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［アジア跳ぶ］日本への期待、資金より技術
６カ国1300人から見た姿は――意識調査
「日本はモノづくりやアニメの国。優れた技術やサービスを提供してほしい」「日本人のビジネスマンは勤勉だが、語学力に難がある」――。アジア６カ国のビジネスマンと学生1335人を対象にした意識調査で、こんなニッポン像が浮き彫りになった。存在感を高める中国に注目度の１位は譲ったが、東南アジアを中心に日本への期待は高い。成長市場で今後も重要な地位を占めるには何が必要か。アジアからの視線を基に日本が歩むべき道を探った。
注目度も経済も２位 行ってみたい国はトップ
今回の意識調査で「アジアで今最も注目している国」を聞いたところ、「中国」が約36％とトップで「日本」は約29％と２位だった。「アジア経済へ良い影響を与えている国」を尋ねても「中国」（64％）が首位。「日本」は47％でここでも２位だった。以前より伸びが鈍ったとはいえ、高い経済成長を続ける中国の影響力増大が見て取れる。
では日本に期待することは何か。それは日本人が強みと考えがちな資金力ではなさそうだ。日本に「資金供給」を期待する人は37％。それより「技術提供」（72％）や「アジア社会の安定に寄与」（52％）を期待する人がずっと多い。アジアの中の先進国として、資金援助以外の方法で地域の発展に力を尽くしてほしいとの思いが垣間見える。
アジアで「行ってみたい国」は「日本」が70％と圧倒的人気だった。ただし、「住んでみたい国」となると39％で、シンガポール（45％）に首位を譲る。日本の「行ってみたい」比率と「住んでみたい」比率の差は31ポイントと中国に次いで大きかった。物価の高さや外国人受け入れの消極姿勢を反映しているようだ。
中国に対するアジアの人々の視線は複雑だ。「アジアの政治に良い影響を与えている国」は、71％の中国人が中国と答えたのに対し、他国は２〜５割にとどまった。今後アジアで指導的な立場を担うのは確実だが、中国の動きすべてを好意的に受け止めることはできない――。結果からはこんな見方が浮かぶ。
人気はデジカメ アニメの国 「日本製買いたい」中国でも71％
アジアの人々が日本に対して抱くイメージをさらに具体的に聞いてみると、日本の強みと弱みが見えてきた。テレビや自動車など製品ごとに「企業イメージが強い国」「買ってみたい国の製品」を聞いたところ、日本製品の中ではデジタルカメラが圧倒的な人気だった。59％の人がデジカメは「日本企業のイメージが強い」と回答。尖閣諸島の問題で反日の機運が高まったとされる中国でも、71％が「日本製を買いたい」と答えた。
対照的に日本勢が苦戦する携帯電話ではイメージ低下が目立つ。「日本の企業イメージが強い」と答えた人はわずか10％で、韓国（36％）や米国（21％）、中国（22％）を下回った。日本製を「買ってみたい」人も15％と、韓国などに押される構図が浮かぶ。
「モノづくり」に並び、日本のイメージとしてすっかり定着したのが「アニメの国」。「日本が世界一優れている点」を聞いたところ、74％がアニメ・マンガを選んだ。「すしなど食文化」や「観光」も高かったが、「平和主義」（40％）は意外に低かった。
日本のビジネスマンのイメージも聞いてみた。結果は「勤勉」（88％）で「問題解決能力が高い」（59％）が、「語学力がある」（31％）とはいえない……というのが平均的な印象のようだ。改善の余地がありそうなのが「現地社員と積極的にコミュニケーションをとる」かどうか。調査全体では「当てはまる」と答えた人は42％。タイでは65％が「当てはまる」と答えたが、韓国では19％など国ごとのばらつきも大きかった。
対日感情に影 中韓、「自国との関係良好」２割どまり
意識調査全体を通じて特徴的だったのが、日本に対する中国と韓国の厳しい目だ。領土問題や歴史認識を巡る緊張関係が、調査対象の学生やビジネスマンの対日感情に影を落としているようだ。
自国と日本の関係について「良好」「どちらかというと良好」と答えた比率は、６カ国全体では70％と高かった。ところが中国では23％、韓国では24％にとどまった。
