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投稿者 しゅっぽ 日時 2011 年 7 月 30 日 09:19:06: ei5oaPhNA8VWQ
 

「メディアには何をやられても、メディアでやり返せばいい。」石川知裕氏と佐藤優氏が緊急対談
2011年07月30日07時00分
http://news.livedoor.com/article/detail/5715346/


「禁錮2年」の求刑は検察のシグナル

石川知裕(以下、石川):こんばんは。衆議院議員無所属の石川知裕です。7月20日、検察側からの論告求刑において、禁固2年が下されました。この2年間、西松事件から始まった陸山会事件、この中で検察とマスメディアが、どのような動きをしてきたのか。先日、『悪党ー小沢一郎に仕えて』を出版しましたので、佐藤優さんと『平成の悪党はこうして作られた』をテーマに、対談を行ないたいと思います。

佐藤優(以下、佐藤):私は6月30日に折り返し地点を超えましたよ。というのも、私は最高裁で懲役2年6カ月が確定しまして、2013年6月30日に執行猶予が切れるんです。それまでは本籍地は刑務所にあって、今ここにおりますのは仮の姿です。今回、石川さんは禁固2年を求刑されたわけですが、実は業界的に、「禁固」は面白いんですよ。

石川:面白いというと?

佐藤:検察が『ムショにぶち込んでやる!』という時は、3年以上を求刑してくるんです。つまり、2年というのは『執行猶予でもいい』ということ。シグナルなんですよね。つまり、思ったよりも検察は腰が引けているというのが、石川さんの論告求刑に関する私の印象です。

石川:大久保隆規さん(小沢氏の元公設第一秘書。石川氏と共に逮捕・起訴された。)は、3年6カ月だから......。

佐藤:それは『お務めに行ってくれ』ということ。実は3年というのが、大きな分かれ目なんです。業界内の目安なんですよ。禁固2年が、懲役1年に値します。禁固はあまりないんですよ。例えば皆さんでも、禁固刑を科された方はあまりいないはず。禁固刑で刑務所に行くのは、だいたい交通事故関係。交通事故を2度と起さないための講習が中心で、懲役の労働がないんです。

使い心地が良い「刑務所の石鹸」

石川:実際に禁固を科されても、懲役に変えてくれと頼む人がいるようですが。

佐藤:正確に言うと、誓願労働というのがあります。つまりお願いして、仕事をさせてもらう。東京拘置所に入った時、部屋にマニュアルがあったでしょう?

石川:ありました。

佐藤::あのマニュアルには誓願作業という項目があって、そこに書いてありますよ。私はあのマニュアルをコピーして、外に出したいと思ったんです。そうしたら拘置所の職員の人が『駄目だ』というんで、ノートに全部写した.。

石川:「獄中記」で、そのことを書かれていましたよね。

佐藤:「獄中記」の岩波現代文庫版には、私が書き写してきた『獄中での生活の手引き』が付いてます。そこに、この誓願作業の説明も書きました。実は、私は刑務所で作られた製品を愛用しているんです。例えばノートならば、『府中ノート』なんてものがあります。これは通販で買えるんですが、懐かしくて今も使ってるんですよ。
実は今探しているのが石鹸なんです。洗濯用の石鹸は、通販や共生店で買えるんですが、あの中で使っていた『横須賀』って書いてある石鹸が欲しい。おそらく横須賀刑務所で作られているはずなんですが。どこにないか、探しています。

石川:私なんか、拘置所から持ち帰った石鹸なんて、なくなってホッとしましたけれどね(笑)。

佐藤:拘置所は差し入れがあるでしょう。中で配られている石鹸は使いましたか?

石川:そうですね、差し入れでもらった花王とか使っていたかな。

佐藤:差し入れが入らない人のために、白い石鹸があるんです。これが横須賀石鹸。最初の数日間使っていたんですけれど、使い心地が良い。だから、『一切石鹸は差し入れするな』って言って(笑)。
それからもうひとつ、『熱海』という石鹸もあるんです。熱海には刑務所はないはずなんですが、これは灰色の洗濯用でした。......おっとこんな話を続けていて、肝心の政治の話ができていませんでしたね(笑)。

石川:拘置所に入る予定の方は、よく読んで準備して下さい。

ロシアでの小沢一郎

佐藤:今回、『悪党』を読みましたが、本当に正直に書けていますね。

石川:比較的、小沢さんに遠慮せずに書けましたし、自分の気持ちをそのまま表せたと思っています。

佐藤:小沢さんは読んでいますかね?

石川:あまり本を読まない人なんで、読んでいないと思います。

佐藤:もし読んだら、どんな反応をすると思います?

石川:以前、AERAの記事を持って行って、『本を書きます』と言ったんですが、その時もほとんど読んでいなかった。例え読んだとしても、『う〜ん......』と黙ってるんじゃないかな。

佐藤:黙っていると思うんだよね。実はこの本の中で、私と小沢さんの関係について、今まで私が話していなかったことが書かれているんです。
それは1994年5月、小沢さんが奥様と一緒にモスクワに立ち寄られた時のことです。私はアテンド係を担当していて、その後しばらく、小沢さんの所にモスクワから連絡を入れる仕事もやっていたんです。

石川:ロシアのミハイル・ザドルノフ元財務大臣が来日した時、画家の村山さんから、小沢さんに会って欲しいと言われたんです。それで『ザドルノフがどんな人か、佐藤優君に聞きなさい』と言われたのが、最初に佐藤さんとコンタクトを取った経緯ですね。

佐藤:電話頂いて、出向いてくると言われたんですけれど、その必要はないと。『ザドルノフは有望な人で、ロシアの中ではヤブリンスキーブロックに属している。ボリス・エリツィン氏とは距離があるが、実務家として高く評価されている。自民党の桜井(新)との関係が深い』。そんな情報を、ファックスで石川さんに送った記憶があります。

石川:以来、私が逮捕される直前まではご縁がなかった訳ですが。

佐藤:外交官や官僚は、どうしても時の政権与党と付き合います。私の場合は北方領土の件を進めるとなると、どうしても自民党との関係が中心でした。ただ、小沢さんの所にも96年までは行っていたなぁ......。96年のロシアの大統領選挙の結果報告をした記憶がありますから。

