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放射線の測定について(コラム)
- 2011-05-16 初版
- 2011-05-19 第2版
- 2011-08-02 第3版
- 2011-09-17 第4版
- 2011-12-26 第5版
- 2012-01-15 第6版
はじめに
- 見えない放射線を正確に測定することは実に難しく、体重や電圧の測定とは大きく異なります。
- かといって、何の目安もなければ、人にとって判断材料がありません。
- 誤解や過信、過度の期待、あるいは誤った測定方法を避けるために、解説してみようと思います。
- 当初報道でも線量uSvと線量率uSv/hの混同が見られました。これは距離kmと速度km/hの関係に相当します。
- 被曝には外部被曝と内部被曝(体内被曝)がありますが、一般の放射線測定器は外部被曝を測定するものです。
- そのためこの解説は外部被曝を前提にします。
- なお、内部被曝に関しては外部被曝よりも厳しい暫定基準値を定めています。(ただし国際的にみると甘い基準です)
- 体外に毒物がある場合と体内に毒物がある場合、当然体内の毒物はより厳しい基準でなればなりません。
(1)放射線はまだまだ未知
- 放射線は科学的にも医学的にもすべて解明されているわけではなく、まだまだ未知の部分があります。
- たとえば、放射線はDNAを傷つけることが知られていますが、長期的にどの程度人体に影響があるのかはまだわかっていません。
- わからないことを包み隠さずわからないと説明することは重要です。
- 細胞はDNAを修復する機能(あるいは異常なDNAを持つ細胞を死滅させる機能)がありますが、破壊される速度に修復する速度が追いつかないと、あるいは異常を検出する機能が働かないと細胞に異常が発生します。
- チェルノブイリの「赤い森」では今のところネズミは放射線に耐性があり異常はみられませんが、鳥類はほとんどに異常が見られます。
- 一部では微量の放射線はむしろ健康によいとの話もありますが、定かではありません。
- これは無菌室で育つと抵抗力が衰え、菌に対して弱くなるという考えに似ています。だから弱いウィルス(ワクチン)で免疫を作り、強いウィルスに対抗できる体にしておくという考え方です。
- しかし、放射能汚染による弱い放射線を常に浴び続け、原爆による強い放射線に対する免疫をつけておくというのは、例え医学的に正しい(現時点では不明)としても倫理的に正しい考え方ではありません。
- そもそも、頻繁に放射能漏れ事故を起こされては困ります。原爆を前提にされては困ります。放射能汚染はインフルエンザの流行とは違います。放射能汚染がなくとも自然界から微量の被曝をしています。
- 人類が放射線を利用し始めて、高々60年程度の歴史しかありません。放射能が発見されて高々100年の歴史しかありません。経験値が少ないのは否めません。
- 人体への影響は「シーベルト」という単位を用いますが、これは人体への影響度を「人間の感覚、経験」で 決めた単位であり、絶対的な単位ではありません。
- シーベルトがどのように決められているかは放射線の単位をご覧ください。
- たとえばβ線とγ線の放射線荷重係数は1ですが、α線の放射線荷重係数は20です。
- なぜ20なのか疑問に思った方もいると思います。なぜこんなキリのいい数値なのでしょうか?
- この20という値はある程度の研究と経験に基づいて決定されていますが、本当はもっと低いかもしれませんし、高いかもしれません。
- 「おおよそ」これくらいということで決定されています。この程度の根拠しかありません。
- 研究が進み将来見直されるかもしれません。
- 実際、ICRP2007年勧告で陽子の放射線荷重係数が5から2に変更されました。組織荷重係数も変更されています。
- つまり、シーベルトの単位規定方法が変更されています。今まで体重が70kgと思っていたら、実は60kgでしたというようなものです。
- かといって何の目安もないのでは困りますので、現在はこのシーベルトをひとつの基準にしています。
- シーベルトという単位は医学的な経験値を基に、現在でも曖昧さを含んでいるということを理解しておく必要があります。
(2)放射線は複雑
- また放射線は非常に複雑な現象を呈するため、一筋縄ではいきません。
- 放射線の種類でα線、β線、γ線、X線はよく聞きますが、これ以外にも中性子線などたくさんの種類があります。
- しかもこれらの一種類が単独で存在していることはむしろ稀で、同時に混在していることが普通です。
- たとえば、γ線が空気中を進むとき空気分子と衝突して光電効果やコンプトン効果でβ線を誘発します。
- 放射性物質が崩壊するとき、あるときはβ崩壊しますがあるときはγ崩壊するといった具合です。放射性核種により崩壊系列が知られています。
- つまりβ線を放出したりγ線を放出したりします。しかも確率的に起こります。なんとも気まぐれです。
- 放出するだけでなく、放射性物質によってはβ線を獲得することもあります。
- 同時に混在した放射線を測定することは至難の業です。
- さらに人体への影響単位であるシーベルトへ換算するためには「放射線を種類分けし」、「それぞれの量を測定し」、 「人体のどの臓器を被曝したか」などを判断して総合的に集計計算をしなければなりません。
