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いよいよ目前か、北朝鮮が核弾頭をミサイルに搭載する日
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34585
2012.02.22 古森 義久: JBpress
朝鮮の核兵器開発問題に関する重大な危機がひたひたと迫ってきた。米国や日本にとっても、これまでの北朝鮮核武装阻止の努力を粉々に砕きかねない事態の切迫なのだ。その危機は東アジア全体の安全保障情勢を根底から変えることにもつながっていく。
その危機とは、北朝鮮がついに核弾頭を中距離や長距離のミサイルに装備するという事態である。この事態こそ、北朝鮮核問題に関して米国や日本が恐れながらも現実と見ることを拒んできた真の危機だと言える。
「北朝鮮の核武装」といっても、開発した核兵器を兵器として潜在敵に対して使用できる能力がなければ、現実の意味はない。今のところ北朝鮮は核爆弾は持っていても、それを運搬する手段までは開発していないのだ。
だが、中距離や長距離のミサイルにその核弾頭を装備して発射できるとなれば、真の核武装となる。その意味では、北朝鮮核武装の「真実の時」がいまやすぐそこまで迫ってきたのである。
■あと1〜2年のうちに核弾頭を弾道ミサイルに装着
そもそも北朝鮮の情勢を一体どう読めばよいのか。その作業はますます重要、かつ難題となってきた。
金正日総書記の死後、後継の金正恩政権は当然、波乱が予想される。未経験の若者がカルト的独裁の父のパワーをうまく継げるのかどうかは、まったく予断を許さない。その新リーダーを支える当面の集団指導体制も行方が読み難い。特に新指導部は対外的にどんな政策をとるのか。
日本へのその影響も重大である。なにしろ日本は日本人拉致や核兵器開発で北朝鮮の動きには激しく揺さぶられてきたのだ。
北朝鮮の動きでは、いま日米両国では、金正日総書記亡き後の政権の政治動向に集中的な関心が向けられている。金正恩氏に果たして統治の能力があるのか。同氏が実権を振るえない場合、誰が真の権力者となるのか。そんな疑問の読みである。その作業の中では、核兵器の動きへの関心はやや脇に押しやられた感じさえある。
だが、米国のオバマ政権の内外の専門家の間では、北朝鮮が長年の目標としてきた核弾頭の弾道ミサイルへの装着をこの1〜2年のうちについに達成するだろう、という予測がひそかに強まってきた。
北朝鮮の核開発を防ぐための「6カ国協議」の再開がいまや予想されるまでに至ったが、水面下では皮肉なことに、その6カ国協議がまさに防ごうとしてきた事態が起きつつあるのだ。しかも、その6カ国協議が、結果的に北朝鮮がウラン濃縮の核弾頭開発の秘密作業を進めるための隠れミノとなってきたという実態が暴かれそうなのである。ちなみにこの協議は、北朝鮮のプルトニウム軍事転用による核兵器開発を防ぐことに主眼を置いてきたのだ。
■「北朝鮮の非核化」はもう不可能に
さて、北朝鮮の核弾頭の小型化、軽量化の成功による弾道ミサイルへの装着という危機への警告をいま正面から発するようになったのは、米国議会調査局で40年も朝鮮半島情勢を追ってきたラリー・ニクシュ氏である。
ニクシュ氏は現在はワシントンの「戦略国際問題研究所(CSIS)」の研究員を務める。同氏は一連の最近の調査報告で次のように断言するのだ。
「北朝鮮は、高濃縮ウランの核弾頭を軽く小さくして、ミサイルへの搭載を可能にすることに全力を挙げている。その目的を、早ければ今年中、遅くとも2014年末までに達成する見通しが確実となってきた。そうなると北朝鮮は韓国と日本の全域、さらにはグアムやハワイ、アラスカという米国領土をも核ミサイルで攻撃する能力を保持することになる」
「北朝鮮は核弾頭をまず短距離の『ノドン』『スカッド』両ミサイルに装備するだろう。それに成功すれば、中距離の『ムスダン・ミサイル』、さらにはもっと長距離のミサイルに装備して、米国領への攻撃能力を確実とする。この事態はこれまでのいわゆる北朝鮮核開発問題を根底から変え、北朝鮮が公然たる核兵器保有国となって、東アジアの安全保障を激変させる。そして、北朝鮮から完全に核兵器を奪うという『北朝鮮の非核化』はもう不可能となる」
もっとも米国側ではかねてロバート・ゲーツ前国防長官も「北朝鮮は米国にも届く核弾頭装備の大陸間弾道ミサイルを5年以内に配備することを目論んでいる」と述べていた。
