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2011年8月19日 (金)
NY株価急落が発する財政再建原理主義への警鐘
米国の株価下落を起点とする世界連鎖株安が収束していない。収束するどころか、その影響が拡大し始めている。
株価変動は経済変動を先読みすると言われる。株価急落はその後の景気急落の先行指標である。問題は、経済の悪化、株価の急落が金融不安を引き起こすリスクである。
最重要の認識は、2008−2009年に深刻化したサブプライム金融危機からの脱出が完全には完了していないことである。
サブプライム金融危機の最大の特徴は、この危機が金融原商品ではなく金融派生商品の価格崩落を契機に発生した点にある。サブプライムローンそのものの残高は1兆ドルから1.5兆ドル程度の規模に過ぎなかった。
米国不動産価格の下落は2006年のピークから2009年のボトムまでで40%程度に過ぎなかった。すべてのローンが仮に住宅価格のピークで組まれたものであったとしても、ローンの損失は最大で0.5超ドル程度に留まることになる。この規模の損失であれば、世界の金融市場が震撼することはなかった。
世界の金融市場が震撼したのは、米国住宅価格指数の下落に伴って顕在化した金融商品の損失が金融原商品の損失によるものではなく、金融派生商品の損失によるものであったからだ。
金融派生商品=デリバティブ金融商品残高は際限なく膨張し、その想定元本合計は600兆ドルから800兆ドルにまで達したと見られている。想像を絶する残高の膨張である。このなかのわずかに1%が損失に転じるとしても、その金額は6兆ドルから8兆ドル、円換算で500兆円から600兆円に達するということになる。
2009〜2010年にかけて金融市場が落ち着きを取り戻したのは、この期間に主要国が経済政策を総動員したことによる面が大きい。とりわけ、米国、日本は超大型の財政政策を発動した。加えて超金融緩和政策が実行された。
さらに金融機関への資本増強政策も実行され、これらの政策対応を反映して、株価は反発し、経済も回復に転じたのである。
ところが、喉元過ぎて熱さ忘れるである。米国も欧州も、そして日本も、一転して、超緊縮財政に転換する兆候を示し始めている。
『金利・為替・株価特報』第138号=2011年8月12日号を同日発行した。
タイトルは、
「世界連鎖株安原因は米欧財政再建原理主義」
目次は以下の通り。
<目次>
1. 【概説】財政再建原理主義台頭という暗雲の広がり
2. 【政局】政権交代の原点への回帰の是非を問う民主代表選
3. 【株価】世界連鎖株安の原因
4. 【株価】割安な日本株価のゆくえ
5. 【為替】巨額損失を垂れ流す財務省外貨準備運用
6. 【金・原油・中国】世界経済悪化を織り込み始めた原油価格
7. 【為替】変わらない円高傾向
8. 【投資】投資戦略
世界連鎖株安の原因では、以下の三つのチャートを掲載した。経済政策が株価・経済に極めて重大な影響を与えることを歴史上の事実で表示するものである。
1996年も2000年も、日本経済はいったんは浮上した。株価は大幅に上昇し、経済も確実に回復軌道に移行した。ところが、1996年は橋本政権が大増税政策を強行実施し、2000−2001年は森・小泉政権が超緊縮財政政策を強行実施して、日本経済を破壊してしまった。
現在の米国は、1996年および2000年の日本と類似した状況にある。ここで求められる対応は、経済の回復を持続させる経済政策である。財政赤字が拡大したことに目を奪われて、超緊縮財政を強行実施すれば、経済は破壊される可能性が高く、株価は急落し、金融不安を再発させる。
今回の局面では、このような政策失敗を米国だけでなく欧州ならびに日本も実行する可能性が浮上しているのだ。
財政収支改善を目的とする超緊縮財政政策の実行が、当然の経済政策対応であるとの論調が蔓延しているが、蔓延する論調が正しいとの保証はどこにも存在しないことを認識するべきだ。
主要国が超緊縮財政政策を強行実施してゆく場合には、2011年から2012年にかけて、世界の金融市場は再び、大波乱に見舞われる可能性が高まることを十分に覚悟しなければならなくなる。
株式市場の現状は重大なリスクに対する警鐘を鳴らしているものとの謙虚な受け止め方が肝要である。
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