http://www.asyura2.com/11/test24/msg/104.html
Tweet |
東大脳のお馬鹿大先生・御用学者大橋弘忠、「格納容器は壊れないしプルトニウムは飲んでも大丈夫」(平成17年佐賀シンポ)
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2011/11/post-4f10.html
昨日のニュース、「東大原子力 反省の嵐 推進一転 シンポで再考」(2011年11月23日 朝刊)を後ろで採録しておきました。シンポジウムの議事録テキストも採録しておきました。(末尾にジャンプ)
今から6年前の発言ですが、こんな馬鹿(東大)を税金使って飼っているとは。東大ってのは東京電力大学の略らしい。
平成17年12月25日「プルサーマル公開討論会(佐賀県)」で東京大学工学系研究科システム創成学専攻教授の大橋弘忠は↓こんな事を言ってます。
「格納容器は壊れないしプルトニウムは飲んでも大丈夫」
filmmakerjpn
最初から(要旨)(議事録ではこの部分)
大橋:「事故の時どうなるかは想定したシナリオに全部依存する。全部壊れて全部出て全部が環境に放出されればどんな結果でも出せる。それは大隕石が落ちてきたらどうなるかと言う起きもしない仮定。皆さん原子力事故が起きたら大変だと思っているかも知れないが、専門家になればなるほど格納器が壊れるなんて思えない。」
SOBA:このシンポジウムの6年後、福島で壊れちゃったんだけど。
2分1秒から(要旨)
「小出さんが言う事が起きるのは全く仮想的な話し。プルトニウムを1個1個取り出して皆さんの肺を切開手術して一つずつ埋め込めばそれくらい死にますよと言う話し。全く起きもしない仮想的な話し。そんな事を言っていたら自動車にも乗れないし何も出来ない」
SOBA:大橋の言っているケースは肺からプルトニウムを吸い込んで「内部被爆」すれば起きる事。
参考:原発業界御用学者@ウィキの、「大橋弘忠」より。
(以下転載始め)
東京大学工学系研究科システム創成学専攻教授。
厳密には専門外であるにも関わらず、原発擁護の発言をくり返した。
なかでも京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏と討論会を行った際、
「プルトニウムは飲んでも安全」
「 地震など原発には関係ない話 」
「 格納容器が破損するなどあり得ない。1億年に1回の確率 」
などと発言し、「 わからないのなら家に帰ってお子さんに聞け」等と聴衆に対しても罵声 を浴びせた。※
福島第一原発事故後、結果的に小出助教の危惧が全て的中してしまい、
現在は討論会での勢いは鳴りを潜め、逃亡中。
自身の研究室ホームページからも「原子力」の文字は削除し、
「メンバー」「アクセス」のページも急遽"工事中"にすり替えた。
http://syrinx.q.t.u-tokyo.ac.jp/members.html
(以下略)
(以上転載終り)
※SOBA:「わからないのなら家に帰ってお子さんに」云々の部分は、大橋の発言ではなく、出光一哉(原発推進派、九州大学大学院教授)の発言、しかも誇張しすぎ。
以下、大橋のHPをサイト内検索した時の証拠画像。
(↓クリックすると拡大します)
1、サイト内検索で、「情報」では、約 13 件 (0.06 秒)とヒットするのに。
2、「システム」では、約 11 件 (0.07 秒)とヒットするのに。
3、「シミュレーション」では、8 件 (0.07 秒)とヒットするのに。
4、site:http://syrinx.q.t.u-tokyo.ac.jp/ 原子力 に一致する情報は見つかりませんでした。
5、site:http://syrinx.q.t.u-tokyo.ac.jp/ 原発 に一致する情報は見つかりませんでした。
6、site:http://syrinx.q.t.u-tokyo.ac.jp/ 原子力発電所 に一致する情報は見つかりませんでした。
以下、大橋のHPに行って確かめた証拠画像。
7、大橋弘忠のHP。
9、「メンバー」、工事中にしてます。恥ずかしくて名前を載せられない?
11、「ギャラリー」、HPのネット訪問者が気になるようです。
12、「アクセス」、工事中にしてます。お客さんに来て欲しくないらしい。
※SOBA:御用学者だけでなく、マスゴミや御用言論人や売国政治家に警告しておく。昔だったら時間がたてば忘れてもらえたデタラメや都合の悪い事などでも、ブログ(強力なサイト内検索)やYouTube(音や眼による確認)の登場で、国民は健忘症ではなくなった。いつでも、何度でも、繰り返し拡散する(笑)
なお、上記YouTubeは以下の7を表題を変えてアップされたものです。上記YouTubeの部分は6/7の「13分26秒」からと、7/7の始めから。
1/7【原発問題】推進派vs反対派 小出裕章氏(1)
311movie
http://youtu.be/2WVTSIZNiVs
始めから、大橋弘忠(原発推進派、東京大学大学院教授)
7分20秒から、小出裕章(原発批判派、京都大学原子炉実験所助手)
2/7【原発問題】推進派vs反対派 小出裕章氏(2)
http://youtu.be/xLmVYl5TKk8
始めから、小山英之(原発批判派、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表)
7分57秒から、森本敏(拓殖大学海外事情研究所長)
3/7【原発問題】推進派vs反対派 小出裕章氏(3)
http://youtu.be/hL1Jgdfsx7Q
始めから、森本敏(拓殖大学海外事情研究所長)
4分20秒から、山内知也(神戸大学海事科学部助教授)
地震を考え拙速にやるな派。
12分から、大橋弘忠(原発推進派、東京大学大学院教授)
MOX燃料について。
4/7【原発問題】推進派vs反対派 小出裕章氏 (4)
http://youtu.be/FFxJvU1Kf1s
始めから、大橋弘忠(原発推進派、東京大学大学院教授)
30秒、小出裕章(原発批判派、京都大学原子炉実験所助手)
1分30秒から、出光一哉(原発推進派、九州大学大学院教授)
2分47秒から、小出裕章(原発批判派、京都大学原子炉実験所助手)
4分54秒から、大橋弘忠(原発推進派、東京大学大学院教授)
7分10秒から、小山英之(原発批判派、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表)
7分57秒から、小出裕章(原発批判派、京都大学原子炉実験所助手)
9分54秒から、司会。
11分15秒から、大橋弘忠(原発推進派、東京大学大学院教授)
5/7【原発問題】推進派vs反対派 小出裕章氏 (5)
http://youtu.be/BMOGQl4CyM0
始めから、大橋弘忠(原発推進派、東京大学大学院教授)
1分から、小出裕章(原発批判派、京都大学原子炉実験所助手)
5分35秒から、司会。
5分50秒から、小山英之(原発批判派、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表)
6/7【原発問題】推進派vs反対派 小出裕章氏(6)
http://youtu.be/hNSb2n-jBm0
始めから、小山英之(原発批判派、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表)
14秒、司会。
24秒から、出光一哉(原発推進派、九州大学大学院教授)
7分52秒、司会。
8分50秒から、小出裕章(原発批判派、京都大学原子炉実験所助手)
10分8秒から、山内知也(神戸大学海事科学部助教授)
11分5秒から、小山英之(原発批判派、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表)
13分26秒から、大橋弘忠(原発推進派、東京大学大学院教授)
7/7【原発問題】推進派vs反対派 小出裕章氏 (7)
http://youtu.be/Ho26hU3KVnM
始めから、大橋弘忠(原発推進派、東京大学大学院教授)
1分から、小出裕章(原発批判派、京都大学原子炉実験所助手)
4分27秒から、出光一哉(原発推進派、九州大学大学院教授)
5分40秒から、司会。
6分20秒から、森本敏(拓殖大学海外事情研究所長)
質疑・応答部分。
1/8【玄海原発(佐賀県)】推進派vs反対派 質疑応答編(1)
311movie
http://youtu.be/LarKKaG_d1A
2/8【玄海原発(佐賀県)】推進派vs反対派 質疑応答編(2)
http://youtu.be/chjp7B3DcZ0
3/8【玄海原発(佐賀県)】推進派vs反対派 質疑応答編(3)
http://youtu.be/FUqipXLEzzM
4/8【玄海原発(佐賀県)】推進派vs反対派 質疑応答編(4)
http://youtu.be/RAvxaycbS6M
5/8【玄海原発(佐賀県)】推進派vs反対派 質疑応答編(5)
http://youtu.be/l023HBXDOIg
6/8【玄海原発(佐賀県)】推進派vs反対派 質疑応答編(6)
http://youtu.be/5vdGdXqCzLc
7/8【玄海原発(佐賀県)】推進派vs反対派 質疑応答編(7)
http://youtu.be/eTw0wXCH8YI
8/8【玄海原発(佐賀県)】推進派vs反対派 質疑応答編(8)
http://youtu.be/cYnv7JBuIDE
(始めに戻る)
東大原子力 反省の嵐 推進一転 シンポで再考
2011年11月23日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011112302000032.html
「原子力工学の再考」をテーマに議論する東京大教授ら=22日、東京都文京区で
福島第一原発事故はなぜ起きたのか。原子力業界に多くの人材を送り出してきた東京大が二十二日、反省を込めたシンポジウムを東京都文京区の同大構内で開いた。教授たちが原発に携わってきた産学官のOBらに原因を聞き取り調査した結果も公表。東大教授側からは「原子力教育を主導してきた立場としてあり方を再考したい」と、反省の弁が続いた。
聞き取り結果は、個別の発言者は明らかにされなかったが、「ムラ的」とされる原子力界のあり方を反省する内容が多かった。
「電力会社の技術者はトラブル対応で言い訳にたけ、デスクワークばかりしている」「権威ある専門家によって方向付けがされ、他の専門家があらがえない」など、現場の具体的な状況が浮かび上がってくる意見もあった。
続くパネル討論会では、若手の助教や大学院生たちから自戒の念や、ベテラン教授に対し厳しい意見も出た。
学生の一人は「事故直後に知人から、原子炉のことを聞かれたが答えられなかった。講義で学んでいたが、身になっていなかった」と話した。
助教は「学生たちは実績のある先生方にも時代に応じて変わってほしいと願っている」と訴えた。
これに対し、日本原子力学会長を務める田中知(さとる)教授は「新しいことをしようにも多忙でかまけていた。教員も変わっていかないといけない」と述べた。
東電出身で原子力委員会委員でもある尾本彰特任教授は「私を含め事故を起こした人間をつくってきた東大原子力には、社会とのかかわりを研究していく責務がある。予算が切れたら終わりではいけない」と指摘していた。
政府の事故調査・検証委員でノンフィクション作家の柳田邦男さんも講演。「原子力の専門家は、客観性を持ちながらも、事故被害者を自分の家族に置き換える視点を持つべきだ」と主張。講演後、田中教授は「では教育者はどうあるべきでしょうか」とすがるように質問し、柳田氏から現場感覚を養うようアドバイスされていた。
(始めに戻る)
HOME > プルサーマル計画について > プルサーマル公開討論会
http://saga-genshiryoku.jp/plu/plu-koukai/
(略)
プルサーマル公開討論会・議事録
議事録
議事録ダウンロード(PDF:320KB)
科学ジャーナリスト:中村浩美資料(PDF:355KB)
九州大学大学院教授:出光一哉資料(PDF:1637KB)
東京大学大学院教授:大橋弘忠資料(PDF:917KB)
京都大学原子炉実験所助手:小出裕章資料(PDF:989KB)
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表:小山英之資料(PDF:2176KB)
神戸大学海事科学部助教授:山内知也資料(PDF:840KB)
(敬称略)
HOME > プルサーマル計画について > プルサーマル公開討論会 > プルサーマル公開討論会議事録1
http://saga-genshiryoku.jp/plu/plu-koukai/gijiroku-1.html
1ページ | 2ページ | 3ページ | 4ページ | 5ページ | 6ページ |
7ページ | 8ページ | 9ページ | 10ページ | 11ページ | 12ページ |
13ページ | 14ページ |
議事録1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14。
プルサーマル公開討論会議事録
1.テーマ玄海原子力発電所3号機プルサーマル計画の安全性について
2.開催日時平成17年12月25日(日) 13:00 〜 17:30
3.開催場所唐津ロイヤルホテル
4.参加者(パネリスト)九州大学大学院教授出光一哉
東京大学大学院教授 大橋弘忠
京都大学原子炉実験所助手 小出裕章
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表小山英之
拓殖大学海外事情研究所長 森本敏
神戸大学海事科学部助教授 山内知也
(コーディネータ)科学ジャーナリスト 中村浩美
(オブザーバー)資源エネルギー庁 大臣官房参事官 野口哲男
原子力安全・保安院 原子力発電安全審査課長佐藤均
原子力安全・保安院 原子力安全広報課長伊藤敏
原子力安全委員会事務局 審査指針課
安全調査管理官吉田九二三
原子力安全委員会 原子炉安全専門審査会委員更田豊志
九州電力(株) 取締役 原子力本部長樋口勝彦
(敬称略)
5.議事録
佐賀県主催のプルサーマル公開討論会へたくさんの皆様にご参加を頂きまして誠にありがとうございます。私は本日の司会を務めさせていただきます平原と申します。どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
それでは,まず初めに佐賀県くらし環境本部長の西野文夫より一言ご挨拶を申し上げます。
【西野本部長(佐賀県くらし環境本部)】
皆様こんにちは。年末の日曜日という大変お忙しい中、県主催の公開討論会に多数ご参加いただきまして、誠にありがとうございます。また、本公開討論会の趣旨を御理解いただきまして、コーディネータ、パネラーをお引受けいただきました先生方に厚く御礼を申し上げます。あわせてオブザーバーとして出席いただいております国の関係機関、九州電力の方々にも御礼を申し上げます。
さて、本日の公開討論会でございますが、九州電力において計画されております玄海原子力発電所3号機におけるプルサーマルについて、その安全性にテーマを絞りまして、プルサーマルの推進に理解を有しておられる先生方、及び慎重な見解を有しておられる先生方が一同に介していただきまして議論していただくために開催したものでございます。
参加者の募集につきましては佐賀県及び長崎県鷹島町にお住まいの方々を対象とさせていただきましたが、多数の皆様から応募がございまして、本会場は相当窮屈になっておりますが、何卒よろしくお願い致します。また、本日の模様はケーブルテレビとインターネットによる中継を行いまして、県内の多くの方々が視聴できるようにいたしております。
次に玄海3号機のプルサーマル計画につきまして、これまでの経過を若干説明させていただきます。昨年の5月28日に佐賀県と玄海町及び九州電力の3者で締結しております安全協定に基づきまして九州電力から事前了解願いが提出されております。また、同じ日に国に対して原子炉設置変更許可の申請がなされております。国におかれましてはこの設置変更許可に経済産業省の原子力安全保安院において安全審査が行われ、その後更に経済産業省とは別の内閣府にございます原子力委員会及び原子力安全委員会で第二次審査が行われ、その安全審査の結果、安全性は確保されるとして本年の9月7日に経済産業大臣から原子炉設置変更の許可がなされております。県では昨年の5月事前了解願いが出されました後、九州電力から事前了解願いの内容等について説明を受けますとともに、国からもプルサーマルの必要性及び安全審査の結果等について説明を受けております。また、本年2月20日に開催されました九州電力主催の公開討論会での議論や、10月2日に開催されました国主催のプルサーマルシンポジウムでの議論等も聞かせていただいております。プルサーマルに関する真摯な議論がなされたものと理解いたしております。更に本日の公開討論会では、申しましたように、推進・慎重双方の立場の先生方が出席いただいておりますので、プルサーマルの安全性に関する議論を更に深めていただけるものと期待をいたしております。
本日は長時間になりますが、最後までご静聴いただきますようお願い申し上げまして主催者としての挨拶といたします。本日は皆さまよろしくお願い致します。
【総合司会】
まずは、佐賀県くらし環境本部長、西野文夫よりご挨拶をさせていただきました。
それでは本日のプログラムを簡単にご案内いたします。初めに科学ジャーナリスト中村浩美さんのコーディネートによりパネルディスカッションを行います。その後休憩を挟みまして会場参加者の皆さまからご質問を受け、パネリストの方々にお答えをいただくという質疑応答の時間を設けております。なお、ご質問の主旨によってはオブザーバーにお答えいただく場合もございます。
ここで皆さまにお願いですが、会場への出入りは自由とさせていただきますが、他のお客さまにご迷惑とならないように配慮の方をよろしくお願い致します。また、再入場の際は入口の係員へ参加証のご提示をよろしくお願い致します。なお、本日は、インターネット及び地元ケーブルテレビによるライブ中継を行っております。予めご了承下さいませ。
それでは、ステージにお揃いの皆さまをご紹介致します。まずは、パネリストの方々から向かってあいうえお順にご紹介をさせていただきたいと思います。まずは九州大学大学院教授出光一哉さん。東京大学大学院教授大橋弘忠さん。京都大学原子炉実験所助手の小出裕章さん。美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表の小山英之さん。拓殖大学海外事情研究所長の森本敏さん。神戸大学海事科学部助教授の山内知也さん。以上6名の方々でございます。そして、オブザーバーの方々をご紹介したいと思います。経済産業省大臣官房参事官野口哲男さん。原子力安全・保安院原子力発電安全審査課長佐藤均さん。原子力安全・保安院原子力安全広報課長伊藤敏さん。原子力安全委員会事務局安全調査管理官吉田九二三さん。原子力安全委員会原子炉安全専門審査会委員更田豊志さん。九州電力株式会社取締役原子力発電本部長樋口勝彦さん。そして、全体を通してコーディネータを努めていただきますのは、科学ジャーナリストの中村浩美さんです。中村さんはエネルギー問題に限らず航空分野等幅広い分野で活躍されていらっしゃいます。
それでは、ここからはコーディネータの中村さんに進行の方をお願いしたいと思います。それでは中村さん、どうぞよろしくお願い致します。
●第一部開始
【中村コーディネータ】
本日コーディネータを努めさせて頂きます中村浩美です。会場の都合でこちら側の皆さんには、なかなか発言してる時も顔が見えないと思いますので最初にご挨拶をしておきますが、よろしくお願い致します。
先ほど主催者の佐賀県の方からご挨拶がございましたように、今日はこのプルサーマルの安全性というところに焦点を絞りまして、公平に、そして、冷静な議論を展開して欲しいという佐賀県主催者からのご依頼がございまして、安全性の議論を深めることによって県民の皆さまにこのプルサーマルを考えていただこうということで、パネルディスカッションを開くというご依頼を受けまして、私コーディネータとして本日伺った次第です。
今日の進め方ですけれども、まず最初に原子力発電あるいはプルサーマルについてよくご存知の方もたくさんいらっしゃるかとは思うんですけれども、簡単に私の方からおさらいをさせていただきまして、プルサーマルとはどんなもんなのか、九州電力が計画しているプルサーマルのほんの概要でございますけれども、まず簡単にそれをご紹介させて頂きます。そしてその後、壇上にいらっしゃいます6人の講師、パネリストの皆さんにそれぞれの立場、ご見解の元に、このプルサーマルの安全性についてご意見を発表していただきます。それをお伺いした後で、パネルディスカッションに入ってまいりたいと思います。安全性と一口に申しましても技術的な所から政策的なところ、あるいは防災の見地からと、色々なご意見があろうかと思いますが、私の方で少しずつ整理をさせていただきながら、パネリストの皆さんと議論を深めてまいりたいというふうに思っております。そしてこのディスカッションの質疑、あるいは後半の方では会場の皆さんから挙手をしていただいてご質問をお受けするという時間を設けておりますが、そういう時に、これはどうしても国あるいは九州電力担当でなければお答えできないというようなケースもあろうかと思いますので、先ほどご紹介のあったオブザーバーの皆さんに私共の後ろに控えていただいております。その様な場合に限ってオブザーバーの皆さんにはご発言を頂くということで、今日のパネルディスカッションの中心は壇上の6名のパネリストの皆さんと、それから会場で質問あるいはご意見を発表していただく会場の皆さんが主役ということでございます。プルサーマルを考える色々なアプローチがあろうかと思いますけれども、今回は佐賀県、主催者の意向がございまして、その安全性に焦点を決めてお話を進めてまいりたいと思います。プルサーマルとは言いましても、一般的な原子力発電に対する安全性に言及されるケースもございますでしょうし、我国の原子力政策と安全性という見地からのご発言もあろうかと思いますけれども、今回のテーマはプルサーマルの安全性ということですので、あまり議論が拡散しないようにパネリストの皆さんにもお願いをしたいと思います。
それでは早速ですが、正面のスクリーンの方に映像が出てまいります〔資料1−1:PDF61KB〕。皆さん一緒におさらいをしていただきたいと思いますが、まずは火力発電と原子力発電の違いとありますけれども、何らかの燃料を使って蒸気を作って、それでタービンを回して電気を作るという意味では火力発電、原子力発電と共通している訳ですが、ただ、その燃料の部分、蒸気の作り方が違う訳ですね。火力発電の場合ですと、石油・石炭・天然ガスなど燃焼させて蒸気を作る訳ですが、原子力発電の場合、PWR、加圧水型の場合ということになりますと、ウラン燃料の核分裂によって高温の熱が発生すると、その暖められた水を送り、蒸気発生器の方へ送りまして、そこでまた別の水がやってきて、それが蒸気に変わると。この蒸気がタービンを回して発電をしていくと、こういう形です。
この原子力発電所、一般論なんですけれども5つの壁で守られている。安全対策が施されているというふうに言われております。ご覧のような所で〔資料1−2:PDF76KB〕。まず最初に燃料を焼き固めたもの、ペレットと申しますけれども、これを被覆管という金属の“さや”ですね、この中に入れて燃料棒というものを作るわけです。ここで、第一の壁、第二の壁ということになりますが、第三の壁、大事な所が原子炉容器ということですね。ここにウラン燃料を納めているわけですけれども、厚さがおよそ20センチの鋼鉄製の容器ということになります。さらに、そのまた外側に原子炉格納容器というのがありました。さらにまたその外側、この原子炉格納容器については鋼鉄製の部分とそれからコンクリートの壁の部分があるということで、5つの壁によって原子力発電所の安全対策は施されている、これももう皆さん既にご存知だと思います。
そして今日のプルサーマルのテーマになります九州電力の玄海3号機の原子炉なんですけれども、皆さんのお手元にもお配りしてありますからご覧いただきたいと思いますが、原子炉容器というのがありまして、その中に燃料棒を集めた物、燃料集合体と言いますけれども、玄海3号機の場合ですと、ここに193体も入っているわけですね〔資料1−3:PDF68KB〕。こういう形になって原子炉の中に燃料が納められていると。今日のテーマのプルサーマルということなんですけれども、これはMOX燃料というものを使うわけなんですが、通常の原子力発電所の場合ですとウラン燃料ですよね〔資料1−4:PDF88KB〕。このウラン燃料、いわゆる燃やす、核分裂が起きる。そう致しますと、使用済燃料という段階で実は全部が燃え切るわけではないんですね。核分裂とともに核分裂生成物というものが出てきますけれども、その中に燃えにくいウランもありますし、それからプルトニウムというのが新たに出てくる。燃えやすいウランも含まれている。この使用済燃料というものを、日本の場合はリサイクルということを考えてますから、これがまた新たな燃料資源になるという考え方になるわけです。そこで、使い終わったウラン燃料からこのプルトニウムを取り出して、そしてまたウラン等と混ぜてMOX燃料というものを作ると、Mixed Oxideと言って混合酸化物と言うんですけど、この頭文字をとってMOX燃料と言っているわけですね。この中には当然プルトニウムというのが入ってくる。ここが最初の原子力発電で使うウラン燃料と違う所になるわけですね。ここに大きな特徴がありますし、今日の議論の一つの焦点になろうかと思います。プルサーマルというのは造語なんですけれども、プルトニウムを使うということで、その“プル”ですね。サーマルというのは、サーマルリアクターっていうのが軽水炉、普通の原子力発電所の炉のことです。これを合わせて作られた言葉で、“プルサーマル”という言い方をしております。九州電力が計画しておりますこのプルサーマルなんですけれども、玄海の3号機ということですね〔資料1−5:PDF63KB〕。九州電力としては2010年度までに実施したいということなんですが、このMOX燃料というものなんですが、ここのところが安全性の点でおそらく今日もパネリストの皆さんから色々議論になるところだと思うんですが、ウラン235、これが核分裂を起こすものですけど、その濃度とか、プルトニウムの含有率、ここ大事な所ですね。燃料集合体平均、ペレット、焼き固めた燃料ですね、その最大の数字が出てきます。単位がまた出てきます。例えば燃料集合体平均で約 4.1wt%濃縮ウラン相当以下というようなことが書いてありますね。これはウエイトパーセントということで、重量での割合を示す単位なんですけれども、それから今度、ペレット最大の所でも13wt%(ウエイトパーセント)以下で、核分裂性プルトニウムの富化度8wt%以下、ウエイトパーセント、8ウエイトパーセント以下とありますけれど、この数字が何を意味するのかというのは分からない方も多いと思うんですが、これは、この後パネリストの皆さんのご発言の中でよく聞いていただければお分かりいただけると思います。今日の議論の中のかなり重要な部分を示すと思います。それからMOX燃料集合体の最高燃焼度。ここにも何かMWd/t(メガワットディーパートン)という単位が出てくるんですけども、これはメガワットディーパートンということで、燃料1トンがどの程度燃えたかっていうことを示すものなんですが、このあたりのことについてもおそらく議論になると思いますから、是非しっかりと皆さんお聞きになって下さい。そして、このMOX燃料の装荷量、どれぐらい納めるかということなんですけれども、玄海3号機には燃料集合体が193体あります。そのうちMOX燃料集合体を最大48体装荷するということで、全体の4分の1程度がこのMOX燃料というものになるという計画になっております。
