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橋下徹インタビュー 覚悟を求める政治 「僕は市長ですもん 国政にはいかない 賞味期限切れるし」
--- まず、政治家として実現したい「日本社会」の姿を聞きたい。あくまでも経済成長を追いかけるのか、身の丈に合った暮らしがいいのか。どちらですか。
「今の日本人の生活レベルは世界でみたら、五つ星ホテル級のラグジュアリー(贅沢)なものです。蛇口をひねればきれいな水が出る。教育も医療もレベルは高い。失業保険、年金もあり、最後は生活保護がある。これを享受するには、すごくコストがかかる。維持するかどうか最初に決めないといけない。今以上の日本を無理に目指す必要はありませんが、僕は少なくとも今のレベルを維持したいんです」
--- どうやって?
「東アジア、東南アジアの若者は日本の若者と同じような教育レベル、労働力になってきました。そのような状況で、日本人がラグジュアリーな生活を享受しようとするなら『国民総努力』が必要です。競争で勝だないと無理です」
--- 競争、ですか。
「今の日本のレベルを維持したいなら競争です。僕は次世代の子どもたちに少なくとも今のレベルの日本を引き継ぎたい。今のレベルに不満のある人は多いでしょうが、世界から見るとものすごく贅沢な国です」
「労働集約型の製造業が海外に出ていくのは止められない。海外で稼いだお金を日本に戻す仕組みを考え、国内ではサービス業などの付加価値を高める環境をつくり、民間でお金が回る税制にする。円高で生まれた輸入業のもうけを、輸出業に回す『デリバティブ』のような仕組みを考えるのも国の知恵だと思う」
「僕が一番重視しているのは、行政サービスをユーザーの選択にさらすことです。医療も教育も介護もニーズに合っているものは付加価値が高い。行政が一方的に供給するものはあまり価値がない」
--- そのニーズを判断するのは誰ですか。
「ユーザーです。僕は選択をすごく重視しています。ユーザーが選択しないものは(行政が)基本的にやっちゃいけないんです。今の行政はユーザーの選択に関係なく、とにかくお金を突っ込んで供給する」
--- 国民みんながありとあらゆることで「選択」や「競争」を迫られるのは、けっこう大変ですね。
「国民の覚悟が必要です。その号令をかけるのが政治だと思います」
「付加価値の創出は、努力がすべてだと僕は思っています。とことん能力を発揮してもらう。そこには規制はかぶせない。いったんは格差が生じるかもしれません。でも、所得の再分配もしっかりやります。また、格差を世代間で固定させないため、最高の教育をタダで子どもたちに受けさせる。最低限の保障をすることは国の役目です。僕のやり方は事後調整型の格差是正です」
「社会保障では『人生一生使い切り型モデル』を考えています。ある程度資産ができた人は、老後の生活をまずそれでやってもらう。資産のある人には掛け捨て型の年金もありかなと。究極の所得の再分配です1」
--- 70歳や80歳になっても、努力しなければならないのですか。
「何歳で努力から解放されるかは制度設計次第で、役人にはじいてもらわないと具体的には言えません。常識的には60歳あたりでしょう」
--- ちょっと逃げてません?
「それは役人が担当する領域です」
--- 橋下さんは強い人ですが、世の中は強い人ばかりではない。そういう人にはどう言葉をかけますか。
「では、日本の生活のレベルを落としますか? 東南アジアレベルにしますか? 今の日本を維持しようと思えば、そりゃ努力をしないといけないですよ」
■ ■
--- 橋下さんは、「決定できる政治」を唱えています。リーダーの独善になりませんか。
「議論はし尽くすけれども、最後は決定しなければならない。多様な価値観を認めれば認めるほど決定する仕組みが必要になる。それが『決定できる民主主義』です。有権者が選んだ人間に決定権を与える。それが選挙だと思います。
「弁護士は委任契約書に書いてあることだけしかやってはいけないけれど、政治家はそうじゃない。すべてをマニフェストに掲げて有権者に提起するのは無理です。あんなに政策を具体的に並べて政治家の裁量の範囲を狭くしたら、政治なんかできないですよ。選挙では国民に大きな方向性を示して訴える。ある種の白紙委任なんですよ」
--- 大阪維新の会が国政で既存政党と連携することはありますか。
「国政の動きに僕がとやかくぃうことではないと思います。大阪市長の範躊外ですから」
--- 維新の会を応援しているのは橋下さんに期待する人たちです。
「わかってほしいのは、永田町や霞が関だけで複雑多様化した日本全体を動かすなんて無理だということです。だからまずはその仕組みを変える。どんなに首相を代えようが、新しい政策を出そうが、明治以来続いてきた社会システムや統治機構、すなわち体制を変えない限り、政策は絶対に実現できません」
「本当に世を変えるには、政治家が課題にどんどん突っ込んでぃかないとだめ。僕も大阪府でとことん、やりました。でも、今の国の統治機構は大きすぎる。野田首相が八ツ場ダム、普天間移設、原発、震災復興、消費税、社会保障にTPPもやるなんて絶対無理です2。仕事があまりに多い。だから、国がやることと地方がやることをきっちり分け、それぞれを機能させる。国の仕事を絞り込み地方に自立してもらう。従来の体制を変えることが政治家の仕事です」
--- 何年くらいかかりますか。
「最終的には道州という形で、日本が八つから九つの地域で自立していくというモデルがゴールだと思いますが、5年、10年かかるんじゃないですか」
■ ■
--- 僑下さん自身は国政には
「僕は国会議員になりません。公募で決めた維新塾のメンバーに期待しています」
--- なぜ?
