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インドネシア、賃上げ要求 企業に重荷
最低賃金、倍増を主張 好景気、待遇改善追いつかず
【ジャカルタ=渡辺禎央】日本企業の進出が盛んなインドネシアで、賃金の引き上げなど労働者の要求や抗議活動が高まっている。首都周辺の主要な労働組合連合は、2013年の公定最低賃金(月収)を前年比で2倍近く引き上げるよう主張。派遣労働者が直接雇用を求めるデモでは、トヨタ自動車など日系企業もその対象となっている。
首都のジャカルタ特別州では10月下旬、労組連合が同州の13年の最低賃金を前年比で83%増の約280万ルピア(約2万3千円)に引き上げるよう要求。2千人規模のデモも動員した。その結果、州政府は2日、公定最低賃金の算定基準値を3割以上高い約197万8790ルピアに決定。州労働当局者は「最低賃金も(前年比3割増の)200万ルピア程度への引き上げが容認されるだろう」とみる。
同国では毎年、地方政府ごとに最低賃金を改定。1月1日付で発効させる。同国の1〜10月の累計インフレ率は3.66%にとどまるが、ジャカルタ周辺で外資工場が集積する各州ではジャカルタを上回る賃上げを求めるデモが頻発している。
10月下旬、日系工場が集積する西ジャワ州ブカシでは、労組連合が前年比2倍超の320万ルピアを要求。同州ボゴールでも325万ルピアへの引き上げを求める5千人規模の労働者が工業団地などで抗議し、警官隊とのもみ合いとなった。
●派遣労働巡り抗議
首都近郊の工業団地では一部の強硬派労組連合が工場労働者に対し、外部委託廃止や賃上げを求める動きに加わるよう二輪車の大群となって扇動して回る「スウィーピング」と呼ぶ行為が横行。社外の労働者が従業員を軟禁状態にし、外部委託廃止の誓約文書に署名を強要する事例もある。
トヨタが主力工場を置く西ジャワ州カラワンでも労組連合による要求額が260万〜300万ルピアに上った。10月17日にはカラワンのトヨタ工場前で、同社外の労働者らによるデモが発生。同社グループの派遣労働者の活用策に抗議した。
トヨタを標的にしたデモ隊は翌18日、ジャカルタの日本大使館前にも数百人規模で集結。デモ隊が「解雇」として問題視する一部作業での派遣労働者の活用終了について、トヨタ現法幹部は「自動車の供給を迅速化するための工程改善策として、法規に従い派遣会社そのものとの契約を解除した」と説明。労使の認識のズレが表面化した。
インドネシアで労働者の要求が高まる背景には、外資メーカーや中間・富裕層の消費者が新興国有数の好況を謳歌する一方、労働者が待遇改善に実感を持てないことへの不満がある。地方首長や大統領を国民が直接投票で選ぶインドネシアでは、政府も庶民寄りにならざるを得ず、労働者を勢いづかせる結果となっている。
日系の大手企業は最低賃金を上回る月収を用意して人材の確保に努めてきたが、これがかえって中小メーカーの労働者に不公平感を与え、要求を過激にさせる皮肉な結果を招いている面もある。
政府は曖昧な外部委託を巡る法規制について、労使の双方にわかりやすく改めた新法を近く公表する方針。労組側は不満が解消されない場合は大規模なデモやストを継続する構えだ。
労働コストだけでなく、工業団地やオフィスの価格も急騰しており、これも企業経営にとってはマイナスだ。ただ、タイやベトナムなどの労働賃金も急上昇しており、インドネシアだけがコスト上昇に見舞われているわけではない。
●重要な拠点分散先
インドネシアでは、12年の国内総生産(GDP)成長率が6%台半ばを維持し、13年も6.8%を見込む。外国直接投資額も過去最高を更新することが確実で、日本企業がその推進役だ。2億4千万人を擁する内需を取り込もうと製造業だけでなく、小売業などの進出も盛んだ。
反日運動の影響で日本企業の業績が悪化している中国などからの投資の分散先としても注目を集める。こうした日本企業の進出の勢いを止めないためにも、労務問題の先鋭化防止が急がれる。
[日経新聞11月5日朝刊P.6]
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