そして、この九州電力のプルサーマル計画の安全性につきましては平成16年5月28日に九州電力が国に対して原子炉設置変更許可申請を行いまして、今年の9月7日に国の安全審査が終了し、許可が出ているということになっております。このプルサーマルをめぐりましては、国主催のシンポジウムも開かれましたので、このあたりは皆さんもご記憶かと思いますし、参加された方もいらっしゃると思います。という概要でございます。
これについて、今日は安全性にポイントを絞って議論を進めていきたいということになります。それでは早速ですけれども、パネリストの皆さんからプルサーマルの安全性に関するそれぞれのご意見をお伺いしていきたいと思いますが、まずは私のお隣の側からぐるっと回りたいと思います。出光さんどうぞ。
【九州大学大学院 出光教授】
それでは、出光と申します。九州大学におりまして、中身に入る前に少し自己紹介を簡単にさせていただきますと、今から25年ほど前に九州大学を出まして、原子力の方を専攻しておりまして、その後、動燃事業団、今は名前が変わってしまいまして、日本原子力研究開発機構になりました。そこに入りまして、一番最初にやった仕事が高速炉燃料、使用済燃料、今の軽水炉ではなくて高速炉と呼ばれる次世代の原子炉、この燃料の再処理の研究をやっておりました。その燃料の中にはプルトニウムが30%入っている、そういうものの再処理の実験をやっておりました。その後、廃棄物の処分関係の研究をやりまして、平成元年から大学に戻りまして核燃料と廃棄物の研究をやっております。
中身に入ってまいります〔資料2−1:PDF105KB〕。この表ですけども、いわゆる発電用軽水炉原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について、という題目で原子力安全委員会の専門部会の報告書が出ております。ちょっと名前が長いので3分の1MOX報告書と略させていただきますが、この中にプルトニウムを軽水炉で使用する、いわゆるプルサーマルについて検討された結果が書いてあります。その中のプルトニウムの含有率、あるいはプルトニウム富化度といったものについて検討されておりまして、この検討の中では先ほども中村さんの方から言われましたように、プルトニウムの含有率がペレットの中で最大で13%。それから、核分裂性プルトニウム富化度、これがペレットの中で約8%というふうになっております。これは、核分裂性プルトニウムというのは、プルトニウムの中に核分裂しやすいものとしにくいものがありまして、核分裂のしやすいプルトニウム、これの割合を示したものです。燃料全体に対して核分裂しやすいものの割合を示したものです。それから、炉心の装荷率といいまして、原子炉の中には、集合体がたくさん入っているわけですが、そのうちのどれだけをMOX燃料に変えていいかということで、一応検討は3分の1程度までというふうになっております。それから、燃焼度というのがありますが、これは、燃焼度、後で出力というのも出てまいりますが、燃焼度というのは車で例えれば走行距離と思って下さい。それから、出力というのはその時の車のスピードと。ですから、出力が高くて長く運転すればたくさん走るということで、ご理解いただければよろしいかと思います。その、最高燃焼度ですが、45,000MWd/tということに設定されております。これは、ウラン燃料を超えない範囲ということで設定をされております。これらの報告書に書いてありますこういった仕様を満足しましたら、従来の設計を大幅に変更することなしにMOX燃料を使用可能であるというふうに報告書で言っております。ここでちょっと注意しておきたいのは、これ以上になったら危なくて使えないと、そういう数字ではありません。報告書では一応設定としてこういう値までを検討しましょうということで検討してありますので、さらに高い含有率の燃料を将来使うことになった場合には再度検討して報告書が出されるというふうになると思います。これに対しまして九州電力の玄海3号炉では、プルトニウム含有率、それから核分裂性プルトニウム富化度については、報告書と同レベルまでのものを使う可能性がある。ただし、炉心の装荷率については集合体全体の4分の1程度で使うということを考えておられます。燃焼度については、報告書と同じ45,000MWd/tということで、考えられております。この報告書についてですが、一応設計を大幅に変更することなく使えるといっておりますが、一応留意点ということで、燃料関係について以下の4項目があげられております〔資料2−2:PDF93KB〕。まず、プルトニウムを混ぜますとペレットの融点及び熱伝導度が低下する。ペレットのクリープ速度が増加する。核分裂生成ガス放出率がウランペレットより若干高めである。ペレット内のプルトニウム含有率の不均一が製造時に生じる可能性がある。この4項目について留意をして欲しいというふうに書いております。このことについては後ほど説明いたしますが、このうち、ペレットのクリープ速度が増加するにつきましては、このクリープ速度というのは、分かりやすく言うと燃料の柔らかさ、変形のスピードが早いということを意味しておりまして、どちらかというと、燃料棒が壊れにくくなる方の性質でありますので、後の説明からは省きます。
まず、プルトニウムが入った場合の燃料の融点についてですが、このグラフが融点の測定結果が示してありまして、横軸がプルトニウムの割合で、縦軸が融点になっておりまして、皆さんから向かって左側の端がウラン、右側の端がプルトニウムということで、この線の交差している分で言いますと、ウランですと2,800℃ぐらい〔資料2−3:PDF88KB〕。プルトニウムですと2千4百数十℃ということで、確かに融点は低下いたします。しかし、実際に使うプルトニウムの濃度というのが10%前後ということでみますと、確かに融点は低下するんですが、融点の低下は数10℃程度と、100℃までは下がらないということで、安全性には問題なかろうというふうに後で申し上げます。
それから、熱伝導率についても確かにこのグラフも同じなんですが、確かに下がります〔資料2−4:PDF91KB〕。ただし、10%程度プルトニウムが入った場合の熱伝導率の低下も、やはり10%程度。ここで注意していただきたいのは、ここには線がいっぱい書いてあります。これは、温度が違うと熱伝導率が変わるんですね。燃料の、プルトニウムの組成というよりも、温度の方でより大きく熱伝導度が変わります。従いまして、プルトニウム濃度よりも温度、つまり運転条件の方が影響するということになります。これらをまとめまして、じゃあ安全なのか、あるいは燃料は溶けないのかということについて言います〔資料2−5:PDF108KB〕。最も厳しい条件の評価で燃焼度が1,200MWd/tと燃焼初期になりますが、そこで見ていきます。ウランペレットでは融点が約2,800℃ですが、実際MOXになりますと、これが70℃程下がりまして2,720℃に融点は下がります。ですが、実際の運転条件は、定格の場合ウランの方では1,830℃。それから、MOXでは1,820℃ということで、900℃程の余裕がございます。もし途中異常時があった場合ということで、燃料の温度が上がった場合ですが、この評価ではウラン炉心の場合2,200℃。MOX炉心の場合で2,250℃ということで、やはりここでも500℃近くの裕度を持っているというかたちで運転されますので、中心部が溶融するということは通常時あるいは想定されている異常時においてもないということを確認されております。
【中村コーディネータ】
そろそろ一旦おまとめ下さい。
【九州大学大学院 出光教授】
後は、圧力の方ですけども、燃料ペレットからの圧力については、解析をした結果、十分に燃料は壊れないということが確認されております〔資料2−6:PDF106KB〕。それから、プルトニウムスポットについても、製造時に400ミクロン以下のものについては問題ないというふうにされております〔資料2−7:PDF85KB〕。定常時についてもスポット内の温度上昇が数℃程度、それから、初期に消滅してしまうということがあります。異常時についても、後ほど時間があればご説明いたしますが、スポットが存在した条件でも壊れないということが分かっております。実績ですが、今までに約5,000体弱の集合体が世界で使われておりまして、これは、玄海3号炉でいきますと数十年分の実績ということになります〔資料2−8:PDF114KB〕。燃焼度、それから装荷率等についてもお配りしました資料に載せておりますが、高い燃焼度、それから、30%以上の装荷率、そういったものもございます〔資料2−9:PDF90KB〕。特に、プルトニウムを使うにあたってウラン燃料等大きく異なることはありません。それと、積極的に使用することによってエネルギー資源を有効に利用することが出来ます〔資料2−10:PDF97KB〕。ということで、終わりにしたいと思います。
【中村コーディネータ】
後ほどまたご発言の機会はございます。では続いて大橋さんどうぞ。
【東京大学大学院 大橋教授】
東京大学の大橋です。私も出光先生と同じように大学で教育と研究にあたっているんですけど、また一方でこういう安全審査に関して意見を述べさせていただいたりすることもやっております。今日はこうやってお話する機会を与えていただいて大変ありがとうございました。何をお話ししようかと今まで佐賀県で行われたその安全性に関する質疑応答をずっと勉強してきたんですけれども、実は正直申し上げて何でこんな事をやっているんだというくらい意味の無い、もう検討しちゃったことを何回も聞かれて、今、出光さんがお話されたような内容の話を何度となく回答しているというようなことですので、今日は我々がこういう問題をどういうふうに考えるかという考え方のところですとか、県から、事故時の影響について話せというのがありましたんで、それについてまとめてまいりました。
原子力安全、ちょっと早口で申し上げます、申し訳ありません〔資料3−1:PDF123KB〕。我々の現代社会にはこういう色んな問題が出てきてます。原子力発電ですとか、遺伝子操作、伝染性の疾患ですとか地球環境問題です。こういう問題は極めて技術の果たす役割が大きくて、どうしても感情に動かされるとかっていうふうに社会の意見が決まっていくところが非常に危ない所で、原子力安全の問題はこういう問題の代表ですけれども、安全がどう確保されているのか、技術的にどういう根拠でどう判断したのかということが問題となるべきです。それに対しまして、流される情報の多くが、これはマスメディアも含めてですけれども、過度に情緒的なアプローチで、怖い・恐ろしいだとか、管理社会になるんじゃないかとか、又は原爆と同じとか、今日のテーマでもありますけどテロが起こるんじゃないかとか、そういうイメージがたくさん流されてます。こういう現代社会を取り巻く科学技術の問題というのは科学技術をベースにした客観的な判断をする、これが一番の基本で、県はそういうことでこういう会を開いていただいてるんですけど、こういうのに基づいて、社会的・経済的・環境的に意思決定をしていくというのが民主主義社会の基本になります。安全確保の考え方です〔資料3−2:PDF103KB〕。安全確保の視点は安定に運転出来るかどうか。何か起きた時に安全に停止出来るか。万一の事故時に放射能影響を防げるか。こういう問題です。安全設計・安全評価はどうやっているかというと、考えられる最も厳しい条件で評価をします。安全余裕を見込む、その中で系統の一部が機能しないようなことを保守的に仮定をします。これを逆手に取ればこういうことが起こるんじゃなかというような議論にどんどん入っていってるわけです。何を検討するかというと、核反応に関する特性、あと、熱水力に関する特性、構造的にもつかどうかという特性を検討します〔資料3−3:PDF82KB〕。これに関連しまして、考える原子炉の状態は停止時であるとか通常運転時、過渡変化時、事故時を扱います。プルサーマルにつきましては、燃料をプルトニウム入り燃料に変えるだけですので、今ご説明したうちの核的特性が変化するだけです。その核的な特性が変化させた時の設計解析評価をやりまして、丁度出光先生がご説明いただいたような一定条件下、MOXの装荷割合とか燃焼の条件下では現行と同等の特性を設計することが可能だという結論になっております。従いまして、原子炉特性に基本的な変更はありませんし、安全性が現行の軽水炉と変わることはありません。隣に安全余裕の図を書いておりますけれども、なんとなく安全余裕が減るんじゃないかというような議論がされているんです。そうではありません。安全上の制限値がありまして、運転上の制限値があって、運転範囲はこういうところでやっています。ここを安全余裕と呼んでいまして、ここの運転範囲というのは原子炉の状態ですとか燃料の設計とか又は運用の仕方によって変わりうる範囲ですので、安全余裕は全く同じです。こういうことの判断の根拠は解析ですとか実績、実験、学術的知見、経験に基づいて総合的な特性を判断します〔資料3−4:PDF103KB〕。
プルサーマルの基本問題に戻ってみますと、核的特性を正しく予想できるかどうか。その核的特性を予測したものから安全評価の入力を作りまして、運転停止特性ですとか、過渡変化だとか、事故の時どうなるかという検討をします。核的特性につきましては、これまで軽水炉、プルサーマル、高速炉、実験炉、新型転換炉などで多様な条件の経験と実績を持っています。それと、核データベースの整備、解析手法の改良、計算機性能の向上とあいまって、基本的に100%の確率で正しく予測できるという技術は確立しています。これに、プルサーマルに関しては臨界実験ですとか、今ご紹介いただいたような装荷割合、原子力出力、燃焼度、プルトニウム含有率についての実績をベースに判断をしています。
事故の影響範囲については技術的に想定しうる最大の放射能漏洩を仮定してMOXを装荷した時に、よう素が1%弱増えますけれども、希ガスは5%強減るという結果になっておりまして、現行と同等の結果です〔資料3−5:PDF104KB〕。これに対して、距離が2倍に、距離が増えて面積が4倍になるというのがあります。これの原因が、原因というか出所がよく分からずにまずインターネットで調べたんですけれど、どうやらどなたのオリジナルか分からないんですけど、原子力資料情報室のホームページに解析が貼ってありまして、その解析の内容というのがちょっと言葉は過激ですけどもむちゃくちゃです。ラスムッセン報告の特別なシナリオを持ってきて、30年前のですね。プルトニウムとか他の元素がチェルノブイリより更に放出されるという想定をしています。これは、捏造ともいえる解析で技術的には発生しないシナリオです。確率的な議論を決定論的に置き換えているとか、軽水炉ではチェルノブイリのようなことは起きるわけがないので、それを意図的に想定して怖いですよ、怖いですよという恐怖の垂れ流しをやっているような評価結果です。プルサーマルの安全性のまとめですけれども、プルサーマルは今ご紹介したように、現行の軽水炉と全く同じ安全性と信頼性を持っています〔資料3−6:PDF78KB〕。安全余裕を食いつぶすとか、事故の影響が2倍4倍になるというようなことは全くありません。ここで是非申し上げておきたいのは、玄海町だとか佐賀県の地元の方々が不安を感じる必要は全くありません。技術的に不誠実なのは誰でしょうか。技術的に全く根拠が無い話です。学会では全然発表なんかされたことがありません。都合の良いデータを使って都合の良い解釈をする。関係の無い話を持ち出されます。チェルノブイリなんか、軽水炉と全然関係が無いという結論が専門家の間で決まっているのに、チェルノブイリがどうだとか、今日も先ほどの資料で拝見したんですけど、地震の話が出されると思います。今日、我々はプルサーマルの安全性、つまり玄海3号炉のウラン燃料の変わりにMOX燃料を入れた時に安全性が確保されるかどうかという議論に来ているのに、地震なんか全然別の話題ですけど、それも怖いですよ怖いですよと恐怖心をあおるような話になってると思います。
以上です。ありがとうございました。
【中村コーディネータ】
大橋さんでした。続いて小出さんどうぞ。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
京都大学の小出です。今の大橋さんの話には私は反論が山ほどあるんですけれども、後での議論の時にということで、まずは基本的にですね、プルサーマルというのはどういうものなのかということを聞いていただきたいと思います。
私は68年に原子力の平和利用というものに大変な期待を抱きまして、原子核工学科という学問を選びました。どうして私がそういうふうに原子力に期待を抱いたかというと、化石燃料は使えば無くなってしまう、将来のエネルギーは原子力に頼るしかないというふうに聞いたからです。今、ここにご参集の皆さんも、多くの方がそういうふうに思われているだろうと思います。ただし、それは事実でないのです。大橋さんが、今客観的な事実で議論をしようとおっしゃるので私もそうしたいと思いますけれども、それならば地球上にあるエネルギー資源はいったいどういうものがあるのかということをここに、四角の大きさであらわしています〔資料4−1:PDF67KB〕。私は今聞いていただいたように、化石燃料が無くなるから原子力だという宣伝を信じまして、原子力に進んだわけですけれども、一番たくさん地球上にある資源は石炭です。もちろん化石燃料。天然ガスというのが最近たくさん見つかってきまして今現在このくらいの大きさだと言われていますけれども、多分もっともっと大きな四角になります。現在、私たちがどっぷりと使っている石油がある。それから、現在は使いにくいのでまだ使ってないオイルシェールやタールサンドという資源もあります。ここまでが全部化石燃料なんです。これが無くなったら原子力だと言われたわけなんですけれども、原子力の燃料であるウランはこれしかない。石油に比べても数分の1しかないし、石炭に比べたら数十分の1しかないという大変貧弱な資源だったのです。こんなものに人類の未来を託するなんてこと、そのことがまずバカげていると思わなければいけません。ただし、原子力を推進する人達には夢があります。今私がここにウランとして書いた資源は核分裂性の資源です。いわゆる燃えるウランです。しかし、原子力の資源には違うものがあると。プルトニウムというものがあるというふうにおっしゃるわけです。プルトニウムというのは長崎の原爆の材料です。ですから、原子炉でも燃えるということでプルトニウムを生み出してそれを資源にしたいというふうに考え出した。一体どうするかというと、こういうことをやりました〔資料4−2:PDF89KB〕。まず一番初めはウランを掘ってきます。それを色々な形で加工しまして、普通の原子炉で燃やすということをやる。これが現在やっていることです。後々に廃物の処分をしなければいけないわけですけど、それが今ちょっとどうしていいか分からないので取っておくということになっています。
原子力を推進している人達が描いた夢というのは全然別でして、こちら側です。プルトニウムというのを作り出してそれを高速増殖炉という特別な原子炉を動かすことによってまたそれを再処理という特別なことをしなければいけないのですけれども、グルグルグルグルこのサイクルを回すことでようやく核分裂性のウランに比べて60倍ぐらいまで原子力の資源が増えるだろうという、そういう夢を描いたわけです。ただし、このプルトニウムというのは天然には全くありません。そうすると、どこかから調達してこなければいけないということになりまして、普通の原子力発電所から出てきた燃料の中からプルトニウムを作り出してこちらに引き渡そうとしたんです。しかし、高速増殖炉というのは実は実現できていないのです。世界的にも実現できていないし、日本でも“もんじゅ”という実験炉が潰れてしまったというそういう状態。ところが、このサイクルを動かすということが原子力をやってきた人達の夢だったわけですから、プルトニウムをとにかく生み出して渡したいと思っていた。どのくらいプルトニウムを作ったかというと、こういうふうに作ってきてしまったわけです〔資料4−3:PDF81KB〕。1993 年から2004年までのデータをここに書きましたけれども、日本という国が高速増殖炉で使うんだといいながら使用済みの燃料から分離してきてしまったプルトニウムはどんどん増えまして、今現在43トン、日本という国の懐にあるわけです。細かい議論をするときりが無いのですけれど、もしそれで原爆を作ったらどうなるかというと、右側の軸に書きました。一番上のここに50と書いてあるのは、50メガトンという単位です。長崎の原爆は21キロトンでした。例えばここに20という数字があります。20メガトンですけれども、これは21キロトンの長崎の原爆を1,000発作れるというぐらいの量に相当します。つまり、今現在日本という国が持ってしまったプルトニウムというのは、長崎原爆をもし作ることに使うならば、2,000発も出来てしまうというぐらいの量になっているわけです。こうなると、国際的な関係から見て大変な疑惑を受けるということになります。日本というのは高速増殖炉をやると言っていたけれども、実際には出来ていない。それなのに、プルトニウムだけは懐に入れちゃった。一体どうするのだと言って大変な疑惑を受けていまして、このプルトニウムを何とか始末をつけなければいけないということになります。それで、今現在こういう状態にあるわけですけれども、しょうがないのでプルサーマルで燃やしてしまおうということを考えたわけです〔資料4−4:PDF99BK〕。ですから、これはもともと本当は必要だったんではなくて、原子力をやろうとしていた人達の夢が破れてしまったから、どうしようもなくて今追い込まれてしまっている道なのです。日本がやってきた原子力政策が根本的から間違えてしまったからそこに今私たちが追い込まれてしまっているという、そういうことになっている。結局、原子力政策が破綻してしまいましたので、そのつけで安全性を犠牲にします。大橋さんは犠牲にしないと言ったけど、必ず犠牲にします。それから、経済性も犠牲にします。それから、資源的にはほとんど意味がありません。高速増殖炉をやるということならば別ですけれども、プルサーマルなどは全く意味がないと言った方がいい程度のことです。それで、プルサーマルに踏み込んでしまうという、そういうことになってしまいました〔資料4−5:PDF75KB〕。
安全余裕が食いつぶされないとおっしゃったので一言だけ言っておきます〔資料4−6:PDF84KB〕。今、示していますのが想定している原子炉の危険度だと思って下さい。玄海3号炉でもいいです。こういう原子炉を設計するときにどうするかというと、大橋さんもおっしゃったように、安全余裕というのを考えて設計して作るわけです。しかし、本当の危険はもっと大きいのかもしれないのです。想定していることが間違えていたということはよくあることでして、人間は完璧ではありませんので、残念ながら事故というのは起こるわけです。だから、普通の原子力発電所でも事故は起こります。実際にたくさん起こってきているわけです。では、これからプルサーマルにすると、どうなるかというと、こういうことになります。危険が増加します。それは先ほど出光さんがいくつかの要因をあげて下さった。危険は必ず増加します。安全余裕は低下します。ではどうするかというと、ここの部分を工夫して何とかすればいいんだと言っている。工夫で頑張ると言ってるにすぎないのであって、危険は必ず増加します。こういうことを皆さんが受け入れるのかどうなのかということが問われているというふうにお考えいただければいいと思います。以上です。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。続いて小山さんお願い致します。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
長い名前の会の代表ですが、普段は美浜の会と略称しております、小山です。
この新聞ですが、これは1999年の12月16日の記者会見の模様なんですが、左から2番目に私がおります〔資料5−1:PDF171KB〕。この年の1999年の9月に、関西電力の高浜4号用のMOX燃料データに不正があるという疑惑が起こってきました。関電は、イギリスに人を派遣しまして、僅か1週間調査しただけで、「不正はない」というように結論しました。その結論を当時の規制当局である通産省と原子力安全委員会は、直ちに了承しました。その後、通産省は、イギリスから入った重要な疑惑のデータを隠していたというのも明らかになりました。それに対して私たち市民は、膨大なデータの入力作業を行いました。これは中学生の二人の娘さんまでが一生懸命データ入力に加わりまして、そして不正があるということを突き止めて、差し止め訴訟を起こしました。それで、12月17日に判決が出るという予定になっていたその前日の16日に、関西電力がやっぱり不正がありました、すみませんと謝りまして、全部燃料を破棄してしまったという、そういうことであります。その時私は、原告団の責任者をしておりました。私は専門家ではありませんので、これから皆さんの、多くの方が抱いておられる疑問点をできるだけ代弁する発言をしたいと思っております。
これは、原子力安全・保安院、これは通産省のあとになるわけですが、佐賀県に9月9日に説明した図ですけども、ここでは原因のところに関電が悪い、関電が悪いと書いてありまして、規制当局としての責任には全く触れておりません〔資料5−2:PDF101KB〕。こういう姿勢で今回も安全審査をやられるというのでは、全く信頼ができないと思います。
それで、その後、この事件が契機になりまして、福島原発のプルサーマル、新潟県の柏崎刈羽原発のプルサーマルという所にも大きな反対の声が沸き起こってきました〔資料5−3:PDF93KB〕。刈羽村の住民投票では、プルサーマル反対の意思が多数を占めました。この刈羽村という所は、原発に人々の生活が非常に依存しておりまして、いわば原発城下町と言われている所ですけれども、ですから容易に原発には反対はできない。しかし、プルサーマルには反対したいと。これ以上危険なのはごめんだと。そういう意思が多数になったわけです。そういうことがありまして、現在は、東電も関電もプルサーマルを実施できる目途が全く立っておりません。
プルサーマルというのは、ウラン燃料用に設計された原発で、設計に反して特性の異なる危険なプルトニウムを混ぜた燃料、MOX燃料を燃やす事であります〔資料5−4:PDF72KB〕。普通であれば、設計に反する事をやるというのはとんでもないことだと考えるわけですけど、だんだん慣らされていくと言いますか、それがあると思います。それでどうなるかというのは、九州電力の新聞の2面広告が教えてくれておりますけれども、そのうちの一つは、先ほどからも大橋さんも、出光さんもおっしゃっています、70℃燃料が溶けやすくなるということですね。ここのところが、この線とこの線の間で70℃溶けやすくなる〔資料5−5:PDF84KB〕。
これは、1979年スリーマイル島の原発2号機の事故でありますが、炉心のこの燃料の45%が溶けてしまいまして、そのうちの3分の1が炉の下の所に、この底の部分に落下しました〔資料5−6:PDF119KB〕。ここはもっと融点が低いですので、下手をすると、底が溶けてしまって、下に落ちると、下に水が溜まってますから、水蒸気爆発を起こす恐れがあります。そういうような方向に70℃で溶けやすくなるということは、もっとたくさん溶けて、底が抜ける傾向が高まるということになります。
