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米国の無人偵察機はイランのサイバー攻撃で落とされた? 菅原 出 (日経ビジネス)
http://www.asyura2.com/11/warb8/msg/456.html
投稿者 BRIAN ENO 日時 2011 年 12 月 16 日 09:52:00: tZW9Ar4r/Y2EU
 

米国の無人偵察機はイランのサイバー攻撃で落とされた?

菅原 出
2011/12/16

米国の軍事・諜報関係者の間では今、米国の超ハイテク無人偵察機がイラン軍の手に落ちた話題で持ちきりだ。
 12月8日、米国のメディアはイラン国営放送が米国製の無人機の映像を公開したニュースを一斉に報じ、イランがどうやってこの無人機を落としたのか、無人機に積まれているはずの極秘データがどうなったかなど、様々な情報、分析や憶測を伝え、知られざる米・イラン諜報戦の一端に光を当てた。
 「最近、我々が収集したインテリジェンスと正確な電子監視により、この航空機がスパイ活動のために我が国の領空内に侵入しようとしている事実を突き止めた。そしてこの航空機は、我が国の東部に侵入した後、我が軍隊の仕掛けた罠に落ち、機体への損傷を最小限に抑えたまま落とされた」
 イラン国営テレビに登場したイラン革命防衛隊のAmir Ali Hajizadeh准将はこう述べて、イラン軍が「洗練されたサイバー攻撃」を使って米国の無人機をほぼ無傷のまま落とした、という俄に信じ難い説明を得意げにしてみせた。「この無人機は、非常に高度な偵察、データ収集、電子通信やレーダーシステムを搭載している」と同准将は続けて述べ、この極秘情報とハイテクシステム満載の最新兵器を手にしたことの重要性を強調した。
 米政府はこの無人機が落ちた原因について正式なコメントを出していない。だが、アフガニスタンで軍事作戦を実施中のNATO軍が12月4日に、「イランで墜落したとされる航空機はおそらくアフガン西部で偵察任務についていたものの、故障によりコントロールが不能になっていた無人偵察機の可能性がある」との声明を発表している。同じように米政府筋からは基本的に「故障により墜落した」との情報が流されている。
 イランが米国製の無人機をサイバー攻撃で落とせる能力を有しているのかどうかは全く不明なのだが、米国の無人機が故障によりコントロールが効かなくなって墜落した事例はこれまでにも数多く存在する。ウィキリークスの機密文書には、米軍の無人機が故障で墜落し、その機体の回収に苦労した話や、コントロールの効かなくなった無人機を撃墜するために戦闘機が送られたエピソードなどが数多く含まれており、このハイテクの塊には、やはり故障がつきものであることが明らかになっていた(「曝されたCIAと米軍特殊部隊の『秘密戦争』」)。

気勢の上がるイラン強硬派

 米国はアフガニスタン西部のイランとの国境に近いシーンダンドに航空基地を構え、そこを拠点にイランに対する偵察活動や特殊作戦任務を実施していると伝えられている。今回イランが獲得した米ロッキード・マーティン社製の「RQ-170」は、ステルス性能を施した秘密性の高い無人機である。今年の5月にパキスタンの北部アボッターバードで米特殊部隊がオサマ・ビン・ラディンを殺害する作戦を実施した際に、ビン・ラディンの隠れ家を上空から監視してライブのデータを送信し続けた秘密兵器として一躍有名になった代物だ。
 こうした無人偵察機は、偵察衛星のように特定のターゲットの上空を数分間のみ撮影するのではなく、長時間にわたってターゲットの上空にとどまって監視活動をすることが可能である。特定の場所を継続的に監視することで、そこにどんな人たちが出入りしていてどんな物が運び込まれているか、などより詳細な情報を収集することができる。また、高性能のビデオカメラの他にも、通信傍受機器や放射性物質の探知機等も搭載されており、広範な情報収集を可能にする。
 アフガニスタン国内の作戦に関しては米軍が各種の無人機を運用しているが、アフガニスタン以外の国々、例えばパキスタンやイラン、それにイエメンやソマリアでの秘密作戦においては、米中央情報局(CIA)が無人機を運用しており、今回イランで落とされた無人機もCIAの所属だとされている。ちなみに今回イランの手に渡ったRQ-170は、CIAがパキスタンでミサイル攻撃を行う際に使っている無人機「プレデター」とは別の機種であり、ミサイルは搭載していない。
 先のNATO軍の発表では、まるでアフガニスタン国内で使用されていた無人機が故障してイラン国内に入ってしまったかのような印象を受けるが、アフガニスタン国内でステルス性のRQ-170を使う意味はあまりない。NATO軍がアフガニスタンで戦っている武装勢力タリバンは高度なレーダーなど使用しておらず、何もステルス性の無人機を使う必要はないからだ。
 今回イラン軍の手に落ちた無人機がどのような理由で墜落したのかは不明だが、これがイランに対するスパイ活動のためにCIAが使用していた無人機であることはほぼ間違いなく、米国にとって打撃であることも確かであろう。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20111214/225192/

12月11日にイランのFars News Agencyは、「当然、世界のすべての先進国、特に米国と諜報戦争を行っている国々は、この航空機の詳細を知りたいと強く思うだろう」というHossein Salami准将の言葉を引用して、イランが中国やロシアとRQ-170に関する情報を共有する準備があることを示唆したことを伝えた。米インテリジェンス・コミュニティにとっては悪夢のシナリオだろう。
 「このハイテク無人機が落とされて以来、米国人たちはこの無人機のシステムの中身であるインテリジェンスについて懸念していることだろう。だが、米国人たちは知るべきだ。イラン・イスラム共和国は高度な先進技術を用いて、間もなくこの無人機システムに含まれるインテリジェンスやデータを解読することができるということを」
 イラン議会の国家安全保障・外交政策委員会に所属するSeyed Hosssein Naqaviの自信に満ちたコメントもFars News Agencyに紹介されている。イラン国内では、秘密のベールに包まれた米国の最新型無人機を落としたことで、相当強硬派の気勢があがっているようだ。