石川:当時、私はまだ書生です。96年は新進党になってからですね。

佐藤:モスクワで、小沢さんとシベリア餃子(水餃子)を食べたんです。奥様もいて、『あまり油強くないですか?』って聞かれて。ウォッカもかなり飲みました。大使館の連中もいたけれど、小沢先生はボトル2/3くらいは飲んでましたよ。

石川:あまり洋酒を飲むイメージはないですね。

佐藤:『これは美味い』とおっしゃって、ロシアにいる時は、ずっとウォッカで通してましたよ。

石川:郷に居れば郷に従えで、現地のお酒を飲んでいたんですね。

佐藤:その時、こう言われたんです。『ロシア人は約束を守るか?』と。これはポイントの質問なんです。私は『なかなか約束しないが、した約束は守る』と答えました。そして、『ゲンナジー・ブルブリスは頭がいいな......』と。
ブルブリスはロシアの国務長官をやっていて、北方領土返還をロシアで最初に主張した人なんです。『北方領土はスターリンが日本から奪い取ったものだ。現在のロシアの課題はスターリン主義的なソ連の負の遺産から脱却すること。それが国内における民主化であり、市場経済化だ。かつてソ連がやっていたような、大国主義外交や侵略外交を自発的に克服することが、ロシアの国益に貢献する。あんな過疎の島は、日本人がいらないと言っても、ロシアは返さないといけない。それによって国際的な地位は向上する』。
そんな話をブルブリスはしていました。

石川:ロシア高官がそのような発言をするのは、珍しいですよね。

佐藤:彼が天才的に頭が良かったからでしょう。来日した時に、彼は小沢さんにも会っています。小沢さんも、『あの男は実に頭がいい。ロシアの国益をよく分かってる』と言っていたことが印象に残っています。だから私は期待していたんです。当時は羽田(孜)政権の時でした。小沢さんの流れで行けば、北方領土は相当動くだろうと。

鈴木宗男と小沢一郎

佐藤:面白かったのは、小沢さんは鈴木宗男さんの話もしていたんですよ。
『鈴木宗男氏は自民党の人だけれど、地元として本当に一所懸命この問題に取り組んでいる』と。
その後、7月くらいに自民党の代表団がロシアに来たら、『小沢の野郎ぶっ飛ばしてやる。モスクワで何をしていたのか。誰なんだ担当したのは?』って言われたんですけれどね(笑)。大使館の連中も、私(佐藤)がやっていたなんて、口は割らない。
その後、鈴木さんがロシアに来た時も、小沢さんの話をしていました。『小沢さんたちと、自分がやろうとしていることは、方向性は同じ。ただ、問題はスピードなんだ。小沢さんは速過ぎる』って。

石川:北方領土の問題だけでなく?

佐藤:政治改革も含めてですね。『今の自民党のままでは駄目なんだ。だから、村山富一には票を入れなかった』と、鈴木さんは言っていた。2回とも首班指名で海部(俊樹)に入れたのは、実は小沢さんのやっている方向性が、基本的に正しいと思っていたからだった。

石川:鈴木さんが、海部さんに投票した事実は、あまり知られていませんね。

佐藤:2回も票を入れた人は鈴木さんだけだった。その時に、ある外務官僚から鈴木さんの所に手紙が届いたんです。『感動しました。素晴らしいです。これが政治家のありかたです』と。
これを送ったのが、丹波という人で、私は、彼と戦争しているんです(笑)。最近、彼が『我が外交』という、『人生には悔いはあるが、恥はない』という、恥の固まりみたいな本を書いて(笑)。でも、鈴木宗男に関する記述はまったくなかった。

石川:私も購入しましたが、まったく記述はありませんでした。

佐藤:小沢さんとの関係も、『私は小沢に近いと言われて迷惑だ』と。手を擦り足を擦り近づいてね。本の宣伝になるのはよくないけれど、マスコミ操作術とか、色々書いてあるんですよ。

石川:小沢さんに関しては、『いつも怒鳴る人だ』と書いていましたね。

佐藤:『NHKの記者を上手く使え』なんて書いてあるんですけれど、私はその現場を知ってるんです。『小沢が私を利用したんですよ。野中(広務)先生にちゃんとつないで下さい!』なんて、鈴木さんに言ってる。『君からも言ってくれ』なんて私にも言われたりしてね。それでNHKの記者に頼んで、アポを取付けてもらった。それで『自分は反小沢だ』と散々アピールしていた。

秘書が見た小沢一郎の裸

佐藤:ところで、小沢さんについてですが、政治家が一番隠したがるのは健康の話です。今回、『悪党』には、その辺りもしっかり書いてあった。小沢さんの裸の姿を何度も見た事があるんですね?

石川:そうですね。書生の時は、風呂上がりを見ますから。都市伝説に『イギリスに行って心臓手術をやった』とか、『小沢の胸には心臓出術の傷がある』なんて言われていましたが、そんな傷はまったくなかった。こうした都市伝説をひとつひとつ正して行くべきです。

佐藤:ただ、心臓病は間違いないんでしょ。

石川:心臓病は持っています。私が事務所に入る前に心筋梗塞をやっているはずです。スーツの左ポケットに、ニトログリセリンが入ってますよね。

佐藤:それから印象に残ったのが、小沢さんと一緒に食事しても、彼は手酌なんですね。『お注ぎします、先生』と言われると、『いや、計ってるから』って。

石川:必ずビールもお銚子も、自分で何本飲んだか分かるように計ってます。私もふたりで飲みに行った場合は、お互いに手酌です。

佐藤:石川さんに教えてもらったんだけれど、小沢さんは医者から3つのうち2つを止めろと言われたんでしょ?

石川:肉とタバコと酒です。心臓病を患った後、酒は人生の楽しみだから止められない。それで、タバコと肉を止めました。でも、節目節目のトンカツは食べてましたが。

佐藤:せっかくこういった機会ですので、Twitterで質問を受け付けます。キツい質問でも、できるだけ逃げませんから、是非送って下さい。双方向性を担保したいと思いますので。

さて、小沢さんの所でお仕えしていた石川さんですが、本の中に面白いエピソードがありました。小沢さんがゴミ箱をあさって、捨てられたレトルトカレーを見つけて来て、『なんで、捨てたんだ!』って叱られる。

石川:あれはビックリしましたね。蓼科の別荘での出来事なんですが、賞味期限が切れていたし、当然ゴミ箱に捨てるでしょう? 一年に1回しか、そこに行かないんですよ。だから棚にあるものを整理して捨てていたら、後からそれを持ち出して、ネチネチ虐めるわけですよ。『確かめれば、食べられるだろう』とね。

佐藤:小沢さんって、ケチなの?

