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●「いまは増税すべきではない/クルーグマン」(EJ第3222号)
2012年01月20日 :{Electronic Journal}
『Voice』/2012年2月号に、プリンストン大学教授のポール・クルーグマン氏のインタビュー記事が掲載されています。取材は、国際ジャーナリストの大野和基氏です。クルーグマン教授は、2008年にノーベル経済学賞を受賞しています。そのごく一部をご紹介します。
─先進国の国家債務が膨張しつづけるなか、安易に財政出動という選択をとるわけにもいきませんね。 ─ならばそこで、最も望ましい財政政策と金融政策のベストミックスはどのようなものでしょう。
クルーグマン/日本は総額、GDP(国内総生産)の2倍に当たる借金があります。それでも1%の金利で資金を借りることができる。先進国の歴史をみれば、現在のレベルよりはるかに多くの借金を抱えたことが、過去には何度もありました。そもそも、(日本の財政が)債務危機に直面している、という考え方は間違っているのです。もちろんユーロ危機は目前のものとして存在しますが、それはユーロ圏だけの問題です。自らの通貨をもっていて、そこまでの現実的な問題に直面している国はありません。
クルーグマン/完全雇用に近いかたちにまで経済を戻せるようにかなりアグレッシブな財政拡張政策をとるべきです。さらには次の5年間に2〜3%のインフレ率になるよう、金融緩和を組み合わせなければならない。そうすることで個人投資に対する真のインセンティブを提供し、ある程度、借金を削ることもできる。うまくいけばそこで、自律的回復を生み出せる可能性があります。
──『Voice』/2012年2月号
冒頭で大野和基氏が、日本の経済の状況はデフレなので、本来なら財政出動をして経済を回復させるべきなのでしょうが、膨大な政府負債残高をかかえている状況では、とてもそんなことはできませんねとクルーグマン氏に聞いたところ、クルーグマン氏はその答えとして次の3点を上げています。
1.日本の場合は、巨額の政府負債残高はあるが、金利は1%なので、積極的な財政拡張政策を
取るべきである。
2.先進国の歴史を見ると、日本のように膨大な借金を抱えたケースは何度でもあるので、
心配する必要はない。
3.円という自国の通貨を持つ現在の日本が、債務危機に直面しているという考え方は、
基本的に間違っている。
1に関しては、クルーグマン教授は経済学のセオリーを述べているのです。すなわち、既に述べたように「デフレ下の国は、財政赤字を増やす政策をとるべきである」といっているのです。具体的には、「アグレッシブな財政拡張政策をとり、さらには次の5年間に2〜3%のインフレ率になるよう、金融緩和を組み合わせる必要がある」と述べているのです。
「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」──これは財務省自身も外国に対して公言していることですが、これと同じことをクルーグマン教授は3として述べています。そして、日本の借金の額は大きいが、それが危機的であるとは考えない方がよいといっているのです。
そのうえで、クルーグマン教授は、現在の日本が取り組むべき方策について次のように述べています。
─日本に対し、いま政策上のアドバイスを送るとすれば、どのようなものになるでしょうか。
クルーグマン/インフレ目標は正しい。いまでも私はそう考えています。日本がいま必要としているものは、他国が必要としているものと同じです。いま重要であるのは、最後になるだろう、あと一回の財政拡張です。日本はずっとスポイト式、つまり一回に一滴垂らすというようなやり方をとってきたわけですが、ほんとうに経済を完全雇用の状態に戻すには、大きなプッシュが必要になる。そのあとにインフレ目標を定め、実質金利がマイナスになるようにすれば、個人消費を促進する環境が生まれます。それができれば、公共の負債も減る。
──『Voice』/2012年2月号
教授のいう「経済を完全雇用の状態に戻す」ということは、デフレから脱却するということです。ところが野田政権や日銀は、デフレを放置して、見当違いの不退転の覚悟とやらで、大増税をしようとしゃかりきになっています。セオリーとは真逆であり、デフレを一層深刻化させ、それこそ日本経済を本当の危機に追い込んでしまう恐れがあります。
国の借金が膨らんでいるときにアグレッシブな財政拡張政策をとる──常識的にはあり得ないと思ってしまうものですが、それは国の財政を家計に喩えているからそう思うのです。何かというと、財源を気にするのもその喩えのレトリックから脱し切れていないのです。
大借金の赤字の家計は、生活費を切り詰めるしかありませんが国は国債発行という借金ができる手段があり、しかも日本の場合は金利がわずか1%であってそれが十分可能なのです。デフレを脱却するには、クルーグマン教授のいうように財政政策をとるのがベストなのです。もっとも国は家計と違うので、消費増税のように徴税権を使う方法もありますが、それをやるとデフレが一層深刻化し、かえって危機に陥ってしまうからです。野田首相はそれがまるでわかっていないのです。
このことを納得するには、歴史に学ぶことです。来週は歴史を振り返ってみることにします。最近の政治家はつくづく歴史を勉強していないと思います。
── [財務省の正体/48]
≪画像および関連情報≫
●いまは増税をするべきではない/クルーグマン教授
─国家債務への対策として、野田政権は増税志向を強く打ち出しています。目下の経済状況で増税を選択するのは正しいやり方ですか。
クルーグマン/いまはそれを勧めません。まずは、経済を先によくすることが必要です。そのあとに増税するのは賛成です。あなたは1997〃という映画を観たことがありませんか。私の記憶が正しければ、消費税を上げたら、それが、「98年リセッション」の引き金になったというストーリーだったはずです。財政的に責任を取りはじめようとする時期尚早の努力は、回復をかえって弱らせる、ということを知るべきでしょう。
──『Voice』/2012年2月号
元記事リンク:http://electronic-journal.seesaa.net/article/247288967.html
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