- このような複雑な計算はGM管カウンタで事実上不可能です。
- GM管カウンタは放射線の種類を特定することができません。
- GM管カウンタは人体のどの臓器に放射線が照射されたか(される予定か)を判断することはできません。
- そのため、放射線測定機器はある程度割り切ってシーベルト換算しています。これを1cm線量当量(周辺線量当量)と呼びます。
- 実効線量の代わりに、人体組織の1cm深さでの外部被曝線量を評価基準とした1cm線量当量で代用しているのです。一般的に「実効線量」≦「1cm線量当量」となり、多く見積もっての数値といわれています。
- 1cm線量当量は係数を掛けたり割ったりするだけなので計算も較正も容易です。
- つまりシーベルト測定値は体重や電圧と異なり、大きな換算誤差を含んでいます。
(3)GM管カウンタの種類
- GM管カウンタの種類にはγ線だけ、β線+γ線、α線+β線+γ線を測定できるものがあります。
- これらは用途に応じて使い分ける必要があります。また測定方法も用途に応じて異なります。
- たとえば原発ではNaIシンチレーション検出器を用いたγ線検出が行われています。
- これはもし放射能漏れを起こした場合、γ線量が即座に変化するため、いち早く検知するためです。
- 被曝線量よりもいち早く検知することが第一目的です。
- この用途ではα線やβ線はむしろ邪魔です。誤検知の原因になります。
- α線を測定するのに、γ線だけを測定するGM管カウンタを利用できません。
- またα線は空気中を数センチしか飛びません。GM管の窓に近づけないと測定できません。
- β線は空気中を数メートル進みます。あるものは空気分子に衝突しながらジグザクに進みます。
- つまりβ線はいろいろな方向に進みます。
- 特定の放射線量を測定する場合、近くにβ線を放出する放射性物質があると回り込んで測定に影響を及ぼします。
- 外部の不要な放射線を遮蔽する必要があります。
- γ線は透過力が強いため、GM管の窓からだけでなく、側面の金属も通過して入射します。弱いγ線は窓から、強いγ線は側面を通過します。
- こういった放射線の特性とGM管の特性を理解しておく必要があります。
- 測定対象や測定目的に応じてGM管カウンタを選択し、測定方法を検討する必要があります。
- 表面汚染検査の目的では、α線+β線+γ線の測定できるガイガーカウンタを用いて、表面すれすれを計測します。
- この場合、汚染されているかいないか、どこが汚染されているかを知ることが目的であり、被曝線量を計測する目的ではありません。
- 例えば、靴底が汚染されているかを知ることができます。街中のどこに放射性物質が存在するかを知ることができます。
- そのため放射線の種類を絞らず、単位としてはcpmを用います。数値の大小で存在を知ることができます。
- 空間放射線量測定の目的では、γ線だけ測定できるガイガーカウンタを用いて、一般的に地表から1mで計測します。
- 日常生活する上での外部被曝線量を知ることが目的です。年間被曝線量限度に達しないかを確認します。線量率uSv/hではなく、時間を掛け合わせた(積算)線量uSvで判断します。
- この1mというのは成人を点として考える場合の中心位置という意味と(ガイガーカウンタはβ線を高い確率で検出するので)地表から放射されるβ線の影響を少しでも下げ誤カウントを避けるという意味があります。
- 正確に見積もるには、測定の高さを日常生活のスタイルにあわせる必要があります。例えば子供であれば、もっと低い位置で測定する必要があるでしょうし、寝室では寝床の高さにあわせます。
- そのため、単位としてはuSv/h(空間放射線量率)を用います。uSv/hを知るためにγ線に絞る必要があります。
- 食品の放射線量検査目的では、専用のゲルマニウム放射線測定器を用いて、外部放射線を遮蔽した空間で計測します。
- 非常に微量の放射線量であるため、ガイガーカウンタでは感度が足りず計測できません。
- 単位としてはBq/Kgを用います。
(4)α線、β線、γ線のシーベルト値
- GM管カウンタによるシーベルト測定は「γ線感度」から換算されます。
- 厳密な放射線測定装置は校正用放射線源によって校正されます。
- 校正用放射線源にはコバルト60やセシウム137がよく使われます。
- コバルト60は1.17 MeV と 1.33 MeVの「γ線」を放出します。
- セシウム137は0.662 MeV の「γ線」を放出します。
- GM管カウンタはγ線のエネルギーによっても相対的な感度が微妙に異なります。
- つまり、セシウム137で校正して、同じ線量のコバルト60を測定すると異なる値を示します。
- 世の中にはさまざまな放射性物質が存在し、放出されるγ線は放射性物質によってさまざまなエネルギーレベルを持ちます。
- つまり、たとえ校正用放射線源で校正しても、測定されるγ線量は誤差を含みます。
- ここで注意しなければならないのは「α線+β線+γ線」を測定できるGM管カウンタでは 「γ線」のみに絞らないと正しい「γ線のシーベルト換算にならない」ということです。
- GM管カウンタの窓をアルミニウム板で遮蔽して測定しなければなりません。アルミニウム遮蔽板をON/OFFできる機種もあります。
- GM管はβ線を高い確率(ほぼ100%)で検出しますが、γ線の検出確率は非常に低い(数%)ことが知られています。