それで、プルサーマルが本当にウラン炉心と同等であるのであれば、何も安全性に全く問題ないということであれば、危険手当等らしいものを交付する必要は全くないわけですけれど、既に政府が予算措置をしているらしいのは、受入に「はい」とプルサーマルに手を挙げただけで、年に2億円、5年間。運転を開始した5年間は、年5億円を交付しましょうということですね〔資料5−7:PDF92KB〕。ウラン炉心と同等のはずではなかったんでしょうか。そして、もし安全であるのならば、そういうものに手当てを出すというのは、税金の無駄遣いであると思います。
それから、最後の方ですけれども、私たちは、プルトニウム、そこにあるから使えとか、簡単に言いますけれども、プルトニウム利用の陰には放射能汚染があります〔資料5−8:PDF57KB〕。青森とか岩手の人たちの、そこに、再処理工場でプルトニウムを分離するわけですけれども、そこでは、ここに再処理工場がありますが、ここから毎年、毎年、年間、放射能が、スリーマイル島の原発事故で出た放射能の3.6倍の放射能がこの排気筒から空に、大気に放出されます〔資料5−9:PDF108KB〕。この端っこの方でも、自然の放射能の2倍の放射能が含まれておりまして、そういう放射能を産まれたての赤ん坊から何十年も毎日毎日吸わねばならないという、そういう状態に置かれるわけです。それからこっちの六ヶ所再処理工場の地面の下を通って、パイプを海に引きまして、海の底50メーターの海底から上を向けて、放射能の廃液を毎日放出します〔資料5−10:PDF75KB〕。これをもし飲みますと、47000人分の致死量に相当するのが、毎年ここから放出される。放射能摂取限度で言いますと、3億3000万人分に相当します。こういうのがずっと拡散していきまして、岩手の三陸海岸の豊かな漁場の方にまで押しかけるということで、岩手県議会では全会一致で、自民党も全部含めて、これに対して説明を求めるということを決めました。
プルサーマルを容認するということは、今のようなプルトニウム汚染を引き起こして、日本を放射能汚染の泥沼へと導く道であります〔資料5−11:PDF62KB〕。プルサーマルを拒否すれば、また別の道が目の前に開けてくる。そういう第一歩になると思います。以上です。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。続いて森本さんお願い致します。
【拓殖大学海外事情研究所 森本所長】
私は、そもそも原発、あるいは原子力の分野の専門家ではなく、国家の安全保障や危機管理の分野の仕事をしてきたものなので、そういうコンテキストで原発あるいは原子炉の安全性というものを論じてみたいと思います。途中の議論は全部省略をし、結論のみをお話したいと思いますが、原発を含むこの種の、国の中にある重要な施設に対するリスクというのは、大きく分けて2つあって、一つはこれは否定しようもないのですが、大規模な災害というもので、もう一つは作為によるものです。この作為によるものというのは、何らか人間の意図が加わっているというものであり、それが今日の議題である、例えばテロだとか、ゲリラ、コマンドだとか、場合によっては、国家の命を受けて不法に侵入し、重要施設を破壊するといった行動です。本格的な侵略が国家に対して行われるとすれば、国際法上武力による攻撃は、それに当てはまりますが、この場合は原発どころではなく、国全体が他国によって侵略を受けるわけですから、ここは今日の議論の対象から外したいと思います。
つまりある種の、国全体が戦争に巻き込まれている状態を議論してみても、あまり原発のケーススタディには参考にならないので、原発だけを重要な目標だと考えて、この種の攻撃が起きた場合のを議論しようとするものです。一体、どういう目的で例えば原発、あるいは原子炉を攻撃するのかというと、一般論として国際政治では2つくらい目標があります。一つは言うまでも無く、そのような重要な国家の施設を破壊することによって、国家の機能を麻痺させるといったもの。第二にそれだけではなく、そのことによって社会的不安をもたらし、国家の意思を他に強要するといった、ある種の武力による威嚇という国際法上の問題がこの場合、例えば原発に対する攻撃の背景要因にあるとすれば、そのようなことをする主体とは、どういうものかと考えた場合、現在の国際政治の中では、例えば、ある種の団体、組織等が行うテロがその例です。
例えば、中東湾岸で見られるようなイスラムのテロといったものが国際社会の中に広がって、それが我が国に及ぶ場合。第二は周辺諸国が何らかの意図を持って、我が国の国益に対する重大な侵害を与えようとするものです。我々はこの種のリスクを非対称脅威と言っています。すなわち、相手が国家であり、国家が軍事力を使って、堂々と攻めてくるというのではなく、誰が主体なのかわからない、目的もよくわからない、様相もよくわからない、つかみどころがないといったようなもので、こちらから正規の軍隊で対応することが、合理的に考えて正しいかどうか、なかなか分かりにくい場合であり、この種のものが我々の周りにあるということです。
ついでに言うと、我が国の国家の安全保障とか、防衛について、我が国政府は2種類の脅威とかリスクを考えております。一つが今申し上げた非対称脅威で、もう一つは、我が国に対する伝統的な脅威というものです。
さて、このようなテロが現実にある特定の原発に波及するといった場合、突然そのようなテロが原発の前に現れるとは、少し考えにくいわけです。もちろん論理的には、ある日、夜間にテログループが航空機から降りてきて、九州上陸をして、施設を破壊するという活動がないわけではない。しかし、いずれにしろ、我が国の地理的範囲、地理的環境を考えると、経空経海と言って、空域を通っていくか、海域を通っていくかであります。陸続きでない我が国に陸から伝わってくるということは考えにくいですから、従って、海を渡ってくるか、空から来るということです。ということは、第一義的に事前に何らかの兆候があると考えるのが普通です。もちろん、兆候を見逃す場合、あるいはこちらで欺瞞行為をやって混乱をしている時に別の方向から入ってくる場合、いろいろありますけれども、一般論として周辺諸国からこの種の原発攻撃が行われる場合、現在は、これは我が国の過去15年に渡る経験からしてですけど、アメリカの偵察衛星で、例えば北朝鮮の海域から出た小型の船舶、どのような船舶であれ、我が国の領海の中に近づくものについては、我が国に通報があるということです。通報があった場合、それをずっとフォローし、必要な場合、海上保安庁、あるいは海上自衛隊の情報収集のための航空機を飛ばして、それを情報収集をします。それ以外に報道にある、ご存知の通り、青森県にエックスバンドレーダーというものをまもなく建設するということです。これは来年建設工事が完了すると思いますが、そうなると、ミサイルとかロケットが飛来してくる場合に、いち早くエックスバンドレーダーで探知できるということになります。
日本海には、海上自衛隊と米海軍がイージス艦を派遣していますけれど、1隻で大体日本の半分の情報収集をすることができますので、この種の情報収集によって、ある程度、我が国に近づく航空機及び船舶を事前に情報収集をするということができると思います。
時間がないので、この種のテロによるリスクというものに我が国が対応する時に何が一番問題かということを2つだけお話してみたいと思います。
1つは、日本の地理的環境をご覧になるとお分かりのように、まず海を渡って何かが近寄って来る時には、国際法上は、まず海上保安庁が日本の領海の外で、警戒をし、そして、その相手の対象がそれでも日本の領海の中に入ってくるか、もしくはその対象物が海上保安庁では対応できない武器を持っていると考えられる場合、現在は、海上自衛隊に対し海上警備行動が発令になった場合に、海上自衛隊が海上保安庁からテイクオーバーして対応できます。北朝鮮の不審船が入った時にそういうことが行われたことはご承知のとおりです。
他方において、海を渡って陸に上がってきた場合にどうするかというと、ここからは海上自衛隊でも海上保安庁でもなく、警察にその対応が任されます。ただし、警察とは言っても警察が持っている兵器体系では、ミサイルとか、ロケットに対応できないと明らかになった場合、自衛隊が出ていくことになりますが、そのためには、防衛出動か治安出動が下令されないとダメなので、国会承認が必要です。我が国は戦後、防衛出動と治安出動が下令されたことは一回もありません。他方、そのような場合でなく、原発の周辺に自衛隊が出て、常時警戒監視をやったり、情報収集したりする。つまり駐屯地から自衛隊を外に出すという法的権限は、今日我が国にはありません。一度防衛庁がこれを領域警備法という形で、法律を作ろうとしたのですが、結局今日でも法律ができていません。周辺事態法だとか、有事法制というのは、周辺で紛争が起きた場合とか、有事が起きた場合の話です。平時に誰かしらがわからないところが乗り込んで来て、原発を攻撃しそうだ、あるいは1発ロケットが飛んできたといった場合、しかも警察で対応できない時に、自衛隊を出す法律上の枠組みがないということが第一の問題です。もちろん、これは法律だけの問題ではなく、日本は役所が縦割りになっているので、海上保安庁、海上自衛隊、警察、陸上自衛隊と4つの組織を効果的に、例えば佐賀県だったら、佐賀県知事の一括した統制の下で運営できるかという問題があって、これは法律上の問題ではありません。すなわち、この原発に対する攻撃を効果的に事前に防ぐという方法は、相当法体系と国内の体制をまだまだ整備していかないといけないということではないかと思います。
実際に攻撃を受けた場合にどうなるかというと、現在のロケットとかミサイルで、現在の非常に堅固に守られた構造物である原発が、直ちにミサイルやロケットで破壊されるとは考えにくい。また、そのような攻撃に対して破壊を防ぐための十分な施設でできているということになりますので。しかし、安全というのは万全ではなく、安全に絶対はありませんので、もし安全で100%守れるのなら、何の警備もいらないということになります。そうではないと思います。我々は外から来るもの、あるいは中からこれに呼応するもの、いろいろな種類のリスクに対応しないといけないのですが、残念ながらまだ十分な法体系と国家の体制が出来ていないという問題を提起し、時間が延びましたけど、プレゼンテーションを終わります。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。お待たせしました。続いて、山内さんどうぞ。
【神戸大学海事科学部 山内助教授】
皆さんこんにちは。神戸大学 海事科学部の山内と申します。私は経歴から言うと、17、18年くらい前まで大阪大学の原子力工学科というところで学生院生をしておりまして、その後、神戸商船大学という大学に職を得て、神戸大学との統合の後、海事科学部の教員になっています。学生の頃は原子炉材料の勉強もしたのですけど、今日は佐賀県の方に呼んでいただいて本当にありがとうございます。私が皆さんの前に、皆さんのためにお話できることがあるとすると、専門家というよりも、やはり95年の阪神の震災を経験したものとして、一生活者として発表をさせてもらいたいというふうに思います。
それは、強く思いましたのは、契機となりましたのは、今年3月の地震、こちらの方であった地震と、その後、今回この討論会に呼ばれた時に、玄海原発の設置地震、許可申請書を少し見ました。それを見て、やはり地震の問題を提起しておきたいと考えまして、今日は地震の問題を提起させていただきたいと思います。
結論を先に申しますと、私の考えでは、プルサーマルの議論をする前に、原発耐震審査指針の見直し、あるいはこれが済むまではプルサーマルに対する判断は待ってもいいというのが私の考えです〔資料6−1:PDF126KB〕。
玄海原発は、私たち関西に住む者が抱えている、若狭湾にある原発に比べると比較的新しいようなので、ここにあります老朽化という意味では、比較的新しいということになろうかと思いますけれども、やはり若狭と同じように、原発の文明がこれまで経験した事ないような地震の活動期に進められようとしている計画であるということを見ないといけないと思います。それが実際に玄海原発を考える場合には、どういう時期に、どういうタイミングで、炉心にそういった、これまで経験の無い燃料が放り込まれようとしているのかというところを見る必要があるというふうに考えるからです。
これが3月20日の新聞。これが神戸の方で報道された模様なんですが、これで私が注目すべきものとしては、未知であった断層、これまでそこに断層があると思われてなかった所、そこでマグニチュード7の地震が発生したということです〔資料6−2:PDF135KB〕。私たちが経験したのが7.2でしたから、ほぼそれに等しいような地震が発生したということです。それを見ますと、ここの警固断層系とありますけど、それの延長線上にあるということですね〔資料6−3:PDF126〕。玄海原発の古い方の設置申請書を見ると、この警固断層系が載っていないんですね。91年の日本の活断層にはようやくこれが載るようになりまして、その後に見つかったということです。
玄海原発の方を見ると、原発の基準となっている地震強度には、これは想定するものなんですけど、最強地震というものと、限界地震というものがあります。最強地震は過去の経験を生かそうということで、どうも1700年くらいに壱岐のあたりで大きな地震があったと。それがマグニチュード7ぐらいだっただろうと、そういう記録が残っています。それを基にしてこのS1地震というものが設定されております。
もう一つは、更に大きな7.5というものと、直下地震として6.5というものが出ております。なぜ6.5なのかというと、現在の審査指針に6.5と書いてあるんですね。6.5よりも大きな地震があれば、そこは過去にも地震があったはずだから、活断層もあるだろうということで6.5にしたということを、私自身も国の官僚の方々から何度か聞かせていただきました。
ところが、実際に活断層のなかった所で7.0が現に起こってしまったわけですから、安全性を確保しようと考えるのであれば、直下地震として6.5ではなくて、少なくとも7.0を考えるべきではないかというふうに考えます。
その後、今年の8月になりまして、これは非常に驚くべき地震が起こりました〔資料6−4:PDF126KB〕。宮城沖の地震。これの最大の特徴が、地震の揺れが、原発のサイト、女川原発ですけど、そこで観測されたということなんですね。女川原発は3基とも自動停止をしまして、一昨日ですか、2号機は動かしてもいいんじゃないかという保安院の判断が出たというふうに、報道を通じて聞いております。ですけど、ここで起こったことは非常に大きな問題をはらんでいます。つまり設計用に考えた地震があるんですけど、それは距離にして48キロ、規模にして7.4。その時に大体 180ガルぐらい。ガルというのは加速度の単位ですけれども、これぐらいの揺れになるだろうということを想定しておったんですね。
ところが、実際には、もっと遠くて、更に小さい地震であったにもかかわらず、もっと大きな地震を経験してしまった〔資料6−5:PDF117KB〕。それが原発のサイトで計測されてしまった。これが非常に大きな問題になりまして、まだ議論は続いておるということです。問題は、小さくて遠い地震なのに揺れが予想を上回った。これまで非常に大きな権威を持っておりました、大崎の手法という計算手法が使われているんですけども、それを超えてしまったというところです。
記録値を表す時に、こちらが速度で、ちょっとこれ複雑な形になっておりますけれども、建物の周期によって揺れの大きさがどの程度であったのかということ〔資料6−6:PDF101KB〕。この波線になっているものが実測値です。大崎の手法という現在の審査指針で使われている方法を見ると、それより小さい地震を想定してしまうんですね。これが非常に大きな問題になっていると考えます。
少なくとも現在の耐震設計審査指針の見直しが完了するまでは、玄海でのプルサーマルは待ってもらってもいいんじゃないか、待つべきじゃないか、というのが私の意見です〔資料6−7:PDF137KB〕。
少しだけ経験を述べさせてもらうのですけど、阪神大震災、非常に寒い日に起こったこともあるんですけど、逆に良かったことは、救援物資でおそらく皆さんからもいただいたものは、外に置いておいても腐らなかった。夏だったら大変なことになったんです。非常に大事なのは、何か大きなことが起こった時に、そこに付加的な災害ですね、例えば地震の後に大雪が降るとか、地震の後に豪雨が来るとか、そういうことになると被災している地域は非常に大変なことになる。ですから、被災している所に決して放射能を降らすような、あるいは少しでもいいから、少しであってもそういうことは起こってはならないわけであって、実際の地震によって、これだけ過去の審査地震が揺らいでいます。ですからそれの決着がつくまで、佐賀県としては待ってもいいんじゃないかというふうに考えます。以上です。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。6人のパネリストの皆さんそれぞれのご専門、あるいは一番関心を持っていらっしゃるポイントについて、ご発言をいただいたわけですが、それぞれお考えが全く違う部分が多々ありますけれど、今日は「安全性」について議論を深めたいという趣旨でございますので、まずはこの原子炉の安全性について、もう少し各パネリストのご意見を伺ってみたいと思うんですが、先日行われました安全性と必要性に関する国のシンポジウムの際も、会場からもたくさんの質問が出されたわけですが、その中に安全性に関するご質問というのは、大変多くてですね、一つは、海外でこのプルサーマル、MOX燃料使用の実績があると言っているけれども、その海外の実績と、実際に今度玄海3号機で行われようとしているところには違いがあるんではないかと。それが安全性の問題につながるんじゃないかというご指摘がありました。それはプルトニウムの富化度という言い方でされております。それから装荷量というところでもご指摘をされているんですけども、このあたり、まずは原子炉の安全性に関してご意見がございましたら、お伺いしたいと思いますが。それでは大橋さんどうぞ。
【東京大学大学院 大橋教授】
今、ご紹介があったようにプルトニウムの富化度ですとか、燃焼度ですとか、炉心にプルトニウムをどれだけ装荷するのかということで、これまでの実績と数字を細かく比べたり、ここがないじゃないかと、そういう議論があったように伺っています。
これについては、殆どについて、例えば原子炉の出力ですとか、燃焼度ですとか、炉心の装荷割合については、ヨーロッパで、各国で実績が出ております。玄海で検討されているのは、その範囲内に収まっています。ただその収まっているからいいとか、ちょっと出ているからいいという判断をしているのではなくて、我々がそういうことを考えるベースとなっている基本的なデータと、そういうことを設計して、解析して、評価するやり方にどれぐらい我々は技術的な信頼をもって、根拠としているのかということに基づいています。
例えば、プルトニウムの富化度については、玄海で用いる値というのは、フランスなんかの値なんかよりも上回っています。それがじゃ上回っているからダメかというと、そんなことはありません。我々はプルトニウムの富化度で言えば、先ほど申し上げたように、高速増殖炉の30%だとか、あまりいい例ではありませんけれども、原子爆弾の性能だとかも、殆ど正確に予測して解析することができます。臨界実験によって、冷温停止、冷温停止というのは、もっとも反応度が高い所ですけれども、核分裂が起きやすい状態で実験をして、これはプルトニウム富化度の14.4%というところまでやっていますけれども、その中で、核定数とか、反応度係数というのを測定しまして、それから原子炉運転特性だとか、過渡変化の計算に用いるわけです。そこから先は、普通の原子炉で何回も実績の出ている計算ですから、我々の根拠というのは、そのことによって揺らぐ事はないということで、全く高い信頼性で、今の玄海。又は言い換えれば、出光先生がご紹介された、3分の1MOX報告書の検討の範囲内というのは、科学技術的な根拠はあるものだと思います。
【中村コーディネータ】
小出さん、さらに加えて、先ほど安全余裕、危険性、危険度の増加というご指摘がありましたけれど、例えば、制御棒の効きが悪くなるとか、融点が下がるとか、いくつかプルトニウムなるがゆえの特性が出てきて、それが安全性の問題につながるじゃないかというご指摘があろうかと思うんですけど、いかがですか。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
それはもちろんあるわけですね。スクリーンに出せるんでしょうか。ラインは繋がっているんですよね。
【九州大学大学院 出光教授】
探している間にちょっと私の方から、先ほど融点が下がるので、スリーマイルアイランドの時のような事故が起こるとたくさん溶けるというような話がありましたけれど、まず科学的に間違いの方から正しておきたいんですが、融点が下がるからたくさん溶けるということはありません。たくさん熱量を与えられますとたくさん溶けます。例えば、製氷機で氷を作って、氷は融点低いですから、0℃で溶けますけども、それよりも低い所に保存しておけば溶けないわけですね。熱量を加えると溶けます。ということで、融点が高い低いというのと、溶ける量の多さというのは関係がないですね。
【中村コーディネータ】
溶け易いということは言えるわけですね。
溶け易いというのは、その温度になった時に溶けるけども、その温度に到達するまでの熱量、その後、溶ける時に加えられる熱量で決まります。氷の場合も、1グラム80カロリー加えますと氷が水になりますけれども、80カロリーなければ1グラム溶けないわけですね。ということで、これは中学校の理科で習うと思いますので、もし分からなければ帰ってお子さんに聞いていただければ分かるかと思います。
【中村コーディネータ】
お待たせしました。小出さんどうぞ。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
こういう議論は山ほどできると思うんですけど、一つだけ、ちょうど融点の話が出ましたので、その話をしたいのですが、出ますでしょうか〔資料4−7:PDF82KB〕。
これは九州電力が新聞に答えた時の質問です。「MOX燃料はウラン燃料より低い温度で溶けて危険が増すと言われていますが、大丈夫ですか」という質問。それに対して、「ウランにプルトニウムを混ぜると、溶融点は、混ぜたプルトニウムの量によって低くなります。従って、玄海3号機で使用するMOX燃料ペレットの場合、溶融点はウラン燃料よりも70℃低い約2,720℃となります」と。なかなか正直だなと。先ほどから出光さんもおっしゃっておられるとおりです。
確かに今まで使っていたウラン燃料に比べて溶け易くなるというのは確実です〔資料4−8:PDF111KB〕。そうなった時にどうなるかというと、これが回答なんですね〔資料4−9:PDF98KB〕。「MOX燃料ペレットの溶融点は約2,720℃ですが、出力が異常に上昇する場合でもペレットの最高温度は約2,250℃までしか上がらないため、MOX燃料のペレットは溶けることはありません」と。これが九州電力の答えだし、今の出光さんの答えでもあるし、大橋さんの答えでもあるわけです。
ただし、こういう考え方というのは、私はダメだと思っているのです。つまり、技術というものは、一歩一歩の蓄積で、もちろん少しずつは進歩するけれども、常に落とし穴もあるわけです。間違えてしまうこともあるわけだし、想定していることに関しては対応できるけれども、想定していなかったことが起これば対応できないというのが技術なのです。だからこそ安全余裕というものが必要なのだし、安全余裕はなるべく大きく取っておくというのが原子力のようなものを相手にする時の鉄則であるわけです。
その安全余裕というのを一つずつこういう形で、融点のこともそうですし、富化度のこともそうですけど、一つずつ、一つずつ、安全余裕を削っていってしまっているという、そのことが私は問題だと、先ほども訴えさせていただいたつもりです。
【中村コーディネータ】
という小出さんのご指摘ですが、大橋さんどうぞ。
【東京大学大学院 大橋教授】
これはもう安全余裕を完全に間違えて理解しておられる方の考え方で、融点が下がるということがどういうプラントに問題を引き起こすかということから解析をして、何かが起こった時に、それが溶けるのか、溶けないのか、そういう議論をしているわけです。ですから、融点がちょっと変わったから危険になりますよ、怖いですよというような話は技術的には何の根拠もありません。
一つ、先ほど小山さんにお伺いしたい。大変申し訳ないんですけども、スリーマイル島の事故の時に炉心が溶けました。炉心が下に落ちまして、原子炉の下に溜まって、冷やされて固まったのがTMIの事故です。もちろん炉心がそのまま発熱を続ければ、原子炉の中から溶けて下に落ちたというのは考えられなくはないです。小山さんの資料の中に落ちたら水蒸気爆発が起こるかもと書いてありました。私は水蒸気爆発の専門家です。更田さんもそうですけど、我々専門家の間ではそんなことは夢にも考えられていないんですけども、もし、TMIで炉心が下に落ちて水と混ざったら水蒸気爆発が起こるかもしれないというのはどういうふうに判断されたんですか。
こうやってお聞きしているのは、こういう話をこういう場所でいい加減な根拠でされると、そうすると反対派の方がいやTMIは水蒸気爆発が起きたんだろうというようなことを引用されるわけですね。水蒸気爆発が起こると、今度は格納容器が壊れたんじゃないかというふうに拡大していくんですけども、もとのところは、どういうお考えで、どなたからお聞きになって、どういう判断で「TMIでもし燃料が溶けて下に落ちると水蒸気爆発が起こるかもしれない」と書かれたんでしょうか。
【中村コーディネータ】
小山さんどうぞ。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
何か資料に基づいて話したのではありません。
【東京大学大学院 大橋教授】
そうすると、こういう公の場で話をされるには不適切ではありませんでしょうか。技術的な議論をしている時にですね、何の根拠もないお話を「かも」という言葉をつければ許されるという類の内容ではないように思うんですけど。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
じゃ、水蒸気爆発は起きないという証明はできるんですか。
【東京大学大学院 大橋教授】
そういうレトリックな話をしているんじゃないですよ。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
できるんですかと聞いているんですよ。
条件によると思うんですが・・・。
スリーマイル島の場合の話をされているのですか。
【東京大学大学院 大橋教授】
はい。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
それは、ちょっと私はわかりません。
【東京大学大学院 大橋教授】
分からなければ書くべきではないんではないでしょうか。ここで書かれたことがまた二次的、三次的に引用されて、起こるかもしれない、いや起きる、いや格納容器が壊れると、そういうふうに必ずなっていくような構造を持っているように見受けられたから、大変恐縮だったんですが、お伺いした次第です。
【中村コーディネータ】
ご指摘は結構です。小出さんご発言あるそうです。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
スリーマイル島の場合には、原子炉の半分が溶けました。圧力容器の底に沈んでいた段階でようやく事故が収束できたということで、圧力容器は幸いに壊れなかったし、格納容器も壊れませんでした。それは一つの事故のシーケンスです。
