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孤立する北朝鮮に迫る中国資本の手
中国総局 島田学
2012/11/8 7:00
9月末から訪れた北朝鮮・平壌。中心部は予想以上に都市開発が進み、至るところで中国経済が浸透している様子もうかがえた。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は経済開発を中心とした国造りに着手する考えのようだが、急がなければ、中国依存は進むばかり。自主独立を強調する「主体(チュチェ)思想」を掲げる北朝鮮は今、経済的な自律性を失いかねない岐路に立っている。
「良くも悪くも共和国(=北朝鮮)の人間は控えめで、残念ながら商売は苦手なんです」。北朝鮮側の案内人は、平壌で最大級のスーパー「光復地区商業センター」を案内しながらこう語った。
同スーパーは今年1月にオープンした。中国側が65%、北朝鮮側が35%を出資した中朝合弁のスーパーだ。店内に特売品コーナーやお薦め商品コーナーを設けたほか、店頭で肉まんやソフトクリームを売る。ただ商品を置くだけの北朝鮮のスーパーにはない集客の工夫を施していた。
昨年12月15日には故金正日総書記と金正恩第1書記がそろって訪れ、中国からノウハウを学ぶよう指示した。その2日後に死亡した金総書記にとって最後の現地指導場所となった。
社会主義経済を維持する北朝鮮は私有企業を原則認めていない。平壌市内には市民があふれていたが、活気が感じられなかったのは個人レベルの「商売っ気」を感じないからだろう。
ただ、中国企業は北朝鮮の「商売下手」を逆手に北朝鮮経済に侵食し始めている。光復地区商業センターも、当初は北朝鮮産品と中国産品を共に売ることになっていたが、今ではカップ麺などほとんどが中国産品だった。
市内では、中国自動車大手の比亜迪汽車(BYDオート、広東省)や長城汽車(河北省)の車が行き交っていた。いたるところでマンションの新設が進んでいたが、セメント機械装置や資材運搬用の大型トラックは中国製だった。
中国は、北朝鮮の経済開発と外貨獲得を側面支援するため、中朝境界地域の共同開発などを促している。中朝は9月に北京、10月には遼寧省丹東で中国企業向けの投資説明会を開催した。実際には北朝鮮にマツタケなどの農水産物以外に主な輸出産品はなく、北朝鮮は対中貿易赤字を埋めようと、貴重な地下資源の切り売りを余儀なくされている。
平壌から車で1時間ほど離れた南浦市。港には中国向けとみられる無煙炭が山積みとなっていた。中朝は今年9月、30億元(約370億円)規模の基金設立で合意した。目的は北朝鮮鉱山への投資。中国企業による鉄鉱石や石炭、レアアースなどの開発が念頭にある。
「このまま中国に資源を買いあさられたら、共和国の国力はやせ衰えるばかりだ」。北朝鮮関係者は、輸出産品を手がける自国産業の育成が喫緊の課題だと訴える。ただ、自国産業育成の原資を調達しようにも、国際社会からの経済制裁を受ける北朝鮮に投資しようという企業はほとんどいない。結局は中国に依存せざるを得ない状況だ。
一方、中国は、表向きは朝鮮半島の平和的統一を望んでいるとしつつ、本音は「北朝鮮が緩衝材となる現状が心地よい」(中国外務省関係者)。一部では北朝鮮が崩壊した場合も想定し、今から半島北部に中国経済の影響力を根付かせておきたいとの考えも広がっている。北朝鮮に中朝境界地域の共同開発を促すのも、こうした考え方が反映されているとの指摘は多い。
「資本家にも『良い資本家』と(労働者を搾取する)『悪い資本家』がいることがよく分かった」。故金日成主席は生前、第2次大戦前の朝鮮の女性実業家で、朝鮮民族の発展や教育振興に全財産をなげうった白善行(ペク・ソネン)の功績をたたえたという。
現在、中国からの投資は北朝鮮の経済発展に真に役立つ分野に向けられているのか。中国という「赤い資本家」は、北朝鮮にとって「良い資本家」なのか、「悪い資本家」なのか――。当面、見極める必要がありそうだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM3104P_W2A101C1000000/
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