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インドネシア、輸入規制広がる 経済成長に悪影響も 貿易赤字・通貨安で保護主義傾斜
【ジャカルタ=渡辺禎央】インドネシア政府が輸入に対する規制を強めている。野菜や果物の輸入を1月から一部停止。電子機器などの輸入手続きも煩雑にしている。資源輸出の低迷で貿易収支が赤字に転落し、物価上昇に直結する通貨ルピア安に歯止めがかからないためだ。輸入を抑えて収支改善を目指す戦略だが、過度な保護主義は経済成長に悪影響を及ぼしかねない。
インドネシア政府は1月、イモや唐辛子など13種類の生鮮農産物の輸入を停止した。経済成長に伴う内需の拡大を背景に食品輸入が急増し、2012年の園芸作物の輸入額が5年前の2倍にあたる18億ドル(約1730億円)に膨張したことに対応する措置だ。
米国は世界貿易機関(WTO)への提訴をちらつかせてインドネシアに圧力をかけ、オーストラリアやカナダも同調する構えを示す。だがユドヨノ大統領は「2国間協議やWTOの場で解決策が見つかることを望む」と述べ、制限を取り下げない考えを示した。
インドネシアは電子機器や繊維など21分野の商品でも、輸入を実質的に制限する制度を導入した。貿易省は輸入業者に対し、3月末までに輸入許可を再取得することを義務付けた。再取得の際の条件を厳格にし、一部の中小業者は許可を取得できない可能性がある。
国内産業の保護が目的としているが、日本政府筋は「短期的な輸入抑制の色が濃くなっている」と指摘する。貿易省は日本や韓国製の冷延鋼板に対して反ダンピング措置の発動を検討しており、日本の製鉄大手に60%超の関税をかける可能性もある。
矢継ぎ早の輸入規制強化の背景にあるのは、貿易収支の急速な悪化だ。米欧や中国などの需要減退を受けて資源輸出が縮小する一方で、旺盛な内需を背景に生産財や生活必需品などの輸入が膨らんだ。貿易収支は12年に16億3千万ドルの赤字に転落。「13年も貿易赤字は続く」(貿易省のクリスナムルティ副大臣)見通しだ。
貿易収支の悪化を受けて通貨ルピア安は加速している。足元では対ドルで1ドル=9700ルピア前後と09年後半以来の安値水準で推移している。通貨安は輸入物価の上昇を招き、国民生活に悪影響を与える。政府は輸入規制で貿易収支を改善し、輸入物価上昇を招く通貨安に歯止めを掛ける考えだ。
だがルピア安に歯止めはかからず、2月の消費者物価上昇率は5.31%と前月の4.57%から急上昇した。中央統計局は「輸入規制が食品の値上げを招いた」と分析。農産物の輸入縮小で需給が逼迫し、かえって物価が上昇する皮肉な結果を招いている。
ユドヨノ大統領も14日に慌てて経済閣僚・高官を招集し、「問題を解決するまで寝るな」といら立ちを示した。
インドネシアは好調な内需を背景に12年まで3年連続で6%台の経済成長を遂げた。だが製造業など輸出産業の成長が未熟で、12年でも輸出額の6割近くは資源関連だ。
輸入制限を強めれば国内市場での競争が弱まり、産業競争力の向上に逆行する。インドネシアへの部品輸出が滞れば、外資の進出意欲の低下も必至だ。規制による強引な貿易収支改善を目指す政府に対して「成長の土台を揺るがしかねない」(地元証券会社アナリスト)と批判の声も出ている。
[日経新聞3月17日朝刊P.5]
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