■北朝鮮の核弾頭開発が大詰めを迎えている根拠
さてニクシュ氏は何を根拠として北朝鮮の核弾頭の軽量化、小型化が近いことを断言できるのか。同氏は次の諸点を挙げている。
(1)北朝鮮がパキスタンの核専門家、A・Q・カン氏から得た技術
カン氏が北朝鮮とウラン濃縮による核兵器開発で緊密な協力をしてきたことは広く知られており、パキスタンがすでに完成させた「ガウリ・ミサイル」搭載のウラン濃縮の小型核弾頭の設計図を北朝鮮にも提供した可能性が高い。
2008年、同種の小型核弾頭の詳細な設計図が、カン氏に関係するスイスの専門家に保持されていることが明らかとなった。その設計図が北朝鮮にも確実に渡ったことが、2011年9月に国際原子力機関(IAEA)により報告された。パキスタンは弾頭小型化のための核実験を始めて3年後に、実際にガウリ・ミサイルへの核弾頭装備を実行している。
(2)北朝鮮が米国専門家に見せたウラン濃縮技術
北朝鮮は米国の核専門家、シグフリード・ヘッカー氏を2010年11月、寧辺の核施設に招き、ウラン濃縮のための遠心分離の技術を見せた。同氏はその技術の水準が予想よりずっと高く、ウラン爆弾の製造能力の高さに驚いた。
北朝鮮はウラン核弾頭のミサイルへの装備の見通しが確実となったからこそ、米国側にこの種のウラン濃縮の実態を見せたとみられる。
(3)北朝鮮が技術を提供したイランの「シャハブ・ミサイル」の開発
北朝鮮はイランとの間で1990年代からミサイル開発、2000年代から核兵器開発のための協力を進めてきたが、2008年以降、両国の核弾頭開発のペースが速まった。特に「ノドン・ミサイル」とほぼ同一とされるイランの「シャハブ3型ミサイル」への核弾頭搭載の試みは国際原子力機関(IAEA)の警告の対象ともなってきた。
そのシャハブ・ミサイルの開発の前進が最近さらに伝えられている。北朝鮮・イランの核弾頭小型化の共同作業が顕著な成果を挙げてきたと見られる。
(4)米国と韓国の政府の対応
米国の国防情報局(DIA)の局長は、2011年3月の上院軍事委員会で「北朝鮮はすでに核弾頭の製造により新たに兵器化されたミサイルを保有したと見られる」と証言した。
韓国でも2010年10月に大統領補佐官が「北朝鮮は核弾頭のミサイル装備と配備を極めて早いペースで進めており、その核の脅威はすでに警戒すべき水準に達した」と言明した。
2011年12月には米韓両軍は米国ネブラスカ州で初めて北朝鮮の核攻撃の脅威を前提とした合同演習を実施した。いずれも核弾頭のミサイル搭載を示唆する動きだと言える。
■「日本には対北朝鮮戦略がないように見える」
ニクシュ氏はさらに、北朝鮮が弾道ミサイルへの核弾頭装着を宣言して明示すれば、6カ国協議の目標である「北朝鮮の非核化」はもう絶対に実現しないだろうとも予測する。そして韓国、日本、米国にとって北朝鮮の軍事能力の重みが根底から変わり、安全保障政策の基本が再考され、再編成されるようになるというのである。
ニクシュ氏は、この悪夢のシナリオに対する各国の動きも予測する。特に日本の反応の予測が興味深い。
「北朝鮮の核弾頭ミサイル装備の実現に対しては、各国の中でもおそらく日本のショックが最大となるだろう。敵性国家による核攻撃の能力や意図の誇示という現実は、戦後の日本が想像もしなかった事態となる。大震災の復興になお追われるいまの日本の政権には、そもそも一貫した安保政策が窺われず、特に対北朝鮮戦略がないように見える」
ニクシュ氏はその上で、日本にとっては、北朝鮮の核ミサイルを抑止するための非核の爆撃機やミサイルという長距離攻撃能力を保持することも選択肢になる、と述べる。しかし、現状では憲法上の制約などを理由とする反対論の勢いがなお強いだろう、とも指摘するのだった。
確かにわが日本では、北朝鮮の核武装への対応が現実的な国政上の課題とはなっていない。そんな現状では、ごく近い将来のある日、突然に北朝鮮が核弾頭を日本に届くミサイルに装備したという実態を突きつけられたならば、「何をしてよいか分からない」という反応となることも容易に想像できる。
しかし日本の国家や国民にとっての安全保障を真剣に考えれば、すぐそこに迫った北朝鮮核武装の「真実の時」を仮想だけとしては済ませられないのである。
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