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『ニューズウィーク日本版』(12/12・19)P.38
北朝鮮とモンゴルのディープな急接近
東アジア:ウランバートル詣でを繰り返す北の狙いとそれを見守る欧米外交筋の思惑
北朝鮮の閣僚級の代表団がひそかにモンゴル訪問を重ねている。鉱物資源に恵まれたモンゴルは外資が盛んに流人し、急成長中。この民主国家がなぜか、悪名高い孤立国家の親しい友人になっているようだ。
モンゴルは北朝鮮の内情を探る格好の情報源となるばかりか、北朝鮮との交渉のパイプ役にもなり得ると、各国の情報・外交当局者は期待を寄せている。長距離弾道ミサイルの発射実験の強行など、北朝鮮がまたもや強気の姿勢を見せている今、こうした存在には希少価値がある。
「中国はパイプ役としては非常に使いづらい」と、ある欧米外交官は明かす。「モンゴル相手なら電話1本で済む」
中国、ロシアという大国に挟まれたモンゴルは、外交の舞台で危うい綱渡りをするすべを心得ている。モンゴルのメディアがアメリカを「第3の隣国」と呼ぶように、対米関係は良好だ。昨年、ツアヒアギン・エルペグドルジ大統領が訪米し、バラク・オバマ米大統領と会談。05年にはジョージ・W・ブッシュ米大統領(当時)がウランバートルを訪問し、米軍主導の多国籍軍と共にイラクとアフガニスタンの治安回復に貢献したモンゴル兵をたたえた。
その一方で、モンゴルはイランとも親しい。エルペグドルジは今年9月、外国首脳としては初めてイラン中部のナタンズにあるウラン濃縮施設を視察した。
同じ資源大国として中央アジアのウズベキスタン、トルクメニスタンとも親密だ。国内メディアは中国・内モンゴル自治区のモンゴル系住民の弾圧を非難しているが、モンゴル政府は最大の通商相手である中国と強固な関係を築いている。
強迫観念に基づいた関係
こうした多角外交のなかでも、北朝鮮との関係は際立つ。
朝鮮戦争当時、社会主義国だったモンゴルは北朝鮮に食糧援助として20万頭の牛を送った。この暗黙の関係は、モンゴルが市場経済と民主主義体制を導入し、韓国と国交を結んだ90年に打ち切られた。
その後の両国の接近が明るみに出たのは09年だ。北朝鮮の国防幹部がウランバートル訪問中に交通事故に遭って病院で手当てを受けたことを、現地の新聞が報じたことがきっかけだった。
結局のところ、両国の会談では何が話し合われているのか。
北朝鮮が脱北署の逮捕に協力を要請している可能性もある。ウランバートルから飛行機でソウルに向かう脱北者は少なくないからだ。だが今のところモンゴル政府は、この間題で北朝鮮に協力姿勢を見せていない。
内陸国であるモンゴルは、経済特区として開発が進む北朝鮮北端の港湾都市・羅先に大いに関心がある。ここの港が使用できれば、中国やロシアの港を経由せずにシベリア横断鉄道で製品を輸出できるからだ。
国際的に議論を呼んでいる労働問題もある。モンゴルの鉱山や工場では約5000人の北朝鮮人が働いているが、その労働環境は劣悪と伝えられる。しかも、彼らはモンゴルで稼いだ賃金を自国政府に吸い上げられているようで、経済制裁にあえぐ北朝鮮にとって、モンゴルヘの出稼ぎ労働が外貨稼ぎの手段になっている可能性がある。
アメリカも韓国も日本もこうした労働者たちの処遇を騒ぎ立てないのは、モンゴルと北朝鮮の関係が役立つとみているからだろう。しかしモンゴル防衛研究所のムンクオチル・ドルジュグデルは「共通の利益や価値観ではなく、外交的な駆け引きの余地を確保したいがための心理的な強迫観念に基づいた関係だ」と述べている。
この2国間関係に過剰な期待を持つのは禁物のようだ。
マイケル・モラン
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