- そのため測定中にβ線が混入してしまうと、正しいγ線のシーベルト値になりません。
- γ線感度を基準にしているからです。
- ここでさらに疑問が生じるはずです。
- γ線のシーベルト値がわかったとして、「β線のシーベルト値」「α線のシーベルト値」を測定しなくていいのかということです。
- 中性子線も同様です。(中性子線は自然界に微量しかないため、通常は無視してもよいのかもしれません。)
- 本来であれば、これらも測定して、加えなければなりません。正しいシーベルト値になりません。
- 身体への影響はγ線だけでなく、β線やα線も影響を及ぼします。本来であれば総計しなければなりません。
- β線は皮膚への影響が大きいことが知られています。放射線が衝突してエネルギーを失うということは衝突相手にエネルギーを与え損害を与えることです。
- γ線しか測定できないGM管カウンタはβ線を測定漏れしています。
- β線は体内奥深くまで入り込めないですが、やはり影響はあります。β線は3mmのアルミ板で遮蔽できますが、人はアルミ板を着ていません。
- しかしながら、GM管の原理上β線だけを測定することはできません。
- たとえβ線で校正したとしても、β線だけでなくγ線も同時に検出してしまいます。
- これでは何を測定しているのかわかりません。混在測定が困難な理由がここにあります。
- 幸いにしてα線は空気中を数センチしか飛びません。
- 外部被曝を考える場合、皮膚表面に放射性物質が付着しないかぎりα線に被曝する確率は低いです。
- たとえ空気中に浮遊してきたα線を放出する放射性物質があったとしても、GM管の窓数センチ以内にある確率は低いともいえます。
- このようにして(外部被曝)シーベルト換算する場合、α線は除外されているようです。
- GM管カウンタでは、このように大雑把に(γ線)シーベルト換算しているに過ぎません。(1cm線量当量ではβ線も除外しています。)
- 逆に内部被曝の場合、α線を一番考慮しなければなりません。
- α線の放射線荷重係数が20であることからもわかるように人体への影響度が大きいからです。
- 臓器を局所的に破壊します。
(5)GM管や機種による異なる特性、測定条件
- GM管が異なればγ線感度も異なります。
- 機種が異なれば特性も異なります。
- これらを相互に比較できるように校正をするわけですが、すでに解説のように校正したとしても誤差を含んでいます。
- もちろん校正しないよりしたほうがよいです。
- また測定条件が異なれば、当然測定値も異なります。
- 地上1メートルと地表面では測定値が異なります。
- 相対比較するためには、できるだけ条件を統一する必要があります。
- 同一機種、同一条件での測定が理想です。
- また測定にはばらつきを伴います。そのため、一度の測定では不十分であり、何回か測定して平均する必要があります。
- 一度の測定に十分な時間をかける必要もあります。1秒では測定できません。感度にもよりますが最低1分は必要です。
- 野外で使用時の注意事項です。
- GM管に放射性物質(チリやホコリなど)が付着すると正しい測定ができません。
- 混入しないように測定器をラップで包むなどホコリ対策が必要です。
(6)結論
- 私を含めて一般人が知りたいことは放射線の種類でもなく、放射性物質の種類でもなく、人体への影響度です。
- 生活する上で安全か危険かを判断する材料が必要です。厳密である必要もありません。
- その判断材料として、人体への影響度を知る単位が「シーベルト」です。
- もともとシーベルトは経験に基づいて決められた単位であり、多くの曖昧さを含みます。
- またさまざまな放射線が同時混在しているため、測定値は大きな換算誤差を伴います。
- 放射線の放出は確率的に行われるもので測定誤差を必ず伴います。ばらつきがあります。
- 測定条件によっても値は異なります。
- 現在の技術では高い精度も期待できません。測定値の高い保証もありません。
- 高性能なGM管カウンタのγ線精度は±15%程度です。
- しかもこれは校正用線源に対しての精度であって、実際の幅広いエネルギー域のγ線に対してではありません。
- α線精度やβ線精度を表示したGM管カウンタも見かけません。
- 測定したシーベルト値はあくまで「目安」です。
- たとえシーベルト値が正確でなくとも、普段より数値が大きければ人体への影響が大きいと判断することができます。
- 現時点においては精度にこだわりすぎず、目安にすることのほうが人類にとってメリットが大きいでしょう。
- なお、被曝線量限度を考える場合、外部被曝だけでなく内部被曝も考慮する必要があります。
- 放射性物質を含む土壌の粉塵を吸い込んだり、放射性物質を含む食料の摂取を避けなければなりません。
(7)雑学
- さまざまな問い合わせを受けています。水道水の放射線量を測定できないかという話がありました。
- 残念ながらGM管カウンタでの測定は困難です。
- もともと水は放射線をさえぎる効果があるためです。
- 水道水の放射線量は微量であるため、特殊な測定器が必要です。
- もっとも高濃度の放射性物質を含む汚染水なら別ですが、測定中に被曝してしまい危険です。
- 同様に食品の放射線量もGM管カウンタでは測定できません。
- 減塩の8000Bq/Kgくらいでもやっと測定できる程度です。
