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●「白川日銀総裁発言の論理矛盾」(EJ第3201号)
2011年12月14日 :{Electronic Journal}
デフレは、「お金」の価値が上がり、「モノ」の価値が下がる現象のことです。「モノ」の量に対して「お金」の量が不足することです。この「お金」の量をコントロールしているのが中央銀行、すなわち、日銀です。
日本がデフレに陥ったのは、バブル崩壊以降に日銀が金融引き締めを行ったからです。つまり、日銀が日本をデフレ状態に陥れ以後その状態を20年にもわたってかたくなに守っている──そのようにいっても過言ではないと思います。少なくとも、必死にデフレから脱却しようとしているようには見えないのです。
デフレを脱却するには、日銀は「お金」──通貨量を増やせばよいのです。つまり、実体経済で必要としている通貨量を供給する必要があります。しかし、なぜか、日銀はそうしていないのです。やってもアリバイ的に金融緩和をやるだけで、すぐにやめてしまうのです。どうしてなのでしょうか。
2008年9月15日、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻したことが原因で世界中に波及したリーマンショック──それ以降世界各国の中央銀行が大量の「お金」を市場に投入して対応したにもかかわらず、日本だけはやっていないのです。
中央銀行が通貨量を増やすには、市場で資産を買い入れることでその対価として「お金」を市場に供給するのです。そうすると多くの資産を買い入れることになるので、バランスシートが拡大することになります。
添付ファイルを見ていただきたいのです。このグラフは各国の中央銀行のバランスシートの変化率を示しています。イングランド銀行、FRB、欧州中央銀行は、リーマンショックが起きると同時にバランスシートを拡大させて対応しているのに、日本だけは何もしていないのです。その差はまさに歴然です。
2010年12月10日の日本経済新聞のインタビューにおいて白川日銀総裁は次のように応じています。
Q:日本経済はなぜ長い間、デフレから抜け出せないのでしょうか。
A:根本的な要因は需要の低迷だが、大きな背景は国民が将来の成長期待を持てないことだ。
そうしたなかでは消費が増えず、投資も伸びない。
Q:デフレは金融政策で解決すべきだという声も根強くありますが・・・。
A:(前略)デフレが先行して改善することは基本的にない。
経済の力が底上げされ、需給ギャップが改善して初めて物価が上がる。
Q=日経記者/A=白川日銀総裁
──上念司著
『日本再生を妨げる/売国経済論の正体』/徳間書店
聞き逃せない言葉があります。「国民が将来の成長期待を持てないこと」という部分です。20年間もデフレが続いていれば、どこの国の国民でもそういう気持ちになります。
企業経営者に対しても白川総裁は、「潜在的経済成長能力」の低下が根っこにあり、金融緩和をしても効き目がないといっているのです。これは、EJ第3198号で述べた日本経済は特殊な環境にあるという考え方に基づく主張ですが、何となくデフレの責任を企業経営者や一般国民に押し付けているように感じます。
『日本再生を妨げる/売国経済論の正体』(徳間書店)の著者である上念司氏は、白川日銀総裁の言葉には論理矛盾があると指摘しています。2009年11月3日に白川総裁は、次のようにいっています。
日本銀行の白川方明総裁は3日、都内での講演後に参加者との質疑に応じ、国債の大量発行が続く日本の財政について「世界的に見ても悪い状況。健全なバランスを回復する必要があり、財政再建が必要である。
──YOMIURI ONLINE/2009.11.3
ここで白川総裁は「日本の財政は世界的に見ても悪い状況」と述べているのです。しかし、2011年9月22日、20ヶ国・地域財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見では日本経済について次のにように述べているのです。
震災直後の厳しい供給制約がほぼ回復し、経済活動は着実に持ち直している。世界経済については先行きをめぐる不確実性が高まり、国際金融資本市場の緊張が高まっている。世界経済の不確実性の増大というもとで安全資産選好が生じ、そのことが日本の円高の原因にもなつている。その円高が日本経済に悪影響を及ぼしている。
──白川日銀総裁
──上念司著の前掲書より
白川日銀総裁は、2009年には日本の財政は世界的に見ても悪いとしながら、とくに何の手も打っていないのに2年間は変化なく経過しています。危機的状況は変わっていないのです。
ところで、2011年9月になると、円高の原因は「日本の財政が安全なので円が買われている」と述べているのです。確かにこれらの言葉をつなげてみると、そこに明らかに論理矛盾があり首尾一貫していないのです。
しかし、白川総裁ともあろう人が「円は安全資産」などというのは疑問です。円高の要因は日銀が他国の通貨に比べて、品薄になっていることによるものであり、安全資産だというのはいい過ぎであると思います。日本の財政は、2009年に白川総裁が指摘したように、けっしてよくない状況にあり、改善を図るべきは当然であるといえます。白川総裁は円高の本当の理由を述べたくなかったのではないでしょうか。
── [財務省の正体/27]
≪画像および関連情報≫
●白川方明日銀総裁の「円は安全資産」発言
[ワシントン 22日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は22日、投資家の安全資産志向が最近の円高をもたらしているとの見解を示した上で、世界経済の不確実性を解消することが重要と指摘した。同総裁は記者団に対し「現在の円高は世界経済全体の不確実性が高まる中で、グローバルな投資家の相対的な安全資産選好から起きている」と述べた。
「世界経済の不確実性を取り除いていくことが非常に大切」と強調し、欧州の債務問題は欧州だけでなく、世界経済や日本経済にも重要との認識を示した。
白川総裁はまた日本経済は3月の東日本大震災前の水準を回復したと指摘。震災による供給制約がほぼ解消し、経済は需要に左右される通常の状態に戻ったと分析し、世界経済の不確実性が日本経済にも影響し得るとの見方を示した。
その上で日本経済の先行きが世界経済動向からどの程度影響受けるか注意して見ていくと語った。
ロイター:最近の円高、安全資産志向が背景 不確実性の解消重要=白川日銀総裁
●グラフ参照/上念司著、『日本再生を妨げる/売国経済論の正体』/徳間書店
i各国中央銀行バランスシートの変化率
元記事リンク:http://electronic-journal.seesaa.net/article/240340403.html
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