ただし、そういうスリーマイルの事故が起きるまでは、ああゆう事故は決して起きないと日本の人も言っていたし、世界の原子力を進める人たちが言っていたのです。ところが事故はやはり起きてしまったのです。その時に、起きた後もですね、日本の原子力委員会、いや原子力安全委員会は、原子炉は溶けていないと言っていました。私はその時ちょうど、伊方の裁判ということで、原告側の住民側の証人ということで出ていまして、「炉心が溶けた」と私は証言しましたけれども、その時に、内田秀雄という大変偉い学者さんが出てきて、「原子炉は溶けていない」と発言されました。しかし、その後5年経って、ようやく原子炉の中をのぞけるようになって、初めて原子炉が溶けていたんだということがわかりました。その時に、会社の経営者の人は何と言ったかといいますと、「もし、あの事故の進行過程で原子炉が溶けていたということが分かっていたならば、運転員は慌てて逃げてしまっていただろう」というふうに言ったんです。それ程事故というのは、どういうふうに進展するかがわからない、そういうものなんです。
ですから、たまたまスリーマイル島の時には水蒸気爆発は起きませんでした。だから、じゃ軽水炉というところで水蒸気爆発が起きないかというと、そうではないのです。軽水炉という今の玄海原子力発電所の場合でも、水蒸気爆発が起きる、あるいは水素爆発が起きるということは想定もできるんです。きちんと技術的に想定もできると。それをどこまで考えて、どういう事故評価をするかというとこで、国はある程度以上のことは考えないという、そういう姿勢を現在取っているという、そういうことです。
プルサーマルの安全性ですので、あまり拡散しないように期待したいと思うのですが、ただ、限られた時間なので、後でおそらく会場の方からもこの件については再質問もあろうかと思いますので、その時にまたパネリストにはご発言いただきますけれども、プルサーマルの安全性ということで、今、技術的なことを伺ったんですけども、もう一つ、私も実際に今までのシンポジウムなどに参加させていただいて、お聞きした中で、万が一事故が起きた時の影響範囲の問題、それから平常時、通常運転時でも、例えばそこで働く人たちの被爆量が増えるんじゃないかとか、平常時でもそうですね。万が一事故が起きた時には被害が拡大すると。一部大橋さんが先ほどご指摘になりましたけれど、この辺の不安というのは、やはり佐賀県、あるいは隣接の長崎県の方、さらには福岡県の方も含めていいんですけれども、やはり住民の皆さんの不安として指摘をされているんですよね。
次に、この特に事故時の被害の想定、被害の拡大、その危険性、このあたりについて、皆さんのご意見をお伺いしたいと思うんですが。じゃ、口火は大橋さんで。
【東京大学大学院 大橋教授】
私のパソコンを写していただけませんでしょうか。これが事故範囲の話を少し詳しく調べてまとめてきたものです〔資料3−7:PDF99KB〕。なかなか資料がなかったんですけれども、先ほど申し上げましたように、原子力資料情報室という所のホームページに、志賀、これは石川県の方ですけども、志賀原発2号炉における事故時の影響予測、プルサーマルの場合とウラン燃料の場合という比較がありました。おそらくこれと同じやり方で、同じやり方をして、距離で2倍、面積で4倍という主張がされているんだと思います。
ラスムッセン報告というのがあります〔資料3−8:PDF104KB〕。ラスムッセン報告というのは、1975年に発表されました格納容器破損のシナリオというのが含まれている報告です。この格納容器破損のシナリオを使って、プルトニウムの放出については、チェルノブイリで放出された値プラスアルファという4%という値を想定して、他のアクチニド元素もどんどん放出されるという仮定を置いて、半数死亡の距離を計算すると、ウラン燃料で45キロ、MOX燃料で83キロと約2倍になりますから、これをもってして距離で2倍、面積で4倍の評価になっているかと思います。
ラスムッセン報告というのは、原子力のリスクを定量的に評価したもので、1975年に発表されました。それはシナリオをそれぞれ考えまして、あるシナリオについて確率、それからその影響を評価して、確率を影響評価して、全部足してリスクを求めたものです。一番顕著な結果は、当時原子力のリスクは、隕石に当たって、隕石が地球に落ちてくるリスクと同じだという評価をされまして、反対派の方からはおかしい、おかしいと評価されたものです。
これは、こういうことなんです。大隕石、例えば地球が壊れるような大隕石が落ちる確率というのは、地球が出来て40億年間一つも来ていないわけですから、極めて小さい確率です。ただ、地球の大きさのような隕石が当たれば、地球は全員死亡ということになります。中程度の隕石ですと、確率は中間だけど、影響も中間くらい。小隕石はおそらく、1年に何個か落ちてきている確率は大きいんだけれども、その影響というのは殆ど海へ落ちて、燃え尽きたりして微小であると。こういうのを足してリスクを求めるのがリスク評価です。
確率論的安全評価研究というのが、ラスムッセン報告の後始まりまして、想定するシナリオの詳細化だとか、確率の評価、機器の故障データベースを充実させる。放射線影響評価の高度化ということで、膨大な研究とデータの充実と手法の高度化が行われています。
これはお配りした資料につけてありますけども、レベル1PSA、PSAというのは、確率論的安全評価で炉心がどれくらいの頻度で損傷するかと。また次はレベル2というので、格納容器がどれくらいの頻度で破損して、公衆に放出されるか。それの影響はどうかというのはレベル3という評価でされています〔資料3−9:PDF66KB〕。
2倍4倍解析という原子力資料情報室の解析の問題点は、都合のいいシナリオだけとってきているわけです〔資料3−10:PDF96KB〕。例えば大隕石が落ちますよと。怖いですよ、地球は全員死んじゃいますよと。この確率論的安全評価というのは、確率を考慮してリスクを求めるためのもので、シナリオだけとってきてもしょうがないわけです。30年前の古いデータです。今は格納容器破損が起きる確率は極めて小さい。1億年に1回というような評価がされているのに、それが起きると考えたらというような評価がされています。だからチェルノブイリのケースとは全然違います。チェルノブイリのようなことが起こるとは、原子力の専門家は誰も思っていないわけです。それは起こるかもしれない。危険ですよと言って、大きく異なるデータを意図的に持ってくると。
それが先ほど小山さんにご質問したことと関係するんですけど、二次的に引用されるわけです。ホームページを調べてみると、何か根拠は分からないけれども、プルトニウムだから距離2倍、被害4倍に広がるとかですね、これまでの倍は逃げないといけない。面積は、汚染面積は4倍にもなると言われていると。これは全く根拠のない。これは我々から言えば捏造です。原子力資料情報室というのは、どういうものか知りませんけれど、技術レベルが極めて劣るのか、こういうことを日常的にやっておられるか、どちらかだと思います。そういうデータを出す事によって、どんどんどんどん二次的に言って、それにマスメディアがそれに飛びつけば、距離が2倍、被害が4倍、何十万人が死にます。何兆円損しますというふうに広がっているのが、こういう解析の一番大きい問題点だと思います。
【中村コーディネータ】
反論どうぞ。はい、じゃ、小出さん。スクリーンの方に小出さんの資料を出していただけますか。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
私、大橋さんの話を聞いているとすごい技術信仰論者なんだなというふうに思います。何でも人間が思っているとおりに動くというふうに、どうも大橋さんは思われているようなんですけど、そうではないんですね。
残念ながら原子力の世界でも、これまでたびたび色んな事故が起きてきたんです。決して起きないと言われているような事故も山ほど起きてきました。例えば皆さんご記憶かもしれませんが、1999年の9月30日に東海村の核燃料加工工場で臨界事故というのが起きました。そんな事故は私たち原子力関係者は決して起きないと思っていました。もう、20年前に根絶された事故だというふうに思っていまして、まさかと思ったわけですけれども、でもやはり事故が起きたんです。二人の労働者が大変悲惨な死を遂げました。それを受けて今見ていただいている原子力安全白書というのが2000年に出まして、こう書いてあります〔資料4−10:PDF151KB〕。「多くの原子力関係者が原子力は絶対に安全などという考えを実際には有していないにも関わらず、こうした誤った安全神話がなぜ作られたのだろうか。その理由としては以下のような要因が考えられる。他の分野に比べて高い安全性を求める設計への過剰な信頼。長期間に渡り人命に関わる事故が発生しなかった安全の実績に対する過信。過去の事故経験の風化。原子力施設立地促進のためのPA(パブリックアクセプタンス)。公衆による需要活動の分かり易さの追求。絶対的安全への願望。」というんです。こんなことでやっていてはダメだということなんです。
実際に国がどうやって安全審査をするかというと、こういうことになっています〔資料4−11:PDF96KB〕。まず「重大事故」というのを考えるといっています。これは技術的に考えて起こる事故です。こんなことなら起こるだろうということを考える。そのうえに「仮想事故」というのを考えて、念には念を入れて起こらないような事故まで考えているからいいだろうというのです。それでも、どちらの事故でも格納容器は壊れないということになっています。今、大橋さんは格納容器が壊れる確率なんてものすごく少ないんだというふうな発言をされたわけですけれども、国は必ずこうなんです。格納容器は壊れない。じゃあ、格納容器が壊れるような事故はどういうふうに呼ぶのかというと、「想定不適当事故」だと言うんです。考えちゃいかん。そんなことはないのです。どんな事故だって考えて、そういう事故がどれだけの可能性で起きるのかということと含めて皆さんに説明する責任が、国に実はあるのです。それを未だに一度もやってないという大変不思議な国が日本なんです。ラスムッセン報告というのは1975年にやられたと先ほど大橋さんがおっしゃった通り、その中でやった仕事は2つです。1つは、小さい事故から大きい事故までとにかく様々な事故を考えて被害を全てに関して明らかにするということを1つやりました。もう1つのことは、それぞれの事故がどういう確率で起きるかということを確率計算をする。ですから、やっていることは2つなんです。事故が起きた時の被害を計算する仕事と、その事故の起こりやすさの確率を計算するという、その2つの仕事をしていました。それをラスムッセン報告という形で公表したのですけれども、その報告は実は1979年の1月に撤回されてしまいました。その研究をした米国の原子力規制委員会自身が撤回しました。なぜかというと、原発の大事故は先ほど大橋さんが言ったみたいに隕石で被害を受けるのと同じぐらいの危険なんだというようなことを米国の電力会社がずっと使っていたわけですけれども、そういう言い方は正しくないと、そんなことを公衆に言ってはいけないんだと、今現在確率の計算というのは開発の途上なんであってよく分からないと。そういう絶対値を使ってはいけないということで、実は撤回したんです。その直後の3月にスリーマイル島の事故が起きるということになりました。それ以降、米国ではしきりにこの確率論的安全評価という研究はなされてきました。たくさんの研究がなされています。報告も出されています。大きな事故が起こった場合には、ほんとに大きな事故が起こった場合にはどういう結果が出るということも、たびたびそれが示されています。米国では示されている。
しかし、日本ではそういうこと絶対やらないと、国としては事故は絶対起きないんだと、想定不適当なんだと言って無視してしまうという、そういう姿勢を貫いてきたという、大変私は不思議な国だと思っています。
【中村コーディネータ】
はい、ありがとうございました。それで、小出さんの本質論は十分に理解できるところなんですが、大橋さん、その同じところで議論をするんだと、ちょっと打ち切りたいんですけど、本来の所へ戻したいので、逆に小山さんの方から手が上がりましたんで、小山さんのご発言を優先します。小山さんどうぞ。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
これは、先ほど大橋さんにだいぶ突っ込まれましたけれども、ここでは溶けないと言っているわけですよね。しかし、実際にはスリーマイルでは溶けたというのが事実として非常に重要な点だと思います。
それと、あと、さっきからちょっと問題になっています富化度の話ですが、これは、国の資料ですけれども、集合体の平均のプルトニウム含有率と呼ばれていますが、上段のこういうところが、プルトニウムの中には核分裂するものとしないものとありますけれども、全部合わせたものが上の段、核分裂するものだけが下の段のパーセンテージです。核分裂するものでいいますと4.5とか4.9とかこういう数字ですけれども、玄海の場合は6.1という値をとるということですね〔資料5−12:PDF99KB〕。それから、上の段で見ても限界は9.0で、これは諸外国のこういうところにはどれも無いという、それを高い富化度のものがやられるということです。そうしますと、富化度が高くなりますと、プルトニウムスポットという、こういう塊が、富化度が高いほどたくさんゴロゴロと川原の石のように並んでいるということが分かります〔資料5−13:PDF100KB〕。ですから、富化度が高いということは、こういう状態のMOX燃料を使うということになります。それでさきほど、出光さんでしたが、千百ミクロンのプルトニウムスポットを使った実験をやっても壊れなかったと言われましたが、何が壊れなかったのかはっきりおっしゃいませんでした。
この実験は、千百ミクロン、1.1ミリですけど、非常に大きなスポットですが、これをペレットの表面のところに貼り付けております〔資料5−14:PDF60KB〕。上から輪切りにすると、こういう所に貼り付けております。だけど、今問題になっているのはスポットがありますと、しかも1個だけです。あんなたくさんゴロゴロとあるような実験ではありません。こういう所にいっぱいプルトニウムスポットが中の方にありますと、そこからガス状のものが出てくると。そのガスが、中から燃料を膨張させようとして、壊そうとする力が働くんですが、これは、外に貼り付けていますから、そういう実験をしてるんではないということが分かります。これの目的は、この外の所に被覆管があるんですけども、この、ここから出る熱によって被覆管がどういう影響を受けるかという、それだけに限ってやられた実験であります。ですから、今問題になっているようなガスが出てくることによって燃料が壊れるかどうかということを調べた実験ではないと。だから、壊れなかったというのは当たり前の話であります。
それから、ガスがMOX燃料とウラン燃料でどれぐらい違うかという、これはブランパンという人がやった2001年の論文に書かれているんですが、これ、横軸が燃焼度と言いまして、どれぐらい中で燃料を燃やしたかという、そういうものです〔資料5−15:PDF61KB〕。燃焼度が高くなりますとこのピンクのようにMOX燃料はガスが、ペレットの中からガスが出てくる割合が高いということです。ウランはこういう青い所で全然違う振る舞いをしているということが分かります〔資料5−16:PDF121KB〕。ですから、ガスが出てくるということはどういうことかと言いますと、本当はあそこに更田さんという専門家がいらっしゃるので、私は更田さんからだいぶ書かれたのを読み、だいぶ勉強させていただいたんですが、ペレットの中のこういう大きな空洞、ポアと呼ばれる空洞が出来て、こういう中にガスが溜まるんです〔資料5−17:PDF84KB〕。これは更田さんの所から、パンフレットから取らせていただいた図ですけれども、燃料というのはこういう粒々で出来ておりまして、粒と粒の間の所に気体が、ガスが溜まって、そして、これで燃料をバラバラにしようとする力が働くということです〔資料5−18:PDF125KB〕。もしも、制御棒が飛び出すような事故が起こりますと、模擬実験でありますと、ほんとにバラバラになって燃料が冷却水中に飛び出すという、こういうことが起こると。
それでですね、実は、1つ、安全解析というのは、安全という結論に合わせるように解析するということがこれまで行われているという、これちょっと事実として指摘しておきたいと思います〔資料5−19:PDF64KB〕。それは、蒸気発生器というものがあります。この蒸気発生器という所で1次系の熱を2次系に伝える役割をする細い管がいっぱいあります。こういう細い管が一台の蒸気発生器に3,400本あります〔資料5−20:PDF67KB〕。私は、関西電力の高浜2号機というのが、これが実にこの細い管の62%が何らかの損傷を起こして穴が空いたりヒビがはいったりしました。62%ですよ、それにも関わらず安全性は新品と全く変わらないんだという、こういう解析が、損傷が起こるたびに解析を変えていって、62%も損傷しているのに安全性は全く変わらないという結論を出しておりました。それで、1990年代の初め頃に蒸気発生器を持っている高浜2号機を止めるようにという訴訟を起こしました。そういうことに対して、安全解析というのはそういうようなことが出来るということなんですね。
それで、今これは、政府の方が制御棒が飛び出すと飛び出した所の核分裂が盛んに起こります。中性子がバッと増えまして、中性子が増えた、これは政府の図ですけども、増えて、急に中性子が増えております〔資料5−21:PDF90KB〕。そうすると、そこで核分裂が盛んに起こるから、そこで熱がたくさん出てきます。それも一緒に合わせた図がこれでありますが、これは九州電力が設置変更許可申請書で出してるもので、赤い方が今回のプルサーマルの場合です〔資料5−22:PDF79KB〕。青い方が前回の平成11年に出したものです。さっきの中性子の振る舞いについては、私これをものさしで計って、1つの図に合わせたんですけれども、さっきの政府の図と基本的に同じ振る舞いをしております。こっちがその時に出る燃料の熱です。前はこういう高い熱が起こるよという、こういう解析になっておりました。ところが、今回のプルサーマルに関する解析の値としては、こんな所に、高い所に下がってしまっています。この値はここに下がってしまいました。これは、関西電力も同じことをやっていますので、関西電力に確かめていますけども、これは、対象がウラン燃料からプルサーマルに変わったからではないんだと。解析の方法を変えたから下がりましたという、対象は同じなんですけど、熱が出ないような解析に変えたんです。こんなことが出来るんですよ。なぜ、そういうふうに変えたかと言いますと、実は、前は燃料はなかなか破損しないと思われておりました。ところが、そこにおられる更田さんなんかがやられた原研の実験によりまして、意外ともろく燃料は壊れるということが分かりました。ここの所に線を引いてますが、これが、この線を越えると燃料が壊れるよという、前はこれはもっと高かったのが、新しい実験の知見によって下がりました。そうすると、前のままの青い線のままではほとんど燃料が壊れてしまいます。だから、壊れないようにするために解析を変えて熱が出ないようにしたんですよ、こんなふうに。こんなことをやられてるんです。こういうことが安全解析という名のもとにやられてるんです。
ですから、こういう解析が、いくらでも色んな理屈はつけられると思いますが、この壊れ易さの判断が変わったために、それに合わせるように解析を変えて安全にしてしまうという、こういうことが現にやられているということです。以上です。
プルトニウムスポットの影響というご指摘もありましたので、このあたりを是非議論していただきたいんですが。
【九州大学大学院 出光教授】
小山さんの質問のいくつかについてお答えしようと思いますが。まず、小山さんもご指摘ありましたように、プルトニウムスポットの実験でガスが出ないのは当たり前だという話ですけど、指摘というか、違う目的の実験ですからガス放出の話をしているわけではないんで、違う目的の実験を見てそれが違うというのは何か変なので、更田先生もいらっしゃいますが、かいつまんでスポットがあった時の実験結果について説明させていただきます。
スライドの方を出していただけますか〔資料2−11:PDF61KB〕。小さくてすいません。NSRRという原子力研究所が持っている、今は組織が変わりましたが、そちらの実験施設でプルトニウムスポットを入れたもの、入れてないものの実験を行いました。小さくて見難いので声で大きく言いますと、その時2種類の実験をやっております。フェイズ1、フェイズ2と2種類の実験をやって、フェイズ1がMOX燃料のものとウラン燃料の破壊の仕方の違いを見る試験です〔資料2−12:PDF84KB〕。プルトニウム含有率で6.3ウエイトパーセント、重さ比で6.3。プルトニウム富化度といいますか、使ったプルトニウムの核分裂性のものの割合が74%。ですから、6.3に後で7.4%かけていただければ富化度になるかと思います。約4%強ということになりますが、その燃料を入れて壊れるまで実験をやっています。壊れる所と壊れない所の差を見るという実験をやっております。
それから、フェイズ2では、これはふげん燃料タイプというものでMOXをベースにしまして、そこにプルトニウムスポットを直径400ミクロン、0.4ミリのものと1,100ミクロン、1.1ミリのもの、これを一番厳しい条件で被覆管にくっつけた状態で壊れるか壊れないか、そういう実験をやっております。ここらへんは飛ばしますが、先ほど言いました、どれだけの熱量を一気に加えたら燃料は壊れるか壊れないか、そういう実験をやっておりまして、いろんなパラメータをふって実験をやっております。フェイズ2についても同じですが。これは結果で、壊れているものもあります〔資料2−13:PDF77KB〕。ただこれ、フェイズ1の結果ですが、2本目は壊れておりますが、これは、輸送中に壊れたんであろうと思われています。一応、ただ破損にはなっております。この時加えた熱量が267カロリー、1グラムあたり267カロリーというのを加えると壊れると〔資料2−14:PDF80KB〕。260 とか255、このあたりだと壊れてない。試験結果、おおまとめにしてあります。そうしますと、破損のしきい熱量というのが出されております。標準ウラン燃料の場合、つまりプルトニウムが入ってない状態ですと268〜280カロリー、1グラムあたりこれだけの範囲の所以上だと破損が起きます。ただし、破損といっても先ほど言われたように粉々に粉砕されるというのではなくて、脆くなったり穴が空いたりするかもしれないと。それから、MOX燃料。先ほどプルトニウム6%強入ったものについては、やはり280〜286、このぐらい加えると壊れるということで、これ見ますと、ウランが入っているものとプルトニウムが入っているもので差が無いというのが分かります。それから、その下、ちょっと文字が間違ってすいません。MOX燃料のフェイズ2の方で粒子が入ってた場合ですね。その場合に、そのしきいの熱量が変わるか変わらないかというのを見たら、280カロリーぐらいを境界にして壊れる壊れないが変わるというのが分かります。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
すみません、これは新燃料ですか。
【九州大学大学院 出光教授】
はい。新燃料です。ということで、ですから。新燃料とそれでない場合の話はまた別なんですが、新燃料の場合、こういう所で壊れる、壊れないというのを試験しているということです。スポットがあろうが無かろうが、あるいはプルトニウムが入っていようが入っていまいが、どういう時に壊れるかというのはMOX燃料とウラン燃料では差が無い。こういう実験結果で、そういう結果を出しているということです。それから、
【中村コーディネータ】
そろそろまとめて下さい。時間がなくなりました。
【九州大学大学院 出光教授】
プルスポットについては特に入っている、入ってないということについては差は無いというふうに判断されております。ガス噴出についてまだ説明はしてないんですが、
【中村コーディネータ】
簡単に説明していただけますか。
【九州大学大学院 出光教授】
途中だけ出すと誤解をまねいて、よく誤解されるんで、どうしたらいいかな。FPガスの放出メカニズムというのは、先ほど図が出ておりましたけども、どういうモデルで計算しているという、先ほどと同じような図ですけれども、まずガスが出来ますと〔資料2−15:PDF97KB〕。粒内に出来まして、それが粒界に動いていきます。そこに溜まっていきます。そこに溜まっていったものが最後に繋がって放出が起きるという。これがガス放出のモデルになっております。あと、直接放出とういのがありまして、表面付近から直接出て行くガスもあります。これについては、いろんな燃焼度ですとか、あるいは出力、それについて計算を行いまして、計算結果と実際に実験をやってどれだけ出てきたかというのを見比べて、それが十分な精度で予測可能であるということを確認しております〔資料2−16:PDF65KB〕。先ほど出ましたブランパーの、多分このデータだとは思うんですが、こちらの黒い点がMOXでこちらの白い方がウラン燃料で、それでガスがたくさん出るという話を多分されてるんだと思います〔資料2−17:PDF80KB〕。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
私のは2001年です。これは古いほうですね。
【九州大学大学院 出光教授】
これは古い方ですか。この時もですね、見られて分かると思うんですけど、そこにちゃんと書いてあります。線出力、つまり、車で言えば、速かった時にはガンガン熱を出している時、そういう時にはガスはたくさん出ますよと、そういうことは出ておりました。MOXだから高いんではなくて、出力、つまり、その時にパワーを出したからガスがたくさん出たんですよとその論文にも書いてありますし、そのように評価されております。
これが最新のデータで2004年に出たものですが、さらに実験を続けられて出て〔資料2−18:PDF93KB〕。これは2001年のデータも含まれております。その時にもちゃんと書いてあって、これは更にそれの補足のデータが出ているんですが、燃焼度はもうこのあたりにきますと7万を超えるぐらいまでMOXでやっておりますが、それでも、失礼しました、6万を超えたあたりですね、このあたり。そこでも、放出率は上がってないんです。線出力を下げたところで運転すれば出ませんよというのは、ちゃんと実験で示されております。ということで終わります。
【中村コーディネータ】
先ほど私が質問した関連で、大橋さん以外はご発言が無かったんですが、それは事故時の影響範囲、影響拡大についてなんですが、なぜそれをお伺いしたかというと、今日は佐賀県の主催なんですけど、防災対策の問題、これは自治体の責任でありますよね。この防災対策の範囲をプルサーマルになったらもっと広げた方がいいんじゃないかというご指摘がありました。その関連で、実は事故時の影響範囲等について皆さんどうお考えですかということをお伺いしたんですけど。今、県としては発電所周辺10キロの範囲内の防災対策ということで、多分、それを今広げる必要は無いという判断だと思うんですけど、そのあたりも関連して、時間も最後になってきましたので、事故時の影響等についてのご意見を伺います。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
原子力発電所というものは、それ自体が危険な物だと私は思います。玄海原子力発電所、現在動いている物も危険な物だと思います。