- GM管カウンタで食品の放射線量を計測したら、それはとんでもない放射能汚染をしています。
- もっとも放射能汚染した土壌まみれなら、計測されますが、それは土壌の放射線量です。
- 表面汚染を検査しているに過ぎません。食品内部を測定していることにはなりません。
(8)食品衛生法の「暫定」規制値
- まずは食品の放射線量について考えてみましょう。
- そもそもカリウムを含む食品は多かれ少なかれ放射線を放出します。
- 自然界のカリウムのうち0.0117%は放射性同位体の40Kでありβ線を放出します。
- カリウムは栄養素の一つであり、生命維持になくてはならないものです。もちろんバランスが大切であり多すぎても少なすぎてもいけません。
- 以下は目安です。減塩(NaCl+KCl)は重量配分から計算しました。
単位はベクレル/キログラム[Bq/Kg]
減塩
7925
干し昆布
2000
魚
100
干し椎茸
700
牛乳
50
お茶
600
米
30
ドライミルク
200
食パン
30
生わかめ
200
ワイン
30
ほうれんそう
200
ビール
10
牛肉
100
清酒
1
- 放射線の暫定規制値について考えてみます。
- 「放射能汚染された食品の取り扱いについて(別紙)」- 厚生労働省(平成23年3月17日)
- もともと食品に対する放射線量の規制値がなかったため、慌てて決めた基準であり、根拠はあまりありません。(いわゆる意図的に想定外にしていました。)
- 「緊急的な措置」であり「恒久的な措置」ではありません。
- 測定方法も曖昧です。野菜は軽く洗ってから測定されているようです。飲料水を水で洗うわけにはいきません。
- β線よりα線の規制値が低い(厳しい)ことがわかります。内部被曝の際、α線による人体へのダメージが大きいからです。
- ここで注意が必要です。物事はトータルで考えなければならないということです。
- 野菜は放射性ヨウ素だけに汚染されているわけではなく、同時に放射性セシウムにも汚染されているということです。
- 人体への影響は放射性ヨウ素だけではなく放射性セシウムも影響します。その他の放射性物質もトータルで考えなければなりません。
- また人間は野菜だけを食べるわけではなく、水も飲みます。これらもトータルで考えなければなりません。
- 放射性セシウムは時間と共に体外に排出されますが、すべてが排出されるわけではありません。一部は体内に一生とどまります。
単位はベクレル/キログラム[Bq/Kg]
放射性ヨウ素
(131Iはβ線を放出)
飲料水=300
牛乳、乳製品=300
野菜類=2000
放射性セシウム
(137Csはβ線とγ線を放出)
飲料水=200
牛乳、乳製品=200
野菜類=500
穀物類=500
肉、卵、魚、茶葉、その他=500
ウラン
(238Uはα線を放出)
乳幼児用食品=20
飲料水=20
牛乳、乳製品=20
野菜類=100
穀物類=100
肉、卵、魚、その他=100
プルトニウムと超ウラン元素のα線核種
乳幼児用食品=1
飲料水=1
牛乳、乳製品=1
野菜類=10
穀物類=10
肉、卵、魚、その他=10
- 報道によれば非常に高い放射線量が測定されました。
- ほうれん草が1万5020ベクレル/Kgの放射性ヨウ素(β線、半減期8日)
- コウナゴが1万4400ベクレル/Kgの放射性セシウム(β線とγ線、半減期30年)
- このレベルは食品衛生法をはるかに超える高い値で、とても許容できるレベルではありません。
- 米の放射性セシウム濃度の検査結果が公表されました。
- 本調査件数3213中、100Bq/kg以下が228件(7%)、100Bq/kg超200Bq/kg以下が7件(0.2%)、300Bq/kg超500Bq/kg以下が1件です。
- 暫定基準値以下ですが約7%で検出されており、Bq/kg表示されないため、結局消費者は選択することができず、買うことができません。
- ここには生産者と消費者の意識ギャップがあります。
- 生産者は検出されないこと、つまりは安全であることを前提に(願望も含めて)測定してますが、消費者は逆で、危険であることを前提に測定を願っています。
- 消費者は安全なものを優先して購入します。製造年月日が表示してあれば、新鮮なものから購入するのが消費者目線です。
- 新たに暫定基準値を超える米が発覚し、出荷停止となりました。
(9)風評被害と実害
- 風評被害とは存在しない原因、結果による噂被害を指します。
- 例えば、O-157の原因としてカイワレ大根が疑われましたが、調査したところ原因ではないことがわかりました。これは風評被害です。
- 実在する被害を風評被害とは呼びません。
- 例えば、牛肉にセシウムが含まれる疑いがあり、調査したところやはりセシウムが検出されました。これは実害です。
- 例えば、お茶の葉にセシウムが含まれる疑いがあり、調査したところやはりセシウムが検出されました。これは実害です。
- 例えば、ほうれん草に放射性ヨウ素が含まれる疑いがあり、調査したところやはり放射性ヨウ素が検出されました。これは実害です。
- 福島第一原発の水素爆発により空気中に飛散した放射性物質は、日本各地に及んでいます。
- 微量ですが、米国でも確認されており、地球規模でばら撒かれています。
- つまり、実害のない地域はありません。
- 繰り返しますが、これを風評被害とはいいません。実害といいます。噂を広げる報道ではなく、事実報道です。