危険水域に突入する米・イラン関係

 米国にとって、この無人機を使ってどのようなターゲットに対して偵察活動を実施していたのか、データのクオリティはどのようなものなのか等、その諜報活動の実態が敵対国や競争相手に知られることは、マイナス以外の何物でもない。イランは当然「防空」という観点からこの無人機の脆弱性についても徹底的に調べることだろう。
 このように諜報戦争で相手に得点を与えないため、米国は故障などで墜落した無人機は可能な限り回収するように努めてきた。今回も米政府はいくつかの手段で「墜落した」無人機をイラン政府の手に落ちる前に回収または破壊しようと計画したことが伝えられている。
 12月7日付の『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、米政府内で、アフガニスタンで活動中の米特殊部隊をイラン国内に潜入させるか、もしくはイラン国内で活動中の同盟国のエージェントを使って機体を回収もしくは破壊させる計画が検討されたと報じている。また墜落した無人機を空爆して破壊する案も検討されたという。しかしいずれの案も、イランとのより大きな衝突に発展する危険性が高いことから断念されたという。
 イラン政府はこの米国による領空侵犯について12月8日に国連安全保障理事会に対して正式に抗議の書簡を送っている。「イラン・イスラム共和国に対する米国政府による挑発的で秘密裏の作戦は過去数ケ月間増大し一層激しくなっている」とイラン政府はこの中で説明している。
 ここでイラン政府が「過去数カ月間増大し一層激しくなっている」と指摘している点は興味深い。
 米政府は、11月上旬に国際原子力機関(IAEA)がイラン核問題に関する四半期毎の報告書を発表しイランの核兵器開発疑惑を痛烈に批判したのを受け、イランに対する経済制裁をさらにエスカレートさせた。オバマ政権はイランに対して「経済戦争」は実施しているものの、上述した無人機回収作戦を諦めたことでも明らかなように、イランとの直接的な軍事的衝突は望んでいない。イランを国際的に孤立させ、経済制裁の実効性を高め、イランの核開発を遅らせるのが、同政権の対イラン政策の柱である。そうすることでイスラエルによるイラン攻撃も思いとどまらせることができると考えていることだろう。
 しかしそのためにも、イランの核開発計画に関する情報収集が不可欠である。特にオバマ政権はイランの秘密の核開発活動を暴き、イランの「悪意」を世界に示すことで、米国の政策に対する国際的な支持を集め、イランをさらに孤立させることを狙っている。11月22日に、トム・ドニロン国家安全保障問題担当米大統領補佐官が、米ブルッキングス研究所で開催されたシンポジウムで次のように述べていた。
「我々はイランのいかなる核関連の活動であっても察知できるように精力的に活動を進めるだろう。我々はそうした(秘密の)計画を暴露し、イランを国際的な査察の下に置くのだ」
 オバマ政権がイランの核関連活動を察知するために精力的な活動を行っているため、過去数カ月間、無人機を使った偵察活動をはじめとする対イラン諜報活動が「一層激しくなっている」のだと考えられる。
 11月21日には、CIAのスパイ・ネットワークがイランとレバノンで摘発され、十名以上にのぼるCIAのスパイたちが逮捕されたことも欧米メディアで大々的に報じられていた。制裁の強化によってイランを経済的に締めつける一方で、さらにイラン孤立化を狙って諜報活動を激化させるオバマ政権。政権発足当初の対話路線はもはや見る影もない。
 当然こうした米国の活動に対して、イランの反発は強まり、防諜活動はもちろんのことさまざまな対抗措置や挑発行動をとることが予想される。そしてそれが思わぬ軍事衝突に発展するリスクも高まる。イラン核問題をめぐる米・イラン間の緊張は劇的に高まっており、危険水域に突入している。


【参考文献】
“Iran Touts Aircraft It Says It Captured”, The Wall Street Journal, December 9, 2011
“Iran Broadcasts Video of Claimed Downed U.S. Drone”, The Wall Street Journal, December 8, 2011
“Tehran Protests US Violation of Iranian Airspace”, Fars News Agency, December 9, 2011
“Senior Commander: Advanced Countries Eager to Access Iran-Downed US Drone”, Fars News Agency, December 11, 2011
“Drone Crash in Iran Reveals Secret U.S. Surveillance Effort”, The New York Times, December 7, 2011
“Stealth drone highlights tougher U.S. strategy on Iran”, The Washington Post, December 8, 2011
“Drone belonged to CIA, officials say”, The Washington Post, December 6, 2011
“U.S. Made Covert Plan to Retrieve Iran Drone”, The Wall Street Journal, December 7, 2011
“Iran says US spy drone was flying deep inside its airspace when it was downed”, The Washington Post, December 7, 2011
“Iran and International Pressure: An Assessment of Multilateral Effort to Impede Iran’s Nuclear Program”, The Brookings Institute, November 22, 2011

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20111214/225192/?P=2


 

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コメント
 
01. 2011年12月17日 10:02:08: 4dM8aVFEBU
普通に考えたら電子兵器ではなく 霞網での捕獲だな

02. 2011年12月17日 11:58:14: wMSGXTX7KE
アメリカが自分の“失敗”をわざわざ宣伝しているところがポイントじゃない?芝居だよ。
1qmOy4Hy0U

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