自国への日本企業の進出や投資についても「歓迎しない」「どちらかというと歓迎しない」という回答は中国で30％、韓国で45％にのぼる。他の４カ国は９割以上が「歓迎」と答えているのと比べると、中国、韓国の人々の見方が悪化していることがうかがえる。
「両国の関係を深めるには何が必要か」聞いたところ、６カ国全体では「相互理解」（64％）、「文化交流」（56％）などが高く、「金融支援」は33％と低かった。関係改善にはジャパンマネーより地道な活動が必要なようだ。
もっとも中国の人々は日本を韓国、シンガポールと並ぶ「重要なパートナー」と見なしており、３カ国を選んだ比率はいずれも22〜23％と拮抗した。韓国も「日本はモノづくりが得意」（91％）で「日本人は勤勉」（82％）と高く評価している部分もある。新政権の対応次第では態度が軟化していく可能性はある。
技術移転など貢献必要 コンパス編集長（インドネシア） リカル・バグン氏
中国が強大化するアジアで、日本は地域の勢力均衡のために重要な役割を担う。だが日本は政治面では優位性を持たないし、我々の指針にもならない。中国や韓国はインドネシアと軍備開発の協力にも踏み込む。日本は（工業製品や科学分野で）技術移転をもっと進めるなどの貢献が必要だ。
市民レベルで日本の印象は希薄化している。ドラマ「おしん」が忍耐強さを伝えてアジアで共感を得た時代は終わった。ヒット商品やコンテンツは格好良さや面白さがカギ。家電や携帯電話、ポピュラー音楽でも、日本発か韓国発かアジアの消費者は意識していない。
東南アジアの自動車市場で高いシェアを持つ日本は労働者の待遇も改善する責務がある。日系工場が多いため、一部のネガティブな感情は容易に連鎖する。1974年に当時の田中角栄首相がインドネシアを訪問した際、反日暴徒が日系企業などを襲った「マラリ事件」を忘れてはならない。
もっと包容力ある国に 中央日報東京総局長（韓国） 金玄基氏
日本は活気がなくなっていると思う。世界的な企業だったソニーやパナソニックの業績不振が象徴的だ。経済力でも中国が抜き、韓国も追いつきつつあると韓国の国民は思っている。韓国企業の日本駐在員は「責任を持たないシステムが日本企業の問題」という。経営者は在任中に業績を悪化させたくない意識が強い。善しあしはあるが、韓国はオーナーが責任を負う。
韓国は日本にアジアでのリーダーシップの発揮を期待しているが、首相は毎年代わる。衆参両院のねじれも問題。首相を公選制にするなど制度を変えるべき時期に来ているのではないか。
安倍晋三新政権は韓国大統領選で当選した朴槿恵（パク・クンヘ）氏に特使を送る。まずはいい雰囲気だ。日本にはもっと包容力のある国になってほしい。旧日本軍の従軍慰安婦問題で野田佳彦前首相は「解決済み」と取り合わなかったが、互いが探り合う雰囲気をつくるのが政治家の務めだ。
主導的役割 担い続けて バンコクポスト編集長（タイ） チラタス・ニバットプミン氏
アジアでは今後10年、あるいは１世紀にわたり、中国が最も大きな影響力を持つのは疑いない。日本も大国だが、デフレや円高など多くの構造的問題を抱える。アジアで安倍新首相の知名度は高い。右傾化を中国は警戒しているが、選挙後の発言は今のところ経済問題に絞っているようだ。
日本は国内総生産（ＧＤＰ）で中国に抜かれたとはいえ、企業のグローバル化で先行するのが強み。逆に国内政治の不安定さが弱点だ。政策に一貫性を欠き、近隣諸国は政権交代のたびに一歩下がって様子見を繰り返してきた。
日本にはアジアで主導的役割を担い続けてほしい。我々は中国、日本、アジアに回帰する米国の三大国とバランスよく関係を築きたい。その意味からも誰も「弱い日本」を見たくはない。今の日本を一言で言い表せば「Ｑｕｉｅｔ（物静か）でＰａｓｓｉｖｅ（消極的）」。批判的な意味ではないが、積極的な中韓とは対照的だ。
調査の方法
調査の方法 マクロミルの協力でインド（ニューデリー、ムンバイ）、インドネシア（ジャカルタ）、韓国（ソウル）、タイ（バンコク）、中国（北京、上海）、ベトナム（ハノイ）の大学生とビジネスマン計1335人を対象に調査を実施。調査手法はインターネット調査。調査期間は2012年11月下旬から12月上旬。電子版に全調査結果を掲載します。
［日経新聞１月４日朝刊Ｐ．６］
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