本当に私たちが恐れているような事故が起きるとすれば、起きるかどうか私は分かりません。でももし起きたとすれば、事故の範囲、被害が出る範囲が10キロで収まるなんてことは到底ありません。もっともっと大きな範囲で被害が出ていくということになるだろうと思います。そしてその中で、プルトニウムを燃やすということになれば、その被害の範囲が拡大するということは当たり前のことです。なぜかというと、プルトニウムはウランに比べて数十万倍も毒性が高いからです。ですから、現在の玄海原子力発電所で事故が起きる。同じような事故がこれからこのMOXを使ってる玄海の3号炉で起きるとすれば被害は必ず拡大する。ですから、範囲も必ず拡大すると思わなければいけません。それが10キロでいいのか20キロでいいのかというような議論は私はしたくはありません。もっともっとはるかに広大な地域が汚染されるということがありうるということを覚悟しておいて下さいと、それだけはお伝えしたいと思います。
【中村コーディネータ】
山内さんは、この関連ではご発言ありませんか。
【神戸大学海事科学部 山内助教授】
事故の想定という場合には、ソースタームをどういうふうにとるのかというので非常に計算結果も変わってくると思うんですよね。ですから、それが私もNRCのレポートなんかを読むんですけど、決定版がなかなか出てこない。先ほど、蒸気爆発が起きないと言われたのか、それとも、蒸気爆発が起きない、起きても格納容器が壊れないというふうに言われたのかよく分からない大橋先生のお話だったんですけれども。
【東京大学大学院 大橋教授】
水蒸気爆発は起きない。
【神戸大学海事科学部 山内助教授】
水蒸気爆発は起きないですか。どれだけのものが出てきうるかですよね。そこの所については、私の考えでは説得的なソースタームなり、それは出されていない。ですから、最悪の場合を考えておかなければならないんじゃないかというふうには考えます。
【中村コーディネータ】
はい、ありがとうございました。小山さんどうぞ。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
これは、今の中に入っている放射能が取り出してから1年経った時にどれぐらい放射能が違うかということを、これは関西電力が計算したものを私たちはもらったものです〔資料5−23:PDF133KB〕。それで、ここに、ここの数値が並んでいますけれども、まとめますと、核分裂で生まれる放射能については、MOX燃料の方が1.1倍多いと。それから、長寿命の、ウランより重いプルトニウムとか、そういう非常に何千年という寿命を持った、長い寿命を持った放射能なんですけども、これが6.8倍多いということです。ですから、もし4分の1炉心でしますと、だいたいこの長寿命の元素が2.5倍、2倍ぐらいは多い。2.5倍ぐらい多いということになりまして、これが外に出るかどうかという議論はあるにしても、危険になるのは確かであります。
さっきの出光さんが言われたことですけど、このグラフを見せられました〔資料5−24:PDF56KB〕。これは2種類のモデルがあるんですが、FINEモデルというのとFPACモデルというのがありますが、ここで、この線がウランの場合の2.5倍ガスが出るという線です。そしてそれを、ここ、これ実は一、十、百、千という目盛りになっていますので非常に線のところに接近しているように見えますけど、これを普通の目盛りにこの部分を直してみますと、これに対して2倍ぐらいは違うんですね〔資料5−25:PDF58KB〕。目盛りを普通の目盛りにすると。ですから、ここで2.5倍ウランの、2.5倍出て、更に2倍ぐらい出るということですけど、5倍ぐらいのガスが出るということになります。こういうことはもちろん計算はされて、そういう対策はとられているのは事実なんですけど、これだけは指摘しておきたいと思います。以上です。
【中村コーディネータ】
はい、ありがとうございました。大橋さんどうぞ。
【東京大学大学院 大橋教授】
2つの点を指摘したいと思うんですけれども、事故の時どうなるかというのは想定したシナリオに全部依存します。全部壊れて、全部出て、全部が環境に放出されるとなればどんな結果でも出せます。それは、大隕石が落ちてきたらどうなるかという、そういう起きもしない確率についてやっているわけですね。皆さんは原子炉で事故が起きたら大変だと思っているかもしれませんけど、専門家になればなるほど、そんな格納容器が壊れるなんて思えないんですね。どういう現象で、何がなったら、どうなるんだと。それは反対派の方は、いや分からないでしょうと。水蒸気爆発が起こるわけがないと専門家はみんな言っていますし、僕もそう思うんですけれども、じゃあ、何で起きないと言えるんだと、そんな理屈になっていっちゃうわけです。ですから今、安全審査でやっているのは、技術的に考えられる限り、ここがこうなって、こうなって、ここが壊れてプルトニウムがこう出てきて、ここで止められて、それでもなおかつという仮定を設けた上で、更にそれよりも過大な放射能を放出された場合の前提を置いて計算をしているわけです。ここが一番難しい所ですけれども、我々はそういうのはよく分かります。被害範囲を想定するために、こういうことが起きると想定をして解析をするわけです。ところが一般の方はどうしても“いやそういうことが起きるんだ” と。また、反対派の方が“ほら見ろ、そういうことが起きるから、そういう想定をするんだ”というふうに、逆方向にとられるから、おそらく議論はかみ合わないんだと思います。
もう1つはプルトニウムの毒性です。プルトニウムの毒性というのは非常に誇張されてとらえられています。プルトニウムの毒性は、そのプルトニウムの健康被害を扱う専門家の方は社会的毒性というふうに呼んでいます。実際にはなんにも怖いことはありません。仮に大げさな話をして、プルトニウムをテロリストが取っていって貯水池に投げ込んだと。そこから水道が供給されていると。じゃあ何万人が死ぬかというと、そんなことはありません。1人も死なないというふうに言われています。プルトニウムは水にも溶けませんし、仮に体内に水として飲んで入ってもすぐに排出されてしまいますから、その小出さんが言っているような事が起きるのは、全く仮想的にプルトニウムのツブツブを1個1個取り出して、皆さんの肺を切開手術して、肺の奥深くの出てこない所に1つずつ埋め込んでいったらそれぐらい死にますよと、全く起きもしないような仮想について言っているわけです。そんな事をやっていったら皆さん自動車にも乗れないし、電車にも乗れない、何が起こるか分からないですよという話と全く同じです。
【中村コーディネータ】
それぐらいでよろしいです。小出さん短くどうぞ。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
毒物というのは、体への取り込み方でその毒性が変わります。例えば、口から食べる場合。食べたり飲んだりする場合、それから、呼吸で取り込む場合で全く違います。今、大橋さんがおっしゃったのは貯水池を汚す、あるいは飲んだって大丈夫だということをおっしゃって、口から取り込む方のことをおっしゃったわけだけども、プルトニウムの場合に怖いのは、鼻から呼吸で吸入する場合です。その毒性は、ものすごく恐ろしいものです。それを今、1つお見せしたいんですけど〔資料4−12:PDF95KB〕。世界にはプルトニウムの研究者が山ほどいます。原子力を支持している人もいますし、原子力に反対している人もいます。ここに、縦にいくつもそういう人達を並べていて、上の方が批判派、だんだんいって一番下が一番の推進派です。たばこを吸う人とたばこを吸わない人、それぞれに分けていっていまして、プルトニウムの239番という番号のついたプルトニウムについて数字が出ていますし、それから、原子炉の中で出来るプルトニウムについての数字もあります。これは、どういう数字を出しているかというと、何マイクログラムのプルトニウムを吸入したらば、肺がん線量というのは、肺がんになって死ぬかというのです。数字見ていただいたら分かると思いますけれども、たばこを特に吸う人というのはめちゃくちゃ危険で、0.0ナントカという、そういう数字です。マイクログラムというのは百万分の1なんです。ですから、手のひらに乗っけても感じない、こんなものが計れる天秤はほとんどの皆さんの家には無いし、大学にもほとんど無いというぐらいの、それぐらいのほんの少量でも、もし吸い込むようなことになれば肺がんで死んでしまうという、プルトニウム研究者が皆が合意している、そういう毒物なのです。ですから、貯水池に汚染して飲む場合とかいうのではなくて、事故の場合には原子力発電所から気体になったものが流れてくるのです。それを吸い込むことが危険なのです。
【東京大学大学院 大橋教授】
どうして気体になるんですか。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
事故の場合にはもちろん微粒子になるわけですし、ものすごい高温になっていますので、エアロゾルにもなって出てくるわけです。ですから、近傍で落ちるというのは本当です。しかし、でも、粒子になって、粒子あるいはエアロゾルになって飛んでくるという成分も必ずあります。
【東京大学大学院 大橋教授】
もう1つ聞きたいんですけど、そのプルトニウムで肺がんになって亡くなった方っていうのは歴史上いるんですか。そういう疫学的所見はあるんですか?
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
はい。マンハッタン計画の労働者をずっと追跡しているグループがあります。肺がんで死んでいる人達がいます。ただし、統計学的にそれが有意と言えるかどうかということの検証をずっと続けてきているという、そういう段階です。
【東京大学大学院 大橋教授】
今のところ有意だという結果が出てないと聞いていますけど。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
こういうものは大変難しいのです。学問は。
【中村コーディネータ】
分かります。それは。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
毒物の危険を証明する。統計学的に証明するということは大変難しくて、たくさんの人々の症例を長い年月に渡って追跡しながら証明しなければいけないんです。ですから、広島・長崎の原爆の人達の中からガンが出てくるということだって、何万人もの被爆者というのを何十年間も追跡してやっと分かるという、そういうものなんです。ですから、科学はこれからもその作業を続けますけれども、一歩一歩しか行かないということはご理解いただきたいと思います。
【中村コーディネータ】
はい、ありがとうございました。じゃあ、出光さん、短くお願いします。ちょっと、森本さんにお伺いしたいことが最後にあるもんですから。
【九州大学大学院 出光教授】
どんな少量のプルトニウムも危ないのかということに、私は異論がありまして、私、学生と一緒に毎年プルトニウム使った実験をやっておりまして、今の所ピンピンしております。先ほども数字が出ていましたけども、許容量でいきますと、1人あたり0.087マイクログラム〔資料2−19:PDF66KB〕。計れないといえば確かに計れないんですが。じゃあ、それが危険かという話でいきますと、今までの核実験とかでプルトニウムがたくさん放出されていて、長崎でも出ておりますが、1人あたりのプルトニウムの降下量でみますと100倍以上なんですね、許容値の。ただそれを体の中に取り込んでいるかというと、実際はそうじゃないし、チェルノブイリの時も放出された量は、プルトニウムは確かに出てはきていますが、かなりの部分はあまり広がらなかったと。定量的な話にならなくて申し訳ないですが、それで、プルトニウムによる被害が出たかというと、プルトニウムによる被害というのはまだ確認されてないというのが実態です。
【中村コーディネータ】
はい、ありがとうございました。それで、セキュリティの問題で、原子力発電所へのテロ攻撃。これがプルサーマル計画が進んでくると余計そのターゲットとしてクローズアップされるんじゃないかという、やはりそういう不安もあったんですが、この問題については、ほんとにもう森本さんが唯一この中でのご専門でございまして、他のパネリストからは発言が無かったので重ねてそういう不安を持ってらっしゃる県民の方もいらっしゃるので、森本さんに、このテロとプルサーマル計画についてのお話を伺って、この第一部を終わりたいと思いますので、森本さんよろしくお願いします。
【拓殖大学海外事情研究所 森本所長】
2つばかりお話したいのですが、最初に僕はイスラムのテロリストが日本の国の中に入り込んで、何らかの物理的なテロ活動をやる蓋然性は少し低いと思っているんです。これには理由があって、日本の社会をご覧になるとお分かりのように、言ってはならないんですけど、単一民族で多民族国家でない。従って、イスラムのグループが日本に入り込んで何らかの活動をする場合、我々の社会の中では非常にアイデンティファイしやすいので、難しいと思いますし、また、無事に逃げられるとも思わないし、日本にその種の脅威を与えるような武器弾薬を多量に持ち込むということもなかなか難しいので、私は周辺国からこの種の、例えばテロだとか、ゲリラコマンド活動が起こりうる、つまり、国際法上誰がやったか分からないが、不法な活動が行われる蓋然性は、むしろイスラムのテロよりも大きいと思いますが、その場合に、その種のグループなり、周りの国のどこかが日本のプルサーマルを破壊しなければならないような軍事的かつ戦略的必然性があるかというと、それもちょっと考えにくい。例えば、日本が100%プルサーマルでエネルギーに依存しているっていうのなら分かりますけども、わずかしか、日本の原子力は30%弱です。だから、私が、例えば相手の国であれば、それは極めて重要な、例えば国家的な化石燃料の備蓄、戦略備蓄倉庫を攻撃するというなら多少出来るかもしれないですけど、それも日本の領域の中に入ってやらないといけないので難しく、私はそれよりも海上輸送路で公海上で脅威を与える。どこか近くに通ると必ずそこは狙われて、潜水艦から攻撃を受けるとか、あるいは機雷がどこかにあってそれに触れて日本に近寄れないとか、といった誰がやったか分からないが日本の領域の中を侵略していないと言えるような脅威を与えるといったリスクの方が、むしろ高いと思うので、プルサーマルを持ってるからプルサーマルだけが相手に狙われて攻撃を受けるという蓋然性を考えると、少し軍事的には考えにくいと思うんです。
他方、もう1つ申し上げたいんですけど、皆さまの議論を聞いて非常に今日は勉強になって、“なるほど、そういう議論なのか”と思って聞いたんですが、私のように国家の安全保障をやっている者からこの国全体の安定を見た場合にプルサーマルや日本の技術というものの技術的許容度をどの程度認めるか認めないかという議論よりも、蓋然性を考えどのようなリスクがあるかという観点に立って考えてみると、例えば周りの国で北朝鮮、あるいは韓国も追いかけて原子力開発とか核開発とかやっているんですが、彼らが日本よりもはるかに技術レベルが低く、核兵器を作っているかもしれないけれども、技術の低いレベルで核実験をやろうとしてうまくいかなかったり失敗したり、あるいは、例えば地下核実験をやって、例えば地下水を破壊し、その中に放射能をたくさん放出するような核実験を日本の周辺でやり、それが日本海を汚染するとかっていうケースだとか、あるいは中国は今どれぐらい持ってるんですか、原発を。
【中村コーディネータ】
9基ですね。でも、近々、あと27基ぐらい増やすとか。
【拓殖大学海外事情研究所 森本所長】
27 基とか、2020年までとか言っていますけど、ネットをひくと2050年までに100基近くという目標があるんですが、それは日本海の向こう側にあるわけです。海浜にあるわけですから。それを十分に管理もしないで環境も十分に考えずに、そういった原発が日本海の向こう側にあることからくる我が国へのリスクの方が、蓋然性としては非常に高いと思うんですよね。そういうことはあんまり議論すると、議論が拡散しちゃうんで、国際政治を議論するようになっちゃうから黙ってたんですけども、日本の技術をどこまで我々は信用できるか出来ないかという議論をやっているのは、それはそれで良いのですが、もう少し日本の技術のレベルをグローバルに見た場合に周りから受けるリスクの方が、高いのではないかということだけは申し上げておこうと思うんです。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。専門家のご意見としてご指摘お受けいたします。それで、ちょっと予定の時間をオーバーしてるんですが、ここで休憩を挟ませていただいて、その後、会場の皆さんから挙手でご質問をいただいて、パネリストの皆さんとの質疑応答、必要に応じてはオブザーバーからの回答というのもあるかもしれませんが、そういう形で第二部の方を進めたいと思いますので、しばらく休憩を取らせていただきます。ありがとうございました。
第一部終了 〜休憩〜
【総合司会】
それではお時間が参りました。皆さまお席の方にお着きになられましたでしょうか。まだの方はお急ぎいただきますようにお願い致します。それでは会場との質疑応答を進めさせていただきたいと思います。引き続きコーディネータの中村浩美さんに進行をお願いしたいと思います。それでは中村さんよろしくお願い致します。
【中村コーディネータ】
はい。それでは、第二部ということで、会場の皆さんからのご質問をお受けしたいと思うんですが、今日は広く、ご出席の皆さんからご意見を伺いたいということで、知事、副知事、県議会議長をはじめ、玄海町長さん、町議会議長さん、唐津の市長さん、市議会議長さん、皆さんお出でいでになっていらっしゃいますが、主催者の方で、なるべく公平に当てるようにと言われておりまして、ブロックに分けて、この中でという形で進めさせていただきます。
申し訳ないですけど、そういうルールで進めさせていただいて、ちょっと後ろを見ていただくと、ABCDEFGまで一応皆さんのブロックがABC順になっているんですね。今度は真ん中ぐらいのところで1と2に分れています。そこでブロックを想定して私が質問をお受けしていきたいと思っておりますので、よろしくご協力をいただきたいと思います。
それから限られた時間ですので、主催者の方の意向としては、お一人様2分くらいを目途にご発言いただきたいということで、事務局の方がタイムキーパーはしますからということで、2分ちょっと前になると、チーンと予鈴が鳴ると思いますので、それが鳴りましたらおまとめいただいて、質問の要旨を明確にしていただきたいというふうに思います。
それではまずは、順番に当てていきますので、まずはこちらの方達がですね、そこAブロックです。ここBブロックです。前の方の方がAの1。Bの1ということになります。前の方のAブロックとBブロックの真ん中から手前の方の中でご質問のある方、挙手をして下さい。Aブロックいいですか、Bブロックからいきますよ。それではそちらのクリーム色のシャツを着ていらっしゃる方。係がマイクをお持ちしますので、よろしくお願いします。
最初にご連絡があったと思いますけれども、本日はインターネットとCATVで中継。この後、議事録も作られるということで、恐れ入りますが、どちらからお出でのどなたかお聞かせいただきたいと思います。
【会場参加者?】
玄海町から来ました○○です。今日ですね、公開討論会があるということで、参加証をいただいて、どういったことを質問しようか、自分なりに考えて来ました。
私も今回のプルサーマルの計画の発表以降、様々な講演会に参加したり、玄海町の行政放送を見たりしているんですけど、MOX燃料の採用に関して、はっきり言って現在のところまだ十分理解できていません。と言いますのは、先ほどの話の中にもあったように、現在使用されているウラン燃料ですか、それをMOX燃料に替えるということですけども、これは扱いによっては、先ほどのお話のように危険であることには変わりはないと思っているわけです。しかしながら、危ない、危ないと言われて、玄海の1号機が運転を開始して30年近く経ちますけども、私の家の方で作っている米とか野菜が放射能の影響で売れなくなったとか、そういうこともございませんし、私の友達も原発の方で働いていますけれど、それが放射能の影響で具合が悪くなったとか、そういう話も一向に聞いたことがありません。
というのは、やはり、国とか県とか、実際に運転している九電が、危ないなら危ないなりに一生懸命放射線管理とか、監視をしているからだというふうに私は思っております。
今、導入に難色を示されている方の分、私のイメージとしては、私が子供にテーブルに置いた包丁をこれ危ないから触っちゃダメだよと言っているようなイメージを受けるんですね。だから、それは親がちゃんと管理して台所になおせば何も子供がケガすることはないわけで、危ないことは判ります。
それで通常の運転時に、要は私たちの生活にどういうふうに影響が出るのか。玄海町の作物が食えなくなるのか、そういったところをちょっとご質問したいと思うのですが。
【中村コーディネータ】
はい。わかりました。これはどなたかお答えいただける方いらっしゃいますか。小出さんはどういう心配をされているんでしょう。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
原子力発電所というのは、先ほどから私何度も聞いていただいていますけれど、そういうふうに危険なものだと思います。要するに原子炉の中に膨大な危険物質を入れているわけです。それが今おっしゃったように、きちんと管理ができている限りは皆さんに対して被害が出ないし、風評被害のようなことも起きないということで、MOX燃料にしたところで、きちんと管理ができている限りは、たぶんそうだろうと思います。直ちに皆さんに被害が出るという事はないと思います。
ただし、私が心配しているのは、MOX燃料に使われるプルトニウムというのは、ウランに比べて放射線の毒性が大変高いです。ですから、もし管理が少しでもどこかで綻びが出れば、労働者が被ばくする、そして周辺の被ばくが増えると、そういうことになるだろうと思います。ただし、それは、すぐに皆さんに被害が出るとか、そういう現れ方はおそらくしないだろうというのが私の予想です。
私が恐ろしいと思うのは、先ほどから聞いていただいているように、事故になった時が心配だというふうに思っています。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。その辺の管理は、国の監督責任もありますし、もちろん事業主体の九電さんの責任、これは皆さんも注視する、注視するというのは、注目して見続ける必要があるんだろうと思います。それではこのブロックの方で、ご質問のある方。
【会場参加者?】
佐賀市在住の○○でございます。先生方のお話をお伺いして、プルサーマルを実施すると制御棒の効きが少し悪くなる、燃料の溶融点が若干低下するということで、安全の裕度は減少するが、それでも必要な安全は確保できるということで、私なりに理解しました。
身近な話で確認したいのですが、例えて言えば、時速100キロメートルで走ると脱線するカーブがあって、今までは時速60キロメートルで走っていたと、これからは時速62キロメートルとか63キロメートルで走るということになるのでよろしいかということです。もし時速が2キロメートル、3キロメートル上がると、確かに危険は増すと思いますけど、脱線しないというのも一つの見方と思っています。それでもプルサーマルを実施するというのは、時速100キロメートルに近いスピードで走るということなのでしょうか。以上でございます。よろしくお願いします。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。なかなかこういう問題って、例えにするとまた、理解が難しい部分もあるんですが、出光先生、学生さんにお話するように分かり易くお願い致します。
【九州大学大学院 出光教授】
例え話でいきますと、例えば車に乗る時に、一人で乗っている時は軽いのでブレーキがよく効きます。人を乗せたり、荷物をたくさん乗せるとブレーキの効きが悪くなりますというのと、同じだと考えてもらえばいいと思います。当然、過積載はダメですけども、隣に一人ついでに乗せていくという場合にブレーキの効きがちょっと悪くなるという時はどうするかというと、運転中はちょっと深めに踏み込みましょうと。そうすればちゃんと前との車間距離を保てると。危ない時にはちゃんと止まれるかというのを確かめるわけですね。急ブレーキを異常時にはちゃんと止められるか、急ブレーキを効かせられるか。
それをこの原子炉でプルサーマルの時もちゃんと確認をして、プルトニウムが入っていてもちゃんと原子炉は止められますよと。運転中も、今日は説明がなかったんですけども、ほう酸濃度というのをちょっと濃度を上げて、少し踏み込みを深くしましょうと。そういう方法でコントロールはできますよと。そういうことをやっているということです。
【中村コーディネータ】
ご理解いただけましたか。
すみません、遅くなりました。お隣で手を挙げていらっしゃった方。
【会場参加者?】
鹿島市から来ました○○です。玄海原子力の2号機で燃料漏れがあったと思いますが、もしプルサーマルを実施した後に燃料漏れが発生したらどのような現象が起こるでしょうか。プルトニウムが発電所周辺に放出されるということがあるんでしょうか。そこらへんをお伺いしたいと思います。
【中村コーディネータ】
これについては、出光さん。
【九州大学大学院 出光教授】
これは私の方から説明します。ピンホールというのが開いて、中からプルトニウムとかウランとか、燃料自身が出てきたというのではなくて、その中の核分裂生成物が冷却水の中で検出されました。検出されましたというか、あるレベル以上に上がりましたというので、ピンホールが開いたと。だたし、そのピンホールというのは、非常に小さくて目で見ても分かりません。今の確率論的に言うと、燃料棒10万本作ったらそのうち1本くらいにピンホールが開くかもしれない、それくらいのレベルになっております。大きさ的には1ミクロンもないくらい、1000分の1ミリもない穴だと思いますが、目視でどこに開いたというのは見つかりません。洩れているという、核分裂性のもので洩れた量も非常に少ない量でした。それも1次冷却水の中で、外側には全く出てきていません。例えば、MOXがそういう形になって、ピンホールが開いたとしても、状況は変わらないというふうにご理解下さい。
【中村コーディネータ】
A/B1ブロックよろしいですか。じゃそちらの。
【会場参加者?】
私、呼子から来ました、○○ですけど。今までですね、話を学者さんたちとか、いろんなことを聞きまして、原発は安全であると、中には心配をされた方もあります。しかし、人間が原発を発明して、それで運転が確実にいく時は、心配も何もいらないですけど、これが一つ間違うと、沖縄県であったように、ヘリコプターは飛ぶように出来ています。しかし、人間が操縦します。ロボットじゃありません。ということで一歩間違った場合は、玄界灘の魚も何も食べられません。野菜も一緒です。ということで、私は不安で、不安でなりません。子孫をなくさないようにして下さいと、私は思います。以上です。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。そのあたりは重ねてあれですけど、特に事業主体である九州電力の責任は大きいと思いますが、大橋さん何かコメントありますか。短くお願いします。
【東京大学大学院 大橋教授】
わかりました。人間が間違う可能性があるというのは、最初から認識して原子力発電所の設計というのは行われてきまして、もちろん一番は間違えないような操作盤とすること、また次は仮に間違ってもそれが決して危険側に行かないように、フェールセーフというんですけど、そういうような設備を付けるということになっています。今、人間の行動の研究がどんどん進んでいまして、今度は人間がグループとして行動する時、間違わないようにするにはどうすればいいかというところまで、今研究が進んでいます。