- 風評被害と騒いでいる場合、むしろ怪しいと考えるべきです。なぜなら実害の無いことが例外だからです。
- 暫定基準値を下回っているから安全とは限りません。暫定基準値に確固たる根拠がないからです。
- 3/11以前は食品に含まれるセシウムの量は検出されないくらい低い値であったことを忘れてはいけません。暫定基準値は以前の10倍、100倍も高い値です。
- 食料生産者として本当の正義、誠実とは、消費者のことを考え、危険な食品を出荷しないことです。
- 産地偽装にしろ、消費者を裏切ったり、無視した行動は社会的な制裁を受けます。
- 一瞬でブランドイメージを損なったり、消費者の信頼を失うでしょう。
- すでに、お茶や国産牛肉の信頼は失われました。
- これからはあらゆる食品にセシウムが混入してくるので、注意が必要です。
- 調査が間に合わないだけで、検査されていないだけです。
- 牛肉にセシウムが含まれるということは、当然牛乳も疑わしいでしょう。となると乳製品はすべて疑わしくなります。
- 海産物も大量の放射性物質が海水に放出されたため、疑わしいでしょう。
- 野生のきのこ類から暫定基準値を上回る放射線が検出されています。
(10)非検出の落とし穴
- 最近放射線を検出しなかったという報道を耳にします。
- しかしそれは本当に検出しなかったのでしょうか?「精度不足で計測不能ではないでしょうか」
- 「非検出」と「測定不能」は別物です。
- そもそも海水には微量のウランがあることが知られており、放射線を検出しないはずがありません。
- 海水にはカリウムも溶け込んでいます。海草はカリウムを多く含みます。カリウムも放射線を放出します。
- 海水から放射線を検出できない測定器はそもそも「精度不足」であり、測定に不適切です。むしろ偽りの情報となります。
- 体重測定するのに、100Kg単位の目盛り(精度)しかない体重計であなたの体重を測定すると、100Kg以下なので測定不能となります。
- 体重測定するのに、最低1Kg単位の精度が必要です。精度の足りない計測器で測定できないのは当然です。
- 食品の放射線量をガイガーカウンタで測定できないのは当然です。
- 現在、日本国内の高精度放射線測定装置は数が限られています。また一回の測定に1時間以上もかかることから測定が追いついていません。
- 非検出の言葉を鵜呑みにしないようにしましょう。
(11)「直ちに健康に影響を及ぼすものではない」の落とし穴
- 当初からこのフレーズを聞きます。確かに間違ってはいません。
- 間違ってはいないので後々、裁判沙汰になっても罪に問われることはないでしょう。それが政府、官僚の使う巧みな技というものです。
- しかし正確ではありませんし、無責任な発言でもあります。
- 「直ちに健康に影響を及ぼすものではない」としても「何十年後かに健康に影響を及ぼすかもしれません。」
- この裏の意味を隠蔽しているわけです。
- 発言した本人は何十年後には存在していないので、罪を問われることはないでしょう。
- しかし、子供や子孫は先人の過ちの責任を取らされることになります。
- 何十年後かに発生する問題の責任をとらない無責任な発言といえます。
- 確かに、「一時的」に多少の毒物を摂取しても、日常的に摂取しなければ、人間の体は対処できます。
- しかし、本当に「一時的」で済むのでしょうか。放射能汚染は突然明日から消えてなくなるわけではありません。
- 放射線量は時間と共に多少弱まりますが、何十年も何百年も存在し、付き合っていかなければなりません。
- 放射線には半減期という期間がありますが、これは放射線量が半分になる期間であって、ゼロになる期間ではありません。
- これからあらゆるものに放射性物質が混入してきます。日常的に放射能汚染にさらされます。
- 空気中に飛散した放射性物質の量は大したことがないと考えるのは浅はかです。
- 大雑把な比較ですが、広島の原爆リトルボーイに使用されたウランの重量約50Kgに対して、原子力発電所1機で使用するウランの重量は約184kgx400本=73.6tです。
- 重量だけで3桁も違います。ウラン濃度を考慮しても桁が違います(原爆用ウランの濃度は約90%、ウラン燃料の濃度は約3.5%です)。
- つまりすべてが漏れたわけではないにしても、桁違いの放射能漏れ、放射能汚染をしています。
- 経済産業省原子力安全・保安院の試算によれば、セシウム137の放出量は福島第1原発1〜3号機合計で1万5000テラベクレルです。一方で広島原爆は89テラベクレルでした。つまり168倍です。
- セシウムは常温で液体であり、水溶性であることから水に溶けます。つまりあらゆる食品に入り込んできます。
- 何十年も放射能にさらされるので、健康に影響を及ぼすでしょう。統計的にがんの発生が高くなることが知られています。
- 牛肉の放射線量は小さいから食べても安心だという方がおります。本当でしょうか?食べ続けて実験した人は誰もいません。真相は何十年後かにわかることがあります。
- 暫定基準値は安全係数を見込んでいるから、厳しい基準にしているから安全だという方がおります。本当でしょうか?そこに想定外はありませんか?十分に安全を見込んでいた原子力発電所はいとも簡単に想定外の爆発を起こしました。セシウムの化学的な毒性を見落としていませんか?検出が難しいので今は検査されていませんが、あとでプルトニウムが検出されたということはありませんか?