石川:ん〜、ケチと言えば、ケチですけれど。

佐藤:でも、石川さんだって、今回の事件では4億円ものお金が、ズズズッと出てきた訳でしょう? そんな大金が行ったり来たりしている状況で、捨てたカレーを持ち出して来るのか......(笑)。

石川:本にも書きましたけれど、締めるところは締めて、使う所は使えと。

佐藤:カレーに関しては、締める所と認識している訳ですね。

石川:あと言われていたのが、『人とは、実際に会って自分で判断しろ』と。つまり、カレーも自分で味見して確かめるべきだった。このような教訓めいたことを教えたかったんでしょう。でも、まさかゴミ箱から、取り出して来るとは思いもよりませんでしたが(笑)。

佐藤:ゴミ箱チェックをしてるって事ですよね。猜疑心が相当強いのかな。

石川:そうですね。後藤謙次(共同通信社元記者)さんの本にも、猜疑心の事が書かれていました。例えば、メール事件(2006年の堀江メール事件)がありましたよね。小沢さんだったら、あのような事にはならなかったと思います。二重チェック、三重チェックでその人物を調べていたと、当時も思いましたから。

仙谷由人と小沢一郎

佐藤:前原(誠司)さんは、メール事件を反省していて、以降は状況をチェックするようになったようです。要するに野田(佳彦)さんの所から来たため、情報に文句をつけてしまうと、野田さんとの関係がギクシャクすると、前原さんは考えてしまった。でも、情報分析はそれでは駄目なんですよ。

石川:政治家は、人間関係を大切にしないといけないですから、当然ではあるんですが。小沢さんは修羅場をくぐっているので、他の角度からチェックすることをしますよね。

佐藤:今、小沢さんの一番の天敵といえば仙谷(由人)さんでしょう。

石川:間違いなくそうですね。

佐藤:私はこの本の価値を高めたのは、仙谷評だと思うんですよ。


小沢頼みから脱却しなければならないと、仙谷さんは言っている。我々ひとりひとりの政治家は、自分自身の考え方をまとめ、小沢一郎への依存から脱却し、自らが政策をかかげ、それが日本の指針となるような、または対立軸となるようなものを、作り上げなければならない時期にきている


「悪党」より

おそらく、小沢グループと言われている人たちの中で、仙谷さんの言っていることを『これはフェアだ』なんて言える人はいないと思う。
しかし、そのあとに『一度、小沢一郎に総理大臣をやらせてみたいと思っている国民が多いのも事実である』と続けているけれど。その国民のひとりが、石川さんであるのは間違い。
今の民主党の混乱について、小沢側にいるひとりの政治家として、そしてバランスの取れた『仙谷観』を持っているひとりとして、どのように見てる?

石川:離党してさらによく見えるようになりました。民主党の中で、小沢さんの考え方そのものを分かっていて、小沢さんを支持している人はあまりいないんです。自分の考えがないから、『力のある小沢さんだろう』と考えて、小沢グループにいる人たちも少なくない。彼らは自分の頭で考えていません。
仙谷さんは民主党の中に何かしら『小沢神話』があると指摘しています。メール事件の後、小沢が出てきて終息させた。政権交代の時も小沢が出てきた。それ以前に新生党を作った時と同じようにです。神話信仰から、脱却しなければならない。
でも一方で、野党時代に安定的な党運営を行なっていたのも小沢さんでした。私は彼に1回首相をやらせてみたいと最後に書いたのは、私の本音です。事実、そのような気持ちを持った人が、ある程度はいるんじゃないかと思っています。

佐藤:そのような若手が増えてくれば、民主党ももう少しまともになると思う。私はこの『悪党』という本が、そのような読まれ方をして欲しいと思っています。つまり、民主党の小沢派の人たちは、小沢さんをもっと突き放して見る。彼がどのような機能を果たしているかと。少なくとも悪党の一味であることを、きちんと認識しなければならない。反小沢派は、とにかく小沢を怖がらずに、小沢と言うのは一体なんなのか、小沢の内在論理を見て欲しい。

石川:結局、親小沢というのは自分で味を確かめないで、ただ『これは美味しいから』って思い込んでいるんです。

佐藤:そんな奴は絶対に後で裏切るから。

”酷い人間模様”

佐藤:鈴木宗男さんが全盛時、赤坂のステーキハウスで『ムネムネ会』が開かれたんです。これはその後、鈴木会につながる派閥横断のグループでした。経世会の小渕派・橋本派の中にあって。
当時、鈴木さんは橋本さんの事を、どこまで尊敬していたのか分からない(笑)。いつも『ポマード』とか呼んでいたし。橋本さんも『こら、鈴木!』なんて怒鳴ってたしね。小渕さんも『おい、鈴木〜!』って感じだったから、可愛がられている子分という雰囲気ではなかった。

でも、このムネムネ会は本当に結束が固かった。ある時、こんな事がありました。チェチェン情勢の説明のために、赤坂のステーキハウスに行ったんです。そしたら、みんなでワインの一気飲みをやっていた。『先生を総裁に!』って気勢を上げているんです。
すると、ひとりの国会議員が私にからんできた。『君たちみたいな官僚は、鈴木総裁に忠誠を誓っているように見えても、何かキツいことがあったら必ず裏切るだろ』って。そうしたら、鈴木さんが血相を変えて、『あんた、今何を言ったんだ。佐藤さんは本当に一生懸命やっている』って言ってくれた。
お開きになった後、非常に珍しいことなんだけれど、鈴木さんに『佐藤さん、少し時間があるか? ふたりで飲もうや』って誘われて、赤坂の細い通りにある......。 

石川:TBS通りをスッと左に入った......。

佐藤:そうそう、その辺りを歩いていたら、『今日はすまなかったな。不愉快な思いをさせてしまった。絡んだ奴はきっと裏切る』と言っていた。
あの時、鈴木さんがえらく寂しそうだった。そういった政治家や外務官僚が、鈴木さんを付け回してくるわけ。それが年間2〜3億円になるんですよ。それなのに、檻の中に入ったら(議員)辞職勧告決議をやる。