今、子孫がどうこうという心配をしておられるというのは、私は原子力の関係者として心痛く聞いていますけれど、決して原子力発電所の近くに住んでおられる、プルサーマルするしないにかかわらずですね、原子力発電所というのは、皆さんが思っておられるよりずっと安全なものです。格納容器が破損するというようなことは、物理的には考えられませんし、放射能被害が顕著に外に出て起こるということは有り得ませんから、是非、心穏やかに暮らしていけるように、我々のPRというのもしていかなければいけないと思っております。
本当に皆さんの不安を払拭するためには、情報公開、包み隠さず、何でも皆さんの知りたいことを知るというのが大事だと思うので、国ももちろんそうですけど、九州電力も、それから自治体もそういう責任があるかと思いますけれど、是非それは期待したいと思います。次はABの次のブロック、赤いセーターを持ってらっしゃる方。
【会場参加者D】
唐津から来ました、○○と申します。先ほど質問された方もいらっしゃるんですが、似ているんですが、制御棒の効きが悪くなるとか、燃料の融点が下がるとか、プルトニウムのスポットが出来るとか、余裕が少なくなるのはいかんよという話で、余裕は大事だから絶対残しとけという、小出先生のご指摘がありましたけども、非常に分かり易いんですけど、要は程度問題じゃないかと思うんですよね、それに関しては。
先ほど、時速100キロを60キロという話がありましたが、同じように考えていまして、100キロは脱線するよと言われていて、そこは技術的に確認していると。そこを60kmで走っていると。それを65キロというと、人がたくさん運ばなきゃいけないから時刻表を見直して65キロで走ることにしましょうと。それはいかんのかというと、そんなことはないんじゃないかと思うんですよね。
先ほど国の安全審査というのは、安全だという結論を出すためにやっていると、何かすさまじい話もありましたけど、私は基本的に先ほどの100キロ、60キロと同じように、ある技術的な限度というか、必要なものというのは、かっちり検証して出してですね、それに対して十分余裕があるということを確認していくのが、安全審査だと思うんですよ。だからそれを何か結論的に変に、教えていただいた方もいらっしゃいますので、ここははっきり、そうなんだというのを確認したいので、どなたかお答えいただければと思います。
【中村コーディネータ】
これは一つには小山さんのご発言に関連していると思うんですが、小山さん。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
私が言ったのは一つの例に基づいて、実際に自分も裁判まで起こした経験に基づいて蒸気発生器の例で言いました。これは蒸気発生器の細かい管が62%も損傷しているのに、新品と全く同じであるという安全審査にだんだんだんだん変わっていったんですよね。安全解析が、そのものが変わっていって、実は前よりも熱があまり出ないということが、新しい知見によってわかりましたとか、そういうような理屈がつけられるんですけどね、だけど常識で考えて、62%も損傷しているものが、新品と同然だと言われても絶対信用できませんがね、そういうことを言っているわけです。一つの例として。
【中村コーディネータ】
はい。一つの例として、関西電力の例をお話になったんですが、今のご意見とご質問に対して、国の方からちょっとどういう姿勢で臨んでいるのかを聞いてみましょうか。保安院に聞いてみましょうか。じゃ、保安院の佐藤課長お願いします。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
今ご質問ありましたように、我々技術的に合理性があるかどうかというところが、我々安全性を判断するポイントだと思っております。こういった技術的な合理性を判断するものとして、様々な実験、経験などをベースに我々判断しているわけであります。その中で、ここにありましたような、制御棒の効きだとか、それから燃料の溶融点の問題。そういったことについても、それぞれ技術的な判断基準をベースに、安全か、そうじゃないかを我々判断しております。
只今の蒸気発生器の問題もご指摘いただきましたけども、蒸気発生器、今はかなり新しいものに殆ど取り替わっておりまして、損傷というのがなくなってきておりますけれども、小山さんがおっしゃったように、昔はけっこう伝熱管が損傷しておりました。その際、修理の仕方と致しましては、スリーブ、さや管を内に当てて補修するとか、使えないものは栓をして使えなくすると、こういったことをやっていたわけでございます。当然そういうことをやっていけば、解析上厳しくなっていくのは確かでございます。我々そういった条件をベースに、冷却材喪失事故の時の燃料被覆管温度がどうなるかといったことについて、解析で判断しているわけでございますが、その判断基準は、そういったケースを満足するというようなことで我々安全性を確認しているところでございます。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
ちょっとすみません。一言だけ言わせて下さい。
【中村コーディネータ】
はい。小山さん。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
今は判断基準がありまして、そしてそれを満足するように解析方法をだんだんだんだんと変えていったのが事実であります。
【中村コーディネータ】
それについてはいかがですか。先ほどの小山さんの指摘もその解析方法が変わっているというご指摘だったんですね。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
解析方法、これは、解析というのは、より精緻の方に持って行くというのが、基本的な今の流れでございます。先ほど小山さんがスライドに出された、解析というのは、一言言いますと、二次元の解析手法のモデルを使ってやったケースが古いケースでございます。最新の解析というのは、コンピューターの精度も上がっていることもあるんだろうと思いますが、三次元のより詳細な評価が行えるようになってきているということでございまして、より現実に近い評価が可能になっていると。二次元でやった場合には、そういった二次元の限界というのもあるわけでございました。安全裕度を多くとって判断していたわけでございますが、三次元で解析することによって、より精緻、現実のベースで評価できるようになってきていると。こういうことで結果が異なっているということだろうと思っております。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
そういうものもありますが、熱が、前に思っていたよりも意外と出ないことが分かったというふうに解析を変えているんです。私は詳しく調べていますけれども。
【中村コーディネータ】
そのケースのお話をここでしていただくより、ご質問いただいた方に伺いますけど、今の保安院の審査姿勢というか、臨む姿勢についての説明でよろしいですか。
【会場参加者D】
基本的に技術的根拠をかっちりさせて、それに対して裕度がちゃんとあるということを確認しながら進めていくんだと、それが当然だと思うんですけど、その通りやっていただいているというご回答であればそれでいいと思います。
【中村コーディネータ】
ということで、よろしゅうございますね。保安院も安全委員会もうなずいていらっしゃいますから、ご指摘のとおりということで。それじゃABの後ろの方の方いらっしゃいますか。紙を持ってらっしゃる方。
【会場参加者E】
唐津市厳木町から来ました、○○と申します。プルサーマル発電については、私は、技術的な難しいことは分からないけれども、将来のエネルギー政策としては必要であるので推進すべきものと考えますが、以前の鹿児島県川内市から急に玄海町に変更になった理由が第一点ですね。
それから第二点、今は厳木も唐津市内になっているんですが、唐津市内でも一番遠くです。それで、この工事承認について、私は原子力保安院の方に電話をかけて聞いたんですが、工事承認は地元行政区画、例えば玄海町長、佐賀県知事の承認があれば着工ができるということで、その法律的根拠は何かと聞いたら、「特にございません」という回答でした。
先般、4月6日に唐津市長さんに聞きましたら、そんなことはないという原子力委員会の回答でございましたということでございますが、その理由をお願いしたいと。
【中村コーディネータ】
まず、最初のなぜ玄海3号機でこの九州電力はプルサーマルを始めるのかというのは、九州電力に伺った方がよろしいですか。それでは樋口本部長お願いします。
【九州電力(株) 樋口取締役】
九州電力の原子力発電本部長を仰せつかっております樋口でございます。なぜ玄海3号機でプルサーマルを実施するかという話でございますが、もともとどの私どもの原子炉でプルサーマルをやっても問題はないということは、先ほどの3分の1MOXの安全委員会の資料からもお分かりいただくと思いますけれども、私共は、今3.2tのプルトニウムを持っているわけでございます。これを計画的に燃やす必要があるわけでして、そういうことで、玄海の1,2号、3,4号、それから川内の1、2号のいずれで実施するか、これを純技術的な観点から検討致しました。
その結果、玄海3、4号が原子炉の中に入っている燃料の数が一番多ございまして、そのうちの4分の1の燃料をプルサーマルの混合酸化物燃料に致しますと、私共が持っているプルトニウムを、海外にあるプルトニウムをバランスよく燃やすことができると、そういうことで、3,4号であれば、安全上技術的には問題なく、安全に管理できることになりました。
そして、なぜ3号かという話でございますけれど、これはやはり、初めて私共が新しい燃料を入れるわけであります。これは海外から参りますので、その検査をちゃんとやる必要があります。先ほどから議論になっておりますように、多少放射性の強い燃料が入ってくるわけで、その管理をちゃんとやる。今までと同じような被ばくの範囲内でやるという従業員の管理、そういうものも大切でございますので、そういう意味で非常に広いスペースが必要になりまして、3号の方がたまたまスペースが広いので、今回は3号でやろうというのが、その主旨でございます。
【中村コーディネータ】
2番目の話は、唐津が市町村合併で大きくなって、玄海町の立地隣接自治体になったという背景もあるんですけど、工事承認の件というのは、どなたがお答えになる。それでは保安院の方から。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
ちょっと私、詳細は承知しておりませんが、プルサーマルも同様でございますが、こういった工事計画なりの技術的な認可というのは、安全性について保安院が判断すれば、それで着工はできるというのが法律の考え方でございます。
ただ、こういったものを進めるに当たっては、地元のご理解を必要とするということがまずあるわけでございまして、これは規制とは直接関係しないところであるものでございまして。例えば具体的に一つの例を言えば、事業者と自治体との間で安全協定等が結ばれているケース等がそういった承認というところになるのかなと思いますけれども、保安院、要するに国の規制側としては、安全協定ということについては、直接関与するものではないということであります。
【中村コーディネータ】
短くお願いしますね。
【会場参加者E】
玄海の4号機は、プルトニウム発電を目的にして建設された新しい施設だったと思うんですよ。それを急に3号機に変えたというのが、我々は理解できません。
それともう一つね、鎮西町の串、それから玄海町の普恩寺とは、原発拠点からいきますと、串の方が近いんです。そういう不平等な行政をどうしてやっているのかということで、私はそういう疑問を持っているのでお伺いします。
【中村コーディネータ】
重ねて九州電力さんにお伺いしますけど、まだ玄海3号機ということについて納得をされていないようですけど。
【九州電力(株) 樋口取締役】
先ほどご説明を致しましたけれども、玄海3号機に決めたいきさつは、玄海1,2号機、3,4号機、それから川内の1,2号機、この全部の原子炉の大きさ、燃料の数、それから原子炉で実施した場合の安全性、これを技術的に検討しまして、玄海3,4号機に最終的になったわけでございます。ですから、技術的にはどの原子炉でやってもできるものでございますけれども、私共が持っている海外のプルトニウムを、これを効率よく一つの原子炉でやる方がやりやすいということもございますので、そういう意味で、燃料の数が一番大きい、193体入っております、玄海3,4号機でやるようになったわけであります。
それから二問目のご質問の、鎮西町串地区、肥前町納所、そういう所の方が非常に近いところにあるというお話がございまして、私共プルサーマルをやるにつきましては、広く、東松浦郡、唐津市に合併されましたが、東松浦郡のいろんな方に説明をしてまいりました。そして、原子力発電所に近い所につきましては、1つ一つ、集落を訪ねまして、皆様方に不安に思うことを質問していただきまして、1つ一つ言葉を尽くして説明をしてまいりました。玄海町につきましては、27 の地区がございますが、この地区につきまして、1つ一つ説明をしてまいりました。
ご指摘のように、串地区、鎮西町串地区は玄海町の役場よりももっと近い所にあるわけで、発電所から非常に近い所にあるわけでございまして、そういう意味で私共は、行政区は違いますけれども、串地区には区民の方に集まっていただきまして、説明をしたつもりでございます。
今後もいろんなご質問につきましては、特別のグループもできておりますので、説明に行きたいと思っております。それから肥前町につきましても、区長さんの2つの部落につきまして、区民の方に集まっていただきまして説明をしたところでございます。そういう意味で、今後ともそういう不安に思われた方々がおられた場合には、私共が出向いて説明をしたいと思っております。そういうことでよろしくお願いしたいと思います
ありがとうございます。C/D/Eの前の方の方。
【会場参加者F】
鎮西町漁協の○○と言います。先だって、5月又は7月、2回続けてプルサーマル絶対反対ということで、海上デモを致しました。デモというのも、たくさんの理由があったわけですが、その理由をここで一つ一つ言うとなると時間もかかりますので、私が以前よりこれはおかしいなと思うことが一点だけあったので、そちらを聞いてみたいと思います。
実は、私、玄海漁連の方で役員をしておりまして、当時漁連の役員会の折に、九電の方よりプルサーマルの必要性、安全性の内容の説明があったわけですが、その時に私、質問しました。「当時、おそらく全国でも佐賀県は白血病が非常に多いと。まして佐賀県の中でも東松地区、玄海地区、鎮西、呼子、肥前、そちらの方が非常に多い」といったような疑問があったわけです。なぜ多いのかと、そのへんの質問をしたわけですけど、その回答を速やかに持ってくると言ったような答えがあったわけですけど、現在に至ってまだ来ていませんので、そちらの方の答えを聞きたいと思います。
【中村コーディネータ】
それは○○さん、ご質問された相手はどちらですか。
【会場参加者F】
当時ですね、九電の方から説明に来ていたと思います。
【中村コーディネータ】
九電の説明会の時に質問されたんですね。
【会場参加者F】
それでまた、今回のプルサーマルの反対に対しての理由もいろいろあるわけですけど、そちらの理由は、また組合長がおりますので、後から。
【中村コーディネータ】
今の件というのは、九州電力の説明会の時に一度質問されているそうですので、樋口本部長お願いします。
【九州電力(株) 樋口取締役】
私より分かる範囲でご回答させて頂きたいと思います。私も玄海漁連の組合長さんの集まられた場所で、プルサーマルの必要性、安全性について説明を致しました。ただ、その時にはそのお話は出てなかったような気が致しましたけども、その後、要望書も出ましたし、私共の担当が説明に行った中で、話が出たかもしれません。
そこで、白血病の問題でございますけれども、私が聞き及んでおりますところでは、私共は原子力発電所を運用する前からですね、もう30年以上前になるんですけど、私共の発電所に近い、外津地区、串地区ですね、それからちょっと離れた玄海町につきまして、健康管理特別調査というのも定期的にやっております。これが30年以上のデータが出まして、それによって何を見るかといいますと、要は健康調査なんですけども、今さっきおっしゃられておりますような、そういうものがないということを見るというのも一つの目的でございます。
ただ、その中で私共の保健医であります先生が言われましたことは、この白血病につきましては、放射線による影響というのは、被ばくの影響とかそういうのも確かに学術的にあるわけですが、それとは別に、地区、地域、要するに日本全体に色んなレベルで、ある年を越えますと、白血病が多くなる地域があると聞いています。例えば、和歌山県もその一つであると聞いております。その中で、そういうものがあると聞いておりますので、そういう意味での白血病というのはどこでもあるようでございます。その頻度は違うようでございます。
ちなみに、私共の発電所の周りに今放射線がどれくらいあるかと言いますと、自然の放射線は2.4ミリシーベルト、単位はどうでもいい、2.4くらいあるわけです。そして通常、私共が管理しておりますのは、これを0.001以下、要するに自然の放射線によるレベルと比べますと、殆ど無視できるような形に管理しているわけでございます。それから、各都道府県の地域差、これを見てみますと、これが、自然放射能が2.4に対しまして、0.3ぐらいの差があるわけであります。そういう意味では地域によってこんなに大きな差があるわけでございますので、そういう意味で、私共の発電所の影響ではないのではなかろうかと、私共は思っております。
もちろん、そういうことがあってはいけませんので、私共は出来る限り周辺に放射線が出ないようにと、そういうふうな管理をしているわけでして、そういうことでご理解をいただきたいと思っております。以上です。
【中村コーディネータ】
では続いて、一番前の女性の方。
【会場参加者G】
唐津市の○○です。先ほどプルトニウムは安全という話があったんですけど、そんなふうに安全だったら、チェルノブイリの原発事故の時に、19年間で150 万人死亡しております。800キロ圏内に放射能がばらまかれて、150万人死亡しておりますけれど、どうしてそういったことになるのかなと思うわけです。やはり、プルサーマル計画のMOX燃料というのは、ウラン燃料の15万倍の放射能を持つと聞いています。近づいただけで被ばくし、100万分の1グラムでプルトニウムは人を殺すと聞いております。そういったことを踏まえて、考えなければいけないと思います。
ウラン燃料の15万倍以上の使用済MOX燃料についてですが、使用済ウラン燃料の3倍の発熱量を持ち、同じ発熱量になるまで100年以上かかって、放射能が半減するのに2万4千年かかると聞いています。この使用済MOX燃料の処理方法がまだ決まっていなくて、玄海町に蓄積されることになっています。2万4千年も安全に管理できると、一体誰が言えるのでしょうか。
人形峠のウランを掘った後の残りの土、ウラン残土を誰も引き取り手がなくて、人が近づけない土地になっています。地元の訴訟が起きて、動燃が一部6億円でアメリカに輸送しておりますが、残り456立方メートルは、地元に残されたままになっております。そのウラン燃料の15万倍以上の放射能を持つ使用済MOX燃料の処理について、一体どうなるだろろうと。
操業費42兆9,000億円となっていますが、使用済MOX燃料の費用は含まれていないと聞いています。一体どのくらいかかるかわからないというところが本当だと思います。税金が投入されて、教育福祉が圧迫されると思います。その点について答えをお願いします。
【中村コーディネータ】
まず最初の被害想定というか、またチェルノブイリの話が出てきたんですが、大橋さんお願いします。
【東京大学大学院 大橋教授】
はい。チェルノブイリの話だとか、今の15万倍の放射能というのがよくわからないんですけれども、そういうのをどこでお聞きになって、どうしてそういうのを信じるに至ったかというのを教えていただけませんか。
100 万分の1グラムが致死量だというのは、先ほど申し上げたように、原理的にありえないような、肺の中に1個1個埋めていくということをやらないと起きないわけですね。ですから、環境に放出されるというシナリオというのは、我々には考えられませんし、仮に放出されようが、呼吸として入るということも、またこれも極めて考えにくいことなんですけど、そういうことを申し上げても全然ダメなわけですか。
【会場参加者G】
ウクライナで150万人死亡したというのはウクライナの政府の発表です。それからMOX燃料はウラン燃料の15万倍の放射能を持つというのは、元京都大学原子炉実験所の小林圭二先生のレポートからです。それから100万分の1グラムのプルトニウムで人を殺すというのは、小出先生からお聞きしたことです。
【東京大学大学院 大橋教授】
チェルノブイリについては後に私よりもっときちんと説明できる方がいらっしゃると思いますけれども、どうしてそういう事は信じて我々が説明する技術的内容はまったく拒絶して、何も変わらないじゃないですか。
【中村コーディネータ】
パネリストと会場の方と直接討論はしないで下さい。そういうデータをご覧になって不安になっている方が他にもいらっしゃると思うので、そういう市民の方の立場を考えて専門家の方としてはお願いします。まず、チェルノブイリのことをなるべく手短にお願いします。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
チェルノブイリというのはわが国の軽水炉と型が違う炉でございます。このチェルノブイリというのはいろんな要素が事故に至る過程としてあったわけでございますが、ひとつたとえればこの自己制御性というところですね。私、10月2日の説明会で説明しましたけれども、自分で出力を戻そうとする力がわが国の軽水炉ではあるという説明を致しましたけれども、チェルノブイリの炉は低い出力ではそういう性質がないというようなわが国の設計とは違う炉でありました。従って我々は、チェルノブイリのような事故が軽水炉では起こることはないというふうに考えております。
【中村コーディネータ】
ただあの実際の被害については、チェルノブイリは日本のケースとは違うんだけれども、たしかにその大きな被害が出たということは間違いないですね。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
これは、あれだけ大きな事故が起きたわけであります。被害のその150万人という数字については、私、細かい数字承知しておりませんけれども、大変な方が被害を受けたというのはその通りでございます。
【中村コーディネータ】
そのやっぱり被害に対するショックというのはやっぱり大きく受け取られたと思うんで、それがまた自分が関心を持っているプルサーマルに結びついたということで、ご発言あったんだと思いますが、ひとつあの使用済MOX燃料の件、これについては、まず国の方からもお伺いしましょう。
【九州大学大学院 出光教授】
使用済MOX燃料の処理の技術的な話からいきますと、プルトニウムが13%入ったものが処理できないかというとそんなことはありません。私が冒頭に言いましたように、私が最初に実験したのが高速炉の使用済燃料の再処理で、その中にはプルトニウム30%が入っておりました。それで、何ら問題なくここまでの技術で再処理できております。ただスケールは小さいですけども、実験的には原理的なところは確認できております。あとスケールアップはどうするかという話はございますが。それから経済的なところの話は別としまして、今MOX燃料を貯蔵するということですけども、しばらく貯蔵することにはなると思いますが、2万4千年貯蔵するというのは計画ではございません。現在みなさんご承知のように六ヶ所村で再処理工場を作っておりますけども、そちらの方で通常のウラン燃料の処理をしまして、今の予定ですと2010年以降にプルトニウムがたくさん入ったような燃料も再処理の次期のプラント、それについて検討しようということになっております。で、ほったらかしにしているというわけではなくて、まず軽水炉燃料のうちのウラン燃料の再処理事業をまずやって、次にMOX燃料というふうに考えております。
【中村コーディネータ】
では続いて、野口参事官の方から。
【資源エネルギー庁 野口参事官】
今、お話がありましたけれども、使用済のMOX燃料、MOX燃料を発電に使いますとこれはまた使用済になる訳でございます。2010年から仮にプルサーマルを始めるということになりますと、何年か経ちますとこれがまた使用済になって出てくるということでございまして、国の方針としては2010年頃からこの処理について検討を開始する予定でございます。
それでは、そちらの方お願いします。
【会場参加者H】
私、唐津市の玄海原発から10キロ圏内に居住しております○○でございます。実は今日の討論会の主催は県でございます。この趣旨は、討論会の中でパネラーの方あるいは、参加者の意見を県が聞きながら、これから考えられます九電との安全協定をどういうふうに対応していくのかというひとつの指針にするのが今日の目的だったというふうに私も理解しておるわけでございますけども、今日色々な先生方のお話を、推進派の先生、あるいは慎重派の先生のお話を聞いておりますと、なかなかどれがどっちかなというふうに思うのが大半じゃなかったのかなというふうに思っております。
そういう形で先ほど国の安全保安院の方から、安全保安院がプルサーマル導入を認知をすればそれだけで法的にはいいんですよ、と言うふうにお答えでした。ただ安全協定というのはやっぱりその周辺に居住する人々が安心で安全でいかに生活できるかというそういうものをやっぱり我々は国や地方自治体が責任を持ってやる。あるいは設置者である電力会社がやるこれはもう当然のことですね。そういう観点に立って、これから安全協定をどうするかという問題になっていくであろうと思います。そうなった時にじゃあ設置行政区域が本当に技術的に、私は安全であるか問題があるかというそういう判断ができるような状態ではない。今までも色々論議をしてきましたけども、あくまでも原子力情勢は国の需要で推進されておるからという、国が安全であるからという形でやられています。これについて私は、地方自治体にもっと技術者そういう見極める体制というものを作り上げていきたい。その辺どう思われるか。
もう一点は、ちょっと時間もございませんが、もう一件。あのスリーマイルの問題もありました。これを契機にしまして、いわゆる原発設置区域から直線で7キロであったやつが10キロに見直されました。これはやっぱり原子力が非常に原発が安全であるという神話が崩れた問題であります。今日のご意見を聞きましても安全であるというふうに言われましたけれども、完全に事故はございませんという意見はひとつも聞かれなかった。そこに問題があると思うんですね。私達は、この完全に事故がないとするんであればその証明というものをどのようにして出されていくのか、それに基づいて我々がどう対応していくのかというようなことをしていかなければならないんですね。そのことが大きな問題だと思います。それについてお伺いいたします。
【中村コーディネータ】
まあ、あのこれはお答えあると思いますけど、技術に絶対完全はないです。完全と言うことはないことなんで、表現の仕方の問題もあると思いますが、まずその安全協定等々、自治体との関係の件なんですけども、これは県は今日、一応お答えの予定入ってないんですけども、まずそれでは九州電力の方でどういうふうになっているかを伺いましょう。
