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中東で新たな“火ダネ”…三日月地帯vs湾岸諸国
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20111210/dms1112101446005-n1.htm
2011.12.10 夕刊フジ
アメリカのブッシュ前大統領はテロとの戦いを宣言した際、イラン、イラク、シリア、北朝鮮を悪の枢軸と呼んだ。テロの温床となる枢軸国は世界の治安を乱すいわば“ならず者たち”で、それを懲らしめるのが保安官役のアメリカ。そんなカウボーイ映画さながらのイメージで悪が描かれたわけだ。
ところが、イラクのフセイン政権が打倒された後、イラク統治の失敗や巨額の軍事費などでアメリカの債務は急増、悪漢退治どころか、経済再建が優先される事態となってしまった。実際、リビアのカダフィ大佐が、民衆の反乱を武力制圧しようとしたときでさえアメリカは異様なほど消極的だった。
こうしてアメリカの内向き姿勢が強まるなか、中東ではパレスチナ問題とは別の火だねがくすぶり始めた。火だねとはイランからイラク、シリア、レバノンへと伸びる「シーアの三日月地帯」とサウジアラビアを核とする湾岸諸国の抜き差しならない対立のことだ。
イスラム教のスンニ派は全信者の9割を占める絶対多数派で、対するシーア派は1割弱しかいない。だが、シーア派はイランとその周辺である湾岸諸国では多数派なのである。
例えば湾岸の大国サウジアラビアの場合、スンニ派の王族が支配してはいるが、石油の埋蔵量が豊富な東部にはシーア派住民が圧倒的に多い。バーレーンなど他の湾岸諸国でもおおむね同じで、少数のスンニ派が大多数のシーア派住民を支配する構図になっている。
だから、スンニ派支配層はイランの影響力をバックにしたシーア派住民の反乱という悪夢に常におびえてきたわけだ。
そのおびえがイラクのフセイン政権の消滅で一層、増幅された。フセインは確かにアメリカにとっては“ならず者”なのだが、湾岸諸国にとってはイランに武力で対峙(たいじ)してきた白馬の騎士だった。そのフセインがいなくなって「シーアの三日月地帯」が完成した。
その三日月地帯でイランが最も重視してきたシリアで政変の心配が出てきた。シリアのアサド政権は反政府デモを武力制圧することで何とか乗り切るとみられていたのに、ここにきてサウジアラビアなどの介入で怪しくなってきたからだ。
アサド政権はアラウィ派と呼ばれるシーア派別流に属し、住民の大半はスンニ派。つまり湾岸諸国とは全く逆の構造になっており、今度は湾岸側がそこを突く格好だ。
アラブ連合はサウジアラビアなどの後押しですでにシリアへの経済制裁を強化しているが、加えて水面下で民衆の武装支援も行っているという。
そういえば10月中頃、米連邦捜査局(FBI)がイラン政府によるサウジアラビア駐米大使暗殺計画を発表したが、これもそうした水面下の争い上の出来事なのだろう。
国際政治には「正義」も「悪漢」も存在せず、あるのは国益だけ。そんな現実を見事に見せつけている。
■前田徹(まえだ・とおる) 1949年生まれ、61歳。元産経新聞外信部長。1986年から88年まで英国留学。中東支局長(89〜91年)を皮切りに、ベルリン支局長(91〜96年)、ワシントン支局長(98〜2002年)、上海支局長(06〜09)を歴任。
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