石川:私もそうでした。

佐藤:その時、弁護士から連絡があったんです。ムネムネ会のメンバーの人たちが、野中広務さんに頼んで、野中さんから弁護士に連絡があった。『我々としては、なんとしても鈴木先生と一緒にいたいので、議員辞職勧告決議には反対します』と連絡して欲しいと、野中さんに言ってきた。
でも、それは計算ずくなんです。そんな事を言えば、鈴木さんは絶対に『生き残ることが重要だから、お前等は賛成しろ』と言う。結果、議場ではひとり残らず賛成するわけ。逆に鈴木さんと距離のあった、河野太郎さんみたいな人が、議場から飛び出しちゃったりしてね。
これは検事にも『酷い人間模様だね』って言われましたよ。だから、そんな光景が今でもフラッシュバックするんですよね。

「とにかく石川さんが自殺しないようにすることを考えた」

佐藤:そこで、石川さんのことですが、私が本気で付き合おうと思ったのは一昨年、2009年10月だったと思う。この時、石川さんから電話がかかってきた。この本の中にも内容が書いてあるけれど、石川さんに関する疑惑がまず読売新聞で報じられたんですよね。

石川:2009年10月16日ですね。

佐藤:そうしたら、ある経済関係の新聞記者が来て......。

石川:1紙しかないですよ(笑)。

佐藤:石川さんの秘書に、『検察が石川は階段だ』と言ってると伝えてきた。そして、私に『階段とはどんな意味ですか』と質問の電話をくれました。『そうか、階段って言ってるのか......。つまり、石川は小沢一郎につなげるための階段である』と。それは『外務省のラスプーチンこと佐藤優は、鈴木宗男につながる階段だった』と一緒です。だから、もう逃げられない、確実に捕まりますと言いました。

石川:この時点でも信じられなかった。佐藤さんから『石川:さん、もう間違いなく逮捕だから』と言われても、信じられない。『1月15日の松の内辺りが危ないから、とにかく甘く見ないほうがいい』って言われても、現実が見えなかった。

佐藤:一番最初に考えたことは、とにかく石川さんが自殺しないようにすること。どのような心理状態になるか、私自身の経験に照らし合わせた。それから鈴木さんの様子、そしてもうひと浮かんだのは、自殺した松岡利勝(元農林水産大臣)さんのことでした。実は松岡さんとの付き合いは1989年から。鈴木さんより長いんです。

石川:そうなんですか、意外ですね。

佐藤:時々電話をもらっていたんだけれど、あの人は本当に人情味があって。私がこうやって作家として復活する前の時にも連絡があってね。

石川:拘置所から出て、一番不遇の時ですよね。

佐藤:『佐藤さん、良かったらメシを食わないか』と誘ってくれた。赤坂の小料理屋に行ってね。彼が好きなのは肉じゃがとか、野菜の煮付けなど。『冷たいビールが飲みたい』って、ビールを冷凍庫に入れて、少し凍り氷がついたビールを頼んでいました。『これが美味いんですよね』なんて言って。それだけが唯一の楽しみだった。女性がいる華やかな場所に行くとかしない。

どうして私が、モスクワで彼に関心を持ったかと言うと、大使館の連中は政治家を色々な遊び場に連れて行くんです。松岡さんもカジノに連れて行ったけれど、彼は賭け事を一切しない。『私は選挙と言うたいへんな博打をやっていて、本当に何度も夜逃げをしようかと思った。自殺を考えた事だってあるから、他の博打は一切しないんだ』と。それで、面白い人だと思って、付き合いが始まった。『私は弱い人間でね。佐藤さんのお世話になったし、鈴木さんにもお世話になったけれど、何も出来ないんですよ』って。

石川:鈴木宗男さんも、松岡さんからそのように言われたと言っていましたね。

佐藤:彼が農水大臣になって、私も作家になった。そして、例の政治資金規制法の『なんとか還元水』事件が起こりました。メディアからの強烈なバッシングが始まった。そうしたら、『マスメディアへの対応はどうすべきか』と、電話がかかってくる。
私は『怖がらずに外に出た方がいい』と伝えた。それから、『なんとか還元水の問題は、私でも納得できない。だから、この問題に関しては頭下げて、きちんと説明しないと駄目だ』と。でも、『出せるんですが、迷惑かける人がいる』と言っていた。

これはあくまでも私の憶測ではあるけれど、役人に飲み食いさせていたんだと思う。名前が出たら、その役人が終ってしまうと思って、言えなかったんだと。その後、マスコミの攻勢が強くなって、『私はこれでやっていけるのか......』って、自殺する10日前にも電話がかかってきた。『会いたい』と。あの時、会っておけばよかったと今でも思います。
彼が自殺した日、私はちょうど産經新聞でレクチャーを行なっていました。すると、電話が何度も鳴るんです。電話を取ったら、鈴木さんからで、『松岡は死んだ。今、取りあえず病院に運んでいる。ニュースでは蘇生のために努力をしていると伝えているが、もう駄目だ。あの馬鹿、死にやがって。生きていれば、やり直すチャンスがあったのに......』と。これは初めて石川さんに話すけれど、その時のことが石川さんと重なったんだ。

石川:今日初めて聞きました。

「不可抗力で亡くなれば、この苦しみから逃れられる」

佐藤:松岡さんは、決して気が弱いタイプには見えないでしょう? その人がふとした瞬間に首を吊ってしまった。

石川:私もよく話すんですが、『死にたい』と『死のう』は違う。

佐藤:よく分かります。私自身、クリスチャンだし、自殺する気にはならないけれど、『崖崩れが起きたりとか、何か事故に巻き込まれて、死ぬと楽だなぁ......』とは、当時毎日のように思っていた。

石川:私は飛行機に乗る回数が多いですから、自分で死のうとは思わないけれど、『ここでこのまま墜ちたら、仕方ないな』と。自分には負けたくないけれど、不可抗力で亡くなれば、この苦しみから逃れられるとは、いつも考えています。

佐藤:私の場合は情報屋でしたから、検察も私のことを悪党と思っていて、任意の段階で呼ばないで、いきなり逮捕でした。でも、任意で呼ばれるのも辛かったでしょう?