「だって僕は市長ですもん」
--- でもそれは4年間ですよね、
「もうそれで賞味期限切れですよ。自分で分かってます。自分の賞味期限すら分からない人物は、政治家をやったらだめですよ3」
--- かつて「大阪府知事になるのは2万%ない」と言いながら、出馬しましたね。
「いやあ、結局この話(国政)になっちゃう。僕は近くの人にはまったく支持されない。分かっているんです。維新の会に100人の議員がいますが、議員からの人望と信頼は松井一郎大阪府知事の役割です」
--- 既存政党が「橋下さんや維新の会の主張を丸のみする。一緒にやろう」と言ったらどうしますか。
「道州制も大阪都構想も、僕が主張しているのは、日本の統治機構、政治や行政のシステム全体を変えようという話4です。これまで出来なかった既存政党の人たち、既得権益の代表者たちにできますかね。本当にやろうとしたら、今の体制でよい人だちと大パドルになりますよ」
■ ■
--- 橋下さんが、みなが嫌がることをあえていう理由は何ですか。
「政治家をずっとやろうと思っていないからです。維新の会のメンバーにも、1期4年を合言葉にしよう、と。次の選挙を考えたら、有権者に嫌なことは言えないですよ。今の日本の状況で、国民に好かれることなんか何も言えません」
--- 既存政党と丸ごと組むのは。
「まだわからないですよ。でも、制度を変えようとなると、今までの仕組みでやってきた国会議員のみなさんは耐えられるかなあ…」
--- そのエネルギーはどこから?
「朝日新聞があるからですよ。負けないようにって。はっはっはっ。いろんな人が意見言って、そのたびに『くそっ』つて。それがまた、エネルギーになるじゃないですか5」
--- メディアから厳しく批判されますね。なぜだと思いますか。
「メディアは批判することが仕事だからじゃないですか。メディアが権力に同調しちゃったら存在意義がないでしょう。こっちも燃えない。『くそっ』と思うから、僕も一生懸命勉強するんです」
--- 明治以来の制度を壊すという人が、なぜ「維新」とか「船中八笛」など明治を作りだものの名前をつけているんですか。
「まったく思慮はありません。そこは批判してください」
はしもと・とおる
69年生まれ。早大卒。茶髪にジーンズの異色弁護士としてテレビ出演し人気を集める。08年、当時全国最年少の38歳で大阪府知事に就任。「大阪都構想」を掲げ、10年に「大阪維新の会」を立ち上げる。11年、任期途中で知事を辞職し、大阪市長選に初当選。次の衆院選をにらみ、3月に「維新政治塾」を開設する。
2012年2月12日 朝日新聞より
1. これは明らかに橋本の真っ赤な嘘である。「掛け捨ての年金」など誰が払うものか。まったく実現の見込みがない仕組みを「究極の所得の再分配です」などと言ってのけるあたり、所得再配分など少しも真面目に考えていないことが見え見えである。新自由主義者・橋本の本性が表れている。
2. TPPは国が担当する訳だ。よく分かった。
3. 4年で政治活動を引退するという意味に受け取れるが、今ではもう誰も彼の言っていることを信用しはしない。昔の「2万パーセント出ない」と嘘をついたときの二番煎じである。この嘘つき男を大阪市民は何とかして欲しいものだ。
4. それで国民の暮らしはどう良くなるのか。橋本はこの点について具体的に明らかにしたことは一度もない。考え付く限り最大限の大風呂敷を広げた話しで耳目を引きつけようとしているだけである。その目的はもちろん最高権力の掌握である。
5. ちょっとこの言葉は危ない。橋本という人間は「ルサンチマン」に突き動かされて動いているということを図らずも明らかにしている。このかなり屈折した心情の持ち主が政治権力を掌握したときに何がおきるか、空恐ろしい感じがするのは私だけではないだろう。
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