- 国内でも土壌からプルトニウムが検出されましました。プルトニウムは放射線量も強いですが、化学的な毒性もあります。
- かつて放射能の悪影響を知らず、原爆実験は地上で行われていました。放射能汚染が判明し、地下核実験に切り替わりました。
- イタイイタイ病は長年のカドミウム汚染が原因でした。水俣病は長年の有機水銀汚染が原因でした。どちらも直ちに健康に影響を及ぼすものではありませんでした。
- 人間の考えの及ばぬことは、世の中にたくさんあります。見落としや想定外はいくらでもあります。過信してはいけません。
- 現時点で不透明であるなら、出来るだけ避けておくことが得策です。わざわざ危険を冒す必要はありません。本当に安全とわかってからでも遅くはありません。
- 「たとえ一時的に食べたとしても健康上問題がない」との発言も無責任です。
- 仮にあなたに毒物の混入した食べ物を知らせずに(知らずに)食べさせたとしましょう。
- そして後になって「たとえ一時的に食べたとしても健康上問題がない」との発言を聞いたら憤慨するでしょう。毒を食べさせておいて何という言い訳かと。「故意」ではないにしても犯罪に近いものがあります。
- 故意ではないにしても(地震、津波による災害としても)、これだけ甚大な放射能汚染を起こしておいて、未だに逮捕者が出ないのは不思議でなりません。
- 地震、津波は天災ですが、放射能漏れは人災です。
- 例えば、水道水が一時的に放射能汚染し、飲めなくなりました。「水道汚染罪」という法律があり、6ヶ月以上7年以下の懲役です。
- このほかにも「浄水毒物等混入罪」「浄水汚染等致死傷罪」「水道毒物等混入罪、同致死罪」などがあり、これらには極刑が適用されることがあります。
- すでにあらゆるものに放射能汚染が広がろうとしているので、これからは「故意」の犯罪になります。知らなかったとは言えません。知らなかったでは済まされません。
- 放射能汚染した「わら」を牛に食べさせれば、汚染された牛肉になることは当然です。あれよあれよという間に汚染された牛の数が増えました。
- 土壌汚染した土地で植物を栽培すれば、当然汚染された植物になります。
- 予想通り、予備検査で2011年産の新米から暫定基準値を超える放射線量が検出されました。これにより本検査が実施されることになりました。
- 知っていて行うのですから「故意」です。
- 「たとえ一時的に(知らずに)食べたとしても健康上問題がない」との発言は「何十年後かに健康に影響を及ぼすことを考慮していません。」
- これからはあらゆるものに放射能汚染が広まるので、「知らずにして食べる」ということはありえませんしあってはなりません。
- 事後処理的に、実は毒物が混入していましたでは済まされません。食べてしまった人の体はもう元には戻りません。
- 自分の意思で選択するのと、他人によって知らず知らず、あるいは強制的に被害を受けるのでは意味合いが異なります。
- 自分の意思で喫煙するのは自由ですが、受動喫煙を強要され、何十年後に肺がんになるのでは、結果は同じでもまったく意味が違います。
- 自分の意思で喫煙して肺がんになるのは自業自得であり、その責任は本人にあります。一方、受動喫煙を強要され肺がんになるのは他人に責任があります。
- ですから、消費者側に選択肢を与えなければなりません。
- 「農薬を使用した野菜」と「無農薬野菜」を選択するのと同様です。(無農薬野菜にも残留農薬という落とし穴があります。)
- 航空機の安全性は高いですが、仮に1%の割合で事故が起こるとしたら(100人に1人の割合で事故)、皆さんは飛行機に乗るでしょうか?生命を預けられるでしょうか?
- 同様に汚染された食料の割合は低いといいますが、将来、健康に影響を及ぼすことがわかっていて、食べるでしょうか?
- 仮に食品の放射能汚染率が1割だったとしたら、食べるでしょうか?
- 仮にそうだとしても、消費者に選択肢を与えなければなりません。
- もちろん、放射能汚染をゼロにすることはできません。人は食べなければ生きられません。
- 放射能汚染を恐れすぎるあまり、栄養不足になっては意味がありません。
- 消費者は賢い選択をし、被曝量をさげる努力が必要です。
(12)死の灰
- 「死の灰」をご存知でしょうか?
- 1954年3月1日にビキニ環礁で水爆実験が行われました。
- 近海で操業中であった第五福竜丸が死の灰を浴びて被曝し、乗組員の一人が半年後に亡くなりました。
- 実は、東北、関東地方の方は2011年3月12日から15日にかけて「見えない死の灰」を浴びてしまいました。
- 見えない死の灰を直接浴びただけではなく(外部被曝)、吸い込んでしまいました(内部被曝)。
- 3/12に1号機の爆発、3/14に3号機の爆発にともない、大量の放射性物質が大気中にばら撒かれました。
- このときの風向きが悪く、海側から内陸に吹いており、風に乗って内陸を放射能汚染してしまいました。
- 現在、土壌汚染のひどい地域はこのとき運ばれてきた放射性物質によるものです。
- 福島の一部地域の空間放射線量はチェルノブイリ近郊よりも高い値を示しています。
- 南向きの風にのり、関東地方も3/15の早朝から午前中にかけて、放射性物質が飛来しました。
- 以前よりその可能性を想定して、定期的に空間線量を測定していたところ、3/15日午前中に高い値を検出しました。
- 知り合いには出来るだけ外出を控えるように連絡しましたが、一般の方がこの事実を知ったのは、翌日の報道です。
- これをきっかけに各地で空間放射線量が報道されるようになりましたが、すでに事後であり、多くの方が死の灰を浴びてしまいました。いまさら元に戻すことはできません。
- 測定値の最高値は普段の10倍くらい(関東の場合)でしたので、第五福竜丸より被曝量は小さかったようです。
- もし、もっと多くの死の灰を浴びて、半年後、あるいは一年後に亡くなるとしたらみなさんは冷静にいられたでしょうか?