石川:やっぱり何回も、何回も行きますし、マスコミからは追われます。便所まで追って来られましたから。

佐藤:これは捕まった経験のある人にしか分からないけれど、いくら説明しても、こちらの言うことは聞いてもらえない。それに、調書は言った通りじゃないんだよね。全然違う紙が出てくる。

石川:こちらの昼休みの間に作られたりしますからね。そんな中で、毎日どんなに飲んでも、午前3時に目が覚めるんです。読売新聞の第一報が10月16日にあった時間です。新聞社は2時半か3時に、他に抜かれたくない第一報を出すんですよね。午前3時に朝日新聞から電話がかかってきて、『石川さん、読売新聞にこんな記事が出ますけれど、どうでしょう?』って。
そのことがトラウマになって、逮捕直前はどんなに酔っぱらっていても3時に起きてしまう。あのマスメディアの攻勢というのは、朝起きたら、もう全部の紙面に悪口が書かれているんですよ。週刊誌も気になるし、松岡さんだって相当心労だったんでしょうね。当時の鈴木宗男さんや、佐藤さんの攻撃のされ方からすると、私はまだマシだったのかもしれないけれど......。

郵便物を勝手に開封したテレビ局

佐藤::ただ、私にしても、石川さんにしても、当時は公人でした。やっていることに対する説明責任があります。北方領土に関しては、私と言うか、外務省がきちんと説明していれば、こんな事にはならなかったと思う。事実に基づいて報道される分には、全く構わない。
ところが、事実じゃないところで、特にリークに基づいて話を作られていく。その上、私の頃はリークに対する問題意識が少なかったから、やりたい放題だった。あの頃なんて、ゴミを捨てると、すぐに持って行かれてしまう。

石川:ゴミは家の外に捨てに行きますよね。

佐藤:想定するに、当時はまだお金の余裕があったテレビ局でしょうね。ゴミの中から何かが出て来ないかと......。

石川:そんなことまでやられていたんですか。

佐藤:当時、赤坂の2階建ての小さなテラスハウスに住んでいたんだけど、風呂に入っていると外に人の気配がする。パッと見てみると、格子の入っている風呂の窓の下に、若いお兄ちゃんが座っていてて目が合った。彼らは、私が裏から抜け出すと思っている。
そのうち酷くなってきたのは、郵便ポストから郵便物が抜き去られて、開封されて下に落っこちているの。

石川:私はそこまではやられませんでした。

佐藤::私への疑惑が始まったのが2002年の1月20日くらいで、逮捕が5月14日。約4カ月も続いたから。

石川:それはしんどいですね。私はまだ、2カ月くらいですよね、本格的に報道されたのは12月からですからね。

佐藤:あの時の経験があるから、とにかく石川さんには死んでもらったら困る。そして、石川さんは『階段』だったし、私も階段にされた。石川知裕だって、佐藤優だって、ひとりの人間なんですよ。そうすると、鈴木宗男や小沢一郎につながるための道具として使われるのは、ソ連時代の粛正が重なったんだよね。

石川:階段という物質にされた訳ですからね。

「録音」は卑怯なことであっても、違法なことではない

石川:そして、裁判は論告求刑、最終弁論ということになりますが、色々教えて頂いた中でも、一番は『録音』ですよね。

佐藤:録音に関しては、率直に言えば隠し撮りですから、卑怯なことなんですよ。でも、卑怯なことであっても、違法なことではない。
利用者の皆さんがどう思うのか、率直な意見を聞きたいんですが、私はこう考えました。石川さんのコンピューターの中に重要なデーターが入っていたとしたら、コンピューターを持っているのは押収した検察しかない。それ以外の所からは出て来ない情報なんです。そのような情報が、マスコミから出て来ると言う事は、当局がリークしている。
鈴木宗男さんが、リークに関して質問支持書で尋ねた。でも、『内閣総理大臣名でリークはしていない』と回答している。つまり、嘘をついている訳です。

外交の世界には『相互主義』というものがあって、相手がルールを守らないのであれば、その範囲の中でこちらもルール違反をする。この場合も、相互主義を発動するべきだと。そのためには武器がいる。今回は任意の逮捕ならば、音を取っておくということは、その後に自分を守る武器になると思ったんですよ。

石川:それを、こうやって納得するように説明してもらわなければ、持って行けなかったですよ。

佐藤:最初から使うって訳じゃないんですよ。その後の検察の対応を見て、本当に石川さんの言ったことを素直に受け取って、公判を運営して行くのであれば、文句を言う筋合いではない。

石川:実際、それによって調書がほとんど不採用になったことは、今後の小沢裁判にも大きく影響を与えることです。小沢さんが無罪になったら、一番の功労者は佐藤さんになりますね(笑)。

佐藤:あえて乱暴なことを言うと、小沢さんはどうなってもいい。真実に基づいて、小沢さんが逮捕されたり、有罪判決を受けてもいいと思う。それは私だって、鈴木さんだって、みんな同じです。ただ、事実と違うことをやったら、特にこの政権交代が起こったように、歴史が変ってしまう。

政治の世界で強まるニヒリズム

佐藤:私が今すごく心配しているのは、政治の世界でニヒリズムが強まっていることです。自民党も駄目だったけれど、民主党はもっと駄目だ、と。小沢派も反小沢派も全部駄目だ。強い力が必要で、独裁的な政治家を求めている。これでは本当に嫌な国になってしまう。

石川:今、実際に大阪府知事の橋下(徹)さんや、名古屋市長の河村(たかし)さんが、人気を博しているのは、そのひとつの動きとみていいのでしょうか?

佐藤:そうですね。河村さんはよく知っているでしょう?