【九州電力(株) 樋口取締役】
安全協定に関してでございますけども、私どもと地元玄海町、それから佐賀県の間に安全協定を結んでいるわけでございます。先般、唐津市議会で私もこの件につきましてご質問をうけました。そこで私がお答えいたしましたのは、安全協定は確かにこの三者で結ばれております。但し、私どもはですね、周辺のこともちゃんと考えておりまして、何か異常がありますと、唐津市についてもちゃんと情報を流すというそういうことも安全協定の中に盛り込まれているわけでございます。ただ私どもは、行政範囲を考えてみた場合に、やはり唐津市の意向を反映するのは県の仕事だと思っております。そういうことで安全協定についての議論がされると思いますけども、私どもはその線で県当局ともご相談をしながら今後の方針を決めていきたいと思っております。以上でございます。
【中村コーディネータ】
今のご質問で他の方も同じご意見だと思いますけども、唐津は立地ではないですけども、隣接市なわけですよね、大唐津全体がですね。で、安全協定を結ぶんならやはり立地本体だけでなくて周りの自治体の意見なども聞いて県は判断すべきだし、できれば安全協定というのは例えば現在の場合だと玄海に対するこの唐津市が結ぶべきだというふうにお考えで仰っていると理解してよろしいですか。
【会場参加者H】
質問者としてはそのこともあるんですね。それともう一つは安全だというね、佐賀県がどうやって安全性の確認をするのか今の体制で、あるいは唐津市がどうやって安全であるという体制ができあがっておらないわけですね。今、佐賀県も唐津市もだろうと思うんですけども、安全だと言われるのはですね、国が審査をされて安全だから、だから安全ですよというような形にしかなってないわけですね。やっぱり独自に自治体が安全確認ができるような体制、これをひとつやっていただきたいと言うことがひとつ。もう一点は、プルサーマル、今まではですね、ウランを燃料としたいわゆる原子炉だったわけですね。そういう設計になっている。先ほど質問者の方から100キロと60キロの話が出ましたけれども、それよりも私はガソリン車の車に混合燃料入れて走るようなもんじゃないかなと言うふうに思うんですよ。そういうですね、ウランとMOX燃料の事故があった場合の違い、その辺も明確にされておらない。その辺もひとつ明らかにしていただけないでしょうか。
【中村コーディネータ】
その技術的なことは、こちらでお答えできると思いますし、今の例えもときどき聞く例えですので、ガソリン車と他の混合燃料という話もあるんですが、ただ県あるいは唐津市、玄海町も含めてでしょうけど、今のご指摘というのは、県民のみなさんのご意見としてまずはお伝えするという立場でいいですか、今日の所は。まず国の方にはですね。自治体の方には、まずはそれをとにかく私の方からお伝えするということにしますが、それは後ほど国の方に伺います。その技術的なところから、大橋先生。
【東京大学大学院 大橋教授】
大変失礼な言い方ですけど、大変心外です。今まで、我々パネルディスカッションで一生懸命説明してきてですね、みなさんお聞きになったと思うんですけども、今日はプルサーマルの安全性というタイトルでパネルが開かれました。で、出光先生はきちんとした先生ですので、データをもっていかに安全であるかを説明されて、私はこういう問題をどういうふうに考えるべきであるかをどういうふうに考えて、どういうふうに設計して安全を確保しているのかというご説明を差し上げました。で、それがかみ合わないとおっしゃるんですけども、反対派慎重派の方が言っておられるのは、もうその10年も前に検討して溶融温度が少し下がるとか、制御棒の効きがプルトニウムだとちょっと悪くなるとか、もうみんな考慮に入れた上で国は報告書を出して九州電力は安全審査の解析書を作って、国がさらに安全審査をしたという結果の中に入っていることをごちゃごちゃ言っておられます。で、それはもう全部かたがついちゃってますから、今日、慎重派の方が言っておられたのはみなさんご存じのように、エネルギー政策としておかしいじゃないかとか、地震が起きたらどうするんだとか、再処理工場で青森とか岩手のことを考えてみろとか、プルサーマルの安全と全然かけ離れてることばかりです。そんならそういう専門家を呼んできて議論する。どうして関係あるんですか。プルサーマルの安全とは関係がないですよ。
【中村コーディネータ】
不規則発言で、やらないでください。壇上と。それはあのみなさんのお気持ちは、多分、小出先生が先ほどおっしゃったことだと思うんで、あのそういう刺激の仕方はしないで下さい。せっかくみんな冷静に話してきたんだから。
【東京大学大学院 大橋教授】
せっかく説明してもですね、いやかみ合わない、わからないと、いつまで言ってもそうじゃないですか。理解しようと言う気があるんでしょうか。
【中村コーディネータ】
ちょっとそれぐらいにしておいてください。今の大橋先生の発言に対しては、私もイエローカード出しますけれども、ただ会場でまたそうして不規則発言をたくさんされると他に静かに聞きたい方もいらっしゃるんで、それだけは控えて下さい。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
一番初めに申し上げたけれども、安全性の問題とは単にテクニカルな問題だけでは決まりません。原子力の政策的な問題もあるし、もちろん経済的な問題もあるし、日常的な管理の問題もあるし、いろんなことが絡んでいるわけです。技術というのはもちろん事故が起きないようにやるわけですけども、必ずしもそれが貫徹できない時があるわけです。それで今までもずっと事故が起きてきたというそういう歴史をたどっているわけで、プルサーマルをやればその危険が増えますと私は発言しています。そういうものをみなさんが受け入れる必要はないというふうに私は思うということを一番初めに申し上げたわけです。
【中村コーディネータ】
自治体に対するご要望についてはですね、責任を持ってまずお伝えするということと、国の方としてどういう姿勢でいらっしゃるかということだけは、ちょっとお答えを聞いて次に移りたいと思いますので。
【資源エネルギー庁 野口参事官】
国と地方の関係というのはなかなか難しいところがあるんですけども、法律に基づいて国がチェックを行います。それを尊重していただいて、地元の自治体も、これは地元の自治体のお立場、すなわちこの地域の安全を守っていらっしゃるというお立場から、さまざまなチェックをしていただくという事かなと思います。お話で出ました安全協定につきましては、これをどうこうと言うことは国の立場で申し上げるべきことではないと思いますけども、やはり地元のご理解を得ることが一番大切なことでありますので、事業者と、自治体とがきちっとお話をされていくと言うことが重要であると思っております。
【中村コーディネータ】
茶色のブレザーを着ていらっしゃる方。
【会場参加者I】
唐津市から来ました、○○と申します。まず最初に、小出先生がスライドの中でエネルギーがたくさんあるというようなスライドが出たかと思うんですけども、これは世界にはあるかもしれませんけども、日本にはこれは厳しい状況ではないかと思います。また昨今の原油高とか尖閣列島、天然ガスの問題、かなり厳しいと思っています。あとこの先生の想定外の危険度というのにハテナマークがついた資料があるんですけども、想定外というのはどういうことなんでしょう。具体的な例を。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
まずはエネルギー資源のことから、お伝えしますけども、確かに日本は資源小国なんですね。自分の国の中でとれている資源は、たしか4%ぐらいしかないだろうと思います。残りのほとんどのエネルギーは輸入してきているわけです。原子力はなにか国産エネルギーのようなことをいう人がいるんですけれども、もちろん違います。全部が海外からの輸入です。結局日本という国は大変エネルギーの少ないとこで何とか生き延びなければいけないというしくみをもっているわけですから、なるべくエネルギーを使わないようにこれから社会をどう作っていくかということを考えるのが一番大切なことです。どんどんどんどんエネルギーを使いたいから原子力でもいいからもってこいというようなそんな考え方を改めていただきたいと私は思います。
それから想定外の事故というのはどういうような事故かということですけども、私は先ほど発言をしたときに国がどういう事故を災害評価をするかということを聞いていただきました。国は重大事故という事故と仮想事故という事故、2つの事故を考えて、それで事故想定をして周辺の人たちをどうやって守るかということをやっているわけです。ただし、その事故では格納容器という最後の砦のようなものは絶対壊れないという、この前提で災害評価がなされているわけです。でも格納容器が壊れるという事故もシナリオとしてはいくらでもかけるわけです。そういう事故が起きたときには被害がどんどんどんどん大きくなるということも考えられるわけです。私は、そういう格納容器が壊れる事故の想定もしてそういう場合にはどういう対策が必要なのかということを考えるのが国の責任だし、自治体の責任だし、それをまずみなさんに伝えた上で判断をあおがなければいけないだろうというふうに思っています。以上です。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。小出さんのご意見について出光先生はどのようにお考えでしょうか。
【九州大学大学院 出光教授】
私の方で、燃料の安全性の専門家ということでそちらについての話をしてきたつもりなんですが、未だにわからないといわれて多少ショックを受けているんですけども、先ほど配った資料にもありますけども、過去の海外の実績、現在も年間450体もMOX燃料が世界の原子炉で使われております。毎年450体ですね。毎年毎年500体ぐらいが増えていって、現在、4894体、昨年末ですね。今もう更に500体ぐらい増えていますから、5,000体超えていると思います。これでいいますと、玄海の3号炉でこれから使うものの数十年分、百年近いような実績が今まであって、それまでの実績で、色んな原子炉を見ていますけども、燃料の破損がなかったわけではない。
先ほど言いましたピンホールのようなものが起きております。ただそれはウラン燃料とプルトニウム原料を混ぜたもので、特に差は見られないと。中でどんな現象が起きているというのも使い終わった燃料を調べられております。特にプルトニウムが入ったから違うとそういうことは見つけられておりません。そういう現状を考えてウランとプルトニウム、今使われているような設定の範囲内で、差はないというふうにご説明したんですけども、安全性について疑問があるといわれましても、これ以上示すデータがないんですけども、壊す実験もやられているんですね、どうやったら壊れるという実験もやられていて、それに対してこういうより過酷な条件で試験をして、その結果でもウランと変わらないと。運転条件は条件を満たすように運転すれば壊れないという条件をはっきりさせているわけですね。絶対安全というのは言えませんけども、このレベルになったら壊れる、このレベルだったら壊れないというのは科学的に言うのはできます。今後どんなことが起きるかわからないと言われても、それはどういうようなことが起きるのかというのまでは、私も科学者として保障はできません。ただこういうふうに使っている分には、ちゃんと壊れずに使うことができたし、これからも使うことができるというふうに考えております。
筒を振ってらっしゃる方を先に。
【会場参加者J】
呼子町の○○です。2点ほど聞きたいと思います。1点は、MOX燃料は国内で前例がなくそのような危険な燃料を玄海町で先駆けて使用する必要性があるのかというのが1点。もう1点は、過去にはスリーマイルとチェルノブイリの悪例があり、型、様式は違うが人的ミスや科学者の予想を超えたトラブルまたテロによる事故の危険性があり、その被害は従来の数倍となり、甚大な事故につながると思います。万一の場合の責任の所在はどこにあるのか、明確に示していただきたいと思っております。
【会場参加者K】
MOX燃料の使用済燃料は、半永久的に残ると思うが、現在はその処理方法はただ地中に埋めるだけのこと。使ってしまったものを全く無害にはできないのでしょう。ということは、我々は負の資産を子孫に残すだけではないでしょうか。これは大きな汚点を残すことになるのではないでしょうか。
【中村コーディネータ】
使用済MOXに限らないですね。今の使用済燃料に関してもですね。
MOX燃料プルサーマルの必要性というお話もずいぶんやったと思っていたんですが、それが指摘されました。それから被害のことについてもパネリストがお話しされたと思うんですが、更によく知りたいということなんだと思います。それから万が一の時とそれから使用済燃料の最終処分ということですよね。この辺りの責任、国の方針決まっているわけですが、その辺りのご質問になりました。最後の所は国の方にお答えいただくとして、重ねて、プルサーマル、MOX燃料使用の必要性、安全性それから被害想定この辺りの話をお願いします。
【九州大学大学院 出光教授】
廃棄物関係私の専門でありますのでお答えいたします。
直接捨てるだけと言われましたが、一応再処理をしてプルトニウム、ウランは回収してまた燃料として使う、と。それ以外を固めて捨てましょうということにしております。半永久的になくなるという定性的なお話ですが、半減期というのがありまして、放射能がだんだん少なくなっていきます。中には、ウランのように 45億年というとてつもなく長いものもありますが、中には、1年ぐらいで減っていくものもある。5年ぐらい30年といろんなものがあります。放射線に限らずいろんな物でゴミが出てくるわけですが、例えば重金属とかそういったものの化学的毒もあるわけですが、それとくらべて放射性廃棄物処分の利点は何かというと、最初は危険なんだけどもだんだんだんだん量が減っていくんです。重金属系は毒性は変わらないし量も減りませんが、放射性廃棄物の場合は量がだんだん減っていきます。確かにたくさんあるのでそれが近くにあれば危険です。
しかし、例えばガラス固化体というものにしますが、すぐ側にいればそれはその人の命に関わる問題になります。例えば、今は地下に千年間は絶対に漏れ出さないようにしましょうというふうにしております。それからその後も、仮に漏れだしたとしてもそれの移動をものすごく遅くしてやって出てくるものが途中で放射能がなくなるように、そういったことを考えて、地下に埋めるわけです。だんだん毒性がなくなってくるので、それに対応して捨てていこう、そういうシナリオが成り立つのは放射性廃棄物だけなんですね。他の廃棄物の重金属系は固めてそれは半永久的に置くしかないんですが、放射性の場合は危険度がだんだんだんだん減ってくるというそういう利点があるので、処分がしっかりできるようになっているというそういう考えで、今、地下に埋めるといっていますが、ただ埋めるのではなくて、色んな手段を施して人に対する影響がないようにと、そういうのを考えて捨てるということを考えております。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
使用済MOX燃料が今のところは全く持って行くところがないというのは認めざるを得ないと思います。2010年頃からどうするかということを検討するということになっております。そして現在の使用済ウラン燃料ですが、これは六ヶ所村に運んでこれからそろそろアクティブ試験というのを始めようとしておりますが、今おっしゃったガラス固化体にするということ、ここに非常なネックがあるということ、うまくいっていないということが明らかになっております。ガラス固化体にもしできないとしますと、液体状態という非常に危険な状態で、絶えず攪拌しながら冷却しなければならないという非常に危険な状態の液体の高レベルの放射性廃液が貯まります。
もしMOX燃料にしますと、まだ東海村で実験をやっておりますが、まだその問題解決していないと、公的に認められております。それから、MOX燃料になりますと、ガラス固化体の所が非常に困難になっていくことが見えるわけで、そういうような状態の中で現在の所、もし使用済MOX燃料ができればどうなるかまったく見当もつかないという、それが事実であります。だからそれをあたかも将来は解決するかのようにして今引き受けるととんでもないことにならないとも言えないというのが、それが事実だと思います。現に、イギリスのBNFLという会社の所では、ガラス固化体にするところがうまくいってなくて、最近、中から内部文書が出まして、実はガラス固化体に非常に欠陥品があるということが内部文書で明らかになりました。そういうような問題もありますので、うまくいくというようなことは決してないわけであります。
【東京大学大学院 大橋教授】
先ほど刺激的な発言をしてすみませんでした。
MOXの再処理とかガラス固化の問題が今小山先生からご指摘いただいたんですけども、技術開発という言葉、今見通しが立たないとよく言われるんですけども、このMOX燃料の再処理というのは2010年頃から検討開始するとなってます。さらにガラス固化とか、なんで固化するかとか、その後検討することになると思います。でもそういう技術開発は、決して宇宙に人を送ろうとか、核融合を地球で起こそうとかいう技術開発とは違います。我々の技術の範囲内ですから、お金をかけて着実に段階を踏んでいくことで必ず達成できる技術開発です。そこは全然違うところです。
【中村コーディネータ】
必要性についてまだ疑問をもってらっしゃる方がいらっしゃるということが、今の発言でわかったので、必要性、万が一の時の防災体制、そのあたりの国の基本的な考え方、これを簡潔にお伺いして次に行きたいと思うんですが。
【資源エネルギー庁 野口参事官】
必要性については既に色んなところで議論されておりますので、ここで改めてということはございませんが、使用済燃料を再処理して、回収されるウラン、プルトニウムを有効活用していくというのが基本的な考え方です。先ほどご質問のあった中で、高レベルの放射性廃棄物、これの処分場が決まっていないということが、これが大きな課題だと我々も認識しています。5年前に法律を作って枠組み、色々な制度を作ったわけですけども、まだこれから実際の処分場を決めていくには何段階かに渡って、色んな手続きを踏んでいかなければなりません。その手続きがまだ進んでいないという状況でございます。これについては、我々もできるだけ早く処分場が決まるように努力して参りたいと考えてございます。
【会場参加者K】
大事なことをまだ伺ってないんですよ。責任の所在はどこにあるのかという。
【中村コーディネータ】
では保安院の方に答えてもらいます。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
万一の事故が起きたときの責任ということでございますけども、まず安全を確保する責任というのは一義的にはまず事業者にあると、我々は考えてございます。また我々保安院と致しましては、当然安全規制を行っているわけでございますから、その安全規制を行うという観点からの責任も当然あると思っております。原子力発電所で万一事故が発生いたしまして、周辺の方々に放射線による被害が及んだ場合の制度といたしましては、事業者が全額を賠償するということで原子力損害賠償法というのが定められております。これは額と致しましては、600億円というものが支払われることになっておりますけども、それを超える損害に対しては必要に応じて国会の決議により認められた範囲の中で国が援助を行うという制度も用意してございます。何よりもまず事故を起こさないというのが、まず第一でございますけども、万が一事故が起きた場合そういった損害を賠償する制度も法的には用意していくということでございます。
【中村コーディネータ】
紙を上げて立ち上がられた方から。
【会場参加者L】
佐賀から来ました○○といいます。世界の実績の関係で先ほど出光先生から、すでに世界で5,000体の実績がありますから、やれますよという説明がありました。九州電力が計画をしているプルトニウムの含有率、富化度の観点からそういう世界の実績の原発の施設があるのかどうなのか、ということが私は疑問にあります。世界の実績をいくら説明されても、含有率、富化度の点からするとかなり低いところでの原発の運転がやられているのではないかというところがございますので、そういうところからすれば、なぜ安全だといえる判断が示されるのかというのが疑問にあります。
あとひとつは地震との関係でございます。先ほど、山内先生の方からご説明がありましたが、例えば、インドスマトラ沖地震で大津波が起きて大変な被害がマスコミで報道されました。そうしたとき、津波が玄海原発に押し寄せたときにそのスマトラ沖地震レベルまで大丈夫ということが国の話し合いのところでされているのかどうか、どこら辺までなら津波の被害は大丈夫ということが言えるのかどうか、ということをお聞きしたい。
【会場参加者M】
九州電力の公開討論会の時にも言ったが、資料が非常に不十分だというより、数字を操作して、大事なところを隠している。表を見ると装荷率というのが書いてあるけども、燃料体総数、それと装荷したMOX燃料の数はわざわざはずしてある。それと何年のものなのかがわからない。そして、九電のは燃料体総数と予定している分で、計算をすると25%になるけれども、手元にある原子力市民年鑑の2003年のもので計算すると、ベルギーのものもドイツのものもスイスのものも、ここに書いてあるようなパーセントにはならない。九電の計算のやり方と同じようなやり方でこの装荷率を出したら、いくらになるのかお答えいただきたい。
【会場参加者N】
鳥栖の○○と申します。色々な先生達の専門的なご意見を聞きまして、本当に困っとるわけですけども、時間の関係でひとつ、森本先生の方から日本のプルサーマルの関係については非常に安全だというお話もありましたが、中国とか韓国の例が出されました。そここそ問題じゃないかというお話がありましたから。私は、日本の中で初めてプルサーマルが試行されるということで、佐賀県に天が下ろされようとしております。私は佐賀県のプルサーマルに問題があるとか、鹿児島とか東京が賛成だというような話をしているわけじゃないんですよ。今本当に大橋先生とか、出光先生の方からお話があったように、安全に安全を重ねたプルサーマルだということでありましょうけども、じゃあ逆に外国のプルサーマルの安全性について、原子力の安全委員会についてはどのように認識されているのでしょうか。また、それについての対応をどうしたらいいのか、日本のプルサーマルはいいけれども、外国のプルサーマルはだめだという話じゃないわけですよ。そういう面でご回答をお願いします。
まとまった形になりますけども、海外実績、データ分析の件です。
【九州大学大学院 出光教授】
海外実績のデータ分析、これも私が実際やったわけではなくて、これは調査結果があります。計算結果も多分九電で計算したんではなくて、調査部会が説明した資料で非常に表としては大きくなります。多分それを全部見せたらOHPで字が全部見えなくなってしまうから、その中から掻い摘んで出してきたのが、多分、資料で載せている分だと思います。装荷の開始時期等は、書いてありまして、燃焼度については、燃料を入れてから出てくるまで数年経ちますので、その後のデータだというふうにご理解下さい。
ちなみに燃焼度のもの、今も5万メガワットデーとかそういった燃焼度のものは恒常的に運転されておりまして、6万メガワットデーを今は目標にして、海外では更に上の燃焼度を狙っているというところであります。九電のデータにつきましては、これはこうやりたいということで出しているので並べております。それからプルトニウムの濃度については、冒頭にも言いましたが、例えば13%以上になったら危ないとかそういう話ではないということは一番冒頭に申し上げたと思います。他の海外でのものに比べますと、九電の方が入れるプルトニウムは多いと思います。これは確かです。
別に隠しているわけでも何でもないんですが、運転の仕方が違うので、例えばフランスとかドイツとかは、そこまで入れないで運転するような運転の仕方になっている。逆に入れすぎても使い残しが増えるから少なく入れているという。日本の場合には、例えばフランスの場合ですと、290日間運転とかに対しまして、日本の場合には400日と長いので、その分よりたくさん核分裂するものを最初に入れといてやると、そういう形で運転をされるということで濃度が増えているということです。量が多くなったら危ないのかという話については、先ほど融点の話もしまして熱伝導の話もしましたし、そういった話をしたので差はないということを申し上げて、それ以上ご説明することはないんですけども、燃料の物性等につきましては以上です。
この報告については、ちゃんと報告書の形で調査結果が出ておりますので、その報告書で出ております。その中についてデータに疑問があるんであれば、その報告書そのものに疑問を出していただいて、どこのデータがおかしいと、だからないんではないか、という話ではないですか。
【東京大学大学院 大橋教授】
燃料のハードウェアについては出光先生がおっしゃったとおりです。ソフトウェアについては、プルトニウム含有率が今までに実績がないというのを上回る件については2つ理由があります。1つは、実は説明してるんですけど。
【会場参加者M】
MOX燃料の数を聞いてるんです。
【東京大学大学院 大橋教授】
それは、どうしましょうか。
【会場参加者M】
違うことばっかり言っているじゃないか。
【九州大学大学院 出光教授】
僕がご説明しようと思っていたのは、装荷率が上回ることについて…。
【中村コーディネータ】
ご質問の主旨が全然違うんですけども、これはデータもってないようです。お答えできないようです。
【九州大学大学院 出光教授】
古いデータでよければ、どこのデータについて聞かれたいでしょうか。装荷体数については出ております。フランスのサンローランでは96体とかですね。
【中村コーディネータ】
ちょっと待って下さいね。
【九州大学大学院 出光教授】
例えばネッカーですと32体とかですね。
【会場参加者M】
どこがですか。
【九州大学大学院 出光教授】
ネッカーというのがあるはずです。
【中村コーディネータ】
ドイツの…。
【会場参加者M】
ネッカーは12体になっている。
【九州大学大学院 出光教授】
すみません。これは総数ですね。
【会場参加者M】
総数は193でしょう。燃料体総数が193で2003年に入れたのが12体でしょう。九電と同じ計算をやったら、6.2%にしかならない。
【九州大学大学院 出光教授】
それは何年のデータを見られているのでしょうか。
【会場参加者M】
2003年。
【九州大学大学院 出光教授】
今、手持ちでもってきてないんですが、2004年のデータが出ていると思います。すみません。すぐには見つからないんですが…。
【中村コーディネータ】
ちょっとまってくださいね。時間の関係で、今ちょっと調べてるんで、その前のご質問についての防災関係のご質問がありました。地震とかスマトラ沖並みの津波というようなご指摘もあったんですけど、防災についてはどのようなお考えなんでしょうか。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
津波についてご意見いただきました。本日プルサーマル関係ということで、津波の方のデータを持ってきていないんですが、安全審査でどういうことをやっているかということをご紹介したいと思います。