- もっとも半年後、一年後に亡くなってしまうので、騒ぐ人がいなくなります。東北から関東にかけて無人になっていたかもしれません。
- 爆発があった時点で、放射性物質が飛来することはわかっていたので、死の灰を避けることが出来たはずです。
- 事後になって、直ちに健康被害はないといわれても何の説得力もありません。
- まずは避ける努力をし、それでも避けられなかった場合に言うべき言葉です。
- 今回はたまたま被曝量が少なかったからいえる言葉です。
- 被曝量が多かった場合、事後になって次のように報道されていたでしょう。「直ちに健康被害があります。心配ありません。どうせ人は死ぬのです。」
- 一歩間違っていたら、そうなっていたかもしれません。
- 危険なときは、冷静かつ迅速に対応しないと、大きな被害をもたらします。冷静すぎて逃げ遅れてはいけません。
(13)大気中への放射性物質の放出量の試算値(Bq)
- 一部の週刊誌には掲載されましたが、大気中に放出された放射線量の試算値です。
- 単位は[Bq]です。半減期の単位d=day,h=hour,y=yearです。
- 半減期は放射線量が半分になる期間であって、ゼロになる期間ではありません。
- もちろん試算値なので、誤差はあるでしょう。
- それでも大まかにどれほどの放射性物質が放出されたかを把握することができます。
- これは経済産業省、原子力安全・保安院、平成23年6月6日の「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」からの抜粋です。
- ヨウ素131やセシウム137だけが放出されたと思ったら大間違いです。
- 半減期の長いストロンチウム90やプルトニウムも放出されています。
- ウランが記載されていませんが、当然放出されているでしょう。
- いろいろ調べていてわかったのですが、ウランは一般的な法律で対象外になっています。唯一は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律です。
- プルトニウムは強い放射能の危険もありますが、同時に化学的な毒性もあります。
- プルトニウムは扱いが危険なため正確な致死量がわかっていません(推定値はあります)。人体実験をするわけにもいきません。
- よくみると原子番号95前後と138前後が多いことがわかります。なぜかは核分裂の仕組みをご覧ください。
- これらすべての放射性物質による害をトータルで考えなければなりません。
- このほかに海水に放出された放射性物質があります。
核種
半減期
1号機
2号機
3号機
合計
Xe-133
5.2 d
3.4×1018
3.5×1018
4.4×1018
1.1×1019
Cs-134
2.1 y
7.1×1014
1.6×1016
8.2×1014
1.8×1016
Cs-137
30 y
5.9×1014
1.4×1016
7.1×1014
1.5×1016
Sr-89
50.5 d
8.2×1013
6.8×1014
1.2×1015
2.0×1015
Sr-90
29.1 y
6.1×1012
4.8×1013
8.5×1013
1.4×1014
Ba-140
12.7 d
1.3×1014
1.1×1015
1.9×1015
3.2×1015
Te-127m
109 d
2.5×1014
7.7×1014
6.9×1013
1.1×1015
Te-129m
33.6 d
7.2×1014
2.4×1015
2.1×1014
3.3×1015
Te-131m
30 h
9.5×1013
5.4×1010
1.8×1012
9.7×1013
Te-132
78.2 h
7.4×1014
4.2×1011
1.4×1013
7.6×1014
Ru-103
39.3 d
2.5×1009
1.8×1009
3.2×1009
7.5×1009
Ru-106
368.2 d
7.4×1008
5.1×1008
8.9×1008
2.1×1009
Zr-95
64 d
4.6×1011
1.6×1013
2.2×1011
1.7×1013
Ce-141
32.5 d
4.6×1011
1.7×1013
2.2×1011
1.8×1013
Ce-144
284.3 d
3.1×1011
1.1×1013
1.4×1011
1.1×1013
Np-239
2.4 d
3.7×1012
7.1×1013
1.4×1012
7.6×1013
Pu-238
87.7 y
5.8×1008
1.8×1010
2.5×1008
1.9×1010
Pu-239
24065 y
8.6×1007
3.1×1009
4.0×1007
3.2×1009
Pu-240
6537 y
8.8×1007
3.0×1009
4.0×1007
3.2×1009
Pu-241
14.4 y
3.5×1010
1.2×1012
1.6×1010
1.2×1012
Y-91
58.5 d
3.1×1011
2.7×1012
4.4×1011
3.4×1012
Pr-143
13.6 d
3.6×1011
3.2×1012
5.2×1011
4.1×1012
Nd-147
11 d
1.5×1011
1.3×1012
2.2×1011
1.6×1012
Cm-242
162.8 d
1.1×1010
7.7×1010
1.4×1010
1.0×1011
I-131
8 d
1.2×1016
1.4×1017
7.0×1015
1.6×1017
I-132
2.3 h
4.5×1014
9.6×1011
1.8×1013
4.7×1014
I-133
20.8 h
6.5×1014
1.4×1012
2.6×1013
6.8×1014
I-135
6.6 h
6.1×1014
1.3×1012
2.4×1013
6.3×1014
Sb-127
3.9 d
1.7×1015
4.2×1015
4.5×1014
6.4×1015
Sb-129
4.3 h
1.6×1014
8.9×1010
3.0×1012
1.6×1014
Mo-99
66 h
8.1×1007
1.0×1004
6.7×1006
8.8×1007
(14)除染
- 除染について考えてみます。
- その前に、この放射性物質の除染を本来「誰の責任で」行うべきかを少し考えてみましょう。
- 皆さんの家にゴミを投げ込まれたら、そのゴミは本来誰の責任で片付けるべきでしょうか?