石川:ええ、よく知っています。

佐藤:河村さんと橋下さんはずいぶん違います。河村さんの減税って発想に関しては、税金を多く収めるのは金持ちだし、金持ちにとって彼の政策はプラスになるんだけれど、それが『減税』って言葉から見えて来ない。

でも、あの人は地べた這っている人でしょう。有権者との関係に皮膚感覚は強い。橋下さんは、もっと洗練されたエリートです。あまり地べた這っている感覚はないと思う。むしろイメージ操作が上手い。橋下さん自身が凄く危険な存在にはならないと思う。でも、『首相公選制』とか、『強い手』とか、彼が色々なパフォーマンスを展開しているうちはいい。例えば、『君が代』だって橋下さん自身が本当に心酔しているならば、伝統保守として分かる。でも、彼は規則だから守れと言っている。そうすると、インターナショナルが日本の国歌になったら、それも規律だから守れということになってしまう。この種の発想は、けっこう怖い。

石川:私もこの本の中で、小沢さんの事について書きたかったことのひとつに、天皇制の問題があります。結局、首相公選制への流れは、今後強まって行くと思うんですよ。議会は何やってるんだと。

佐藤:これは危ない。

石川:国会議員何をやってるんだとね。自分達が選んだ国会議員が選んだ総理大臣は、1年足らずでやめていく。だったら、直接自分達が国のトップを選びたいという、世論がドンドンわき上がって来るでしょう。その時、首相公選制と天皇制と整合性について考えなければならない。小沢さんが言ったという事に説得力があるので、あえて私は書きたかった。

佐藤:もっとリアルに、どこで聞いたかと言う問題です。秘書としては、ルール違反ですよね。クルマの運転手をやっている時に聞いた話ですし。

石川:実際、たまたま東祥三(衆議院議員)さんと、車内で話しをしていて。

佐藤:東さんは元々公明党で、公明党が1回解党して新進党になった時に合流した。しかし、その後、元公明党の人たちは公明党に戻ったんだけれど、東さんは戻らずに自由党に行った。

石川:彼は、高等難民弁務官をやったり、外交には強い人ですね。

佐藤:私もモスクワでアテンドしたことあるから、よく知っています。

石川::東さんも小沢さんは、かなり酔っていました。私がクルマを運転していたら、『党首、日本の政治家で、やっちゃいけないことって何でしょうか?』って東さんが聞いたんです。小沢さんが間髪入れずに『天皇制をいじることだ』って。小沢さんは弓削道鏡と和気清麻呂の話を例に出していましたが、『そのような奴が出て来ると、日本の政治は乱れる』と。

佐藤:例の羽毛田(信吾)宮内庁長官の問題発言(習近平・中国国家副主席の天皇陛下会見問題)もありました。これはBLOGOSで私も書いて(佐藤優の眼光紙背:第64回「羽毛田信吾宮内庁長官は尊皇のまこと心をもっているのだろうか?」)、だいぶ反響がありましたが、むしろ、あれは羽毛田さんの方が皇室を政治利用している。最初からそのような論を張ったんですが、実は小沢さんもそう考えていると思うんです。永田町や霞ヶ関のプロの認識も、あの問題に関しては同じ考えじゃないか。

石川:私もそう思いますね。尊崇の念が強いかに関しては、色々な表し方がある。

佐藤:そもそも天皇制って言葉は、コミンテルン(共産主義の国際組織)が作った言葉ですからね。ですから、私は天皇制って言葉は使わないようにしている。天皇制って言葉は制度だから、変更が可能だと言う含みがあります。

小沢氏のための”特別房”

佐藤:小沢さんの話で面白かったのは、石川さんが捕まった時のこと。業界用語に『総検』というのがあります。これは独房の中に余計な物を持っていないかチェックすること。今ではだいぶ緩くなったのかな? 私の頃はパンツ3枚、本3冊とか、ボールペン1本とか、非常に厳しかった。

石川:決まりはありましたよ。本は3冊でした。

佐藤:監獄法が改正されて、少し緩くなったけれども、変な物を持っていないか、受刑者を廊下に出して中の検査をする。その時に石川:さんは特別待遇で......。

石川:私は別の部屋で待機するように言われました。その部屋がまたキレイなんですよ。畳が入れ替わっていて(笑)。

佐藤:ちなみに、東京拘置所の畳は2種類あります。縁が黒い畳と、縁に何もついていない畳。何が違うかと言えば、普通の房は縁がついている。縁が付いていないのは特別房で、死刑囚とか、石川さんのような要監視人物に対して。私も特別房に何度か入れられたので、どこが違うのか探してみました。上にカメラがついているのは分かるけれど、外から判別できるのは畳の縁でした。

石川:出所してから、その話を聞いて思い出しました。当時はそこまで分からなかったですよ。

佐藤:そんな長くいなくて良かったです。取り調べでその話をしたんでしょう?

石川:検事さんに話したら、『まだ、お入りになられていないVIPのために、用意してある』と。

佐藤::この話が面白かったから、鈴木宗男さん、小沢さんと一緒に寿司を食べた時に、小沢さんに話したの。『そんな事を言ってるのか! 俺を待ってるのか!』って驚くと同時に、怒っていた(笑)。

石川:冗談でも検事がそんな事を言うのは......。

佐藤:冗談に半分の真理ありってね。検察も絶対捕まえてやろうと思っていたんですよ。

石川:ただ、『俺たちが小沢を逮捕できなかったら、現場の検事はみんな辞めてやる』って言ってましたからね。それくらい最初は燃えていました。でも、どこかからか雰囲気が変っていきましたよ。

”小沢総理”なら安定した政権運営をしてくれる

佐藤:さて、ここからは視聴者からの質問です。

質問:佐藤さんがそのままロシアで活動していたら、北方領土問題はどうなったと思いますか?

佐藤:その時の政治体制が、どうなっているかなぁ......。今の政治体制だったら、誰がやっても駄目。ただし、鈴木さんとか、森(喜朗)さんがいたら、動いたかもしれない。次は『小沢さんにTwitterを勧めたらどうですか?』。どうですか?

石川:事務所のTwitterがありますけどね。基本的に携帯とか持ち歩かないんですよ。

佐藤:携帯を何て言うんだっけ? ピコピコ?

石川:そう、ピコピコ出せって。小沢さんは『あいつが言っているだけだ』と言うかもしれないけれど、これは事実です(笑)。株価をよく気にしていて、よく『お前、ピコピコで株価を出せ』って。ピコピコって何だよって思ったら、携帯でした(笑)。

質問:『小沢総理になったら、日本はどう変わるでしょうか?』です。

石川:どう変るかというよりも、安定した政権運営をしてくれると思います。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)や在日外国人地方参政権問題、賛否両論あるものは、きちんと意見を聞きながら、裁くと思います。

質問:『石川さんは民主党に復党できるとしたら、したいと思いますか?』

石川:結論から言うと、分かりません。民主党が残っているか分かりません。復党したいと思っても(笑)。

佐藤:それは民主党の中にいたら、思っていても絶対に言えないよね(笑)。もっとも民主党がなくなる時は、自民党もなくなっている。

石川:そうですね。

佐藤:絶対にあるのは公明党と共産党だね。どっちか行きませんか?