津波の場合は、それぞれ発生する津波の大きさというのをシミュレーションによって、津波の高さ、それと引き波の高さを求めます。津波の上がる方の高さについては、基本的に我が国の発電所は、想定される津波の高さより高い所に設置されているということで、津波の高さによる問題はないという評価を行ってございます。また、引き波も安全上の大きな問題となります。これは、原子炉を冷やすための水が取れなくなるということで、引き波に関する評価も行っているわけでございますが、基本的には我が国の発電所は、こういった引き波が発生しても、水の冷却というのは確保されるといったような評価を行ってございます。
大変申し訳ありませんが、具体的な玄海の数字については、手元に持っておりませんので、ここでのお答えはできませんので、ご了承いただきたいと思います。
【中村コーディネータ】
それで今のご質問のところなんですが、先生達は研究者ですから、今持っている資料と持ってない資料があるらしいんですが、ご説明できる資料はあるらしいですね。ただ、今ここにはどうもないみたいなんですけども、これは。
【会場参加者M】
もうひとつ言わせて。
【中村コーディネータ】
ただね、ちょっと待って下さい。今日、パネリストとしてお招きをしているので、糾弾するような形は止めて下さいね。データが分かれば。
【会場参加者M】
資料について質問してるんだから。
【中村コーディネータ】
わかりました。おっしゃっていることは。
【会場参加者M】
私はどうやって計算したかわからんけれど、このパーセントは一致している。しかし九州電力のパーセントはね、燃料総数分の装荷予定のMOX燃料の数で 25%ができるはずなんです。そしたらね、他のベルギーやドイツやスイスのやつが、その計算ではそのパーセントは出てこない。だから質問している。おかしいじゃないか。九電の計算のやり方と、外国の計算のやり方と違うのを持ってきているのか。
【中村コーディネータ】
そこは今、お答え出来ないみたいですね。データがないので、これはちょっと継続預かりにさせて下さい。
【会場参加者M】
じゃ、いつ開きますか。
【中村コーディネータ】
いつ開くじゃなくて、そのデータについては、報告書を確認すれば出ますか。
【九州大学大学院 出光教授】
そのデータをどこかで提示すればいいですか。
【中村コーディネータ】
そうですね ホームページでもいいですし、あるいはメールで送るということも可能ですか。
【会場参加者M】
私はそういうものを買う金がありませんから、手紙でお願いします。
【中村コーディネータ】
ただ、いずれにしろ方法はあれとしてですね、○○さんの件については、データ確認をするということを一応お約束して。
海外について答えていない。
【中村コーディネータ】
はい。その件はたぶん森本さんですね。伺うとしたら。最後に○○さんがご質問になった、中国、韓国、北朝鮮の疑惑もあるわけですが、原子力発電という現実があって、向こうはまだプルサーマルまでいっていませんが、中国は将来的には考えているらしいですけど、そういうところのセキュリティの問題と我が国というところですよね。そのへんについて、恐れ入りますが、森本さんにご意見をお伺いしたいと思います。
【拓殖大学海外事情研究所 森本所長】
技術的な細かい点は、本当は原子力をやっている人の方が詳しいんだと思うんですが、私はナショナルセキュリティしか担当していないので、私がこういうふうに考えているというか、今までの僅かな勉強の中で理解できることはこういうことです。
一つは、まず、中国というのは残念ながらまだこの種の問題、すなわち原子力の平和利用や環境問題についての法的な枠組みがまだ十分整備されていない。国には発展段階があって、それを全部我々と同じレベルのものを期待するということが少し無理なのかもしれないんですけど、特に原子力の平和利用だとか、環境だとかという問題については、まず法律が十分に整備されていないために、国内でその被害に遭う人が、特に環境問題では非常に多く、これはご承知のとおり、中国の一般の人々の大変大きなフラストレーションとか、不安になっていて、しばしば環境問題については暴動の原因になっているということだと思うんです。
今のような状態で、中国が原子力の平和利用、つまり原発を増やしていくということになりますと、安全管理がうまくできていない上に、技術レベルが低いということになると、核兵器を作る技術はあるが、原子力の平和利用の個々のマネージメントについてのきめ細かな技術が十分なかった場合に、その種の被害というのが、中国の人民だけでなく、周辺諸国に及ぶ影響というのを我々は考えなければならないということが、第一です。
もう一つは、実は中国だけではなく、北朝鮮はなかなかまだNPTやIAEAに戻ってくれてないものですから、国際条約を適用して、北朝鮮にとやかく言ってもどうにもならないのですが、ただ、アジアの中では中国や北朝鮮だけではなく、韓国や台湾のいわゆる核開発というものもしばしば言われていますし、また核開発だけでなくて、原子力の平和利用については既にご承知の通り両方とも原子炉を持っているわけですから、そういう問題はこれから増えていくと思いますし、インドネシアやその他のアセアンの諸国でも、やっぱり原発がこれから増えていく。
どう考えても、アジアのエネルギー需給というのが2020年以降に非常に厳しくなって、どの国も経済発展をするために、原発を一定以上導入しないといけないという時に、今申し上げたように、国内の安全管理が十分でない国のこの種の問題が、周りに及び、場合によっては、環境に与える影響だけではなく、そのプルトニウムが溜まって、それが核兵器の原材料になるという問題をどうしたらいいかということについては、従来からアジアの中で非常に大きな問題意識があって、ヨーロッパにおけるユーラトムのような、つまりプルトニウムを共同管理をする方法はないかということを随分議論してきたわけです。
例えば、その作ったプルトニウムをどこかアジアの共通の銀行のような所にきちんと預けて、出し入れを透明性にして、IAEAの監視だけではなくて、自国でそれが核兵器に転換されるということがないように、地域として共同管理するという方法とか、あるいは原子力の平和利用について、技術的な協力というのを進めて、この分野で安全管理を一緒にやっていくということができればよいのですが、これはなかなか各国の主権というものがあって、手が出せない部分があって、非常に皆悩んでいるということです。
この問題は、国際会議に入ると必ず大きな問題になって、結局原子力の平和利用というのを不拡散という問題が障害を与えているということなんで、これはなかなかすっきりいかないのですが、アジア太平洋における地域の安定の非常に大きな課題の一つということなんではないかと思います。
【中村コーディネータ】
日本の安全技術というのが輸出できればいいんですけどね。そういう感じがします。
それでは、すみません。公平にやれというのがあそこにありました。お待たせしました。そちらのブロックの方から。
【会場参加者O】
唐津市内に住んでおります、○○と申します。まず、コーディネータの方に一つ注文がありますが、指名に当たってはですね、やはりある程度許容できる意見を持った人ですね、これも当ててもらいたいという意味から、そういう仕分けをしてもらうと。
【中村コーディネータ】
すみません。わからないものですから。
【会場参加者O】
糾弾大会みたいになってしまっているので。私は安全性につきましては、過去フランスほか、このプルサーマル導入をされて、実用運転を長年月されている実績を見ても信頼できるというふうに私は思っております。社会生活のシステム上における事故災害というものは、毎年、数千人にも及ぶ死者を出しているんですね。交通事故、あるいは列車、航空機、医療事故に至ってもですね、現実にあるわけですね。その中にいわゆる人、従事者に関わっている災害の要因が非常に多いと思うんですよ。この点を我々は十分監視しなければいけないというふうに思うわけです。これはプルサーマル・原子力発電についても十分言えることだと思います。その従事する人たちの技能維持、または安全、ルールを守る、これを指導・監査する機関、こういうものを十分に充実させるということが、非常に大事じゃないかと。そういうふうな意見を持っております。
【中村コーディネータ】
ご意見として伺います。ありがとうございます。すみません、そのブロック遅くなってすみませんね。
【会場参加者P】
唐津市から来ました、○○と言います。本日の討論会を聞いてイメージより安全ではないかというふうに私は感じました。その理由としては、先ほど質問の中からありましたとおり、もしも実施して、事故を起こした時、九州電力や国は責任を取ります。その体制も築いています、というふうなことをおっしゃいました。
また、九州電力や国の責任を取るところにも原子力の専門家は多数いらっしゃると思います。その専門家の方々は、自分のプライドにかけて安全と言わないものに賛成はされないと、私は信じております。そこで慎重なご意見の先生方に質問をさせていただきます。先生方がおっしゃっていることに対し、九州電力や国は、先生方の技術的な主張を理解していないとお考えなのか、それとも技術的なものは理解しているものの、それを何か目をつぶってでも、無視してでも進めなければならないという理由があるとお考えなのでしょうか、その点よろしくお願いします。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
今ご質問くださった方と私は実は正反対に思っているわけです。
九州電力が補償するよ、それから足りない部分は国が補償するよと言って、先ほど国の方が説明された。その通り、原子力損害賠償法で書いてあるんです。でもなんで、原子力損害賠償法などというのを定めなければならなかったのかというと、原子力の場合にはとてつもない危険を抱えていて、一つの民間会社では補償ができないようなことが起こるかもしれないと。だからしょうがない時には国が出てくるよというのがあったからなんです。それは世界的に皆分かっていまして、一番初めは米国のプライス・アンダーソン法というのができたわけですけれども、民間会社に任していたらば、補償ができないような事故が起こるかもしれないというのが前提になって、原子力が進められてきているわけです。
ですから、それほどのものだということを皆さんが覚悟してくださるならばいいと思います。私はもちろんずっとそういうふうに話して来ましたし、国の方は私の言っていることは十分承知しているわけです。ですから、とてつもない事故だってあるよという事は承知しているからこそ、そういう体制をとっているわけです。
ちなみに言わせてもらうならば、チェルノブイリの原子力発電所の事故というのは、86年の4月に起きたわけですけれども、とてつもない被害が起きまして、そのためにソ連という国は崩壊してしまったという。その崩壊の一つの重要な要因になったくらいの被害なわけです。国家が倒産してしまうという、それくらい巨大な被害が起こりうるというのが、原子力の本質にあるということを皆さんに理解しておいていただきたいと思うわけです。
【中村コーディネータ】
というのが、小出さんのご意見です。一番そっちのブロックの方よろしいですか。
【会場参加者Q】
佐賀市の○○と申します。今日は、いろいろな先生のご意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。色んな勉強になりました。
質問なんですけど、現在世間を騒がせております、耐震、耐震といえば、山内先生の方からお話がありましたけど、耐震関係で、耐震の設計偽造という、俗に言う「姉歯問題」というのが世間を騒がせております。
今回、そのプルサーマルの、今日はプルサーマルの安全性ということで討論会があったわけですけれども、当然その安全の部分についてですね、九州電力としてもですね、この安全という面で、いろんな偽装とかそういったことはないと思っていますし、そういったことがあったとしても何のメリットもないと思います。
また、いろんな国、原子力安全・保安院とか、安全委員会においてもいろんな審査が行われておりますが、先に言いました偽装問題においては、そういった国、自治体、民間の審査体制においての偽造というのがあっていました。この点について、今回のプルサーマルを含めて、原子力を含めたところの安全的審査というふうな観点からのご意見をお聞かせ願いたいと思います。
【中村コーディネータ】
これはどなたか、お答えご希望ありますか。
【会場参加者Q】
そしたら、審査ということで国の方にお願い致します。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
国の安全審査というのは、このプルサーマルに限らず、例えば原子炉の場合は、原子炉の設置許可、それから次の段階で工事計画の認可、また、その工事をした中身がその通り造られているかどうかを国が確認するという、使用前の検査、こういった様々な段階において国のチェックが入ってございます。
審査においては、更に我々審査した結果を原子力安全委員会が再度チェックするという、ダブルチェックシステムも用意されているというところでございます。
こういった最近話題になっておりますような、データの偽造などという問題は、原子力のケースにおいては、起こりにくい状況ではあると思います。ただ、偽造が起こらないかといえば、それは我々のチェックの中で当然抜けてしまうものもあるわけでございます。それ自体我々全て100%否定するわけにはいかないと思ってございます。こういったことも我々あるわけでございますので、原子炉等規制法においては、申告制度というのも別途用意してございまして、申告者の保護をはかりながら、こういった内部状況についても我々対応することによって、そういったものをなくすようにするというようなことを対応しているわけでございます。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。それで、まだまだ手が上がるのはわかるんですが、予定の時間を延長してるんですけども、だいぶ経ってしまいました。今日は6人のパネリストの皆さんと一緒にプルサーマルの安全性について考えてきたんですけども、会場の皆さんまだご質問あろうかと思いますが、だいぶん時間も過ぎましたので、最後にもう一度、このパネリストの皆さんとご意見を一言ずつお伺いしながら、皆さんの胸にそれぞれ引き受けていただいて、プルサーマルを考える一つの基準にしていただきたいというふうに思います。それでは、まずお一人ずつ伺いますけど、まずは山内さんから。皆さんへのメッセージでも結構です。
【神戸大学海事科学部 山内助教授】
はい。今日はプルサーマルの問題のところに地震の議論が抜けているじゃないかということで、地震の議論は持ってきたつもりでおります。少し津波の話なんかも出ましたけど、神戸等では港湾で津波の際に船舶が燃料、液化燃料のタンクに、そういうところにぶつかるんですけれども、それをどう回避するのかということが大問題になっています。原発の方なんかでも、取水口の水位がたぶん問題になると思うんですけど、やはり今後とも、プルサーマルも勿論なんですけど、地震の方、現に皆さんの近くで地震があったわけですから、考えられる。考えるというのがまず大事じゃないかというふうに思いました。
プルサーマルのかなり細かな物性値とかの話だったんですけど、一般的な印象でもよろしいでしょうか。実は大学のいた研究室が材料系だったので、MOXの融点が何度だとか、ウランの酸化物の融点が何度とかいうのは、試験の時に覚えさせられるんですよね。勿論その数値は今日も変わってないんですけども、10年経ってもまだ後の議論をされているというようなことも議論になったんですけども、どうしてこの10年、20年の間にもっと融点が高いとかね、もっと熱伝導度の高い燃料とかね、そういうものを推進側の人が作れてないのか。
今日、かなり議論になったのは、安全余裕がどうしたこうしたという議論で終始して、なかなか本質までいかなかったと思うんですよね。そのへんの話じゃなくて、どうして70℃なら70℃。小さいと言うならもっと高い、もっと性能のいい燃料を作ればいいわけで、そういうような議論が、そういった努力がなされていないのかなという印象を、私は今全然燃料を触っていませんからわかりませんけど、進んでないのかなという印象を持ちました。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。パネリストの山内さんでした。続いて森本さんお願いします。
【拓殖大学海外事情研究所 森本所長】
私は今会場で出た質問の中で、最後のご質問に非常に共鳴を覚えるものなのですが、やはり日本の社会における安全神話というのがすごい勢いで崩れつつあるということではないかと思うのです。原子力の平和利用、つまり原発というものがなかなか各地域に浸透しないというか、皆さんの理解が得られない理由は、やはり過去数十年の間に日本の原発でちょっと考えられないような、皆さんが後でおっしゃるような事故が現に起きてきたということだと思うんです。一つ一つの事故は大変不幸な偶発的な事故だったんですけども、日本の社会の中で我々が考えないといけないのは、我々が守らなければならない基本的なルール、規律というものがどこかで弛緩してきて、社会そのものに非常に強い緊張感がなくなってきているということか、あるいは、その中にいる個々の我々が少しモラルが低いという状態が、現象としてこういう事故を生んできたんではないかと思うんです。
原子力の平和利用というのは、絶対に事故があってはならない分野の仕事で、そういう意味では我々は絶対安全ということは、世の中に絶対なんていうことはないわけですから、常に緊張して、努力をしながら、努力をしながら、自分達が決められたルールをきちんと一人ずつが守ると。もしそれでも問題があるというなら、その決めている規律そのものが間違いなわけで、そういう自分の身の回りの問題を常に見直して、見直して生活をしていくということをしないと、これは何も原発だけの問題ではなく、我々の日々の生活、ここから、この部屋から出て車に乗る時からそうだと思うんですけど。
今回の耐震偽装というのは、私は日本社会の中で特異な事件ではなく、我々の中にある日常の生活の問題がこういう形で表れた、ある種の日本社会の氷山の一角なんではないかと思うんです。そういう意味で、我々がよい社会を作るために、安全な社会を作るために、一人一人がこれから心掛けていかなければいけないということなので、そういう意味では今日のこのシンポジウムを通じて、我々はもう一度、自分達の身の回りをもう一度見直して、自分達でなんとなくやってきたことというのが、本当に正しく行われているのか、自分達が守っているルールというのが、本当に正しいのかということをもう一度見直すと、そこから私は安全管理というものが始まるんではないかと、私は思うわけです。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。パネリストの森本さんでした。続いて小山さんどうぞ。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
私は、関西に住んでおりますので、美浜3号機の事故にずっと関わってきておりました。美浜3号機の事故が起こしたのは、予想外に老朽化が進んでいるということが明らかになったわけです。そして全体の中で、原発全体が老朽化が進んでおります。それが60年今からまだ使おうかという発想も出ておりますが、他方では、新増設とか、新規立地というようなものは殆ど出来ておりません。これは資源エネルギー庁が作ったグラフを見ても明らかで、ガターと落ちております。だから一口で言いますと、原発というのは黄昏の時代と言いますか、そういうところに入ってきている。老朽化という問題は、本当に真剣に取り組まないと、いつ事故を起こすか分からないような、そういう時代に入ってきているということだと思います。
そういうところで、プルトニウムが今まで海外で再処理したものが、たまたまそこにあると。だからそれを使うということになるわけですが、九州電力が16体ずつMOX燃料を入れていきますが、それは3回ないし、せいぜい4回入れるだけの分しかありません。プルトニウムがありません。その後どうなるかというのは、全く見通しが立っておりません。六ヶ所で動かして、プルトニウムを分離して、そこにまたMOX燃料工場を新しく六ヶ所に作って、そこでMOX燃料が初めてできる。それがいつになるか、なかなかわからない。2012年頃とか言われていますけれど、見通しが立っておりません。
ですから、皆さんは今すぐ慌ててプルサーマルを判断するようなことは全然する必要はないと思います。ゆっくり考えて、本当にこれで大丈夫なのかどうか、ゆっくり考える時間は十分あります。今慌てて決める必要は全くないと思います。
それから使用済MOX燃料一つだけとっても、どうなるかという見通しが全く立ってないから、今引き受けたら、そのまま永久に置かれる可能性は勿論あるわけですよね。そういう見通しが全く立っていない段階で慌てて決める必要は全くないと思います。まだまだ皆さん、これは皆さんの選択される問題ですから、よくよく議論して、十分な納得された上で判断されるように希望します。以上です。
【中村コーディネータ】
はい。ありがとうございました。パネリスト小山さんでした。続いて小出さん、どうぞ。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
今日は一番始めに聞いていただきましたけれども、プルサーマルをやるということは、まずは安全性を犠牲にします。経済性を犠牲にします。これはひどいものです。九電の方がよくご存知だと思います。それから資源的には殆ど意味がないという、そういうものです。でもなんでそれをやらなければならなくなってしまったかというと、国が進めてきた原子力政策が破綻したからなんです。思ったようにはいかなかったからなんです。これからも原子力というのは、思ったようにいかないことは山ほど出てきます。今、小山さんがちょっとおっしゃったけれども、MOXという燃料を玄海で燃やした後の使用済燃料をどうするのかというと、2010年頃から再処理をするかどうか考えると言っているわけですけれども、考えたところでいい名案が出ないなんていう選択だってあるわけです。本当に望んでいる通りにはならなかったというのが、これまでの原子力の姿なわけですから、皆さんはもしMOX燃料を受け入れる、プルサーマルを受け入れるというならば、今国が説明していること、あるいは九州電力が説明していることが、その通りにはならないかもしれないということを必ず含んでおいていただきたいと思います。
【中村コーディネータ】
ありがとうございます。パネリスト小出さんでした。続いて、大橋さんどうぞ。
【東京大学大学院 大橋教授】
まず最初に、原子力技術というのは一般公衆の方に顕著な放射線影響を与えないということを、最大の目標にスタートした技術です。論理の倒錯が起こるんですけども、何かあっても大丈夫なように施設し、仮に何があっても、重大事故、仮想事故がそうですけど、仮に何があってもこうだと、仮にこうなってもという検討をするわけです。そうすると、それは起こるんだろうという議論になるわけです。先ほどの原子力賠償保険もそうで、もしこうなったら、こうなったらという、その最果てにそういう制度があるんですけど、それが逆に見れば、いやそれはやっぱり起こるだろうという捉え方をされるのがとても残念です。
もう一つは、プルサーマルの安全性について、私は今日簡単にご説明をしたんですけど、本当に専門家として、どうしてこういうことをこんなふうに議論する必要があるのかと思うくらい、何の問題もないと思っています。原子力にはたくさんの技術者がメーカーだとか、電力だとか、行政庁だとか、我々も参加していますけど、誰一人そんな危険なものを地方に押し付けて、危険だと分かっているのを地方に押し付けようなんていう人は誰もいないと思います。
ですから、ただ一点私が大変気になりますのは、皆さん今度はイデオロギー論争に巻き込まれたり、また原子力発電所があるから不安に思っておられるというのは、とても残念です。原子力発電所というのは、皆さんが思っている以上に安全です。そこに何か社会的インフラストラクチャーの施設があるよりもはるかに安全だと思っています。以上です。
【中村コーディネータ】
パネリスト大橋さんでした。続いて、出光さんどうぞ。
【九州大学大学院 出光教授】
技術的な話はたくさん言いましたので、答えられなかったものについては、後日お答え致しますということで。
私も冒頭にも言いましたが、東海村という所に住んでいまして、再処理工場もあるし、原子力発電所もあると。そこに7年半住んでおりまして、その後ですが、一時期スイスに1年間行ったことがありますが、その住んでいる場所のすぐ近くに、今日の資料の表には載せておりませんが、ベツナウという炉がありまして、そこにはもうMOXが入っていました。そこで1年間暮らしまして、周りの人の様子をみましたけど、特に変わった様子もないし、偶然ですけど、子供が通っていた学校の家庭科の先生のご主人がちょうどベツナウで働いていたとか、一緒に話をしたりして、特に普通の家庭のようになっておりまして。ただ、スイスの人を見ていてうらやましいなと思ったのは、原子力発電所に勤めている人、あるいは研究所に勤めている人、原子力をやっている人は非常に尊敬されていたんですね。住んでいて、そこの研究所に行っていると言うと、一目置かれるというか、そういうふうに特別なふうに見てもらえると、お前はちゃんとしたことをやっているというふうに見てもらえます。アジアから来て、ヨーロッパ圏にアジア人が住んでいると、意外とうがった目で見られることもあるんですが、そこの研究所に勤めているというだけで尊敬をされると、あるいは発電所に勤めているというだけで尊敬をされるということで、どれだけ地元に根付いているのかというのが実感できました。
あと、研究所、プルトニウムMOXやっているところですけど、近くに農場とかいっぱいありました。研究所から時々、周りに牛が放牧されていまして、カランカランという牛のカウベルが聞こえてくるという、そういうのどかな所で研究をやっておりましたけれども、特に風評被害というのは起きていませんでしたし、他の所と変わらないような生活がちゃんとできておりました。ということで、プルサーマルについて、急ぐ必要はないという話もありますが、できるものはやった方がいいし、全然経済的なメリットも資源的なメリットもないと言いますが、使うと、例えば1トンの燃料を処理しますと、燃料250キログラム分のウラン、プルトニウムが回収できます。25%。プルトニウムだけを見ても13%、MOX燃料130キログラム分回収できます。これはものすごい資源だと思います。ですから、資源の有効利用という観点ではこのまま進めていきたいというのが私の意見です。
【中村コーディネータ】
今日は佐賀県の主催でプルサーマルの安全性を考えるということで、公開討論会を行ったわけですが、勿論この安全性から少し幅が広がって本質論とか、政策論とか様々なところまで、パネリストの皆さんのご意見は広がりましたけれども、会場からも熱心なご質問をいただいて、国や九州電力からもご回答をいただきましたし、パネリストの皆さんもまた会場の皆さんのご質問に対して真摯にお答えいただいて、本当にありがとうございます。
予定の時間を30分も過ぎてしまったんですけども、皆さんに感謝致します。この長い時間、最後まで熱心に参加をしていただいた皆さんに感謝をして、本日の公開討論会を終わらせていただきます。ありがとうございました。
終 了(17:30)
今こそ、「主権者は私たち国民」、声をあげよう!!!
↓(ツイッター)28SOBA ↓雑談日記 ↓クリックで地図 TBP主権者は私たち国民↓について
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
- Re: テスト SOBA 2011/11/24 15:55:38 (2)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。