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[地球回覧]隣国民主化、日本にリスク?
韓国、反独裁と「反日」共振
12月19日の投開票まで1カ月を切った韓国大統領選。5年ぶりに誕生する新しいリーダーは、李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島(韓国名・独島)上陸で悪化した日韓関係を修復できるだろうか。
2強対決の一翼を担う与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補は「日本は重要な友好国」と力説する。野党、民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)候補も未来志向を強調、関係改善に前向きだ。
竹島問題ではともに厳しい姿勢を示す。朴氏の外交ブレーンに「大統領になったら、竹島を訪問するか」と聞いてみた。答えは「行かないと宣言はしないが、実際は行かないだろう」。文氏の側近幹部も、ほぼ同じ回答だった。
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歴史問題はどうか。李大統領は「日本と交渉しない韓国政府の姿勢は元従軍慰安婦の人権を侵害しており、違憲」とする昨年8月の憲法裁判所の決定に追い詰められて日本に対応を迫った経緯がある。
決定は次期政権も縛るが、韓国外交通商省幹部は「新政権になれば、しばらくは大丈夫」と言う。おそらく高い支持率になる新大統領の「神通力」が効いている間は、韓国側にも余裕ができる。
それでも、楽観はできない。解決を求める圧力が弱まるわけではないからだ。
10月下旬。元慰安婦と、慰安婦を支援する弁護士らが金星煥(キム・ソンファン)外交通商相と面談し、日本政府への働きかけを強めるよう要請した。同席した崔鳳泰(チェ・ボンテ)弁護士は「憲法裁判所の決定に従わないなら、外交通商相を訴えることも検討する」という。
問題の根っこは1965年の日韓国交正常化だ。植民地支配の「清算」として未払い賃金など互いの請求権を放棄し、日本による5億ドルの経済協力で決着。この時結んだ協定で請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と明記した。ところが韓国は「慰安婦などの反人道的な不法行為は別だ」と日本に法的責任を認めるよう求めている。
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50年近く前の話である。決着した話を「ちゃぶ台返し」するかのようなエネルギーは、どこからくるのだろうか。
「多くの韓国人には、自ら体験した軍事独裁政権の暗い記憶と日韓国交正常化がつながって見えているのです」。国民大の李元徳(イ・ウォンドク)教授はこう指摘する。
日本と国交正常化したのは軍事独裁の朴正熙大統領だ。朴政権と、続く全斗煥政権は民主化運動を激しく弾圧。投獄されたり拷問されたりした人も多い。韓国が民主化したのはわずか25年前の87年。当時の大学生は今、多くが40代で、政治や経済で韓国を支える現役世代だ。45年の終戦で社会を「リセット」した日本との違いがここにある。
軍事政権が経済協力を得るため、過去の清算を十分しないまま日本と国交正常化した――。韓国内にはそんな見方が根強い。民主化で独裁批判が自由になり、当時の検証が進むほど「反日」が刺激される皮肉な構図が続いている。
中国も戦争賠償を放棄して国交正常化した。北朝鮮とは日韓方式で正常化するのが日本政府の方針だ。日本政府が慰安婦問題を「解決済み」と繰り返すのは「問題が中国や北朝鮮に拡大したら大変」という懸念もあるからだろう。
ただ、韓国の支援者らはすでに中国の元慰安婦らとの連携を探り始めている。共産党一党支配の中国や北朝鮮で民主化が進めば、日韓と同じ摩擦が起こる可能性がある。
そんな事態を防ぐには、韓国と「よい前例」をつくるしかない。ぎりぎりで折り合える知恵があるはずだ。もっとも、日本の新首相が慰安婦問題の強制性を認めた河野談話を見直したりすれば、対話機運は一気に吹き飛ぶ。新大統領の「神通力」がそこまで強いと思っている人は、韓国内にほとんどいない。
(ソウル支局長 内山清行)
[日経新聞11月25日朝刊P.13]
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