石川:いや、どちらも受け入れてくれないでしょう。ただ、小沢さんは政党の在り方は、共産党が理想だと言っていますよ。民主集中制に則っていますからね。

質問:『民主党はトロイカ体制でスタートして、まだ首相をやっていないのは、小沢さんだけです。次の選挙で民主党が負けてしまうのならば、首相にしてもいいのでは?』

石川:『人事を尽くして天命に遊ぶ』と言っていましたが、その時が来たら、受けると思います。

質問:『小沢一郎と原子力利権の関わり合いを教えてください』

石川:まさに、この本を読んで欲しいんですが、私も聞きました。若い時に科学技術庁の政務次官をやっていますからね。小沢さんは、『特に積極的に誘致してこようと思わなかったから、結果的に岩手に原子力発電所がなかった』と言っていました。

佐藤:なぜ、積極期にならなかったんだろう。

石川:それも聞きました。『なんとなく来なかった......』みたいな事を言ってましたね。

佐藤:その辺りは勘がいいというか、あまり良い物だとは、思っていなかったことですよね。

石川:それもありますし、あとは岩手県の沿岸て、アワビやウニなどが取れて、比較的お金持ちが多いからかな。

佐藤:「悪党」にこう書いてある、

役所はクリーンでコストが安くて、安全なエネルギーであると、宣伝文句を言っていた。今も、その当時もあまり変らないのは、結果的に原発から出てくる高レベル放射性廃棄物の処理には、未だ適当な方策がないんだよ。役所の宣伝文句は別にして、過渡的なエネルギーとして、仕方がない。石油もないからね。だから過渡的なエネルギーとしては仕方がないけれど、いずれ新しいクリーンで、しかも日本で大量に生産できるエネルギーっちゅうものを考えなければ、駄目なんだと思っていたし、俺は言ってきたんだ


「悪党」より

ということは、菅(直人)さんの言っていたことを、小沢さんは先取りしていたんだ。

石川:私も秘書時代に原子力関連の人とも会った事がないし、利権には関わっていないはずです。それより土建屋でしょう、小沢一郎と言えば(笑)。

質問:『小沢は沖縄の普天間近辺に広大な土地を、なぜ購入しているんだ。石川説明しろ!』

石川:『余生を過ごしたいからだ』と、前から言っていました。釣りが好きなんで、沖縄にもよく行っている。ただ、私が秘書の時は買っていなかったはずです。

メディアには何をやられても、メディアでやり返せばいい

質問:『石川さんはメディアを訴えるのは得策ではないと考えているようですが、何もしないと調子に乗って同じ事を繰り返すと思います。是非戦って欲しいのですが、その気は全くないのですか?』

石川:訴訟ですね。弁護士と話しをして、メディアを訴えるのに力を費やすのと、自分自身が政治家としてメディアを利用するのと、天秤にかけました。それで後者を取るべきだという結論に至ったんです。
ただ、裁判の一審が終るまでは、裁判に専念したいと思っています。その後、きちんと考えます。

佐藤:私は政治家がメディアを訴えるのは反対。メディアには何をやられても、メディアでやり返せばいい。公権力を介入させるべきではない。私は訴えられたことがありますが、訴えたことは一度もない。
例えとして、回り道になっているけれど、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が書いたディプロマシー(diplomacy)、『駆け引き』や『謀(はかりごと)』と訳されている怪談があります。

ある死刑囚が奉行に言う、『俺は馬鹿だったけれど、殺されるような悪いことはしていない。もし、俺を死刑にするのならば、必ず呪って復讐してやる。最期の一念は怖いんだ』と。でも奉行は、『最期の一念なんて信じない。もし最期の一念があるならば、そこの石に噛み付け』と言い放って、首を斬った。すると、首がコロコロと転がって行って、パクッと石に噛み付く。みんなは真っ青になって、『これは供養をしないと大変だって』と騒ぎ出した。でも、奉行だけが平気な顔をしている。彼は『最期の一念がどれだけ恐ろしいか、私がよく知っている。あの男はとんでもない最期の一念を持っていた。だから、俺はdiplomacy(駆け引き)で転換させたんだ。最期の一念は石に噛み付くことになった。彼は石に噛み付いて安心して、成仏したはずだから、絶対に祟りはない』と。

なぜ、この例を出したかと言うと、もし我々がメディアを相手に喧嘩をしたら、それは石に噛み付いたことと同じです。情報を流したのは、公的な機関なわけです。マスコミは情報がないところには書きません。これは日本のマスコミが良心的だからではないんです。
例えば、企業ジャーナリストだったら、情報源がないのに記事を作って発覚したら、クビです。フリーランスだったら、正に『偽メール事件』で分かるように、そのようなことをやった人は業界から仕事を貰えなくなる。
だから、日本でマスメディアが意図的に捏造することはないんです。必ず何か端緒があります。端緒をやった奴、私の場合は外務省ね。ある意味じゃ、検察も外務省にやられてしまった。だから、さっきの丹波さんみたいな人の素顔をお伝えしたいんですよ(笑)。

女性で2回も失敗

佐藤:少し時間がなくなってきたんですが、著書を見たら女性で2回も失敗しているんですね(笑)。

石川:そうですね(笑)。

佐藤:ひとつは結婚しようと思って、岐阜の相手の両親の所に了承を貰いに行ったら、入口で猫に『シャー!!』と拒絶されて(笑)。

石川:毛を逆立ててきたんですよ。よくよく考えて見ると、小沢さんって犬は好きなんですけれど、猫は大嫌いだった。塀を針金で括るくらい猫が嫌い。それを感じ取って、彼女の実家の猫に『シャー!!』ってやられたのかもしれない。やっぱりあの時、結婚に失敗したのも小沢一郎のせいなんですよ(笑)。

佐藤:ちなみに、ムッソリーニも猫が嫌いでしたよね。レーニンは猫が好きでした。もうひとつは、キャビンアテンダントと事件が報道される直前ぐらいまで付き合っていて......。

石川:私が1回目の事情聴取の前まで付き合ったり、別れたりだったんですけれど。1月に振られるんです。3月に事情聴取の段階になって、連絡が来た。その後、8月30日に選挙で当選したら、メールが来た。こっちもスケベ心出して、また会おうかってことになりました。そして10月16日に読売新聞の第一報が出てると、その前に日光にドライブに行ったりしていたのに、『やっぱり、私はあなたに合わない』だって。
彼女の前世はネズミなんじゃないかって思いましたね。危機を察知すると去って行く(笑)。これも小沢一郎のせいといえば......、いやいや人のせいにしちゃいけないな。