- 本来であれば、ゴミを投げ込んだ人の責任で片付けるべきでしょう。加害者はゴミを投げ込んだ人であり、住人は被害者です。本来住人に片付ける責任はありません。加害者に片付けさせなければなりません。加害者に責任をとってもらわなればなりません。
- 現在、裁判中ですが、加害者は放出した放射性物質を「無主物」=「所有者のない物」と主張しています。放射能汚染は自然現象の雨とは違います。自然に大量に放射性物質が降ってくることはありません。多くは人工的に作られた物質であり、自然界に多くは存在しません。
- 確かに放射性物質に所有者の名前は書かれていません。しかし、地球上であの日あの時間帯に、大量の放射性物質を放出した場所は一箇所しかありません。同時期に地上で核爆発実験を行った事実はありません。
- 「土壌汚染対策法」、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」に「放射性物質を除く」とのただし書きがあり、法律の適用外です。その代わりに「原子力損害の賠償に関する法律」が定められています。ただし、細かい規定がされておらず、損害の認定は裁判を必要とします。原発は安全であり放射能汚染は起こらないとの前提であったため、法律の不備があります。
- 裁判中なので事実のみにとどめます。
- さて放出された放射性物質はたくさんの種類がありますが、外部被曝、内部被曝に影響を与えるものとして特にI-131, Cs-134, Cs-137, Sr-90の汚染に注意しなければなりません。
- このほかの放射性物質もありますが、ウランやプルトニウムは原子量が大きいため重く、微細化されたとしても遠方へ広がる確率は低いからです。
- I-131は半減期が8日と短く、急速に放射線量が低下しますが、甲状腺がんを引き起こすことが知られています。
- 半減期が短いために、時間が経過してからではI-131を検出することができないため、内部被曝したどうかを後で知ることは困難です。
- セシウムは化学的にカリウムに近く、ストロンチウムはカルシウムに近いため、植物や体に取り込まれ易い性質があります。
- セシウムは半減期が長く、人は長期的な被曝をします。セシウムは水溶性であるために、食品に入り込んできます。
- ここでは今後もっとも影響の大きいであろう、セシウムの除染について考えてみます。(他の放射性物質についても考える必要が後にでてくるでしょう。)
- 放射線は化学反応ではないため、中和反応のように薬剤を撒くことで放射性物質を無力化することはできません。
- 放射性物質は時間と共に放射線量が少なくなりますが、消えてなくなるわけではありません。崩壊系列が知られており、放射線を放出しながら別の元素に変わっていきます。
- 放射性物質の除去は厄介であり、原始的ではありますが、放射性物質を拾って集め、取り除くことが最も効果的です。
- 一度拡散してしまうと、完全に取り除くことは不可能です。まずは大体を取り除くことに集中する必要があります。
- 爆発により、チリやホコリ状になった放射性物質が風に乗り、地表に降り積もりました。あるいは汚染水として海に放射性物質が漏れました。
- アスファルト上は水はけがよいことから、放射性物質は雨によって流され、下水に流れ込みます。それによって水路や河川に放射性物質が集まります。
- 海産物よりも、淡水の魚介類の方が、放射能汚染がひどいことが報告されています。
- 雨どいなど雨水の流れるところの放射線量が高いことが報告されています。
- 土壌(田畑を含む)に降り積もった放射性物質は当初表面にしか積もっていないため、表層を数センチ削りとるだけで除染できました。
- しかし、時間と共に雨や耕作によって、土壌中に拡散していきます。作付けする前であれば、表面を数センチ削りとるだけで十分でしたが、土をかき回してしまった後では数十センチ削りとらなければなりません。
- はじめに適切な除染をしないと、その後の除染はもっと苦労することになります。
- 逆にビニールハウス内では、放射性物質があまり入り込んでこなかったので土壌汚染の度合いが低いことが報告されています。ビニールに付着しているので注意深く張り替えるだけで済むでしょう。
- セシウムは水溶性であるため、土壌が汚染されていると作物も汚染されます。作物の汚染をさけるためには土壌汚染を取り除く必要があります。もちろん、水路の水汚染にも注意する必要があります。せっかく田畑を除染しても水から放射能汚染を広げては意味がありません。
- 山間部では山に降り積もった放射性物質が落ち葉(堆肥)や小川を介して、田畑に流れ込んでくることがあります。
- 一度の除染では不十分かもしれません。
- 半分の田畑を汚染土壌の保管場所とし、除染された半分の田畑で作付けすれば、作物の汚染を防げます。
- 全部の田畑を救うことはできなくとも半分の田畑を救うことができます。欲張りすぎて全部の作物を汚染させ、全滅させてしまうよりはましです。
- 土壌汚染では削り取った汚染物質の処理に困ります。
- 汚染物質の一時保管場所として、人とのかかわりの少ない無人島などを検討してはどうでしょうか。
- 将来、除染工場を建てて集中的に放射性物質を分離することも検討してはどうでしょうか。
- 脱線しますが、東北地方の瓦礫処理が追いついていません。近隣のゴミ処理工場では何十年も処理できません。むしろ東北地方に新規にゴミ処理施設を建設したほうが総合的にコストも時間もかからないでしょう。
- 家庭内の除染は通常の掃除と変わりありません。放射性物質がチリやホコリ状になっていることから拭き掃除をすることで除染できます。
- 基本的に上から下へ作業します。チリやホコリを拡散しないようにします。作業順序を考えて行います。
- 雨どいや水路は、汚染土壌を除去したあと、洗い流すことで除染します。
- 庭は土壌をかき回していなければ、表層を数センチ削り取ることで除染します。
- 庭の木の葉や落ち葉も燃やさずに取り除きます。
- 除染作業の際は放射性物質を吸い込まないようにし、終了後はお風呂で体を洗います。汚れた服は洗濯します。
(15)放射線に関する法律
- 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
- 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令
- 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則
- 放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(文部科学省)
- 電離放射線障害防止規則(厚生労働省)
- 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
- 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令
- 放射線障害防止法による安全規制(文部科学省)
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