http://www.asyura2.com/12/asia14/msg/221.html
Tweet |
『ニューズウィーク日本版』(12・19)P.20からの転載
ダライ・ラマのビザを拒んだ台湾が失ったもの
中国への配慮を優先した馬政権の判断は民主国家としての評判を落としかねない
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世に入国査証(ビザ)を発行すべきか否か ―台湾の馬英九総統は、多くの国が直面してきたジレンマに悩まされている。
中国から「二枚舌の嘘つき」呼ばわりされるダライ・ラマの訪問を歓迎すれば、馬政権が誇る「過去60年間で最も平和的な中台関係」にひびが入りかねない。だが民主主義と法律と人権を重視する国という国際的な評判を守りたいなら、中国政府よるチベット弾圧と戦うダライ・ラマを歓迎するのは当然のことだ。
事の発端は、働く女性の地位向上に取り組む国際NPO「BPWインターナショナル」が今月初めに台北で開催した国際会議にダライ・ラマを招待したことだ。同NPOのフレダ・ミルキリス代表は2度にわたって馬に書簡を送り、ビザ発給を要請 した。BPW台湾の創設者で陳水扁政権下で副総統を務めた呂秀蓮も、馬に電話をかけて協力を依頼した。
だが対中融和路線を進める馬政権は先月中旬、ビザの申請を公式に却下。林永楽外交部長はBPWに対し、「時期が来れば歓迎するが、好ましいタイミングを調整する必要がある」と説明した。
野党・民進党の議員で、台湾チベット交流基金会の元副会長、シアオ美琴はこの対応に猛反発し、「台湾人はチベット人民と、自由と人権を求める彼らの闘争に特別な共感を抱いている」と語った。「政府の決定は台湾の価値観に反し、台湾への中国の影響力増大という危険な流れを反映している」
南アも中国の圧力に屈し
領土問題などで中国の国益を阻害する国に経済的な報復を行うのは、中国の常套手段だ。ダライ・ラマは昨年、アパルトヘイト(人種隔離政策)と戦ったデズモンド・ツツ元大司教の80歳記念式典に出席するため南アフリカを訪れる予定だったが、ビザが発給されず断念した。
南アの裁判所は先月末、ビザの発給拒否は違法との判決を下したが、南ア政府の判断は中国の圧力にはるものとの見方が強い。中国が南アの鉱物資源開発に25億ドル投資を決めた直後の発表だったからだ。
馬政権が中国との経済関係を深めたいことを考えれば、今回のビザ発給拒否も中国に配慮した結果だと容易に想像できる。
馬は台北市長時代、ダライ・ラマの訪問をいつでも歓迎すると語っていた。しかし総統就任後は態度を一変させ、08年12月には「タイミングが不適切」としてビザ発給を拒否。09年に台風で550人以上の犠牲者が出た際には被災地へのダライ:フマの慰問を認めたが、馬が面会に応じることはなかった。
だが、こうした対応は逆に台湾の国益を損ないかねない。今年1月に再選を果たした馬は5月の就任演説で、中台両国の協力の必要性を強調。「民主主義や人権に関して両国の市民団体が交流と対話を深めることを希望する」と語った。
実際、中国がダライ・ラマに友好的な国への報復措置を強めている現状では、市民団体が果たす役割は非常に大きい。なのに、馬は貴重なチャンスをふいにしてしまった。BPWのような団体の活動を支援すれば、台湾が人権と民主主義、宗教の自由を重視していると世界に示せる貴重な機会になったはずだ。
各国の指導者が中国に対し、政治的、経済的な「いじめ」に屈しない姿勢を示すことも重要だ。中国が「国益」を主張するように、世界の民主国家も自らの核となる価値観と国益をもっと声高に追求すべきだ。
ケテイ・チェン(国立台湾大学客員研究員)
ジュリア・ファムラロ(プロジ工クト2049研究所)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。