佐藤:小沢さんと付き合わなければ、こんな事にならなかった訳でしょう? 小沢さんに惹かれた理由って何だったと思います? あるいは、小沢さんの周辺にあれだけの人が集まってくる魅力って? 金とか権力が得られるとはちょっと違うと思うな。

石川:実際、給料も安かったですしね。魅力を一言で言うと『物を実現できる力が強い』。国民からの期待に対して、『小沢ならやってくれる』という期待をそばで手助けできるのが、秘書のモチベーションだったと思います。議員としても、何か変えてくれる力があった。
ただ、その『何か』を我々もきちんと理解していないと、盲目的な『キン肉マン』と呼ばれることになる。それは避けなければならない。
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菅首相が溺れている”ナルシシズム”

佐藤:石川さんは、今後の政治の中で何をやりたいですか?

石川::今、私は北海道・十勝にいますけれど、結論から言えば、きちんと国民の所得を上げて行く政治をやらなければならない。

佐藤:それは私も大賛成。とにかく東日本大震災の復興から、やらなければならないことは、たったひとつだと思うんです。大量破壊が起こったんだから、それを回復するには生産しかありません。そのためには仕事です。労働価値説を復活して、とにかくみんなで働く。
今、政府の議論は、基本的にすべてが分配の議論でしょう? 生産を復活させるためには、やはりバッチをつけた人に頑張って頂かないと。なぜ、こうやって皆空回りしてしまうんだろう?

石川:やっぱり胆力がないからだと思います。執行部全員が自分のことを棚に上げて、トップが悪いんだと攻めている。そんな会社が成功する訳がない。専務も、部長も、みんな『ウチの社長が悪いから、スミマセン』って......。

佐藤:それに合わせて、今はナルシシズムが出ていると思う。
もともとギリシャ神話なんですが、ナルキッソスという青年がいました。彼は非常に女性にもてていた。でも、余りにも素行が悪いために、『自分以外は愛せない』という呪いをかけられてしまう。ある日、水に映る自分の姿に見とれてしまって、身動きが取れなくなってしまった。結局、そのままやせ衰えて死んだ。別の結末では、水に映った自分にキスをしようとして、溺れ死んでしまう。その後に水仙の花が咲いたというわけで、水仙の花言葉は『自己中心』になった。

今の菅さんは、このナルシシズムに溺れていると思います。これは取って付けた議論ではなくて、フランスの政治人口学者でフランス国立人口学研究所のエマニュエル・トッドという人が『デモクラシー以後』という本の中で言っているんだけれど、『バラバラになった新自由主義の後には、極端に自己愛の強いナルシストが出てくる』と。

菅さんは権力にしがみついているのではない。権力にしがみついているならば、何かやりたい事があるはずです。彼はやりたい事がない。それは自分の映った姿に見とれていて動けなくなっているから。それと同じことをBLOGOSの『眼光紙背』でも書きました(佐藤優の眼光紙背:第105回「竹島問題を巡る外務省の中途半端な対応が、ロシアに付け入る隙を与えている」)。韓国の大韓航空が竹島の上空でデモ飛行をしたことに対して、外務省がは省員だけ7月18日から1カ月間大韓航空機の利用を自粛するとした。これは外務省としては、相当踏み込んだ対応です。例えば、北方領土を考えた場合、サハリン航空なんて毎日領空侵犯している訳ですよ。それにも関わらず、抗議なんて1回もしたことがない。

今の状況で、内閣府や経産省の連中が大韓航空を利用して、外務省だけ利用しなくても意味がないでしょう。これでは、政府として機能していないということをあぶり出してしまう。
外務官僚達は、今の日本には単一の政府はないと考えたんでしょう。『Small Governments』、複数形の小さな政府しかないと。この状況で自分達の中で国益を代表するには、自分達の中で出来る措置は何かと考えた。それを官邸に上げずに決めてしまったんです。これもナルシズムとしか言いようがない。
結果、ロシアからは『韓国に言って、俺たちに言って来ないのは、俺たちが強いからだ』となめられてしまう。この自己陶酔をやめさせるためには、自分の姿が醜いことを、知ってもらう必要があります。その点、小沢さんはナルシストではないと思う。

石川:この顔を見て、ナルシストにはなりませんよね。その心配はない(笑)。

佐藤:彼が、自分自身を突き放して見ているのは、はいい所だと思う。

石川:ニヒリズムとかが盛り上がる中で、小沢さんはギリギリのラインは分かっています。それが必要とされるんじゃないかな。

最高裁まで戦うには4,500万円必要

佐藤:この続きは、是非『悪党』を読んで欲しいんです。この本を出版した目的に、金儲けがあります。何のために金が必要なのか、それは裁判なんですよ。裁判はやっぱり金がかかるでしょう?

石川:もう莫大な金額かかりますね。ビックリするくらい。

佐藤:私は8年間やりました。弁護士は適正な価格でやってくれましたが、外国からも証人を呼んできましたし、だいたい2,000万円掛かった。
この2,000万円は全て自分で稼いだんですが、税金払うことを考えると4,500万円くらいが必要です。これくらいの金額がないと、最高裁まで上げることは出来ないんです。石川さんは小沢さんに依存せずに、自分で訴訟費用を作っている。

石川:実際、ホームページで全国からカンパを募集して、500万円以上頂戴しています。

佐藤:10年も裁判が続くと金もかかります。『こっちだって執行猶予で済ませようと思ってるんだ。公判1回で終れば、みんなすぐに忘れる。新しい人生を始めることができる』って、検察官は本気でそう思っていました。外務省の東大卒キャリアだった私の同僚は、それを選択した。
石川さんが戦うという選択をした以上は金もかかるし、色々な逆風もあるけれど、最後までやってみた方がいいと思う。

石川:とにかく戦うことを選択したので、最後まで頑張ります。

佐藤:皆さんも、この『悪党』を是非読んで下さい。金返せって内容じゃないことは、私も本読みなので、ちゃんと保証します。

石川:重版が追いついていないんですけれど、Amazon等で予約して頂けると助かります。

佐藤:今日はありがとうございました。  

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