月23日の株価も129万5000ウォン。当時、同社内では「過去最高益を更新しているのに株価が上がらない」として積極的なIR活動が必要だとの意見が出ていた。ところが、最近になって再び株価が上昇し、10月21日の終値は146万ウォンまで戻している。
現代自動車の株価も10月22日時点で、2012年5月初めに記録した過去最高値に迫っている。
「相対的」なプラス材料は確かにあるが・・・
確かに、「相対的」には韓国経済には前向きにとらえられる材料がなくはない。2014年の経済成長率について中央銀行である韓国銀行は3.8%と予測している。多くの先進国よりは高い数字だ。経常黒字も続いており、格付けも引き上げられた。物価も安定的に推移している。
証券会社は、思わぬ株高をさらにはやし立てる。「他の先進国や新興国に比べて韓国は相対的に株価も安い」などの分析が相次いで出てきた。
2013年の株価が一部新興国などに比べて伸び悩んでいたのだから当然と言えば当然だが、証券会社は新たな材料探しに必死だ。
主要経済紙には「KOSPIは2200ポイントまで上昇する」といった類のアナリストの分析が大きく紹介されている。
KOSPIは6月末には1800ポイントを割り込んでいた。3カ月半あまりの上昇率は14%程度だから、「過熱」と言うのは過ぎるだろう。10月18日に、2050ポイントを超えた時点でも年初からの上昇率はわずか2.8%なのだ。
だから、株価の上昇自体を否定的にとらえる声はほとんどない。
このところ、暗い話ばかりだった経済ニュースの中で「久しぶりに明るい話だ」(韓国紙デスク)とのとらえ方も多い。
だが、困惑も声ももちろん少なくはない。というのも、このところ、韓国経済についてのマイナスの材料も立て続けに出ていたからだ。
財閥破綻に加え、成長鈍化、個人負債の増大にウォン高の懸念まで
例えば、KOSPIが2050ポイントを突破した翌日の10月19日の主要紙。株価についての記事はさほど大きくない。大きなスペースを割いているのは、事実上経営破綻した東洋グループの関連記事だ。
国会で金融監督院長が、「東洋グループのようなところが他にも4つほどある」と受け取られかねない発言をしたことで、「次の東洋グループは、どこだ」といったトーンの記事が目につく。
すでに2013年に入って、東洋グループ以外に、STXグループや熊津(ウンジン)グループが解体に追い込まれており、産業界では「中堅財閥がばたばたと倒れるのは、IMF危機以来の危機」との悲鳴も聞こえている。
問題はこれで終わりではない可能性があることだ。資金繰りが厳しいと言われるグループはいくつかある。証券市場では、東洋グループの系列会社が相次いで事実上経営破綻した直後から、社債やCP(コマーシャルペーパー」などを活発に発行してきた財閥についてさまざまな分析記事が飛び交っている。連鎖破綻となれば、下請けを含めた影響は小さくはない。
韓国ウォンが対ドルで上昇している
成長率の鈍化に税収不足、不動産価格の低迷と個人負債の増大・・・。どちからと言えば、明るい材料を探す方が難しい中での株高なのだ。
もう1つ。産業界がこわごわと見守っているのが為替の推移だ。1ドル=1100ウォンの水準で推移していたウォンの対ドルレートだが、ここに来てじわじわと「ウォン高」が進み、1ドル=1060ウォン前後になってきた。
韓国経済は先に触れたように対外依存度が高い。米国や中国、東南アジアなどの主要輸出仕向け先市場の経済が回復すれば輸出が増え、これが経済の活性化の大きな武器になるはずだ。
ところが、為替レートがウォン高に振れては台無しになってしまう。
8月以降の株高は「外国人機関投資家」主導だ。ここ数日は、むしろ国内のファンドなどは利益確定売りに動いている。
韓国証券市場、「外国人のATM」の汚名晴らせるか?
ある韓国紙デスクは、「株価が上下する時にはいつも外国人機関投資家がうまく儲ける。今回は買い越しの期間がこれまでより長く、その分、国内の投資家が利益を得ている。株価の上昇は消費の活性化や個人負債の削減などの効果があるはずだが、結果がそうなるかどうかは株高が一段落してからでないと判断できない。『今度もまた、損をするのは国内の個人投資家』ということにならないか心配だ」と話す。
韓国の証券市場は、「外国人機関投資家のATM(現金自動預け払い機)」と呼ばれてきた。あっという間にお金を下ろして(株を売って)現金(利益)を手にして出ていってしまうという意味だ。今回はその汚名を晴らせるのか。
上がって下がるのが株価だ。上がるのにも理由があれば下がるのにも理由はいくらでもある。分かってはいるが、個人投資家にとっては、上がる理由だけが見えるのが株価の上昇局面だ。
「遅れてきた株高」だけに、心配も多いのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38988
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